”ドッペルゲンガー”
自分そっくりのその存在と会うと”死”が訪れるー。
その話に隠された真相とはー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーはぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
制服姿の少女が、一人、恐怖に表情を歪めながら
”何か”から逃げていたー。
「ーーー…ふふふふふふふふふ…」
逃げている少女を追っているのも制服姿の少女ー。
「ーーー…ひ……」
逃げている方の少女は、慌てた様子で物陰に隠れるー。
彼女は部活で帰りが遅くなっていた今日ー。
出会ってしまったのだー。
”ドッペルゲンガー”
とー。
自分と同じ姿をしている少女が、
笑みを浮かべながら彼女を探している。
最近、この町では
”ドッペルゲンガー”の噂が度々囁かれていた。
自分と同じ姿をした”それ”と遭遇したら
命を奪われるー、というそんな”噂”だー。
しかし、それを本気にしている人間は少なく、
彼女も学校で友達と笑い話にしていたぐらいだー。
ドッペルゲンガーの”噂”は
都市伝説でしかない、と、誰もがそう思っていたー。
だがーー
「ーーふふふふふふ 隠れても無駄だよー
早く出ておいでー」
”ドッペルゲンガー”が、そう言葉を口にするー。
「ーーー…」
ガクガクと震えながら身を隠し続ける少女ー。
しかし、”ドッペルゲンガー”の足音が
次第に近付いてくるー。
そしてーー
「ーみ~つけた」
にっこりと笑みを浮かべる”自分自身”ー
彼女は思わず悲鳴を上げたー。
「ーあははは、そんな怖がらなくてもいいじゃんー。
大丈夫ー。
今日からわたしが梨花(りか)として
生きて行ってあげるからー」
”梨花”と呼ばれた少女は震えながら「た…助けてー」と、
そう呟くー。
「ーーふふふふふふふー」
”梨花”のドッペルゲンガーは笑いながら、”何か”
光を放つものを手にすると、
本物の梨花の姿が突然、
”アリ”の姿に変わっていくー
”えーーーー…?”
アリにされてしまった梨花は、突然視界の高さや
身体の感触が変わったことに驚きを露わにするー
がーーー…
次の瞬間ー
”強い衝撃”を感じて、”本物の梨花”は何も感じなくなったー
「ーーふふふふふふふふふ♡」
”梨花”のドッペルゲンガーは、笑いながら
”梨花だったアリ”を踏みつぶし、その足をぐりぐりと動かしながら笑うー。
「ーー今日からわたしが梨花ー」
邪悪な笑みを浮かべながら、そう呟いた”梨花のドッペルゲンガー”は、
そのまま夜の闇へと姿を消したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数日後ー
「ーねぇねぇ、知ってる?”ドッペルゲンガー”の噂ー!」
噂好きの女子生徒・克枝(かつえ)が、笑いながら
そんな言葉を口にするー。
「ーあははは…何それ?また変な都市伝説ー?」
克枝の友人でクラスメイトの由美(ゆみ)が、そう言葉を
口にすると、
克枝は「”変”とは失礼な!」と、ぺしっと由美を叩きながら
言葉を続けるー。
「ー最近、出るんだってー
このあたりに”ドッペルゲンガー”がー!」
ニヤニヤしながらそう言い放つ克枝ー。
「ーーえ~?何それ~?
ドッペルゲンガーって、あの自分と同じ姿をした
お化けみたいなやつのことでしょ?」
由美が笑いながらそう言葉を返すと、
克枝は「そうそう!それ! それでねー!」と、
ウキウキした様子で話を続けるー。
「ードッペルゲンガーに遭遇すると、
命を落としちゃうんだって!」
克枝がそう言うと、
由美は苦笑いしながら「ーさすがにそんなことないでしょ~?」と、
冗談めいた口調で言うー。
「ーーでもでも、”この前”、
バイトの帰りに見た子がいるの!
”梨花”が、二人いて、一人がもう一人に
追いかけられているのをー」
克枝の言葉に、
由美は思わず「梨花ってー…うちのクラスのー?」と、
今日はまだ登校してきていない梨花の座席を見つめながら言うー。
「うんうん!
