彼は、タイムマシンと憑依薬ー
2つの夢の力を手に入れたー。
そして、彼は最悪なことを考え始めたー。
それはー…”憑依”で歴史を壊すことだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「この世界は”クソゲー”だ」
彼は、この世界に絶望していたー。
人間は醜いー。
世界は無情だー。
そう考えていた、
天才研究者・深山 修司(ふかやま しゅうじ)は、
今日、ある研究を完成させていたー
それはー
”タイムマシン”
「くくくっ…くくくくくっ!
ついに、ついに完成したぞ!」
修司は、まるで悪の科学者かのように
邪悪な笑みを浮かべながら叫ぶー。
「タイムマシンの完成だ!
これがあれば、どんな時代に行くことだってできる!
そう、どんな時代にでもだ!」
修司はそう叫ぶと、近くに置いてあった
”憑依薬”を手にした。
修司が2年前に完成させた、タイムマシンとは別の研究ー。
彼はかつては優秀な研究者だったー。
しかし、そのあまりの優秀者に、業界から”異端児”として恐れられて
表舞台から追放されたー。
それから彼は、異常な研究にのめり込むようになり、
そして、世界に絶望したー。
人間は醜いー、と。
「ーーククククク
ついに俺の夢が実現するときが来たー。」
修司は、そう言いながら憑依薬を手に、
完成したばかりのタイムマシンを起動させる。
彼の目的は”過去”に向かい、歴史を滅茶苦茶に壊すことー。
そのためのタイムマシンと憑依薬だー。
タイムマシンで過去へと赴きー、
憑依薬で歴史を改変するー。
今の世の中は、間違っているー。
彼は過去の歴史を滅茶苦茶にすることで、
今の世界を変えようとしていたー。
「ー世界がどうなっちまうかは知らないがー、
少なくとも今のクソみたいな世界よりはマシになるだろ」
修司は、それだけ呟くと
バイクのような形をしたタイムマシンに乗り込み、
変なデザインのヘルメットを装着する
「ーふははは!タイムマシン起動!
さらばだ現代!」
修司は笑いながらそう言うと、バイクのようなものからレーザーを発射ー、
開いた時空の裂け目に向かって走り出しー、
そのまま姿を消したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「なんだあの船はー!?」
「でけぇ…!」
江戸時代末期ー。
浦賀沖に巨大な船”黒船”が来航しー、
周囲は騒然としていたー。
「ーーいや、あれは何だ!?」
「こ、今度は何なんだ!?」
だがーーー
黒船で騒ぐ江戸の人々に、更なる衝撃が走ったー。
空から謎の穴が開きー、
そこから、バイクのようなものが飛び出して来たのだー
「こ、今度は空から人が!?」
「ーあ、あれは一体ー!?」
バイク型のタイムマシンで江戸時代にやってきた
修司は笑みを浮かべるー。
「クククーこれが江戸かー」
修司は、そう言葉を口にすると、
”時空を超えた俺自身は、時間を超えた存在ー。
たとえ、歴史が変わっても俺自身が消えることはないー”
と、笑みを浮かべるー。
そして、彼は”どんどん過去に遡って”
歴史を滅茶苦茶にしていくつもりだったー。
と、言うのも、先に戦国時代の歴史を改変した場合、
そのあとの”江戸時代”は、修司の知る江戸時代ではなくなるー。
そうなると江戸時代で行動しにくくなるし、
”何が起きるか”歴史上の出来事が把握できないために、
色々やりにくいー。
そのため、修司は”自分のいた時代”から、近い順に時代を巡り、
歴史を壊そうとしていたー。
「ーーさてとー…
徳川(とくがわ)とペリーには歴史の闇に消えてもらうか」
修司は、恐ろしい言葉を口にするー。
この時代、江戸を支配していた徳川幕府ー。
その徳川の当代を憑依の力により排除、
さらには黒船で来航したペリーも憑依の力で排除してしまえば
歴史は大きく変わるー。
「クククッ…大変なことになりそうだなー
でもまぁ、俺のいたあの時代はクソゲーだったし、
あれ以上クソになることもねぇだろ」
そう言葉を口にするとー、
修司は早速、憑依薬を口にして笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーあはははははっ♡
黒船来航~ 黒船来航ぉ~♡」
江戸の街では、町娘が侍から刀を盗んで、
無差別に人を斬り捨てていたー。
「ーあははははっ!あははははっ!
