一人の少年と二人の少女は、
小さい頃からいつも一緒の幼馴染。
しかし、いつしか二人はその一人の少年に恋をしていた…。
そんなある日、二人は
”入れ替わりのおまじない”の存在を知って…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー凛(りん)!こっちこっち!」
とある高校の昼休みー。
活発そうな男子生徒・勝谷 良太(かつや りょうた)は、
友達たちとサッカーを楽しんでいたー。
そんな良太が、男子たちに混じってサッカーを遊んでいた
幼馴染の少女・朝木 凛(あさぎ りん)に対して
そう声をかけるー。
「オッケー!あたしに任せておいて!」
活発な性格の彼女は、得意気な表情で良太の狙いを読み取り、
そのまま相手のゴールを目指すー。
二人は、お互いに小さい頃から相手をよく知る間柄。
それ故に、相手の考えていることは手に取るようにわかるー。
がーー
「ー凛!危ない!うしろ!」
良太がそう叫ぶー。
相手チームの男子が、凛の想像よりも早く、背後から凛に
迫って来ていたー。
そしてー
「あっ!?」
相手チームの男子にボールを取られてしまう凛ー。
そのままボールは相手チームの手に渡り、
残り30秒ー、逆転のチャンスを失って
良太や凛たちのチームは敗北してしまったー。
悔しそうな表情を浮かべる凛ー。
”昔”は、男子たちよりも早かったー。
でもー…だんだんと”性別の差”が生まれる年齢になってきて、
自分より運動神経が良い男子も増えてきて、
こういうことも増えたー。
負けず嫌いでもある凛は「ーーあぁ、こういう時だけ男子になりたい!」と、
そう叫びながら、良太の方にやってくると、
「ごめん、良くんー。あたしのせいでー」
と、そう言葉を口にしたー。
「はははー気にすることないってー。
俺だって途中ミスしたし。」
凛の肩をポンポンと叩きながら
良太は、自分のミスも口にし、
少しでも凛が気にしないように、配慮の言葉を口にするー。
良太と凛は昔から仲良しの幼馴染同士ー。
活発な性格の凛は、小さい頃からよく男子に一緒に混じって
良太と遊んでいたー。
お互いに異性…というよりは”親友”という感じの間柄ー。
平気で冗談を口にしたり、憎まれ口を叩き合ったり、
二人にとって同性以上に本音で話し合える友達だー。
「ーーーあ、ボールは俺が片付けておくからー」
良太がそう言いながら、そのままボールを倉庫の方に持って行き始めるー。
そんな良太の後ろ姿を見つめながら、
凛は少しだけ寂しそうな表情を浮かべるー。
凛は、いつしかー
良太に恋心を抱いていたー。
けれどー、
良太と凛は”親友”のような間柄であり、”幼馴染”ー
今更恋愛関係に発展するような状態とは思えないー。
少なくとも、良太は凛のことを”親友”として見ていて
”異性”として意識しているようには思えないー。
他の女子には触らないのに、凛に対してだけは
平気で、男子相手と同じように肩をポンポン叩いたり、
凛が良太にイタズラを仕掛けると、平気で頬を引っ張ってきたり、
そういう”友達同士の悪ふざけ”のようなものをしてくるー。
きっと、良太からすれば”性別関係なく、親友”ということなのだろうー。
だからこそー
凛は、良太への想いを、良太に打ち明けられずに
ここまで来ていたー
いやーー…
理由はそれだけではない。
”もう一つ”の理由の方がむしろ大きいー。
昼休みが終わり、5時間目の授業が始まる前ー、
良太は、近くの座席の女子生徒・
深森 美鈴(ふかもり みれい)と、何やら話をしていたー。
「あ~これは、うんー。全然これで大丈夫だと思うけどー」
スポーツ万能…なだけではなく良太は頭もよくて、
しかも成績もよいー。
勉強も、スポーツもできて、人望もあるー。
幼馴染ながら”完璧”と言えるような、そんな男子生徒だったー。
「ーーこんな感じでいいかな?」
良太が、美鈴に何やら教え終わると、
美鈴は嬉しそうに微笑みながら「うんー…良太くん、いつもありがとうー」と、
穏やかな口調でお礼の言葉を口にするー。
美鈴はー
”凛”と同じく”良太”の幼馴染ー。
良太・凛・美鈴の三人は小さい頃から学校がずっと一緒で、
家も近かったことから、固い絆で結ばれているー。
美鈴は大人しくて引っ込み思案ー。
