<憑依>最悪な先輩②~お願い再び~

バイト先のお世話になっている先輩から
”1時間だけ”とお願いされて
妹への憑依を許してしまった彼ー。

しかし、それは次第にエスカレートしていき…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーへへーマジで気持ちいいぞ これー
 ほら、お前も揉んでみろよ」

円香が自分の胸を触りながらニヤニヤと、
そんな言葉を口にするー

「い、いえ…俺はー…大丈夫です」
妹の円香が憑依されて胸を揉みながら
喜んでいる姿を見て、不愉快そうな表情を浮かべる利幸ー。

これが妹じゃなかったら、どう思ったのかは
自分でも分からないー。
だが、自分の身近な人間が”憑依される”ということは
想像以上に、”嫌な感じ”だー。

「ーーせっかくなんだから触ってみろって」
円香が、ノリの悪い利幸に対して
そう言い放つと、
「ーせ、先輩ー…す、すみませんー。でも、俺はいいですー」と、
その言葉を拒むー。

「ーんだよ…ノリが悪いなぁ。ま、いいけどさ」
そう言うと、足を広げてスカートの中を触り始める円香ー。

心底嬉しそうに制服のスカートの中を触っている円香を見て、
”憑依の恐ろしさ”を、利幸は実感するー。

”憑依”ー
そんなことが、現実で出来るなんてー。
しかも、”憑依”されてしまったら、目の前にいる円香のように
何も抵抗することはできないー。
本人が絶対にしたくないであろうことまで、”嬉しそうに”やらされてしまうー。

「ーーはぁ~たまんねぇなーへへへ」
円香の欲望の時間は続くー。

がー、地獄のような時間もいつかは終わるー。
やがて、憑依から50分が経過すると、
「そろそろ、片付けないとな」と、円香に憑依している卓也は
そう言葉を口にしてから、制服から元の服に着替え始めたー。

利幸は慌てて、妹の着替えを見ないように
部屋の外に出ると、
着替え終わったのを確認してから、再び部屋へと戻ったー。

「ーーよし。これでいいなー」
円香はそう言うと、「俺が憑依した時、円香ちゃんはここに座ってたからー、
ここに座らせて身体から抜けるぜー?」
と、そう言葉を口にするー。

「ーーあ、はいー。分かりましたー」
利幸は安堵の表情を浮かべながらそう言うと、
「ー勉強中に寝落ちしてたってことにすりゃ、お前の妹も怖がったりはしないだろ?」
と、円香はそんな言葉を口にしてから、
そのまま眠るようにして机に倒れ込んだー。

「ーーー」
部屋の外に慌てて移動する利幸ー。

そしてーー
わざとらしく部屋をノックするー

「ー円香~…あれ、いないのか~?」
そんな言葉を口にしながら、部屋をノックしていると、
やがて、寝起きのような状態で円香が部屋の外に出て来たー。

「ーーあれ…お兄ちゃんー?わたしー?」
”1時間”記憶が飛んでいるからか、円香は不思議そうにしながらも、
部屋の中から出てきて、そう言葉を口にするー。

さっきまでの歪んだ笑みは消えー、
いつもの円香だー。

「ーーーあ…も、もしたして寝てたのか?ごめんなー。」
利幸はそう言うと、「昨日借りたやつ、返そうと思って」と、
昨日、”このために”借りて置いたボールペンを手に、それを手渡すー。

”憑依から解放された円香”に寝落ちだと思わせるため
憑依が終わった後のタイミングで、自然に部屋をノックする口実として、
昨日のうちにボールペンを借りておいたのだー。

ノックしなくても、円香は自然と意識を取り戻すだろうけれど、
”何で記憶が飛んでるの!?”と一人で悩む可能性もあるー。

寝落ちだと思わせるために、こうして利幸は
部屋をノックし、目覚めた直後の円香と自然な形で会話できるようにしたー。

「ーー……ね、寝た覚えはないけどー…
 でもーーー…寝てたみたいー」

時計を見ながら言う円香ー。

「はははー俺もテスト勉強中はよく寝ちゃうからなぁ…
 急に時間が飛んでたりするとビビるよな」

利幸はそう言いながら、円香を”寝落ち”だと思わせる方向に
会話を進めていくと、
円香は「って、勉強しなくちゃ!」と、慌てた様子で部屋の中へと
戻っていくー。

「ーあんまり無理しすぎるなよ~」

「分かってるよ~!」

そんな会話をしながら、利幸は自分の部屋の方に戻っていくー。

そしてー…
やっぱりもう、2度と”憑依された円香”なんて見たくないー、と、
そう心に誓うのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー
バイト先で先輩の卓也と会った利幸ー。

