10分だけ女体化できる女体化薬を使い、
”みほみほ”を名乗り配信を続ける男子大学生ー。
しかし、親友から聞いた話に慌て、
さらには配信直前に妹が家の中に入ってきてしまいー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「み、みほみほ~~~?知らないな~」
これから女体化薬を飲んで配信を開始しようと思っていた
達也は、メイド服姿のまま表情を歪めたー。
別に、女装する趣味自体は達也にはないものの、
今から”女体化して配信をしようとしていた”ため、
メイド服に着替えたばかりで、
その姿を妹の詩音に見られてしまったー。
「ーーわたし、実は”みほみほ”の大ファンなんだよね~!」
妹の詩音の言葉に、
「は…は…はぁ~…?」と、達也は表情を歪めるー。
”おいおいおいおいー…
悠人のやつだけじゃなくて、詩音も俺のファンとか
勘弁してくれよー
まぁ、女体化した俺が可愛いのは認めるけどさー”
そう心の中で思いながら
「い、いやー、って、わざわざんなこと言うために
ここに来たわけじゃないだろ?」と、
そう言葉を口にすると、
「急に俺の家にわざわざ来た理由はー!?」と、
再び、その理由を確認したー。
「ーえ~~~……?
お兄ちゃんと話したかったから~?」
詩音が笑いながらそう呟くー。
「なんで疑問形なんだよ!」
達也がそう言うと、詩音は
「最近、お兄ちゃんに会えてなかったしー!」と、
そう言葉を口にしたー。
つまり、”大した用はない”のだろうー。
”ーあぁ、そういや、詩音は昔からこういうやつだったー”
達也はため息をつくー。
大した理由はないけど合鍵を勝手に作りー、
大した理由はないけど、少し距離のある兄の家に遊びに来るー。
そして、大した理由はないけどノックも連絡もせずに
勝手に合鍵で扉を開けて中に入って来るー。
妹の詩音はそういう人間だー。
「ーま、ま、まぁいいやー」
達也は時計を見つめながらそう言葉を口にすると、
「そ、そ、そうだー。お小遣いあげるからコンビニで
何か好きなもの買って来なよー
詩音が来るとは思ってなかったから、
何も用意してないしー」
と、そう続けたー。
「え~?」
そう言いながら、冷蔵庫を勝手に開ける詩音ー。
確かに、何もないー。
入っているのは納豆と、コーラと、あとは何故か魚肉ソーセージが
入っているだけだー。
「ーーーー…じゃあ、買ってくる~!」
詩音がそう言いながら、受け取ったお金を手に、
そのまま外へと向かうー。
それを確認しー、詩音がアパートの階段を降りていくのを確認すると、
達也は「やばいやばい」と、そう言いながら
パソコンの前に戻ったー。
”配信時間を事前に告知”していて、それを既に5分経過
してしまっているー。
慌てて配信の準備を終えると、女体化薬を飲み干して
「やっほ~!みほみほで~す!」と、いつものように
挨拶をしたー。
女体化している”自分”は我ながら可愛いー。
本当のアイドルみたいだしー、
こんな姿、こんな声で自分が配信できているなんて
夢みたいだー。
「今日も10分チャレンジをやっちゃいま~す!
今日遊ぶのは、このゲーム!」
”みほみほ”として、可愛らしい仕草や喋り方を
意識しながら配信を続けていくー。
最初に配信を始める前に
女体化薬を何本も買っては女体化ー、
鏡の前で”どんな振る舞いをすれば可愛いか”を
徹底的に研究したー。
その甲斐もあってー、
振る舞いは、完全に自然な女子になっているとー、
達也はそう確信していたー。
「じゃあ早速ー、
スタート~!」
そう言いながらゲームを開始したその時だったー。
「ーーーーーー?」
”みほみほ”として配信を続けている達也が
横を見ると、そこには妹の詩音が
ニコニコしながら立っていたー。
「ーーー!」
この世の終わりみたいな表情を浮かべる”みほみほ”ー。
”なっ、なんで!?
コンビニから家まで往復すれば早くても15分はかかるのにー!?”
