とある会社を経営する男ー。
ある日ー、
そんな彼の元に”娘”から電話がかかって来たー。
”人質交換”を要求する恐ろしい電話がー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
森永 竜平(もりなが りゅうへい)は、
今日は久々の休日を堪能していたー
彼は、会社の経営者ー。
さほど、大きな会社ではないものの
自身が大学生の頃に立ち上げた会社が、
それなりに上手く行き、
今では数十名の社員を抱えるほどになったー。
とー、言っても”大企業のトップ”というわけではないため、
絵に描いたような”社長の暮らし”のようなものはできないー。
案外、”社長”も、中小企業の場合は大変なのだー。
「ーーあ、お父さんー」
2階から降りて来た娘の森永 亜香里(もりなが あかり)が、
笑いながら「今日はお休みなんだ?」と、そう言葉を口にするー。
「ははー。たまには休まないとなー」
竜平の言葉に、亜香里は「ふふー、そうだねー。いつもお疲れ様」と、
そう言いながら、学校に行く準備を始めるー。
今日は平日ー。
社長である竜平は、なかなか休みを取ることが出来ず、
平日にはなってしまったものの、久しぶりの休みを確保することに
成功していたー。
「ーーじゃあ、ゆっくり休んでね!
いってきます!」
亜香里がそう言葉を口にしながら、学校に向かうー。
娘の亜香里は、高校生になった今でも
とても良い子でー、
父親である竜平とも全く喧嘩したりすることはないー。
同じく娘を持つ社員からは
”娘から無視されるようになっちゃって”などとよく愚痴を
言われているものの、竜二と亜香里は、そういう関係になることはなく、
良好な間柄が続いていたー。
そうーーー
”この日”まではー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーまた明日~!」
夕方ー。
亜香里がいつものように学校での一日を終えて
帰宅しようと、”いつもの道”を歩いていたー。
がー
その時だったー。
「ーーー…君が、森永 亜香里さんですかー?」
背後から、白髪まじりの男に声を掛けられた亜香里ー。
「ーーえ…?」
亜香里は、戸惑いながら振り返ると、
警戒心を露わにするー。
「ーあぁ、いやー、
急に驚かせてしまってすみませんー。
お父さんの会社でお世話になっている、笹倉(ささくら)と
申しますー」
そう言いながら、白髪交じりの男ー、
笹倉 浩司(ささくら こうじ)が、社員証を掲示するー。
「ーあ、お父さんのー
いつも父がお世話になっていますー」
亜香里が、優しく微笑みながらそう言葉を口にすると、
少しだけ警戒心を解いて、その男の方を見つめるー。
「ー会社の方でトラブルがあって、
これからご自宅に伺うことになっているのですがー…
道に迷ってしまってー」
耕平が少し戸惑った表情を浮かべながら周囲を見渡すー。
どうやら、竜平に会うために、
家を訪ねて来たものの、途中で迷ってしまったー、
そんな様子だったー。
「ーーー…それでしたらー、
わたしも今から帰るところなので
一緒に行きますかー?」
亜香里のその言葉に、
「あぁ、どうもー、すみません。助かります」と、
浩司はそう言葉を口にしたー。
亜香里は”まだ”少し警戒していたものの、一緒に歩きながら
浩司が”会社での思い出”を口にし始めたのを聞いて、
だんだんとその警戒を解いていくー。
”ちゃんと、お父さんのことを知っている”
そう思ったからだー。
父の会社の社員を名乗る浩司が話す内容は、
ちゃんと、”お父さん”を知っていないと話せない内容だったし、
父からも聞いたことのあるエピソードと同じエピソードを話していたりとー、
亜香里の警戒を解くには十分な内容のものばかりだったー。
「ーーーあとちょっとです」
それまで”念のため”警戒して、
人通りの多い道を歩いていた亜香里ー。
しかし、父親の話を色々されて、
安心してしまったのか、家に近付いてきたその場所で、
”近道”である人通りの少ない路地に入ってしまうー。
その時だったー。
「ーーずっと待っていたよー」
「ーーえ?」
亜香里が振り返るー。
「ー君が人通りの少ない場所ー
”目撃される心配のない場所”に入るときをー」
