<MC>きみに嫌われたい①~別れ~

彼は、その力を使って、
人々から嫌われることを望んだー。

あえて、”嫌われていく”彼の目的とはー…?

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「ーーどうしたの?大事な話ってー?」

同じ大学に通う、彼女の向井 恵麻(むかい えま)が、
彼氏に呼び出されて、その場所へやってくるー。

”大事な話があるんだー”
そう言われて呼び出された恵麻ー。

しかし、その大事な話に心当たりがなく、
恵麻は期待半分、不安半分でこの場所へとやってきていたー。

「ーーあ、恵麻ー。急に呼び出してごめんー」
恵麻を待っていた彼氏の高山 芳樹(たかやま よしき)は、
そう言葉を口にすると、
振り返って、恵麻の方を見つめたー。

だが、話をするのを躊躇っているのだろうかー。
なかなか言葉を発さない芳樹の方を見て、
恵麻は表情を歪めたー。

「芳樹ー?」

恵麻と芳樹は、高校時代からの恋人同士ー。
最近、付き合い始めたばかりではないし、
お互いのことはよく知っているー。

「ーーーーーー…恵麻、ごめんー」
芳樹はようやくそう言葉を口にしたー。

「ーーー…え」
恵麻はイヤな予感を覚えるー。
それもそのはずー。

いきなり”ごめん”から始まる話は
きっと良い話ではないからだー。

案の定ー
芳樹は、とんでもないことを口にしたー。

「ー俺と別れてほしいー。今すぐ」
その言葉に、恵麻は「え…どうして?」と、そう言葉を口にするー。

思い当たることは、何もないー。
一体、何故ー?

「ーーー……どうして?いきなりそんなこと言われても納得できないよ!?」
恵麻はそう言葉を口にするー。

「ーーそうだよなー。
 でも、いきなり別れてほしいなんて言い出す彼氏、嫌だろ?
 嫌いになるだろ?

 だからー、別れてくれー」

そんな言葉に、恵麻は「む、無理だよ…!どうして?」と、
心底悲しそうに言葉を口にするー。

「ーーー……」
芳樹は「とにかく!別れてほしいんだ!」と、そう言葉を口にするー。

それでも、恵麻は納得せずに
「好きな人からいきなりそんなこと言われて、芳樹だったら納得できるの!?」
と、そう言葉を口にするー。

だがー、芳樹は「とにかく!」と、その一点張りー。

けれどー、恵麻も引き下がらず、
「ー理由もないのに、別れたくない!」と、そう反論しー、
結局、二人の話はまとまらなかったー。

「くそっー」
芳樹は、大学から家に向かって歩きながら、
表情を歪めていたー。

今日は彼女の恵麻にだけではないー。
親友の勲(いさお)や、実家で暮らす妹・涼香(りょうか)にも
同じようなことを言ったー。

”俺のことを嫌いになってくれー”
とー。

がー、親友の勲も、妹の涼香も困惑した様子で、
それを拒みー、
結局、誰からも嫌われることはできなかったー。

「ーーこうなったらー」
芳樹は、そう言葉を口にすると
帰宅すると同時に、”人から嫌われる方法”とネットで検索し始めたー。

するとー
”あるもの”が、目に入ったー。

それはー、
”人を洗脳する力を持つコンタクトレンズ”だったー。

”これさえあれば、相手に好きになってもらうことも簡単”
などと、サイトにはそう書かれているー。

だがー

”逆の使い方”をすればー。

焦った表情で、そう思いついた芳樹は
迷わず、そのコンタクトレンズを注文するのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーお世話になりました」

この1年以上、勤務していた”バイト先”の飲食店を
この日、退職した芳樹ー。

「ー気にすることなんてないのに」
店長がそう言葉を口にすると、
「いえ…」と、芳樹は申し訳なさそうに言葉を口にしながら、
頭をぺこりと下げたー。

真面目な性格の芳樹の突然の退職ー。
店長は引き留めを図ったものの、
その意思は固く、ついに今日、芳樹はそのまま退職したー。

ちょうどー、芳樹と親しかった先輩バイトも
今はとある事情で入院しており、
人手不足に悩まされているこの職場ー。

「ーーーーー」
店長は、心配そうに立ち去っていく芳樹の後ろ姿を見つめたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