そう思いながらも、
「ーあ~~!やめてやめてやめて!」と、
ゲームのプレイを”みほみほ”として続けるー。
妹の詩音は、なおもニコニコしながら
メイド服のまま女体化した”兄”を見て、
メモ用紙を手にするー。
”気にせず配信を続けて”
そう書かれたメモを横目で確認した達也は、
”みほみほ”としての配信をいつも通り続けてー、
そしてー、配信を終えたー。
「ーーあはは!すっごい!可愛かったよ!」
配信を終えた達也に、そんな言葉を掛ける妹の詩音。
青ざめたまま、男に戻った達也は、
言葉を失っていると、
「ー家に入って来た時、パソコンの画面に”みほみほ”って
表示されてるの見えちゃって」と、詩音は笑ったー。
「ーーそ、そ、そ、そっかぁー」
達也は戸惑うー。
既に最初の時点でバレてしまったということなのだろうー。
”みほみほの大ファンなんだ~!”と言ったのも嘘で、
最初にパソコンの画面が見えたから揶揄っていたらしいー。
「ー今流行ってる”女体化配信”ってやつでしょ?
お兄ちゃんもやってたんだぁ~」
詩音がそう言いながら、スマホをいじるー。
”みほみほ”について調べているのだろうー。
「へ~すごいね~!ファンも結構いるじゃん!」
詩音の言葉に、達也は「あ…あぁ…」と、
死んだ目をしながら答えるー。
「ーーーあ、でもでもー」
詩音は、そう言いながら
「絶対女体化薬飲んでるおっさんだろ、とか書かれてるよ?」と、
ケラケラと笑うー。
「ーーお、おっさんじゃないけどな」
達也は”男子大学生だし”と、何故かそこだけすぐに
ムキになって否定すると、
「ーーーーう~~~~ん」と、言いながら詩音は
少しだけ笑みを浮かべたー。
「ーー女体化したお兄ちゃんとわたしの顔って、
結構似てるよねー?」
詩音がそう言うと、
達也は「まぁ、兄妹だしー、俺がもしも女に生まれてたら、
詩音と似た顔になったのかもなー」と、そう言葉を口にするー。
「ーーじゃあさ、わたしにいい考えがあるんだけど!」
ニヤニヤとしながらそう言い放つ詩音ー。
「ーーえ」
達也が不思議そうに首を傾げるー。
「い、いや、それよりさー…
詩音、俺がこんな配信してても、別に気にしないのかー?」
達也がそう言うと、
詩音は「ぜんぜんー。友達の彼氏も女体化配信者だし!」と、笑ったー。
「ーわたしも見たことあるけど、
面白いよ!その人の配信!」と、そう呟くー。
どうやら、幸いなことに詩音自身は
女体化配信者に対して何の偏見も持っていないようだったー。
「そ、そっかーなら良かったー」
少しホッとする達也ー。
「ーそれでーーわたしの考え、聞いてくれる?」
詩音は”思いついたいい考え”を、達也に向かって口にし始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「やっぱ、みほみほちゃんって女体化配信者なのかなー?」
親友の悠人が、大学でそんな言葉を口にするー。
「ーーん~?いや、どうだろうなー」
達也は、まさか”俺がみほみほだ!”とは言えずに、
今日もとぼけるー。
そして、何食わぬ顔でスマホをいじると、
「お、みほみほって子、”1時間配信”やるみたいだぞー」
と、そう言葉を口にしたー。
「い、一時間!?」
悠人は少し驚くー。
「ーー女体化薬の効果は10分だからー、
ーやっぱ、みほみほちゃんは女の子ってことかー」
悠人はそう呟きながら、
「よっしゃ!帰ったら見るぜ!」と、
そう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「は~い!みほみほで~す!
今日はいつもより長めの1時間、たっぷり連続で
配信しちゃいま~す!」
”みほみほ”が1時間にも及ぶ配信を開始するーー。
「ーーーー」
カメラに映らない場所では、
”達也”がそれを見つめていたー。
”お兄ちゃんー、わたしが”みほみほ”のフリをして
1時間ぐらい配信すれば、女体化薬使ってる~!とか
言われずに済むんじゃない?”
