学校内で噂される
”ドッペルゲンガー”…。
その噂に隠された真相とは…?
”知ってはならない真実”にたどり着いた彼女の運命は…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーね…ねぇねぇ…た…大変なんだけどー」
朝ー。
学校にやってくると由美の友人・克枝が
真っ青な顔をしながら、そんな言葉を口にしつつ
駆け寄って来たー。
「ー大変?何かあったの?」
昨日聞いた”ドッペルゲンガー”の話など、
冗談半分にしか聞いておらず、もう半分忘れていた由美は
首を傾げながらそう応じると、
克枝は教室内をキョロキョロと見渡しながら
「き、昨日のドッペルゲンガーの話なんだけどー」と、
そう言葉を口にしたー。
「ーーええ…?まだその話してたの?
ドッペルゲンガーなんて、都市伝説でしょ?」
そんな言葉を口にする由美ー。
が、克枝は焦った様子で今日はもう登校している”梨花”の方を
ちらっと見つめると、
「ひ、昼休みに…!昼休みに時間あるー!?」と、
この教室ではなく、別の場所で1対1で話し合いたい、と
そう言葉を口にしたー。
「ーーー…? べ、別にいいけどー
な、何ー?」
由美は戸惑いの表情を浮かべるー。
また、いつものように、よく分からない非現実的な
都市伝説の話でもされるのだろうかー。
そんなことを思いながら、由美は克枝の方を見つめるー。
しかし、克枝の顔色は真っ青で、
いつものような元気が嘘のように消え失せてしまっていたー。
「ーだ、大丈夫?」
「ーう、うんー…」
克枝は弱弱しくそう返事をすると、
そのまま自分の座席へと戻っていくー。
「ーー何を話していたの?」
にこっと微笑みながら、座席に戻った克枝に声をかける梨花ー。
ビクッとした克枝は
「え…?え~っと、都市伝説ー」と、笑うと、
梨花は「ふふー”ドッペルゲンガー”のこと?」と、笑みを浮かべながら
そう言葉を続けたー
「ーう、う、うんー…」
克枝は震えていたー。
昨日ー…
隣のクラスの”美彩”が、”ドッペルゲンガー”に襲われて
”成り代わられる”のを見たー。
遠くからだったから”良く見えなかった”ものの、
男らしき人物が美彩に変身してー、
本物の美彩が”急に消滅ー”
そのまま、偽物の美彩…”ドッペルゲンガー”とも言うべきその存在が
立ち去っていくのを確かに見たのだー。
実際には、本物の美彩は”アリ”にされた上で命を奪われているものの、
遠くからだったため、克枝はそこまでは理解できていなかったー。
が、いずれにせよ”恐ろしい光景”を彼女は
目撃してしまい、青ざめていた。
「ーーわたしー、あまり”ドッペルゲンガー”のこと
嗅ぎ回らないほうがいいと思うよ?」
梨花がいつものような穏やかな口調ながらー、
少し脅すような雰囲気でそう言葉を口にするー。
「ーーえ…… あ…う、うんー」
ゴクリと唾を飲み込む克枝ー。
”梨花”がドッペルゲンガーに成り代わられるのを見たのは
克枝ではなく、美彩だがー、
昨日、美彩が襲われる場面を目撃した克枝は
恐らく、”この梨花も”既に今までの梨花ではないと確信していたー。
「ーーふふふふ。知らない方がいいことも
世の中にはたくさんあるから、 ね?」
”ね?”だけ、妙に低い声で言うと、
梨花はそのまま自分の座席に戻っていくー。
克枝は”もしかしたらわたしも狙われちゃうかも”と、
冷や汗をダラダラと流しながら、
いつまでも止まらない手の震えを抑えようと、
必死に自分の手を掴んだー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
昼休みー
「ーーーそれで、話って?」
由美が教室にやってくると、
克枝は焦った様子で、「ど、ドッペルゲンガーを見たの!」と、
そんな言葉を口にするー。
「ーえ?え?どういうこと?」
戸惑う由美ー。
「ーだ、だから、見たの!ドッペルゲンガー!」
克枝がそう言葉を口にすると、
由美は「ーちょ!ちょっと!落ち着いて!意味が分からないよ!」と、
克枝を落ち着かせようと言葉を口にするー。
やがて、克枝は怯えた表情を浮かべたまま
”昨日見た”光景を口にし始めるー。
隣のクラスの後藤 美彩が帰りに
謎の男と遭遇したことー。
その男が美彩の姿に何らかの方法で変身したことー。
偽物の美彩に本物の美彩が追いかけ回されて最後には消滅してしまったことー。
それらを、全て告げたー。
「ー…た、たぶん あれが最近噂になってる
”ドッペルゲンガー”の正体だと思うー」
克枝がそう言い放つー。
幽霊でも、精神分離でも、幻覚でもなくー、
”誰かが他人の姿に変身して、本物を消して成り代わってる”ー
それが、この近辺で噂になっているドッペルゲンガーの真実ー。
しかし、由美は首を横に振るー。
「そんなこと、あり得ないでしょー…」
とー。
「ーう、嘘じゃないよ!ホントなんだってばー」
