ある日ー、
落雷が直撃してしまった男子大学生は、
目覚めた時には”女”になっていたー…
そんな彼の運命は…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーくそっ…急にゲリラ豪雨とか…ついてないぜ!」
男子大学生の西原 貞夫(にしはら さだお)は、
うんざりした様子でそう呟くと、
空を見上げたー。
突然のゲリラ豪雨ー。
つい1時間前までは晴れていたはずなのに、
今ではそんな光景が夢だったのではないかと思ってしまうほどの
強い雨に、雷鳴が轟いているー。
「ーまぁ、この時期は仕方ねぇよ」
大学の構内から外を見渡すのは、貞夫の親友・
久坂 友則(くさか とものり)ー。
「ま、すぐにやむだろうし、
向こうでどうだ、バトルでも?」
カードゲーム仲間でもある友則が笑いながらそう言うと、
貞夫は「いやー」と、そう言葉を口にしたー。
「ーー俺、今日バイトがあってー…」
貞夫の言葉に、友則は「あぁ…バイトかー。災難だな」と、
外の様子を今一度見つめるー。
「俺だったら、とりあえず腹が痛てぇことにして休むけどな」
苦笑いする友則ー。
貞夫は笑いながら
「俺はお前と違って真面目なんだよ」と、冗談めいた口調で言うと、
「ま、傘がありゃなんとかなるだろ」と、折り畳み傘を手に、
そのまま外に向かおうとするー。
朝は晴れていたため、いざという時のために
鞄に忍ばせている折り畳み傘以外の雨具は持っていないー。
「おいおいおいおいーそんな装備で大丈夫なのかよ」
友則が揶揄うようにして言うー。
「ーーへへー。問題ないってー。
多少濡れてもなんとかなるさ」
貞夫はそう言うと、折り畳み傘を開いて
そのまま外に飛び出し、走り出すー
「あ~あ…ありゃ濡れるぞ絶対」
友則がそれだけ呟いて、”とりあえず俺は休憩スペースで時間を潰すか”と、
出入口に背を向けようとしたその時だったー。
恐ろしいほどの激しい光と、
轟音が響き渡り、友則はビクッとするー。
特別、雷が苦手なわけではないが、
流石に今の雷は距離が近かったー。
物凄い轟音に驚きながら、
外を振り返るとー…
「ーーーえ」
友則は思わず、声を上げるー。
つい数秒前に、建物から外に出た親友・貞夫の持っていた
折り畳み傘が、地面に横たわっているー。
そして、その先には貞夫が倒れているー。
「ーーーさ、さ、さ、貞夫!?」
友則は思わず声を上げて、
雷が鳴っていることも忘れて外に飛び出す。
「お、おい!貞夫!おいっ!
くそっ…」
意識がない状態で倒れている貞夫ー。
「ー誰か!コイツ、雷に打たれたかもしれねぇ!手を貸してくれ!
それと救急車も!」
友則がそう叫ぶと、周囲にいた学生たちもすぐに力を貸してくれてー、
貞夫を一旦、外から建物内まで運びー、
程なくして救急車も到着したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーー……ぅ……」
雷に打たれて意識を失っていた貞夫が目を覚ますー。
「ーーー………?」
”ここはー?”