可愛い小物集めが趣味の、凛とは正反対の女子生徒ー。
小さい頃から身体も弱く、いじめられるようなこともあったけれど、
その都度良太が「やめろよ!」とか「美鈴の髪を引っ張るなら俺の髪を引っ張れ!」とか、
何かある度に美鈴のことを守っていたー。
「ーーごめんねー頼りっぱなしでー」
美鈴が恥ずかしそうに笑いながら言うと、
良太は「全然ー。迷惑だなんて思ったことないよ」と、
優しく返しながら、そのまま自分の座席の方に戻っていくー。
そんな良太の方を微笑みながら見つめる美鈴ー。
美鈴もーーー
”良太”のことが好きだったー。
凛が”良太”に告白できない最大の理由はそれだー。
凛は、美鈴も良太が好きであることに気付いている。
”親友”としての色が強すぎて異性として見られていないー。
それだけなら、告白していたかもしれない。
でも、美鈴も良太のことが好きである以上、
凛は、良太に告白できずにいたー。
”あたしが告白すればー…”
凛は、思うー。
きっと、良太を困らせてしまうし、
美鈴は悲しむー、と。
良太と付き合えることになった場合、
美鈴の性格を考えると、
”わたし、邪魔者かなー?”とか、
そんな展開になってしまう気がするー。
だからこそ、凛は良太に告白できずにいた。
そしてー…
”美鈴”も実は同じだったー。
”凛ちゃんを差し置いて、わたしが告白するなんて…できないよぉ…”
美鈴は、心の中でそう呟くー。
大人しく、引っ込み思案な性格の美鈴も、良太に
告白したいと考えて勇気を振り絞ろうとしたことは
あったものの、
美鈴自身も、”凛”が良太のことが好きなことは
それとなく理解していたー。
三人は幼馴染ー
言葉はなくとも、何となくわかってしまうのだー。
その結果ー
美鈴も凛も良太のことが好きー。
でも、二人とも告白できない、という状況が続いていたー。
ただー、良太自身は
異性からの好意にはとても鈍感で、
きっと美鈴と凛から”恋愛感情”を持たれていることには
気付いていない。
そんな状態だったー。
がーー
そんなある日ー
「ーーーえっ!?ヤバッ!?何これ!?」
自宅で、”恋のおまじない”について何となく調べていた凛が
驚いて声を上げるー。
スマホの画面に表示されていたのは
”入れ替わりのおまじない”
「ーー…好きな男の子が、自分以外を好きな場合は
その子と身体をとりかえちゃえ…!?」
凛が、画面に表示された文章を見つめながら
「ーーあははは…それ、ただの略奪じゃんー」と、
ツッコミながら、そのまま画面を閉じようとするー。
がーーー…
ふと、凛はあることを思うー。
”良太”はいつも、
凛にはまるで親友として接しているー。
しかし、美鈴に対しては接し方がまた全然違うー。
それにー、
もしも本当に入れ替わることができたらー……
「ーーー…美鈴のフリして、あたしのことどう思ってるか聞けちゃったりー?」
凛は、そんな言葉を口にすると、
少し考えてから、”おまじない”のやり方をメモしようと
スマホの画面を見つめたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー。
「凛ちゃんー…話ってー…?」
美鈴が、凛から呼び出された空き教室にやってくるー。
すると、
凛は突然、言葉を口にしたー。
「ー前に美鈴、
”わたしも、良くんと一緒にサッカーとかやってみたいなぁ…”って
言ってたよね?」
とー。
身体が弱く、男子と一緒に混じってスポーツをやるような機会もない美鈴からは
時々、”凛”が羨ましく見えたー。
確かに、そういうことを言った記憶もあるー。
「う、うんー。」
美鈴が頷くと、凛は「わたしと美鈴の身体ー…少しの間、交換してみないー?」と、
昨日見かけたサイトを見せながら言葉を口にするー。
「ーえ…えぇ…?」
美鈴は思わず、戸惑いの表情を浮かべるー。
「ーーわ、わ、わたしが、凛ちゃんにー?
そ…そもそも、そんなこと、本当にできるの?」
美鈴は少し遠慮がちに笑うと、
凛は「まだ試してないからわからないけどー」と、した上で、
「もしも、あたしと美鈴が入れ替われたら楽しそうじゃん?」と、
まるで少年のように笑うー。
「ー美鈴はあたしみたいに、良くんとサッカーしたり、
あたしは美鈴みたいに良くんと勉強したり?
