”救済”と称して、
人々を皮にし、自分の息を吹き込み、
邪悪な存在へと変えていく男ー。
その男によって、日常が壊されていくー。
・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーいい子 いい子ー」
大学を終え、辺りが暗くなり始めた時間帯ー。
川辺で、捨てられた猫を見つけた萌々奈は、
猫の頭を撫でながら、穏やかな笑みを浮かべていたー。
尚道と同じ大学に通う彼女は
見た目はギャルのような感じで、派手なものの
心根は、優しいー。
だがーーー
「ーーーーー」
そんな彼女を偶然見つけた男ー…
”剛”は笑みを浮かべたー。
「ーーーククククー 優しいなー。
だがー”優しさ”はいずれ破滅を招くー」
剛はそう言葉を口にすると、
萌々奈は「はぁ?何よアンタ!?」と、不満そうに振り返ったー。
しかしー
剛は、義手から萌々奈に”針”のようなものを発射すると、
萌々奈を皮にして、笑みを浮かべたー。
萌々奈を着て、邪悪な笑みを浮かべて見せる剛ー。
そして、十分に萌々奈の悪人顔を楽しむと、
皮を脱いでから、萌々奈の中に”息”を吹き込んだー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーお疲れ様ですー」
バイト先の書店にやってきた尚道ー。
がー、尚道が来るまでの時間、シフトに入っていた
フリーターの女性バイト・梓(あずさ)が困惑した表情を浮かべながら
尚道の方に近付いて来たー。
「ーー今日、店長、滅茶苦茶機嫌悪いから、気を付けてー」
とー。
「ーーえ?」
尚道が戸惑うー。
店長の優子は、どんなに忙しい時でもバイトにも優しく接するような
そんな人だー。
その彼女の”機嫌が悪い”とは、いったいどういうことなのだろうかー。
「ーー多分、昨日の朱音ちゃんの件じゃないかな」
バイトの梓はそう解釈したのか、そんな言葉を口にすると
「じゃ、わたしはさっさと帰らせてもらうね」と、
逃げるようにして、そのまま立ち去ってしまったー。
「ーーーーーーー」
尚道は、不安そうに事務所の方に入っていくと、
店長の優子の姿が見えたー
尚道は、不安そうに店長の優子に挨拶をすると、
「あぁー、浅沼くんー」と、尚道の方を見て
言葉を口にしたー。
「ーー大丈夫ですかー?」
昨日の、バイトの朱音がお金を盗んで姿を消した件に
触れると、優子は「ーー別に、浅沼くんに心配して貰わなくても大丈夫だから」と、
そう言葉を口にしたー。
やっぱり、梓の言う通り、何だか棘のある感じだー。
「ーーーどいて。邪魔」
事務所のイスから立ち上がった優子は、尚道に対して
そう言い放つと、そのままレジの方に向かっていくー。
いつものように、仕事をこなしていく優子ー。
不安に思いながら、尚道も準備を終えて
事務所から出て、店の方に向かうー。
検品中の商品を手に、作業を始めようとすると、
店長の優子が言葉を口にしたー。
「ーあ、いいから、触らないで」
優子の言葉に、尚道は「え?あ、あぁ、すみませんー」と、
申し訳なさそうに言葉を口にするー。
仕方がなく、検品作業をやめて別の作業をしようとしたその時、
事務所の方から電話が鳴る音が聞こえたー。
店長の優子は接客中ー。
尚道が電話に出ようとすると、「ーでなくていい!」と、
優子が少し声を荒げたー
「え…で、でもー」
尚道は戸惑うー。
電話を無視しろ、と言ってるのだろうかー。
少し驚いた様子のお客さんに対して、接客をし始める優子ー。
電話はなおもなり続けているー。
流石に、”出れるのに無視するのは悪い”と思った尚道は
戸惑いながらも、電話に出るー。
すると、優子はそんな尚道の動きを横目で見ながら、
舌打ちをしたー。
やがて、接客が終わった優子が、事務所にやってくると、
「出るなって言ったでしょ!」と、怒りの形相で声を荒げたー
「ーーす、すみませんー でも、店長は接客中だったのでー」
電話を終えた尚道がそう言うと、
「口答えしないで!店長はわたしなんだから!命令に従ってよ!」と、
ヒステリックに声を荒げながら、店長の優子は言ったー。
「て、店長ー…?」
尚道は不安そうに店長を見つめるー。
その後も、優子は”全てを自分でやろうと”するような素振りを見せ、
尚道が仕事をしようとすると、キレ散らかしたー。
さらにはー
「ーこの本、おすすめなんですよ~」
高齢者のお客さんに、役に立たない本を言葉巧みに売り始める優子ー。
接客が終わった優子に、そのことを指摘すると、
「ーーいい金づるでしょ?」と、邪悪な笑みを浮かべながら
言葉を口にしたー。
「て…店長ー…ど、どうしちゃったんですかー…?」
尚道が、困惑の表情のままそう言葉を口にすると、
店長の優子は「ーわたし、生まれ変わったのー」と、不気味な表情で
言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ふぅっー」
優しそうな女を皮にして
”吐息”を吹き込んだ剛は、その女を人間に戻すー。
「ーーククー彼氏、浮気してるんだろう?