後日ー。

”人を洗脳することができる”ー
そんな力を持つコンタクトレンズを手に入れた芳樹は、
彼女の恵麻を再び呼び出したー。

「ーーー…今度は何ー?」
拗ねた様子の恵麻ー。

「ーーーーこの前は、ごめんー」

”最後”に、謝っておきたかったー。

そう思いながら、芳樹がそう言葉を口にすると、
恵麻は「もうー…別れるなんて言わないでー」と、
涙目でそう言葉を口にしたー。

「ーーーあぁ…言わないよー」
芳樹はそう言葉を口にしながらー
”俺からは、言わない”と、内心でそう言葉を口にしたー。

そしてー
”人を洗脳するコンタクトレンズ”を起動させたー。

コンタクトレンズを装着済みの目が赤く光るー。

その光を見た恵麻がビクッと震えて
その場で虚ろな目に変わるー。

「ーーー恵麻はー…」
芳樹は、頭の中では恵麻に下す”命令”を既に思い浮かべながらも
一瞬、それを口にすることを躊躇するー。

けれどー…
ようやく気持ちの整理がついたのか、恵麻の方を真っすぐと見つめると、
「ーー恵麻ー…恵麻は、俺のことが嫌いだー。
 心の底から、関わりたくないぐらいに、君は俺のことが嫌いだー」
と、そう命じていくー。

「ーーー…わたしはーー…芳樹がーーきらいー」
虚ろな目のまま、そう言葉を口にする恵麻ー。

「ーそう。俺のことが嫌いで嫌いで仕方がないんだー」
芳樹はそこまで言うと、
恵麻の方を見るー。

「ーーわたしはー、芳樹がだいっきらいー…」
そう言葉を口にしながら、
虚ろな目をしている恵麻の目から涙がこぼれるのが見えたー。

洗脳されているはずの恵麻に、わずかな自我が
残っていたのだろうかー。

「ーーー」
そんな様子を見て、芳樹も目に涙を浮かべると、
「ーー俺のことが、とにかく嫌いなんだー」と、
恵麻の洗脳の仕上げとなる言葉を口にしたー。

全てが終わったー。
洗脳が終わり、コンタクトレンズのスイッチをOFFにするー。

すると、恵麻の目が輝きを取り戻しー、
芳樹の方を見つめたー

「ーーーーな…何見てんのー?」
恵麻が露骨に不快そうな表情を浮かべるー。

「あ、いやー」
芳樹がそう言うと、
恵麻は「キモいから近寄らないで!」と、罵声を浴びせて来たー。

「ーーわ、分かってるよー」
芳樹はそう言いながら、恵麻から離れるー。

恵麻を洗脳したのは自分自身だー。
”こうなる”ことも当然理解した上で洗脳したー。

しかしー、
実際に好きだった恵麻から、そんな言葉を投げかけられるのは
苦しかったー。

「ーーーそれとー!
 わたし、なんでアンタなんかと付き合ってたのか全然分からないけどー、
 さっさと別れてくれる?」

芳樹に対して、そう言葉を口にする恵麻ー。

さっきまで”別れたくない”と言っていた恵麻の面影は
もはや、そこにはないー。

「ーーわかった」
芳樹は振り返ってそれだけ言うと、恵麻は
「ーーこれからは、二度とわたしに話しかけないで。ウザいからー」と、
そう言葉を残して立ち去ってしまったー。

「ーーーー」
芳樹は、立ち去っていく恵麻の後ろ姿を見つめながら
小さい声で呟いたー。

”今まで、本当にありがとうー”
とー。

そしてー…
その日の恵麻の様子をこっそりと観察したものの、
”他の子”に対してはいつも通りの振る舞いで、
”洗脳による悪影響”は特に見受けられなかったー。

”これでいいー”
芳樹は、安堵するー。

自分が関わらなければ”それ以外”の部分は
洗脳の影響は受けていないし、
今まで通りの恵麻に変わりはないー。

「ーーー…元気でな」
芳樹はそれだけ言葉を口にすると、
”さてと、次はー”と、
親友である勲に対して連絡を入れたー。

「ーあ、俺だけどー
 今日、大学終わったあと、飯でもどうだー?」

芳樹のその言葉に、勲は”いきなりなんだよ?”と苦笑いしながらも、
それを承諾したー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーまた変なこと言うつもりじゃないだろうな?」

大学での1日が終わり、親友の勲と近くの
ファミレスに入った芳樹ー。

彼女の恵麻だけではなく、親友の勲にも
先日、同じようなことを言った芳樹は、
勲からも困惑の眼差しを向けられていたー。

「ーいや、もう言わないよー。悪かった」
芳樹がそう言うと、
勲は「何か悩みでもあるのかー?
お前の悩みなら、俺も力を貸すぜ?」と
ハンバーグを口に運びながら、そう言葉を口にするー。

