<女体化>あなたは来世も男です③~次こそ理想へ~(完)

”来世も男”

そう言われた彼はー、なかなか理想の人生を
手にすることができないまま、
次々と色々な人生をこなしていくー。

彼は、理想の人生を手にすることはできるのかー。

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「ーー女になりたい人生だったー」

入院中の70代男性・節司(せつじ)が
そう言葉を口にすると、
お見舞いに来ていた親友の男が苦笑いしたー。

もちろん、親友の男もほぼ同じ年齢で、既に高齢だー。

「ーははははー 
 昔はよく一緒に女装したりしたもんなぁ」

懐かしそうにそう言葉を口にする親友ー。

「ーーー…もし、次に生まれることがあれば
 今度は女になりたいなぁ」

かつて、”幹也”という人生を歩んだこともある男は
そんなことを全く知らず、そう言葉を口にするー。

「ーーはははー 次の人生、あるといいなー。
 でも、俺たちの場合、次も男だったりしてー」

そんな言葉を口にする親友に、
節司は「その時は”女にしてくれ~”って土下座してでも、
変えてもらうさ」と、そう言葉を口にしたー

それから半年後ー…
彼、節史は74年の生涯を終えたのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー!!こ、ここはー?」
節司は”自分は死んだはず?”と、そう言葉を口にすると、
そんな彼の前に「今回もお疲れ様でしたー。」と、
案内人のミズキが姿を現したー。

”前回”ミズキと会ってから74年が経過しているが、
ミズキの容姿は全く変わらずー、
ミズキからすれば、”時間の感じ方”が違うのか、
人間で言う”7か月ぶりに会った”ぐらいの感じだあったー。

「ーこ、ここはー?」
節司が言うと「ここは、あの世です」と、ミズキは淡々と答えたー。

「ーびっくりしましたか?
 まぁ、あなたはもう人生12回目だったのですけど」

ミズキがそう言うと、節史は「じ、12回…?そんなに…?」と、笑うー。

「ー毎回記憶は消してますからー。
 人生、一度きりだと思わせておかないと人間、投げやりになるので」

ミズキはそう言うと、
「ーーで、次の人生の話ですがー」と、そう切り出したー。

節司は嬉しそうに「女ですか!?」と、そう叫ぶと、
「ーいえ、次も男ですね」と、そう言葉を口にしたー。

「ーーえぇ…!?」
節司が残念そうに言葉を口にすると、
「ー毎回説明するのが面倒臭いので、いったん”あなたの前の人生”の
 記憶を返しますー」と、
一番長く生きた”幹也”の時の人生の記憶をミズキは一時的に戻したー

「ーーー!… あ…ま、また思い出したー
 前の人生を思い出すと、変な気分ですね…」

”幹也”としての記憶を思い出した節司が言うと、

「ー次も、裏技使いますか?」
と、ミズキは説明を省略して言葉を口にしたー。

「ーーー」
節司は考えるー。

”確か、この子は”毎回不具合が出るわけではない”って言ってたよなー?
 それにー…人生に不具合が出ても、おしゃれを楽しめるような人生なら
 別にそれでもー
 このまま何度も男として生きるよりかはー…
 賭けに出るかー。
 別に人生、何回でもあるんだしなー…”

節司はそう考えると「使います」と、そう叫んだー。

ミズキは「では」と、端末を操作すると、
相変わらずの”愛想のない機械のような美少女”のような振る舞いで
事務的に処理を進めたー。

「ーーあ、そういえばー今回の人生でー
 婚約者が結婚式当日に事故で死んじゃってるんですけどー、
 もしかして、あの人ってー」

節司がそう言うと、
ミズキは端末を操作して、”節司”が20代の時に結婚する予定だったという
相手の女性のことを調べ始めるー。

「ーーあぁ、その人は本来男で生まれる予定だったのを
 裏技で女体化させた人ですねー。
 だから、結婚式の日に死ぬという悲劇の最後になったみたいですー。

 大体、無理やり性別を変えると悪い方向に人生が歪む傾向にあるので」

ミズキがそう言うと、
節司は「そ、そうですかー」と、頷くー。

が、諦めることはできないー。
そう思いながら、ミズキが手続きを終えるのを待ち、
節司は次の人生へと向かったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”次”の人生は、お金持ちのお嬢様だったー。

”蘭(らん)”として生まれ、
何の不自由もなくー、
むしろ、”わたし、こんなに幸せでいいの!?”と思ってしまうぐらいの
人生だったー。

ミズキの言う”不具合”が良い方向に発揮されたようだったー。

溢れ出る美貌ー、
裕福な家庭ー
いじめもなく、このまま高校生・大学生となったら、
さらに楽しい人生が待っているー

そんな毎日を送っていたある日のことだったー

「ーーー!!!!」
蘭は突然、”今までの12回の人生”の記憶が流れ込んでくるのを感じたー

「え…わ、わたしー…?」
蘭は混乱しながらも、
ガッツポーズをするー

「へへ…!俺、ついに女になったんだ!しかも最高の人生ー!
 やべぇ…これから俺、もっともっと可愛くなってー」

嬉しそうに言い放つ蘭ー。

これが無理矢理人生を女体化させたことによる不具合なのだろうかー。

以前、虐待される子供として生まれた時も
”前の記憶”があったが、今回は全部の記憶があるー。
あの世での出来事も、全部ー。

”今回は最高の人生になる”
そう確信しながら、蘭はふと、あることを思い出すー。

この屋敷のメイドの一人が、”やたらと死後の世界”に興味を持っていたー。
あの子に”せっかくだから”あの世のことを話してあげようー、と、
そんな風に思うー。

”ってか、みんな人生何回目なんだろうなー?”