ボコボコにしてやれ」
剛が言うと、
彼氏の浮気に悩みつつも、それでも彼氏に優しくしていた
女が「ーアイツ…ぶっ殺してやるー」と、
鬼のような形相で呟きながら立ち去っていくー
「ーーククククー」
だがー、その時だったー。
「ーー今、何をしていたー?止まりなさいー」
パトロール中だった警察官に”人を皮にする”場面を
目撃されてしまったー。
剛は、ため息をつきながら笑みを浮かべると、
「ーー”救済”」と、そう答えるー。
「ーき、救済ー?何を言っている?」
戸惑う警察官ー。
すると、剛は”義足”を使って物凄い跳躍力を見せつつー、
警察官の目前にまで迫ったー。
突然の出来事に、咄嗟に発砲する警察官ー。
だがーー。
確かに”剛”の身体に命中したはずの銃弾が、
剛に弾かれてその場に落下したー
「な、な、何だお前は!?」
警察官が声を上げると、
剛は右手の義手を変形させて、笑みを浮かべるー。
「ー”真面目な人間はバカを見る”ー
その結果が、これだー」
剛は、それだけ呟くと、警察官に謎の液体のようなものを発射して、
そのまま消滅させてしまったー。
何事もなかったかのように立ち上がる剛ー。
義手ー
義足ー
そして、片目は義眼でー、
身体の半分以上を”機械”で補っているー。
銃弾が命中した場所も”機械”だったために剛に銃は効かなかったー。
「一人でも多くの人間を、俺は”救う”ー」
剛は、笑みを浮かべながらそう呟くと、そのままその場を後にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「は~~~~~~~~~~~…」
帰宅した尚道は大きくため息をつくー。
「あははー今度はどうしたの?お兄ちゃん?」
妹の咲が、そんな兄・尚道を見て笑うー。
「ん~~?今日は何か店長がおかしくてさ~」
尚道が愚痴を言うと、
咲は「え~?店長さんっていつも言ってる優しい人でしょ?」と、
首を傾げるー。
「そうなんだけどー…なんか、今日は滅茶苦茶ピリピリしててさ」
尚道のその言葉に、咲は気の毒そうに笑うと、
「ーバイト先で店長の機嫌が悪いと、やりにくよね~」と、
そんな言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌朝ー
「ーーーえーーー…」
大学に到着した尚道は、呆然としていたー。
高校時代からの知り合いで、ギャルのような風貌の萌々奈から、
突然、奇妙なことを言われたのだー
「ねぇ…いいじゃん?今日、大学が終わったら
あたしと遊ぼー?」
萌々奈の言葉に、尚道はドキッとしながらも、
「い、いや、どうして急にー?」と、そう言葉を口にするー。
萌々奈が、いきなり大学が終わったらホテルに行こう、と
そんなことを言い出したのだー。
「ーーふふふふー
あたしに何をしてもいいからさー
ふふふー」
萌々奈の言葉に、尚道は戸惑うー。
”ククククー…
ホテルに連れ込んで、アンタからも金を巻き上げてあげるー”
萌々奈は内心でそんなことを思うー。
昨日、剛と遭遇して吐息を吹き込まれてしまった萌々奈は、
すっかり悪女に豹変していたー。
「き、急にどうしたんだよー…」
尚道は、只々困惑した表情を浮かべながら、
萌々奈の方を見つめるー。
萌々奈は確かに、ギャルのような感じの子ではあるものの、
見た目によらずしっかり者だったし、こういうことはしない子のはずだー。
…少なくとも、尚道はそう思っていたー。
「ーーー……そ、そういうのはさー…
なんて言うかー…そう、勢いで決めるようなことじゃないだろ?」
尚道が戸惑いながら言うー。
すると、萌々奈は露骨につまらなそうに舌打ちをすると、
「つまんない男ー」と、吐き捨てるように言い放ったー
「ーーーもういいよ。別の男とヤるからー」
萌々奈の言葉に、尚道は「な、何かあったのかー?」と、
心配そうに言葉を口にするー。
「ーー別にー
ただー…ふふー…今日はとてもいい気分なだけー」