お前の子孫が、現代から消えるぅ~♡」
修司に憑依された町娘は、嬉しそうに
町を歩いていた飛脚の男を襲撃しながら、そう言葉を口にしたー。
「ーーーや、やめろ……お、俺にはーー…家族がー」
苦しそうにそう呟く飛脚ー。
この男を殺すことによって、”現代”で生まれるはずの人間が
消えるー。
そう思っただけで、町娘に憑依した修司は興奮したー。
飛脚を始末した憑依された町娘は、
続けて、近くの食事処に入ると、看板娘と店主を斬り捨てたー。
「うへへへへへへ!
お前たちの子孫も消えるぅ!!
子孫どもが消える瞬間、どうなってるのかも気になるなぁーへへ」
憑依された町娘は笑みを浮かべながら、満足そうに笑うー。
まずは、”憑依薬”のウォーミングアップー。
既に10人を斬り捨てたー。
これで、未来にもある程度影響が出ているだろうー。
一般人とは言え、本来、ここで死ぬはずのなかった10人が死んだー。
それは、未来に影響を与えるはずだー。
そしてー
「ークククー この女、子供がお腹の中にいるようだけどー」
町娘に憑依した修司は邪悪な笑みを浮かべると、
「この子供ごと、切腹してやるぜ」と、笑いながら自分の刀を突き立てたー。
周囲から悲鳴が上がるー。
修司は、生まれるはずだった子供ごと、憑依していた町娘の身体の
”後始末”を終えると、
「ー生まれるはずだった子が生まれなくなったぜー…!未来が壊れた!ひゃはは!」と、
嬉しそうに、霊体となって姿を消すー。
”さぁて、これからが本番だー。
俺は歴史を変えるぞー”
修司は、徳川家の重鎮の”妻”に憑依するとー、
その夫を誘惑し始めたー。
「ー徳川の時代は、もう終わりですー」
邪悪な笑みを浮かべる妻ー。
妻が憑依されているとは知らず、その男は
その気になってしまうー。
さらに、周囲の人間たちにも憑依を繰り返し、
反乱の機運を高めていく修司ー。
やがてー、徳川家に対する反乱が起きー、
江戸幕府は、本来、江戸幕府が終焉を迎えるはずの
大政奉還(たいせいほうかん)と呼ばれる出来事が起きる前に、
終わりを迎えてしまったー。
さらにーーー
「ーーククククー
この女の身体は、動きやすいぜー」
黒船に乗っていた女に憑依した修司は、
ペリーの元に向かうー。
そして、見つけたー
「おぉぉぉぉお…!お前が教科書で見たペリーか!」
憑依された女は嬉しそうに叫ぶー。
ペリーは表情を歪めるー。
女が、何を言っているのか、意味が分からなかったー。
「ー教科書の絵に似てるなオイ!
ああいう絵ってやっぱ、すごかったんだな」
修司に憑依された女はゲラゲラ笑うと、
そのまま”現代”から持ち込んだ
修司自身が開発した”猛毒”を、手に不気味な笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「クククククー」
十分に江戸時代を破壊した修司は、
”カモフラージュ”機能で、透明にしていたタイムマシンを起動させると、
再びバイクのような見た目のタイムマシンに乗り込むー。
江戸幕府は、予定よりもずっと早く壊滅しー、
本来、歴史に存在しなかった新たな幕府が誕生したー。
黒船は主を失い、日本を開国させることができないまま撤退ー。
しかし、ペリーが犠牲になったことで
恐らく、向こうは報復に出るだろうー。
「クククククー
変わっちまったな、歴史ー。」
修司は満足そうにそう言葉を口にすると、バイクに乗って
そのまま次の時代へと向かったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”戦国時代末期ー”
関ケ原の戦いが行われている時代にやってきた修司は、
早速、暗躍していたー。
「ーこの戦いー
小早川秀秋(こばやかわひであき)が東軍に寝返って敗北しますー」
修司は、大名の娘に憑依して、
”占い師”を名乗り、そう言葉を口にしていたー。
関ケ原の戦いとは、
徳川家康率いる”東軍”と、石田三成率いる”西軍”が争った戦いー。
本来の歴史では、東軍の方が勝利し、
その後、江戸幕府の誕生へと繋がるー。
その戦いの勝敗を分けたのが、小早川秀秋なる人物の裏切りで、
西軍の方につくはずだった小早川秀秋が、西軍を裏切り東軍についたことで
形成は大きく傾き、結果的に東軍が勝利したー。
だがー、修司は”憑依”によって、
それを覆そうとしていたー。
”西軍の方が勝っちまったらー変わっちまうなー。歴史ー”
修司はそれだけ
呟くと、どうにかして歴史を改変しようと笑みを浮かべるー。
”歴史を改変”すれば、後の時代にも影響を与えるー。
先日、江戸時代の歴史を変えてきた故に、
”それ以降の歴史”は大きく変わっているはずー。
しかし、修司は”徐々に古い時代に向かっている”ために、
その影響を今は実感することはない。
江戸時代の歴史を変えても、江戸時代より前に起きた
関ケ原の戦いには何の影響もないのだからー…
「ーークク…まぁ、ここで俺が歴史を変えたら
江戸で俺が取った行動は意味がなくなるがー
じっくり、じっくり歴史を変える楽しみを
味合わないとなー」
大名の娘の身体でそう呟く修司ー。
勝手に城から抜け出して、怪しい格好に着替えて
”占い師”を名乗り、西軍の有力な武将に接近したー。
「ーわたしは未来から来た者ー
小早川はこのあと裏切り、このままでは西軍は
敗北しますー」
娘の身体で、そう呟く修司ー。
意味のない水晶玉を手にしながら、そう言葉を口にするー。
が、西軍の大名の一人は、怪訝そうな表情を浮かべながら
言葉を口にするー
「その根拠はあるのか?