それでねー、二人の梨花が物陰に入って行って
見えなくなったあとー、
その子がしばらく見てたらー、
”梨花が一人だけ”出て来たんだってー」
克枝のそんな言葉に、
由美は「えぇぇ…それ、絶対何かの見間違えでしょ?」と、
ツッコミを入れるー。
しかし、克枝は「そんなことないよ~!本当に見たって言ってたもん!」と、
そんな言葉を口にするー。
「え~?ないない、
大体誰から聞いたの?」
と、由美が笑いながら言うと、
克枝は「隣のクラスの後藤(ごとう)さんだよー」と、
そんな言葉を口にしたー。
後藤ー。
隣のクラスにいる後藤 美彩(ごとう みさ)のことだろうー。
「ーー後藤さんかぁ…」
由美は、そんな言葉を口にするー。
”後藤さん”は真面目な性格で、
とても嘘をつくようなタイプじゃないー。
克枝が、”ドッペルゲンガーを見た”と言う話を聞いた相手が
その後藤さんなのであれば、
頭ごなしに”嘘”だと否定することはできないような、
そんな気もするー。
由美がそんな風に思っていると、
「ーーおはよ~何の話?」と、突然声を掛けられて、
由美はビクッとして振り返ったー。
そこにいたのはーーー…
たった今、克枝から話を聞かされた
”ドッペルゲンガー”が現れて、それに追いかけられていたという
クラスメイト・梨花だったー。
「ーーーあ、あ、…梨花!お、おはよ~!」
由美が苦笑いしながらそう言葉を口にすると、
克枝は平気で「ーあ、梨花!”ドッペルゲンガー”って知ってる?」と、
その本人にもドッペルゲンガーの話題を聞き始めてしまうー。
「ーーーちょ、ちょっと!本人にまで言うの?」
由美が小声で克枝を止めようと、そんな言葉を口にするも、
都市伝説好きの克枝は面白そうに、
「梨花、最近”自分のドッペルゲンガー”と会ったりしなかった?」
と、そんな言葉を口にしてしまうー。
「ドッペルゲンガー?」
梨花はそう言いながら首を傾げて見せるー。
「ーーーー」
由美は、そんな梨花の姿を見つめるー。
そういえば、数日前から少しー…
ほんの少しだけ、梨花が派手になったような、
そんな感じがするー。
どこが変わったのか?と言われると具体的に
答えることができないような”ほんの小さな変化”だし、
克枝からあんな話を聞いたせいで、そう思ってしまう
だけかもしれないけれど、
どうしても違和感を感じてしまうー。
「なんか、梨花が”もう一人の梨花”に追いかけられてる
場面を見た子がいてさ~」
克枝がさっきと同じ説明を”梨花本人”にも、笑いながら言うー。
「ーもしかして、今、わたしの目の前にいる梨花は
本物じゃなくて”ドッペルゲンガー”のほうだったりしないよね?」
と、ケラケラ笑いながら克枝は言葉を続けるー。
「ちょ、ちょっと!克枝!」
由美が、克枝の言葉を遮ろうとするー。
がー
「ーーーーー…!」
梨花が一瞬、恐ろしい形相を浮かべたように見えたー。
「チッ…」
梨花が小さく舌打ちをするー
”え…り、梨花…、今、舌打ちしたー?”
由美が不安そうに梨花の方を見つめるー。
梨花はどちらかと言うと、大人しいタイプの子で
舌打ちなどするイメージはないー。
気のせいかもしれないし、勝手なイメージを抱いているだけかもしれないー。
けれどー
「ーーあははははードッペルゲンガーなんてー…
あはははは」
梨花は、すぐにそう笑いだすと、
「ー何かの見間違えでしょ?そんなこと、誰が言ってたの?」
と、梨花はそう言葉を口にするー。
「ーえ?隣のクラスの後藤さんだよ~」
笑いながらあっさり答えてしまう克枝ー。
「ーーーそうー 後藤さんねー」
クスッと笑う梨花ー。
その反応を見て、由美はゾクッと恐怖を覚えるー。
立ち去っていく梨花ー。
すぐに、由美は克枝に対して「な、何で言ったの!後藤さんのこと!」と、
声を上げると、
克枝は「え~?何でって?どうして?」と、不思議そうに笑うー。
「もしも梨花がドッペルゲンガーに成り代わられてたら
ヤバくない?