克枝がそう言い放つとー。
由美は頭の中で考えるー。
「うーーーーん」
由美はそう言いながら、考え込むような仕草を見せていると
克枝は怯えた様子で空き教室の外を確認し、
梨花や美彩ー、”ドッペルゲンガー”に成り代わられたと思われる子たちが
近くにいないかを確認するー。
「恐らく、後藤さんが襲われたのはわたしのせいー。
わたしが、”梨花”に後藤さんのこと言っちゃったからー」
克枝が責任を感じるかのようにそんな言葉を口にするー。
”梨花を襲われるのを後藤さんが見た”と、
昨日、梨花本人にそう伝えてしまったことで、
口封じのために美彩は襲われたのだと、
克枝は強い責任を感じていたー。
「こ、このままだと、わたしも襲われちゃうかもしれないしー
ど、どうにか…で、できないかなー?」
克枝が涙目でそう言葉を口にするー。
「梨花も、後藤さんも助けたいしー」
克枝の言葉に、由美は苦笑いするとー、
「この話、まだ他の誰にもしてない?」と、心配そうに言葉を口にするー。
ようやく、由美にもことの深刻さを理解して貰えたのだろうかー。
「う、うんー。誰にも!」
克枝がそう言うと、由美は少し安心した様子で
「ー克枝の言う話が本当なら、誰が”ドッペルゲンガー”か分からないし、
あまり誰にも話さない方がいいと思うー」と、
そんな言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その夜ー。
克枝は、怯えた様子で周囲をキョロキョロしながら
歩いていたー。
”自分も、昨日の美彩と同じようになってしまうのではないか”
そんな、不安ー。
”ドッペルゲンガー”の都市伝説の正体ー。
少なくとも、今、学校周辺で噂になっているドッペルゲンガーの正体は
幽霊的なものではなかったのだろうー。
しかし、”会えば死ぬ”ということには変わりはない気がするー。
だって、”本物の美彩”は昨日、目の前で消滅したのだからー。
「ーーー…」
怯えた様子で雨の中、傘を手に歩いていると、
背後から「克枝!」と、そんな声が聞こえたー。
ビクッとして振り返る克枝ー。
そこには友達の由美の姿があったー
「ーあ、な、なんだ…由美ー」
克枝が安堵の表情を浮かべると、
由美は「ちょっとーー大変なの…」と、不安そうな表情を
浮かべながら、「こっちー…」と、裏路地の方を指差したー
「え…ど、どうかしたのー?」
克枝が不安そうに言うと、由美は
「ーーとにかく来て!」と、裏路地の方に入っていくー。
「ちょ、ちょっと待ってよ!由美!」
そう言いながら、後を追って裏路地に入ると、少し進んだ場所で
由美が笑みを浮かべながら振り返ったー。
「ーー克枝のこと、わたしー、好きだったから
”消したく”なかったんだけどー。
ついに”見ちゃった”んだねー」
由美がそんな言葉を口にするー。
克枝は「え…?」と、呆然としていると、
突然、”由美”の姿が、”男”の姿に変形したー
「ーーひっ!?!?!?!」
驚いて尻餅をつく克枝ー。
傘を落とし、雨に濡れるのも忘れて”由美”から変化した男を見つめるー。
「ー”他者に変身する石”を使って変身ー
本物を始末して、本物に成り代わって、新しい人生を送るー。」
由美だった男はそう言い放つと、
「ーーなかなか最高な経験でねー。
俺みたいなクズでも、女子高生として新たな人生を送ることができたー。
この”1年近く”
友達の”由美”が、本物から偽物に変わっていたことに気付かなかっただろ?」
男はそう言うと、再び”石”を光らせて”由美”の姿に戻るー。
「ーーど…どういう…こと…?」
震える克枝ー。
「ーー去年、本物の由美は俺に始末されて、この1年間はず~っと、
俺が”由美”として過ごしてたんだよー」
由美が邪悪な笑みを浮かべるー。
「ーーーう……う、嘘…?」
克枝が恐怖心から、ガクガクと震えるー。
「ー海外で手に入れた”石”を使って、こうして女子高生に成り代わったら
最高だったからさー。
それからはホームレスとか、犯罪者とか、自分の人生を捨てて
新しい人生を手に入れたいやつらにこれを貸して、
”新しい人生”を与えてやってたんだー。
既にー、学校に”10人近く”はいるかなぁ…
クククー」
由美の言葉に、克枝は震えるー。
”友達”だと思っていた由美こそ、
ドッペルゲンガーの都市伝説の元凶ー。
”梨花”や”美彩”に成り代わった男たちに
変身の石を渡したのも、由美に変身して1年近く過ごしているこの男ー。
克枝が、隣のクラスの”美彩”が”梨花”が襲われている場面を
目撃した、と発言してしまった結果、
美彩が狙われることになったのも、”由美”の前でそれを
発言してしまったからー。
”後藤さんはウソをつく性格ではないからー”と、本当に目撃されたと悟った
由美が、”新しい人生を望む男”の一人を呼び出し、
美彩を襲わせたのだー。
「ーーー…すごいでしょ?