小早川殿を疑うのであれば、相応の根拠が必要であるぞ?」
その言葉に、
「わたしは、未来から来ましたー。それが何よりの証拠」
と、そう言葉を返したー。
だがーー
「ええい!そうして小早川殿に疑いの目を向けさせて
我らを疑心暗鬼にさせる戦術だなー?」
西軍の大名は、修司の言葉を信じなかったー。
「ーチッ」
娘の身体で舌打ちをすると、
”この曲者をひっ捕らえろ!”という声を聞きながら
その娘の身体から離脱したー。
占い師の格好をしたまま、気絶した女が
そのまま兵士たちに連行されていくー。
”頭の固いやつめー
まぁいいさー
俺はいくらでも身体を乗り換えることができるー
歴史を変えることに恐れなど必要ないー”
修司はそう思いながら、
”歴史の本で読んだ限りだと、もうじき小早川が裏切るタイミングだな”と
心の中で呟くー。
”本来の歴史通り、西軍が東軍に敗れてしまうのを防ぐためには、
やはり小早川の裏切りを阻止しなければならないー”
「ーーー…!」
修司は、ふと笑みを浮かべるー。
”できれば男には憑依したくなかったが、仕方がないー。
そろそろ関ケ原の戦いが動くときー。
もう時間はないし、”あの手を”使うしかないなー”
早速思いついたことを実行に移す修司ー。
「ー我らが攻めるのはーー」
修司は、味方であるはずの西軍を攻めることを宣言し、
今、裏切ろうとしていた小早川秀秋本人に憑依したーーー
そしてーー
「ー我らが攻めるのは東軍だ!」
と、そう叫んだー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
すぐに、憑依から抜け出し、修司は
その行方を見守るー。
憑依された状態で”東軍を攻める”と宣言してしまった小早川秀秋は、
正気を取り戻したあとも、一度動き出してしまった以上、
もう止めることは出来ず、”裏切る”選択肢はなくなってしまったー。
歴史の資料で読んだ彼の性格上、
ここから”やっぱり西軍を攻めるぞ”とはならないと、修司は確信していたー。
「ーークククー歴史が変わったなー」
戦場にいた女忍者に憑依して、戦場を生の身体で見つめる修司ー。
小早川秀秋が西軍を裏切らなかったことにより、
徳川家康率いる東軍は崩壊ー。
本来、勝利するはずだった関ケ原の戦いで、徳川家康は敗れ去りー、
その後、石田三成が率いる西軍が、徳川勢を駆逐したー。
「ーークククク…ククククー」
女忍者に憑依したまま、嬉しそうに笑う修司ー。
数日後ー、
敗走していた徳川家康は捕らえられてー、
本来の歴史とは異なるタイミングで、その命を散らしたー。
「ーこれで、江戸時代はやってこないー」
修司は笑みを浮かべると、
「さらばだ江戸時代ー」と、そう呟きながら
隠していたタイムマシンー…
バイクのような形をしたそれに跨り、
そのまま、”次の時代”に向かって走り始めたー。
②へ続く
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コメント
なりふり構わず、
憑依で歴史を破壊していくお話デス~!
こういう目的の人が
タイムマシンと憑依薬を手にしてしまうと、
恐ろしいですネ~笑
今日もありがとうございました~!
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