萌々奈が邪悪な笑みを浮かべながらそう言葉を口にするー。
尚道は、困惑しながら
そんな萌々奈の後ろ姿を見つめることしかできなかったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーークククー…
ご苦労だったなー」
夜ー。
剛が、笑みを浮かべながらそう言葉を口にすると、
怯えた表情の女子大生が目の前に立っていたー。
「ーーふふふ
夏帆(かほ)、すっごい真面目でいつも頑張ってる子だからー
悪い子にしたら、滅茶苦茶ゾクゾクすると思うのークククー」
尚道のバイト先の女子大生・朱音が笑みを浮かべるー。
朱音は髪型も服装も、悪人風に変わってしまいー、
すっかり別人のような雰囲気になってしまっているー。
「ーーあ、朱音ー…?」
朱音に”騙されて”この場所に連れて来られたのは、
朱音と同じ大学に通う女子大生・夏帆ー。
剛から”大学に俺の吐息を吹き込むのに、ぴったりな奴がいたら連れてこい”と
言われた朱音は命令通り、夏帆を連れて来たのだー。
”剛の息”を皮の中に吹き込まれた人間は、
剛と同じく、憎悪、憎しみ、あらゆる負の感情に満ちー、
悪事をこなすことにも何も感じなくなるー。
そしてー、
”剛の息”であるが故に、剛には絶対服従を誓う人間になってしまうー。
「ーーあ、朱音ー…な、何これー!?」
剛の義手から飛び出した針に突き刺され、
まるで”空気”が抜けていくようにしぼんでいく夏帆ー。
「ーふふふふふー
夏帆もわたしと同じように、悪い子になろ?」
歪み切った笑みを浮かべる朱音ー。
この大人しそうな顔立ちの子が
ここまで表情を歪められるのかと、剛はニヤニヤしながらそれを見つめるー。
”ーーあんたは、所詮”使い捨て”の備品ー”
邪悪な笑みを浮かべてー”そう言い放ったあの女”を思い出すー。
剛は、ニヤリと笑いながらー、
”俺がこうなったのは、あんたのおかげだよー”
と、心の中でそう呟きながら、
皮になった夏帆に息を吹き込むー。
そして、夏帆を人間に戻すー。
「ーークククーこれでまたーーー」
剛がそう言葉を口にしたその時だったー。
ガタッー…
「ーーー?」
剛が、背後を振り返るー。
するとそこにはーー
路地裏で行われていた”悪魔のような光景”を、
偶然目撃してしまった尚道の妹・咲の姿があったー。
学校のあと、バイトを終えたその帰りー。
咲はいつも、”この路地裏を抜けると、近道”と、
あまり人の通らないこの場所を通っていたー。
がーー
そのせいで、”災い”と遭遇してしまったー。
「ーーーーぁ…」
”見てしまった”咲が怯えた表情を浮かべるー。
「ーーふふふ…見たの?」
尚道のバイト先の女子大生だった朱音が
冷たい声でそう呟くー。
「ーーー…ひっ…?」
咲がそのまま逃げ出すと、
剛は笑みを浮かべながら、朱音に対して
「捕まえろ」とそう言葉を口にすると、
朱音は「わかったー」と、静かに頷きながら、
咲の後を追い始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
♪~~~~
「ーーん?」
今日も、バイト先の店長・優子のピリピリした態度に
違和感を感じながらもバイトをしていた尚道ー。
その休憩時間に、妹の咲から電話が入ったー。
「ーもしもし?どうした?咲ー」
尚道がそう言葉を口にすると、
咲の声が聞こえて来たー
”お兄ちゃん!助けて!”
とー。
「ーー!?」
その言葉に、スマホを握る尚道は驚いた様子で
「何かあったのか!?」と、そう叫び返したー。
③へ続く
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コメント
次回が最終回デス~!☆
次々と悪堕ちしてしまう人々…★
ぜひ結末も見届けて下さいネ~!
今日もありがとうございました~!☆
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