卓也は利幸を見ると同時に「昨日はありがとな」と、
そんな言葉を口にしたー。

それでー…
”憑依”の件は終わると思ったー。

だが、その1週間後のことだったー。

「ーなぁなぁ、土谷ー」
バイト終わりに、卓也がふとそんな言葉を口にしたー。

「ーーどうかしましたか?」
利幸は特に何も気にせず、そう言葉を口にすると、
卓也は信じられない言葉を口にしたー。

「ーもう1回、円香ちゃんに憑依したいんだけどさ~…
 どうにかならないかな?」

「ーーえ」
利幸は、顔色を変えるー。

「ーー大丈夫大丈夫ー。今度も寝落ちってことでさー。
 どうしても、どうしても着て見たい服があるんだー」

卓也が必死に利幸に頼み込むー。

「ね、寝落ちー?
 さすがに何度もそれで押し通すのは無理がありますよー。
 円香だって、不安に思うに決まってますし、
 1時間だけっていう約束だったはずですよ?」

利幸が不満そうにそう言い放つー。
いくらお世話になった先輩とは言え、
こう何度も何度も憑依のお願いをされてしまっては
こちらも困るし、
兄としては、円香の身体にこれ以上憑依させたくないー。

「ーーなぁ、頼むよー。
 もう憑依薬も次でなくなるし、これで最後だからー」

卓也はなおも、そう頼み込んでくるー。

「ーーーーー…」
利幸は表情を歪めるー。

先輩にはお世話になっているー。
だが、円香にこれ以上憑依なんてさせたくないー。

しかし、ここで断って
”残る1回分の憑依薬”で変なことをされても困るし、
バイト先に居づらくなってしまっても困るー。
色々なことを考えた末に、利幸は
「ーー…なら、今度こそ最後ですよ」と、
そう言葉を口にしたー。

「ありがとう!ありがとう!」
卓也はそれだけ言うと、
”今度は休みの日に憑依したい”ということで
そのタイミングが来る日を待ったー。

そしてーー

「ーーなんか今日はちょっと風邪気味かも~」

それから1週間が経過した休みの日ー。
円香は苦笑いしながらそんな言葉を口にするー。

「ー風邪?大丈夫か?」
利幸が心配そうに言うと、円香は
「全然調子悪いってほどじゃないんだけど、念のため安静にするから大丈夫」と、
そう言いながら微笑んだー。

そして、自分の部屋に向かう円香ー。

”ーーーーー”
今がチャンスだと、そう思ったー。

円香に憑依するチャンスー、というよりも
円香を怖がらせないで、先輩のお願いを終えるチャンスだと、そう思ったー。

風邪で安静にしてるなら意識が飛んでも、
”寝落ち”で済ませられるはずだー。

そう思った利幸は、卓也に連絡を入れるー。

卓也の都合も合い、卓也は再び円香に憑依したー

「ーへへへー確かにちょっとだけ風邪気味な感じだなぁ」
円香はニヤニヤしながら部屋から出て来たー。

そんな、憑依された妹を見て
利幸は強い罪悪感を覚えるー。

”ごめんー…円香ー…”
そう思いつつも、先輩に強く言えない自分が嫌になりながらも
”これで終わりなんだー これでー”と、
そう自分に言い聞かせながら、何とかその状況に耐えるー。

「ーーで、”アレ”はちゃんとあるのかー?」
円香がそう呟くー。

先日、バイト先で”円香に憑依したら着たい服”として
卓也から預かっていた服ー。

利幸は、絶対に家族に見られないように
自分の部屋にしっかりと隠していたそれを取り出すと、
円香はニヤニヤしながら「へへへ…メイド服、着て見たかったんだよなぁ」と、
興奮した様子で言葉を口にするー。

モヤモヤした感情に飲み込まれそうになりながら、
円香が着替えている間、部屋から出る利幸ー。

憑依された円香がメイド服に着替えている間、
利幸の手は小刻みに震えていたー。

”先輩が妹に憑依することを阻止できない自分”に
強く怒りを感じていたー。

”くそっー…円香ー…情けない兄で本当にごめんなー”

そう思いながら、円香から呼ばれて中に入ると、
そこにはメイド服姿の円香がいたー

「ーあ!ご主人様~!♡ なんてな」
円香はそう言うと、鏡で嬉しそうに自分の姿を見つめるー

「ーあ~~~~やっべぇなコレー
 …はぁぁ…興奮する」

円香の聞きたくもないセリフを聞かされながら
目を逸らしていると、
円香は利幸に身体を密着させてきて、笑みを浮かべたー

「ーふふふ お兄ちゃんー
 わたしのメイド姿見て、ドキドキしてるんでしょ?」

円香みたいな口調で、そんな言葉を口にする
憑依された円香ー。

「ーーや、やめてください…先輩!」
顔を赤らめながら利幸は目を逸らすー。

「ーふふふふー
 メイドのわたしを見て、興奮してるんでしょ?」
揶揄うような口調の円香ー。

「ーーそ、そういうのは困りますって!」
利幸はそう言いながらも、
メイド服の妹にドキドキしてしまっている自分に
腹立たしさすら覚えながら、必死に言葉を口にするー。

