<女体化>新時代の配信者①~みほみほ~

”10分だけ女体化できる薬”ー。

そんな薬が開発されたその世界では、
”その10分”を利用して、女体化した状態で
配信を行う配信者たちがいたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”ー皆さんこんばんは~!!
 今日も、みほみほチャレンジの時間です~!”

顔出し配信者の”みほみほ”が、
可愛らしく微笑みながら、そう言葉を口にするー。

”今日も、昨日と同じこのゲームで
 ハイスコアを目指しちゃいます~”

「あ~…みほみほちゃん可愛いなぁ~…」
男子大学生の北島 悠人(きたじま はると)は、
そんな言葉を口にしながら、スマホを見つめていたー。

ちょっとした”チャレンジ”を、ほぼ毎日配信している
動画配信者の”みほみほ”ー。

最近は、1プレイ5分でハイスコアを競うとあるゲームを
遊んでいて、今日もそのゲームでハイスコアを目指す企画を
配信しているー。

”あ、やばっ!やばっ!やばっ!
 あ、そっちじゃない!ダメ!

 あ~~~!も~~~!
 これじゃ昨日より酷いスコアになっちゃう~”

不満そうにそう言葉を口にする”みほみほ”ー。

「ーーははは、リアクションが可愛いんだよなぁ」
悠人は、そんな”みほみほ”の配信を見つめながら、
今日も満足そうに笑うー。

”ーーざんねん…”
結局、ハイスコアを更新できなかったのか、残念そうに項垂れる”みほみほ”ー。

”ーーじゃあ、今日のみほみほチャレンジはここまで~…!
 また明日~!おやすみなさい~”

みほみほは、カメラに向かってそう言葉を口にすると、
そのまま配信は終了したー。

「ーふ~…今日も可愛かったなぁ~」
悠人は、そう呟きながらも、
”最近”噂されているあることを、不安に思っていたー

それはー

”やっぱ今日も10分以内に終わったなー”
”みほみほちゃんってやっぱ、アレ使ってるんじゃね?”
”過去の動画見ても10分以上配信されてたものないもんなー”

そんなコメントの数々を見つめる悠人ー。

「ーーー…」
悠人は、今日の動画の配信時間が8:39であったことを確認するー。
8分39秒ー。
今日も”10分以内”だー。

「いや、まさかなー」
悠人はため息をつきながらスマホを見つめるー。

”女体化薬”
5年ほど前に開発された薬で、
”10分間だけ”女になることができるという、
そんな薬だー。
悪用に関する法律はしっかりと整備された上で流通しており、
例えば公共の場で女体化薬を使って女子トイレに入ろうものなら、
”センサー”により探知されて即逮捕となるー。

そういったルールがしっかり整備された上で
”娯楽用”として、女体化薬は世間に流通していたー。

今ー、女性配信者の”みほみほ”には、
女体化薬を使っている男なのではないか、と、
そういう疑念が持たれているのだー。

もちろん、”女体化して配信すること”自体は法律では
別に禁止はされていないー。

しかし、ファンたちからすれば”裏切り”だー。

彼女の場合、自分の性別を明かし、
顔出しまでして配信をしているー。

それが実は”女体化薬を使って配信している男でした”となれば、
”別に女でも男でも関係ないさ”という人もいれば
”騙したな!許せない!”という人もいるだろうー。

「ーー確かに、全部10分以内に配信、終わってるんだよなー」
そんな”みほみほ”のファンである悠人も、不安そうに
動画を見つめるー。

だがー、”みほみほ”は、時々コスプレ姿で
配信をするときもあるー。

そういう時も、9分近く配信されていたことがあるー。

「女体化薬を飲んでから着替えて、配信したんじゃー…
 10分超えそうだしなー…

 かと言って、先に男の状態から着替えておくってのもー…
 サイズ的にきつそうだしー」

悠人は、しばらく”みほみほ”の正体について考えながらもー
「いや、みほみほちゃんが男とかありえないでしょ」と、
自分で自分に言い聞かせるようにそう言葉を口にすると、
スマホを机に置いて、そのまま静かに立ち上がったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー…みほみほ?」