”それを見た”人の名前教えちゃうなんて!」
由美が必死にそう言うと、
克枝は笑いながら「あははー由美も信じてくれるつもりになったの?」と、
状況を一切深刻に捉えていない様子で、そんな言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その日の夜ー。
「ーーーーーー」
由美たちの隣のクラスの女子生徒・後藤 美彩は、
いつものように家に向かって歩いていたー。
がー
そこに見ず知らずの薄汚い風貌の男が現れるー。
「ーーコイツでいいんだな?」
男が誰かと会話しているかのようにそう呟くと、
少しして、美彩の方を見つめて微笑んだー。
そしてーー
薄汚い風貌の男が、謎の光る球体のようなものを手にすると、
突然、男の姿が”美彩”の姿に変わっていくー。
「ーーー…え……」
美彩が震えながらその光景を見つめるー。
数日前ー、
”隣のクラスの梨花”が、”もう一人の梨花”に追われている光景を
偶然目撃していた美彩は、すぐにそのことを思い出しながら
逃げ始めるー。
「ーーーあはははは!逃げても無駄だぜ~~!!!」
”もう一人の美彩”がそんな言葉を口にするー。
「ーーな、何なんですか一体!?
け、警察呼びますよ!?」
逃げながらそう叫ぶ美彩ー。
「ーへへへへー警察に何て説明するんだ?
”もう一人のわたしに追われてます”ってか!?」
”もう一人の美彩”が笑いながらそう叫ぶと、
美彩はお構いなしにスマホを手にして、
逃げながら警察に通報し始めるー。
「ーーチッ」
”もう一人の美彩”は思ったよりも早い
美彩の行動力に驚きの表情を浮かべるー。
美彩は生徒会書記を務める女子生徒。
判断力が早く、頭の回転も速いー。
今、”もう一人の自分”が現れて恐怖に包まれている
状況の中でも冷静さを失わず、警察に素早く通報し、
助けを求めたー。
がーーー
「ーーおいっ!」
警察への通報を終えた直後ー、
美彩は”もう一人の美彩”に腕を掴まれてしまうー。
「ーは、離して!」
美彩が”もう一人の美彩”を振りほどこうとするー。
だがーー
”もう一人の美彩”が持っていた謎の光る球体を手にすると、
美彩にその光が直撃しーーー…
”梨花”の時と同じように、美彩の姿が
”アリ”へと変わっていくー。
「ーーーくくくくくくー」
”もう一人の美彩”は、アリになった美彩を掴むと、
そのままアリの手を、触覚を抜いて
狂った笑みを浮かべながらいたぶっていくー。
「ーーあぁ…なんだこの感覚ー
女の身体で興奮してきちゃったのかなぁ?げへへー」
もう一人の美彩はニヤニヤしながらそう言葉を口にすると、
最後に”美彩だったアリ”を真っ二つに引き裂いて
そのまま歩き出すー。
やがてー
”本物の美彩”が通報したことによって
駆け付けた警察官たちが到着するとー、
”もう一人の美彩”は笑みを浮かべながら答えたー。
「ーーーごめんなさいー
わたしの勘違いだったみたいですぅ~」
とー。
「ーーーーーー……」
そんな様子を物陰から見つめていた
都市伝説好きの女子生徒・克枝は
ガクガクと震えていたー。
クラスメイトの由美から
”もしも梨花がドッペルゲンガーに成り代わられてるなら
後藤さんが狙われちゃうよ”と、
言われたことで、”まっさか~!”と思いながらも、
美彩のことをこっそり尾行していたのだー
そしてー
”全部”見てしまったー
謎の薄汚い風貌の男が”美彩”に変身するところもー。
その偽物の美彩が”本物”を処分したところもー。
物陰に隠れながらガクガクと震える克枝はー、
そのまま”美彩”と遭遇しないように、
足早にその場から立ち去って行ったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”ーーへへへー
いい身体が手に入りましたー
ありがとうございますー
ついでに記憶までコピーできるなんてー
記憶を見てるだけでもエロくて最高ですよー”
”美彩”からそんな連絡を受けた男は、
笑みを浮かべながら
「そうかー。これで目撃者の心配はなくなったなー。」と、静かにそう答えるー。
「ーー新しい人生を存分に楽しむといい」
男はそう言葉を付け加えると”美彩になった男”との電話を終えて
不気味な笑みを浮かべたー。
②へ続く
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コメント
”ドッペルゲンガー”をテーマにした
他者変身モノデス~!
なんだか大変なことが起きてますネ~笑
続きはまた明日デス~!
今日もありがとうございました~!

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