「ーーーーーーー」
芳樹は一瞬、勲の方を見つめながら揺らいだー

だがーー

”いやー、ダメだー”
もう、どうすることもできないー。

”こう”なってしまった以上はー。

そう思いながら芳樹は
「ーちょっと疲れてただけだから、問題ないよ」と、
そんな言葉を口にしたー。

「ーならいいけどよー」
勲がそう呟くと、
その時だったー。

「ーーあ!恵麻!高山くんじゃん!」
そんな声が聞こえたー

”高山くん”とは、芳樹のことだー。

芳樹が、”え?”と思いながら振り返るとー、
最悪のタイミングで、友達二人とファミレスに入って来た
恵麻と遭遇してしまったー。

「ーーー…」
不快そうな表情を向けて来る恵麻ー。

恵麻はさっき、芳樹に”洗脳”されているー。
芳樹のことを嫌悪するようにー。

「ーーは?なんであんたがここにいるの?」
恵麻が敵意を剥きだしにするー。

「ーーえ?恵麻ー?」
恵麻の周囲にいた友達の一人が困惑の表情を浮かべるー。

「ーーあ…い、いやー…俺のことは気にしなくていいから」
芳樹は慌ててそう言葉を口にすると、
芳樹と一緒に食事中の親友・勲は戸惑った表情で、
「え…恵麻ちゃんと喧嘩でもしたのかー?」と、
小声で聞いてくるー。

「い、いやー、そのー」
芳樹は、まさか”恵麻に嫌われたいから、恵麻を洗脳したんだ”
なんて説明するわけにもいかず、戸惑いの表情を浮かべていると、
恵麻の方が口を開いたー

「ー他の店に変えよー。
 コイツいると不愉快だから」
恵麻は心底イヤそうな表情を浮かべるー。

恵麻の友達の一人が「な、何かあったのー?」と、
心配そうに尋ねるー。

「ーううん。別にー。いこっ」
恵麻はそれだけ言うと、そのまま友達と一緒に立ち去っていくー。

”芳樹のことが心の底から嫌い”になった以外は
いつも通りの恵麻で、友達に対していつものように
優しく笑っているー。

そんな姿を、恵麻の姿が見えなくなるまで
寂しそうに見つめていた芳樹ー。

「ーーーーえ、恵麻ちゃんのことで、悩んでるのかー?」
勲がそう言葉を口にすると、
芳樹は「いや…」と、寂しそうに苦笑いするー。

「ー俺が、望んだことだからー。
 これでいいんだー」

芳樹のその言葉に、勲は表情を歪めるー。

「ーーど、どういうことだよいったい…?」
勲がそこまで言うと、
芳樹は、自分が注文していたチキン焼きを全て食べ終えると、
穏やかな表情を浮かべながら、勲の方を見つめたー。

「ー今日は俺が全部払っとくよ」
芳樹が言うと、勲は「は?いや、いいよー」と、自分もお金を
出そうとするー。

だが、芳樹は寂しそうに、勲の方を見つめながら笑ったー。

「ー今まで楽しかったよ」
そう言いながら、”人を洗脳する”コンタクトレンズを起動するー。

目を赤く光らせた芳樹は
”俺のことを徹底的に嫌え”と、そう命令すると、
そのまま”洗脳”を終えて、伝票を持ちながら立ち去っていくー

「ーーーーーー…」
”洗脳”された勲は、「ーー…お、俺、何であんなクソ野郎と飯をー?」と、
表情を歪めるー。

勲が文句を言おうと立ち上がった時にはー、
既に芳樹は勲の分も含めて会計を終えて、
そのままファミレスを後にしていたー。

「ーーー」
ファミレスを出た芳樹は、一人寂しそうに
夜の街を歩くー。

彼女の恵麻ー、
親友の勲ー。

その二人に嫌われたー。
自ら、”洗脳”の力を使って、二人から嫌われたー。

「ーーーこれでいいー」
芳樹は、今一度寂しそうにそんな言葉を口にすると、
”次はー”と、そう言葉を口にしながら
そのまま夜の闇へと姿を消したー…。

②へ続く

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コメント

”洗脳”の力を手に入れたのに、
それを”嫌われるため”に使っちゃう…

そんなお話ですネ~!

どうしてそんなことをしているのかは、
明日のお楽しみデス~!

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MC<きみに嫌われたい>

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