普段と違う良くんが見れちゃうしー
面白そうじゃない?」
凛の言葉に、美鈴は「ーーーそれはー…面白いかも…」と、
少し興味ありそうに微笑むー。
凛は「じゃあ決まりね!」と、言いながら
サイトに書かれた通り、おまじないを始めるー。
変な踊りに、変なポーズ、変な呪文みたいなやつー
書かれた通りにおまじないを使い始める凛ー
「ーーーーーーー」
美鈴はぽかんと口を開けたままその様子を見つめるー。
「ーー……」
凛も、手順通り変なポーズをしながら、
「そ、そんな目であたしを見ないで!?」と、
死んだ目で凛を見ている美鈴の方を見返しながら笑うー。
「ーーご、ごめんー
で、でも、なんかー…… うんー」
美鈴は苦笑いしながらそう呟くー
こんなもので、本当に入れ替われるのー?と、
とても心配になってしまうほどに、
奇妙な動きー…。
凛も、手順通りにしながら
”絶対これ嘘でしょ!?サイトの管理人、コロス!”と、
心の中で思いながら、呪文のような言葉を続けるー。
「バナナ バナナ おにぎり バナナー」
凛は表情を歪めながら”このおまじないのサイトの管理人、絶対ぶっ飛ばす”と、
心の中で思っていると、次の瞬間ー、突然めまいがしてーーー
ーーーー
ーーーーーー
「ーーあ~~!おまじないのやつ、ぶっ飛ばす!!!」
凛が、何となくそう叫ぶとー、
”声”がいつもと違ったー
「ーー!?!?!?!?」
自分のような騒がしい感じの声ではなく、
どこか人をリラックスさせるような、そんな穏やかなボイスーー。
「ーーえっ!?」
凛が思わず目の前を見ると、
凛の目の前にはー…”凛”の姿があったー
「ーーえっ!?」
おまじないを唱えながら奇妙なポーズをする凛を
可哀想なものを見る目で見ていた美鈴も、”何が起きたのか”分からずに
戸惑いの表情を浮かべるー。
「ーーえっ!?ヤバッ!あたし、マジで美鈴に!?」
「ーう、嘘…?ほ、本当に凛ちゃんにー…?」
ふざけたおまじないだったもののー
”効果”は、本当だったのだー。
凛と美鈴は、驚いた表情を浮かべながら
互いの目を見合わせると、
「ほ、ホントに入れ替わった!?」と、そんな言葉を口にしたー。
スマホを操作しながら、サイトを確認する美鈴(凛)ー。
しきりに髪を邪魔そうに手で払いのけているー。
「う~ん、いつも髪、邪魔じゃない?」
美鈴(凛)がそう言うと、
凛(美鈴)は、短めの凛の髪を触りながら
「わたしは逆にー…落ち着かない感じー」と、恥ずかしそうに笑うー。
そんな会話をしながら
「あ!あった!」と、そう言葉を口にした美鈴(凛)ー
入れ替わりのおまじないのことが書かれたサイトの説明を
読んでいた美鈴(凛)は、文章の中に
”入れ替わり後は、一定期間で元に戻ります”と、そう書かれていたー
「一定期間っていつだよ!あ~もう、やっぱこのサイトの管理人、ぶん殴る!」
美鈴(凛)は、そう言うと、
凛(美鈴)は、「わ、わたしがいきなり乱暴に…」と、苦笑いするー。
「ーと、とにかく、しばらくすると元に戻るみたいだから、
それまであたしが美鈴として、美鈴があたしとして
過ごす感じでいいー?」
美鈴(凛)が、そう言うと、
凛(美鈴)は「う、うんー。大丈夫」と、そんな言葉を口にするー。
二人とも、幼馴染同士。
お互いのことはよく知っているし、特に”分からないこと”は
あまりないー。
困ると言えば……
「ーーやっほ~~!何話してんの?」
美鈴(凛)が、教室に戻ると同時に、いつも仲良くしている
別の女子の肩に腕を回しながら平気で絡むー。
「ーー!?!?!?!?」
”大人しい美鈴”の突然の行動に驚くクラスメイトー。
「ーーー……~~…」
大人しく座席に座った凛(美鈴)を見て、凛の友達の一人が
「え?ど、どうかしたー?」と、心配そうに声をかけるー。
困ると言えばー
”相手のことを分かっていても、いつものように振る舞えるかどうか”は
別問題なことだったー…。
「ーーー?」
何も知らない二人の幼馴染・良太は、
自分の座席から、そんな二人の様子を見つめると「?」と、
首を傾げたー。
②へ続く
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コメント
特典による飛龍様から頂いたリクエスト内容を元に
書いた作品デス~!
(※一般のリクエスト受付はトラブル防止のため停止しています~ごめんなさい!)
どんなリクエストを頂いたかは、最終回のあとに
お見せするので、それも楽しみにしていて下さいネ~!
(①のあとに見せるとネタバレしちゃう部分もあるので~笑)
今日もお読み下さりありがとうございました~~!
※名前の公表等の許可は頂いています~!
勝手に公表しているわけじゃないですからネ~★!
コメント
時代は入れ活のその後お願いします
コメントありがとうございます~!★
スケジュールは既にある程度決まっているので、
気長に待っていて下さいネ~!★!