”父親の会社の社員”を名乗る男・浩司は笑みを浮かべながら
そう言葉を口にしたー。
そしてーー
突然、亜香里にキスをすると、
そのまま浩司は光の雫のようになって、
そのまま亜香里の身体の中に吸い込まれていくー。
「ー!?!?!?!?!?」
驚きの表情を浮かべる亜香里ー。
がーーー
次の瞬間、亜香里の表情は邪悪に染まりー、
不気味な笑みを浮かべたー。
「ーーくくくくーー
これで、俺ーー
いいや、わたしが森永 亜香里ー
な~んてなー…」
亜香里はそう呟くと、そのまま家とは反対側の方向に
向かって歩き始めたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー遅いなー…」
自宅で本を読んでいた父・竜平は
心配そうにそう言葉を口にすると、
妻の和江(かずえ)に向かって、
「亜香里から何か連絡はあったかー?」と、
そう言葉を口にするー。
「ーーいいえー、連絡はないけどー」
和江が心配そうに時計を見つめるー。
亜香里はバイトもしているー。
がー、今日はバイトがあるとは聞いていないし、
誰かと遊んでくるとも聞いていないー。
亜香里は”事前になかった予定”が入った場合でも
必ず連絡をしてくる子だー。
事前に何も聞かされておらず、
しかも、こんなに遅くなるのは、
亜香里の場合は、珍しいことだったー。
「ーちょっと、連絡してみるわ」
妻の和江がそう言葉を口にしながら、亜香里にメッセージを送るー。
しかし、やはり反応はなく、
両親ともに不安を強めたその時だったー。
「ー!」
父・竜平のスマホが鳴るー。
妻の和江も心配そうにスマホの画面を見つめると、
そこには”亜香里”と表示されていたー。
「ーーあ、亜香里ー!」
竜平は不安そうな表情を浮かべながら
スマホを手に取ると、
「亜香里かー?」と、そう言葉を口にしたー。
だが、相手から返事がないー。
「あー、亜香里ー…?」
不安そうに言葉を口にすると、
曇ったような声が電話の向こうから聞こえて来たー
”クククー
森永社長だなー?”
笑いを堪えているかのような曇った声ー。
「ーーお…お前は誰だ!?」
竜平がそう言葉を口にするー。
すると、相手は続けたー。
”ーお前の娘の森永 亜香里は預かったー”
その言葉に、
「な、なんだと!?」と、竜平は声を上げるー。
近くで不安そうにその様子を見つめる妻の和江ー。
「ーーーー」
竜平は相手の返事を待ちながら表情を歪めるー。
少し曇ったような声だがー、
相手の声を聞く限り、相手は”女”に聞こえるー。
この女が、亜香里に何かしたのだろうかー。
”ーークククー
そう怒るなー。
言う通りにすれば、娘に危害は加えないー
ただ、解放するためには条件があるー”
相手の女の言葉に、竜平は表情を歪めるー。
「ーー条件だと?」
”そうだー
こちらの狙いは、森永 竜平ー
お前だー。
娘の解放条件はお前自身ー。
そうー”人質交換”が条件だー”
相手の女が、そう言い放つー。
「ーーお、俺と亜香里を交換ー…?」
竜平は表情を歪めるー。
だが、迷いはなかったー。
「ーわかったー。
場所と時間を教えてくれー」
竜平がそう言い放つと、
相手の女が場所・時間を指定してくるー。
「ーー…ーーそれと、
亜香里は本当に無事なんだろうな?」
その言葉にーーー
電話相手の女は、笑みを浮かべるー
”ーー声を聞かせてくれー”
スマホの向こうから聞えて来る父・竜平の声ー。
廃墟のような場所から、電話をしていた
”電話相手の女”=憑依された亜香里は、
笑みを浮かべながら、口元にハンカチを当てつつ
「いいだろうー」と、そう言葉を口にするー。
そして、ハンカチを取って、
”いつもの亜香里”のように声を出すー
「お、お父さん!た、助けて!」
とー。
”あ、亜香里!!!”
電話の向こうから竜平の悲痛な声が聞えて来るー
それを確認した”憑依された亜香里”はニヤリと笑いながら
再びハンカチを口元に当てると、
「これで分かっただろうー?
娘を助けたかったら、”交換”に応じるんだー。」
と、亜香里の身体のまま、そう言葉を口にするー。
娘の身体で、実の父親を脅している状態に、
笑みを浮かべる亜香里ー。
”わ、わかったー。従うー
だから、娘には手を出すな!”