姿だけじゃなくて、記憶までコピーできるから
克枝もわたしがいつ”偽物”になったのか、分からなかったでしょ?」
由美が、自分の頭をつんつんと指でつつきながら
揶揄うようにして笑うー。
「ーー………ほ……本物のみんなは、どこにー…?」
克枝があまりの恐怖に、逆に冷静になってしまいながら
そんな言葉を口にするー。
「ーーふふ」
由美は少しだけ笑うと、克枝の方を見つめたー。
「”本物”が、どうなったのかはこれから
教えてあげるー。
”克枝自身の身”でー。」
由美はそう言うと、
「ーわたし、克枝との”女子高生友情ごっこ”好きだったのになぁー
でも、都市伝説好きの克枝には、いつか気付かれる気はしてたよー。
だからー、教室であれだけ”何かの見間違え”って言って、
克枝が、”真実”に近付かないようにしてあげようと思ってたのに」
と、心底残念そうに言葉を付け加えたー。
「ーーー…ま、いいやー。 おいーそろそろいいぞ」
由美が、路地の奥に向かってそう叫ぶと、
待ち伏せしていたホームレスの男が姿を現すー。
「へへへーこれでホームレス卒業だぜ」
ホームレスの男がそう言い放つと、由美から”石”を受け取り、
その石を光らせると、男の姿が克枝の姿に”変身”していくー。
「ーーーー……っ…」
克枝は、あまりの恐怖に言葉を失うー。
この地域で”噂”になっていた”ドッペルゲンガー”の正体は
これだったのだー。
心霊現象でも、幻覚でも、嘘でもないー。
”他人に変身する力”を使う者たちのせいで、そういう噂が
立っていたのだー
「ーへへ いいのか?」
克枝になった男が言うと、由美は頷くー。
そしてーーー
石を、克枝の方に向ける偽物の克枝ー。
「ーゆ、由美…やめて!たすけて!」
克枝は、由美の方に向かって助けを求めたー。
がー、由美は
「ーごめんねー。克枝」とクスッと笑いながら
そのまま助ける素振りを見せることはなかったー。
克枝が”アリ”の姿に変わっていくー。
由美は、”アリになった克枝”に、向かって
「ーこれが”本物”の末路ー。分かったでしょ?
本物の梨花は踏みつぶされて、
本物の美彩は引きちぎられたー。
だから、二人とももうこの世にいないー」
と、そう説明するー。
そしてーー
「ーでも、あなたは友達だから特別ー」
由美はそう言い放つと、”アリになった克枝”を手で掴んで、
不気味な笑みを浮かべたー。
「ーーおいおい、マジかよー」
となりにいた”克枝に変身したホームレス”が、引いた表情を見せる中、
由美は”アリになった克枝”をそのまま”食べて”、邪悪な笑みを浮かべたー。
「ーーんふふふふふふふふ
これが”友達の味”かぁ」
由美はそう言いながら、克枝だったアリをかみ砕くと、
それを飲み込んでから”変身石”を受け取り、そのまま夜の闇へと姿を消していくー。
この地域の
”ドッペルゲンガーの都市伝説”ー
そこには、触れてはならない恐るべき真相が隠されていたのだったー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
恐ろしい結末に…☆!
不気味な都市伝説には、
触れないほうが身のため…☆
…なのかもしれませんネ~!
お読み下さりありがとうございました~!
コメント