そう思いながら、貞夫が周囲を見渡すー。
貞夫からしてみれば、一瞬の出来事ー。
自分が雷に打たれたという自覚がないまま、
雷に打たれて意識を失い、
今、意識を取り戻したー。
混乱するのも無理はないー。
がーーー
それ以上に大きな”混乱”が、貞夫を待ち受けていたー。
「ーーー…!」
貞夫は、目の前に知らない女がいて、こちらを見ていることに気付くー。
「ーーえ…ぁ!?だ、誰…?」
貞夫がそう言うと、貞夫は驚いた様子で、
自分の喉元に手を触れたー。
「ーーえ…な、なんか声が変だぞー…?」
戸惑う貞夫ー。
まるで女みたいな声が出ているー。
一体、自分に何が起こったのだろうかー。
そう思いながら、
目の前にいる女に対して、
「ーーここ、病院ー…? 俺、まだ目を覚ましたばっかりで
ちょっと状況が分からなくてー」と、
そう確認するー。
しかしー…
返事はなく、
目の前にいる女は、貞夫が喋るのに合わせて
口をパクパクとさせているー。
「ーー…ん?え?喋れないのー?」
貞夫がそう確認するー。
目の前にいる女が口をパクパクさせているものの、
自分自身の”女みたいな変な声”しか聞こえてこない状況に、
貞夫はそう思ったのだー。
がー、
すぐに貞夫は”あること”にも気づくー。
「…って、これ…鏡…?」
貞夫の目の前にいる”女”は、
鏡に映っている女だったー。
つまりーー
「ーーえ…」
貞夫は唖然としながら、自分の手をあげたり、
動かしたりしてみるー。
鏡に映っている女も、貞夫と同じ仕草をしてみせるー。
「ーーえ……
こ、こ、こ、これ、俺ー!?!?!?!?」
そうー、
目の前にいる女だと、そう思っていた相手はー
”鏡に映っている自分自身”だったのだー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーそれで、お前は無事助かったんだけど、
雷に打たれた影響で、女体化しちまったんだとさー」
貞夫が目を覚まして数時間後ー…
親友の友則が、貞夫が意識を取り戻したと聞いて
病院に駆けつけてくれたー。
「ーーマ、マジかー…」
雷に打たれたことが何らかのきっかけとなって、
貞夫は女体化してしまったー…
医師から聞いた説明を、友則は女体化した貞夫に
直接伝えたー。
「そ、それで、俺は男に戻れるのか?」
女体化した貞夫が可愛い声で言うと、
「その見た目と声で、お前の喋り方されると何かドキドキするなー」と、
友則は少し揶揄うようにして言葉を口にするー。
「ーーか、揶揄うなよー」
女体化した貞夫がそう言い放つー。
「ーへへーでもまぁ、実際、元々お前のこと知らなきゃ
好きになっちゃいそうなぐらい可愛いと思うけどなー」
友則はなおもそう言葉を口にすると、
「ーそれにほら、その姿なら色々おしゃれしたりとかも、
できるんじゃないか?」と、ニヤニヤしながら、
言葉を口にするー。
「ーーははーー」
女体化した貞夫は苦笑いをするー。
がー、友則はひたすら冗談めいたことを口にしていて、
貞夫はどんどん顔色を変えていくー。
親友の友則は”都合が悪いこと”があると、
妙におしゃべりになって、本題に触れさせないようにするー、
そんな癖があるのだー。
「ーーー…な…なぁ…もしかしてー…」
女体化した貞夫が言うと、
友則は「ん? ははーいやいや、大丈夫ー。俺はお前が女になっても、
お前のこと、そういう目で見たりはしないから、これまで通りー」と、
さらに会話を続けるー。
しかし、女体化した貞夫は、その言葉を遮ったー
「ーーなぁ、教えてくれー。
俺は”男に”戻れるのか?」
女体化した貞夫が、さっきよりもハッキリとした
強い口調で再度確認するー。
「ーーーーー…そ、それはー」
すると、友則は表情を曇らせたー。
「ーーき、きっと、戻れるさ!」
友則の言葉に、女体化した貞夫は悟るー。
「ーーはは…そうかー、戻る方法が分からないってことだな?」
貞夫の言葉に、友則は心底申し訳なさそうに、
「ーーー……そうらしいー」と、そう言葉を口にしたー。
女体化した貞夫は、呆然と病室の外を見つめるー。
雷に打たれて助かったー
それは、奇跡だと思うし、
命拾いしたことは素直に嬉しいー。
もしもあのまま死んでいたら、自分は何も分からないまま
あの世行きになっていただろうし、
それを考えれば、こうして再び目を覚ますことができたのは、
嬉しいー。
けどーーー
「ーーー……」
自分の胸を見つめながら、
表情を歪めるー。
胸を揉む気にもならなかったー。
”朝、起きたら女になっていたー!”みたいな、
そんな漫画を読んだこともあるがー、
漫画のように、喜んで胸を揉んだりする気にもならないー。
「ーーー…ーーー……」
女体化した貞夫が険しい表情を浮かべていると、
やがて、友則は言葉を口にしたー。
「ーま、まぁ、ほらーー、
名前、ちょうどいいじゃないか!