竜平のその言葉に、
今一度笑う亜香里ー。
「ーー警察も含めて、外部にこのことを漏らしたら
娘の命はないー。
分かっているなー?」
亜香里はハンカチを当てながらそう言葉を口にすると、
竜平は”わかったー…”と、そう返事をしたー。
通話を終える亜香里ー。
「ークククー…
お父さんー…
わたしのことを、助けに来てねー?」
笑いを堪えながら、そう言葉を口にするー。
そして、ついに笑いを堪え切れなくなったのか
一人でゲラゲラと笑いだすと、
亜香里は嬉しそうに「さ~て…”お前の娘”の身体を
じっくり楽しんでやるとするかなー」と、
邪悪な笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ど、どういうことー…?」
妻の和江が不安そうに言葉を口にするー。
「ー詳しくは今は言えないー。
でも、大丈夫だー。心配するなー」
竜平は”相手から言うなと言われたこと”は告げつつ、
詳細は伏せるー
どこで、”相手の女”が見ているかどうかわからないー。
もしもここで色々話せば、
その瞬間に亜香里は処分されてしまう可能性があるー。
そう思ったからだー。
「ーーー……で、でもー」
不安そうな妻の和江ー。
そんな和江に対して「大丈夫ー。大丈夫だから」と、
そう言葉を口にすると、竜平は意を決して
指定された時間に指定された場所へと向かうことができるよう、
準備を始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”そこ”にやってきたのは、”深夜”のことだったー。
海岸沿いの使われていない倉庫のような場所に
やってきた竜平ー。
竜平はスマホを手にしたまま、
険しい表情で、指定された倉庫の中へと入っていくー。
もちろん、竜平もここに来るまでには
色々な”対処”はしてきたー。
妻の和江には”朝になっても自分や、娘の亜香里から何の連絡もなければ、
あらゆる場所に連絡するように”告げてあるー。
人質交換で、自分が拘束されたとしても、
亜香里が解放されれば、家に連絡を入れることは出来るー。
朝になっても”どっちも”その状況にないということは、
竜平は亜香里を助けるのに失敗したことを意味するー。
そしてー、竜平自身、スマホを手に握りしめたまま
”即座にこの状況を通報できる”ように準備しつつ、
指定された倉庫の中を歩いたー。
するとー…
「ーーお、お父さん!」
奥から声が響いたー。
「ーあ、亜香里!」
竜平がそう言葉を口にすると、
広々とした倉庫の奥には、
亜香里が制服姿のまま、特殊なイスに拘束されていたー。
そして、その隣には”誰も座っていない”同じ椅子ー。
「ーーーた、助けて…!」
弱弱しく声を発する亜香里の方を見て、
「分かってる!大丈夫だ!」と、そう言葉を口にすると、
亜香里が拘束されている椅子のすぐ近くに不自然に置かれている
テーブルの方を見つめたー。
そこには”犯人”からのメッセージが記されているー。
”隣の椅子に座り、この紙に書かれた通りに操作しろ。
お前が椅子に拘束されたのを確認次第、娘を解放してやる”
その言葉に、竜平は表情を歪めるー。
「ー待て。娘の解放が先だー」
とー。
亜香里の解放よりも前に、自分が動けない状況に
なってしまっては、最悪の場合、亜香里も解放されない可能性があるー。
そう思った竜平は
「俺は逃げない!だから亜香里を先に解放してくれ」と、
そう言葉を口にしたー。
「ーーー………」
人質に取られている亜香里は小さく舌打ちをするー。
「ーーー亜香里…今、助けるからな!」
そんな舌打ちを知らず、竜平が亜香里に声をかけると、
亜香里は少しだけ笑いながら「うんー」と、そう言葉を口にしたー。
犯人からの返事はないー。
竜平は表情を歪めるー。
それもそのはずー…
”人質交換”を要求してきた”犯人”はー、
娘の亜香里の”中”にいるのだからー……
そのことを知らずに、竜平は犯人からのリアクションを待つー。
するとーー…
娘の亜香里を拘束していた椅子のロックが解除されー、
亜香里の身体が自由になったー
「ーーお…お父さんー…」
亜香里が、不安そうに椅子から立ち上がるー。
「よかった!無事でよかったー!」
竜平は、拘束から逃れた亜香里を嬉しそうに抱きしめるー。
だがーーー
抱きしめられた亜香里が、邪悪な笑みを浮かべていることに、
竜平は気付かなかったー…
②へ続く
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コメント
”娘が憑依されて、その娘から父親が要求を突きつけられる…”
以前書いた「ムスメの身代金」という作品の、
リブート的な作品デス~!☆
(※登場人物、設定、物語自体は変えてあるので
同じテーマであえて書いた新作みたいな感じデス~!
前の作品を知らなくても、全然問題ないので楽しんでくださいネ~!)
年数が経過してから、
また同じコンセプトに挑戦すると、
私も変化を感じて、ちょっぴり楽しいデス…!
明日もぜひ楽しんでくださいネ~!
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