それが、先日ー、妹の詩音から提案されたことだったー。
そして今日ー、
詩音が”みほみほ”として配信を行っているー。
メイク、服装、振る舞いー、
全てをそっくりにすれば、確かに妹の詩音も
”みほみほ”そのものに見えるー。
そういえば、女体化した自分は誰かに似ていると
前々から思っていたものの、よく考えたら妹の詩音に似ていたのだー。
”まさか、俺のために”みほみほ”の影武者をやってくれるなんてなー”
そう思いながら、達也は
カメラの前で配信を続ける詩音に対して、
紙に文字を書いて”指示”を送るー。
”みほみほ”として、完璧に振る舞ってくれる妹の詩音ー。
1時間にも及ぶ配信をしっかりとこなしてくれた詩音は
「これで、”みほみほ”は、女体化配信者だと疑われずに済むね!」
と、笑いながらそう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーみほみほちゃん、やっぱちゃんとした女の子だったみたいだな~!」
親友の悠人が、大学で満足そうに笑うー。
「はは、そうなのかー。ならよかったー」
何食わぬ顔でそう言葉を口にする達也ー。
「ーいや、ほら、最初から”女体化配信者”だと明かしてる人は
全然いいんだけどさー。
たまに”女体化薬”を使ってるのに、それを隠して
配信してるやついるじゃんー?
ああいうのは俺、なんか嫌だなぁってー。
みほみほちゃんがそうじゃなくてよかったー」
悠人が満足そうにそう呟くのを聞いて、
達也は少し気まずそうに、苦笑いしたー。
それからも、”みほみほ”として妹の詩音が
配信を続けてくれてー、
長時間に及ぶ配信も、詩音がこなしてくれたー。
いつしか、詩音は達也が指示をしなくても
”みほみほ”として完璧に振る舞えるようになり、
視聴者の数もさらに増えていったー。
「ーーさて、今日は俺も久々に配信するかなー」
そう思いながら、メイド服に着替えて女体化薬を用意するー。
自分のアカウントにログインして、
配信を開始しようとしたその時だったー。
「ーーえ…?」
”パスワードが違う”と、画面に表示されたのだー。
「ーーーえ…???え???」
達也が慌てた様子で、もう一度ログインしようとするも、
ログインができないー。
そうこうしているうちに、”みほみほ”の配信が始まったー。
”ーやっほ~!みほみほだよ!
今日は雑談しながら、みんなとこのゲームを遊んでいこうと思います”
妹の詩音が、そんな言葉を口にしながら
”たまたま”配信を始めたー。
「ーお、おいっ…み、みほみほは、俺のー」
次第にー…
妹の詩音は”みほみほ”として配信することに
楽しさを覚えるようになっていたー。
そして、ついには兄・達也に代わって
アカウントのパスワードを勝手に変更ー、
”みほみほ”という存在を乗っ取ってしまったー。
「ーーーし、詩音!みほみほは、お、俺のー!」
配信が終わったタイミングで、そう言葉を口にする達也ー。
しかしーーー
”ーお兄ちゃんじゃ、10分しか配信できないでしょ?”
詩音は冷たい口調で言ったー。
「ーーえ…で、でもー…!」
達也は、表情を歪めるー
妹の詩音は、達也とずっと仲良しだったー。
こんな仕打ちをする妹ではなかったはずー。
そう思いながら、
「み、”みほみほ”を返してくれ!」と、そう叫ぶー。
がーーー
”ーーーわたしー、”女体化配信者”嫌いなのー。
だから、お兄ちゃんにそんなことしてほしくない”
冷たい声で言う詩音ー。
兄・達也の秘密を知ったとき、
あっさりそれを受け入れるような振る舞いをしていた詩音ー。
”友達の彼氏が女体化配信者だから偏見はない”
と、いうようなことも言っていたー。
しかし、それは嘘だったー。
詩音は、女体化薬を使って配信している男にー、
そして、女装にも詩音自身は良い感情を抱いていなかったー。
兄・達也がそういうことを知っていると知り、
強い不快感を抱いた彼女は、
”みほみほ”を奪おうと画策したのだー
”ーー「みほみほ」はわたしが運営していくからー
お兄ちゃんは、もう女体化薬とか、飲まないでねー”
詩音はそれだけ言うと、そのまま電話を切ってしまったー
「そ…そんなーーー」
”女体化薬”を使って”みほみほ”として配信を続けていた達也は、
それを、妹の詩音に奪われてしまったのだったー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
”10分だけ女体化できる何か”というところから
思いついた作品でした~!☆
時間制限つきだと、男体化でも女体化でも
扱いが難しそうですネ~…!
お読み下さりありがとうございました~!☆
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