「ーーー少しぐらい遊んだってバレないって」
いじわるそうな笑みを浮かべながら囁く円香ー。

「ーーーだから…!そういうのはやめてくださいよ!」
利幸は少し強めにそう言い放つと、
メイド服姿の円香は少し驚いた様子で、
「ーーなんだよー冗談だって。ムキになるなよ」と、
不愉快そうにそう言葉を口にしたー。

「ーー…い、妹に変な感情持たせないでくださいー」
利幸も不満そうに言い放つと、
「ーあんたなんて大っ嫌い!」と、円香は
キツイ口調で利幸にそう言い放ったー。

”妹は憑依されているー”
それは、ちゃんと分かっているし、
今の言葉も円香の本心ではない。

それも、ちゃんと分かっている。
ただ単に”言わされているだけ”だー。

しかし、それでも円香の口で”大っ嫌い”と言われてしまうと
結構精神的にキツイものがあるのも事実だったー。

「ーーへへーなんてな?
 そんな顔すんなって」
メイド服姿の円香は「冗談だよ」と、そう言いながら
鏡の前で色々なポーズを取り始めるー。

可愛らしいポーズをとる円香ー
セクシーなポーズをとる円香ー
挑発的なポーズをとる円香ー。

そんな、憑依された妹の姿を見つめながら
”ごめんー”と、心の中で何度も円香に対して謝罪の言葉を口にするー。

けれどー
”先輩の申し出を断る”ことによって、
バイト先での自分の立場が悪くなってしまうかもしれない、という
自己保身的な気持ちと、
憑依薬を持っている先輩に、円香や自分がもっとひどい目に
遭わされてしまうかもしれないという不安ー。

そんな気持ちから、先輩に憑依の許可を出している利幸ー。

少なくとも、”先輩のお願い”を受け入れていれば
こうして”利幸の管理下”で憑依させることができるし
少なくとも暴走だけは防ぐことができるー。

それに、これで憑依薬はなくなると言っていたー。
使い切らせてしまえば、もう大丈夫だー。

円香には本当に申し訳ないことをしていると思うー。
でも、こうすることによって円香の身の安全も図れるしー、
これが一番最良の手なのだと、利幸は考えていたー。

「ーへへ もう時間だなー。
 着替えて、終わりにするかー」

メイド服姿の円香はそう言葉を口にすると
約束通り片付けを始めー、
そして、卓也は円香の身体から抜け出したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

円香は、風邪で安静にしていたこともあって、
2度目の憑依で意識が飛んでいる間のことも
特に違和感には思っていない様子だったー。

先輩の卓也が憑依した時点で、
円香はベッドに横になっていたため、
解放する際にベッドに横たわったことで
円香は”寝ていた”としか思わなかったようだー。

いずれにせよ、”憑依”はこれで終わりー。
もう、心配する必要はないー。

そんな風に思っていた
ある日のことだったー

「ーなぁ、”また”憑依させてくれよ」
先輩の卓也がバイト中にそう言い放ったー

「ーーーえ?」
表情を歪める利幸ー

「もう、憑依薬なくなったんじゃ?」
利幸がそう言うと、
卓也はニヤッと笑みを浮かべながら
言葉を続けたー。

「”また”買ったからさー
 な、いいだろ?」

その言葉に、利幸は呆然とするー。

がーー”これ以上はもうだめだー”と、
そう思いながら、利幸は険しい表情で口を開いたー

「すみません先輩ー
 前回の憑依のあと、円香、意識が飛んでることに気付いて
 怖がっちゃっててー

 だからもう、円香への憑依はー
 ごめんなさいー」

利幸は、そう言い放ったー。

円香は気づいていないし、怖がってもいないが、
そう”嘘”をつくことで、これ以上の憑依を阻止しようとしたー。

「ーーー円香への憑依は、前回で最後の約束だったはずですー。
 だから、すみません」

利幸は、振り絞るようにしてそう言葉を吐き出したー。

③へ続く

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コメント

次回が最終回デス~!☆

皆様は、もし自分が利幸くんの立場だったら
どうしますか~?笑

明日の結末もぜひ楽しんでくださいネ~!

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憑依<最悪な先輩>

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