”貞夫”を女子っぽい名前にしたら、そのー”貞子”になるしさー
なんか、それっぽいじゃん?」
友則が元気づけようと、必死にそんな言葉を口にするー。
がー、貞夫が全く笑わないのを見て、
友則は「なんかー…すまんー」と、申し訳なさそうに頭を下げたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
貞夫の身体には女体化した以外の大きな異常はなく、
貞夫は無事に退院したー。
病院側からも状況を説明され、
大学側も、貞夫が女体化してしまったことを理解ー、
とりあえず、”女体化した状態の貞夫”を
これまで通り扱うことにして、大学へと復帰させたー。
「ーーーーはぁ」
昼の時間帯ー。
女体化した貞夫はため息をつきながら
大学内の学食で昼食を済ませていたー。
「ーははは、どうしたー。ため息なんてついて」
親友の友則がやってくると、
貞夫は「ーー周りのやつらがさ、変な目で俺を見るんだよー」
と、そう言葉を口にするー。
「ーん?あぁ~…まぁ、雷に打たれて性別が変わるなんて
珍しいからなぁ…
でも、まぁ、みんなそのうち慣れて来るんじゃないか」
友則がそう言い放つと、
貞夫は「いやぁ…そうじゃなくてさ」と、首を横に振ったー。
「ーーシンプルに言えばー…
俺のこと、”エロイ目”で見るやつが多くてさ」
女体化した貞夫は自分の髪を触りながら
うんざりした様子でそう呟くと、
友則は「あ…あぁ…そっちかー」と、戸惑いの表情を浮かべるー。
「ーー女になったとは言え、俺は俺だぜ?
元男をエロイ目で見るなんてー…
俺には理解できない」
貞夫がため息をつきながら言うー。
貞夫は、大学に復帰した当初、
「身体は女になっちゃったけど、別に気にしなくていいから」と、
周りの友達に言いまわっていたー。
がー。
貞夫は良くても”周囲”はそうじゃなかったー。
興味本位で胸を触らせてほしいと言ってくる者もいればー、
なんだか妙にイヤらしい視線を向けて来たり、
挙句の果てに「お前、エロくね?」などと直接言ってきた者もいたー。
「ーーま、まぁ…そういう奴らもいるんだろなー」
親友の友則は少し戸惑うー。
友則自身は、貞夫が女体化したあとも
本当に”今まで通り”の振る舞いをしていたー。
しかし、友則以外の友人のほとんどは
”そう”ではなかったー。
女体化した貞夫を前に、”今までとは違う反応”を見せる友達が
想像以上に多かったのだー。
「ーー少なくとも、俺はお前のことそういう目で見たりしないから
安心しろって」
友則がそう言葉を口にしながら、貞夫の肩を今まで通りに
ポンポンと叩くー。
がー、女体化した貞夫は一瞬ビクッとするような反応を見せたー。
「ーーえ?あ、あぁ、悪いー」
友則が少し戸惑いながら言葉を口にすると、
「あ、いやー…」
と、女体化した貞夫は、そう言葉を口にしたー。
二人で昼食を食べながら、
貞夫は困惑した表情を浮かべるー。
”俺を見る目が変”ー
さっきは、確かにそう言ったー。
だが、無意識のうちに自分も”女子”のような振る舞いをー、
今までとは違う振る舞いをしてしまっているのではないか、と、
今、友則に肩を触られた際に、そう思った貞夫ー。
「ーーーー…やべっ……」
貞夫は、ふとラーメンを食べながら苦笑いするー。
「どうした?」
友則は、自分の昼食のカツ丼を食べながら
少しだけ首を傾げるー。
貞夫は「ふぅ」と、ため息をつくと、
「女になって、胃袋が小さくなったのかなー。
もう、満腹でー」と、苦笑いしながら
まだ3分の1ぐらい残っているラーメンを食べる手を止めたー。
”今までの調子”でついつい大盛を注文してしまったのだー。
「ーーま、まぁ…そういうことは少しずつ慣れていこうぜー?
あんま、焦るなよ?」
友則は心配そうにそう言葉を口にするー。
しかしー…
女体化した貞夫は、日に日に”女体化した自分”に強い不安を
抱くようになっていったー…。
<後編>へ続く
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コメント
頭の中でお話が浮かんだものの、
”実際に書く”までに至らず、長い間私のネタストックで
眠っていた作品デス~笑
今回、ようやく毎週1回だけ予約投稿の火曜日枠で
書くことにしました~!
続きはまた来週になってしまいますが、
(火曜日の作品は、火曜日に続きを書きます~!)
気長に待っててくださいネ~!
今日もありがとうございました~!☆
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