大学の親友・江本 達也(えもと たつや)が
首を傾げるー。

「ーーあぁ、この子なんだけどさー」
悠人は、そう言いながら達也に
”みほみほ”の配信ページを見せるー。

「ーふ~ん…で、その子がどうかしたのか?」
達也が首を傾げるー。

大学での昼休みー。
ため息をついていた悠人を見て、親友の達也が声をかけて来たー。

その言葉に、悠人は”みほみほ”のことを話しながら
言葉を口にしたー。

「ーいや、最近さー、ネット上で
 ”女体化薬を使ってるんじゃないか”ってよく言われてるんだよ」
悠人はそう言いながら、”みほみほ”について書かれている
ネットのページを見せるー。

「ーーー…そ、それでため息をー?」
達也が困惑した表情を浮かべるー。

「ーま、まぁ、ほらーー
 ”みほみほ”ちゃんがもし女体化薬使ってる配信者だと思うとー
 こうーなんか、胸がギュっと締め付けられる思いっていうかー」

悠人の熱弁に、達也は「はいはいー」と、苦笑いするー。

「ーで、どんな風に言われてるんだ?」
達也は少し興味深そうにスマホを手にすると、
ネット上に書かれた”みほみほの女体化薬疑惑”を見つめたー。

「ーでも、女体化薬使って配信してるやつなんて
 いくらでもいるだろ?
 この前も、おっさんが放送事故起こしてるって話題になってたし」

「ーーあぁ、ははー
 途中で女体化薬の効果切れちゃったやつだろ?」

「ーそうそう」

そんな会話をする二人ー。

「ーでも、別にいいんじゃないかー
 男だろうが女だろうがー」
達也が冷めた様子で言うと、
悠人は「い~や、でも、自分の好きな配信者がこうー、嘘ついてたとなると
寂しいだろ?」と、そんな言葉を口にするー。

「ーはははー…」
達也は苦笑いしながら、サイトに書かれた
”みほみほの配信は一度も10分を超えていない”と、
そんな表記を見つめたー。

「ーーま、でも違うんじゃないか?
 このみほみほって子、普通に振る舞いが女子じゃね?」

達也の言葉に、悠人は「いやぁ、まぁ、そうだけどさー」と、笑うー。

”女体化薬”を使って配信している配信者は、
どことなく”男っぽさ”が出てしまうケースが多いー。

急に男口調で話してしまったりー、
座り方や歩き方が完全に男だったりー、
女体化薬の効果が切れてしまったりー、
色々あるものの、
”何となく雰囲気”で分かるー。

しかしー、”みほみほ”は、そんな素振りはなく、
振る舞いだけ見れば、女子そのものだー。

とても、女体化薬を飲んだ男には思えないー。

「ーーおっと、そろそろ俺は次の授業に行かないと」
達也がそう言うと、悠人は「あ、俺もだー」と、
そう言葉を口にしながら立ち上がったー。

「じゃ、またなー」
別々の授業を受けるため、
達也と悠人はそれぞれ別の方向に向かって行き、
そのまま次の授業を受け始めるのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

帰宅した達也は、
扉を閉めると同時に、
真っ青になって、心の中で叫んだー

”「みほみほ」は俺だーーーーーー”
とー。

「やばいやばいやばいー
 やっぱ、女体化薬使ってる疑惑がかかったかー」
達也は、そう言葉を口にするー。

自分の評判をあまりエゴサーチしない彼は
気付かなかったー。

”みほみほは女体化薬を使っている男なのではないか”と、
そう言われ始めていることをー

「つ…つーか、悠人のやつ、俺のファンなのかよ!?
 マジで勘弁してくれー」

そう思いながらも、今日は”コスプレ配信”だったなー、と
思いながら、服を着替え始めるー。

”女体化薬”の効果は10分ー。
確かにサイズは合わないが、元々達也は小柄な部類で、
”女体化する前に着替えること”は不可能ではないー。

少しきついが、先に着替えておきー女体化ー、
そのまま配信を開始しているー。
もっと自分がゴツかったら、先に着替えておくことは
服のサイズが合わずに、難しかったかもしれないー。

そしてー、
念のため、”9分30秒”までに配信を終えることを
自分の心の中で決めて、いつも配信しているー。

秒数を間違えたり、配信を終了するのに手間取って
ライブ中に女体化薬の効果が切れたら大変だー。

だがーーー…

”やっぱ今日も10分以内に終わったなー”
”みほみほちゃんってやっぱ、アレ使ってるんじゃね?”
”過去の動画見ても10分以上配信されてたものないもんなー”

スマホで、親友の悠人に言われた通り
ネットの”みほみほ”の評判を検索して見ると、
みほみほの正体を疑う声が色々と膨らんでいたー。

「ーーー……確かに、10分以上配信しないのは不自然かー」

女体化薬がある以上、10分以上配信を一度も行っていなければ
疑われるのは無理もないー。

”どうするー?”
達也は表情を歪めるー。

”9分ぐらいで一回カメラの前から姿を消して、
 もう1回女体化薬を飲んで配信を続行するかー?”

達也はそう考えるも
「いや、それじゃ、より不自然だろー…」と
自分でツッコミを入れるー。

9分ぐらいで姿を消して女体化薬を飲んで戻って来れば、
疑われている以上、誰だって”あ、コイツ女体化薬をおかわりしに行ったな”と
思うだろうー。

とは言えー…

「ーーー…”女体化薬”は効果が切れてから飲むように書いてあるしな…」
達也は表情を歪めるー。

女体化薬を再度使う場合には”一度効果が切れてから”
飲むように推奨されているー。

女体化された状態から”戻る前に”飲んでしまうことは
危険とされていて、かつてそれで事故が起きたこともあるー。

「ーー…ま、まぁ、とにかくー」
達也は配信用のメイド服に着替えると、
「男のままで着るときっついんだよな」と、表情を歪めながら、
そのまま配信を開始するために女体化薬を飲もうとしたー。

達也は一人暮らしー。
配信する環境としては何も問題はないー。

実家では流石に”女体化配信”は難しいし、
この方がやりやすいー。

「ーーーよし、女体化薬の準備OK、
 カメラに映る背景もOK、ゲームの準備もOKー」

配信を開始する直前に、達也はメイド服姿のまま
準備OKを確認すると、
そのまま女体化薬を飲もうとしたー。

「ーーーえ………ーーー」
突然、横から女の声がしたー。

「ーーは!?」
ビクッとして達也が横を見るとー…
そこには、実家で暮らしているはずの妹・詩音(しおん)の姿があったー。

「ーーえ………な……何着てるのー?」
ドン引きな表情を浮かべる妹の詩音ー。

「ーーは……???え????」
メイド服姿の達也は、慌ててノートパソコンを閉じて、
慌ててゲームのコンセントを引っこ抜くと、
そのまま「な、な、な、なんでここにいるんだよ!?!?!?」と、
表情を歪めるー。

「ーーえ~~?お兄ちゃんにサプライズで会いに来たんだけどー」
詩音の言葉に、達也は真っ青になりながら

「いや、連絡かせめてノックぐらいしろよー
 何無断で入って来てー…

 ってか鍵はー!?」

と、必死に叫ぶー。

「鍵?あ~、前に泊まりに来た時にこっそり合鍵を作っちゃった!」
詩音がテヘッと笑うー。

「ーーあ、あ、合鍵!?勝手に作るなし!」
そう叫ぶ達也ー。

「ーーー…お、お兄ちゃんって、もしかしてーー…」
詩音がそんな言葉を口にするとー、
”女体化配信者だとバレるわけにはいかねぇ!”と、パニックになった達也は
慌てて叫んだー。

「ーお、お、お、俺、実は女装が好きなんだー!
 ははっ!ははははははっ!」

とー。

その言葉に、驚いたような様子を浮かべる詩音ー。

がー、詩音は、にこっと笑いながら
「そっかぁ~!意外と可愛いじゃん!」と、
予想に反してあっさりと女装を受け入れてくれたー。

「で……な、何で急に俺のところに来たんだよー」
メイド服姿のまま、達也がそう言うと、
詩音は「あ、うんー。お兄ちゃんってさー」
と、そう言葉を口にしたー。

続けて、詩音の口から出て来た言葉は、
達也にとって恐ろしい言葉だったー。

「ーー”みほみほ”って知ってるー?」

「ーーはい?」

放心状態で答える達也ー。

まさか”兄”である達也自身が
その”みほみほ”だとは死んでも言えないー。

そう思った達也は
「し、し、し、知らないな~!ははっ」と、
死んだ目でそう答えたー…。

②へ続く

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コメント

10分だけ女体化できる女体化薬が
出回っている世界のお話ですネ~!

続きはまた明日デス~!
今日もありがとうございました~!☆

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