これまでの人生の合計を見ると、”男”の時間の方がはるかに長い”蘭”はー、
全ての記憶を取り戻してから、自分の身体にドキドキしていたー

「ついさっきまでそんなことんなかったのにー
 ふふふふ」

蘭は、自分の姿を鏡で見つめながら、
そのまま死後の世界に興味を持っているメイドのところにたどり着くと、
雑談を始めるー。

「そういえば、あなた死後の世界に興味を持ってたわよね?」
”蘭”としてそう言葉を口にすると、
メイドは「あ、はいー」と言葉を口にするー。

「ーー実はねー…死後の世界ってホントにあ

そこまで言葉を口にしたその時だったー。

突然、周囲の風景がガラスのように砕け落ちー、
気付いた時にはーー
”あの世”にいたー。

蘭は「えっ…!?」と、困惑の表情を浮かべると、
ミズキが背後から姿を現したー。

「ー強制終了です」
とー。

「え?」
蘭が不思議そうに言うと、
ミズキは「時々、”ここ”のことを生きている間に思い出しちゃう人がいるんですけど、
それを周囲に言おうとした人は、人生を強制終了させているんです」と、
そう言葉を口にしたー。

「え…ど、どうしてー?」
蘭が言うと、ミズキは「人生が一度きりじゃない、みたいな話とか
あの世の話を現世でされると困るからです。
みんな、人生は何度でもあるって気付いちゃったら、人間の生き方そのものが
変わってしまいますー」と、淡々と説明したー。

「だから、あの世での出来事を思い出して、それを話そうとした人は
 強制終了してます」

ミズキの説明に、蘭は「え…じゃあ、現世でのわたしはー?」と、
そう確認すると、
ミズキは「”突然死”する人、たまにいますよね?心臓とか、脳が原因でー」と、
言葉を口にするー

「あれが”強制終了”ですねー。
 もちろん純粋に病気の人もいますけど、
 あの世のことを思い出したりして、周囲に話そうとした人が
 心臓発作とか、そういう扱いで突然死してるんです」

ミズキはそう言葉を口にしたー。

つまり、”蘭”もメイドの前で突然死したということなのだろうー。

「ーーせ、せっかくいい人生だったのに」
蘭はそう言いながらも「次こそ、おしゃれを楽しむ人生にしたいです!」
と、そう言葉を口にしたー。

「ーーで、次の人生はー!?」
蘭がミズキに確認すると、ミズキは「…男ですね」と、そう言葉を口にしたー

「またかよ!」
蘭が叫ぶー。

「ーーどうしてわたしは男ばっかりなんですか!?
 最初から”女”の予定のことほとんどないし!」

蘭は不貞腐れたように言うと、
ミズキは「さぁー。わたしには分かりかねます」と、それだけ
言葉を口にしたー。

蘭は「まぁいいやー。次は男でいいですよー」と、
言葉を口にすると、そのまま”次の人生”をスタートさせたー。

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次の人生は、68歳まで生きたー。

あの世のことも忘れー、
ごく普通にー、
けれども、やっぱり”おしゃれな女子”に憧れながら
人生を全うしたー。

「ーーー人生、お疲れさまでしたー」
ミズキがそう言葉を口にすると、”幹也”だった彼は、
ため息をつきながら、
「ありがとうございますー」と、そう言葉を口にしたー。

今回の人生は、生涯独身で最後まで仕事尽くしの人生で
少し疲れている様子だったー。

「ーーーえ?人生、次もあるんですか?」
驚いた様子の彼を見つめるミズキー。

いつもと同じような説明をすると、
やっぱり”彼”はいつもと同じ言葉を口にしたー。

「ー次は、女ですか?」
とー。

「ーーーーー」
ミズキは端末を手に確認するとー、
次も”男”であることが分かったー。

「ーーー次も男ですね」

「ーーなんで!?どうにかなりませんか!?」

「ーー例外はありません」

いつものようなやり取りをしたあとに、
ミズキは彼をまた次の人生へと送ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・

次の人生では、彼はスポーツ選手として、
大成功してスター選手としての人生を過ごしたー。

老後もしっかりと生きて、79歳の生涯を終えるー。

「ーーー次も”男”です」
ミズキは淡々とそう呟くー。

「ーえぇ…!?次は女がよかったなぁ」
苦笑いしながら、スポーツ選手の格好をした彼は、
”また”次の人生に向かうー。

「ーーホント、運がないね」
”幹也”だった男が次の人生に向かう後ろ姿を見つめながら、
ミズキは少しだけ首を傾げるー

「ー…に、しても”男”が多すぎるよねー。
 大体5:5ぐらいになるようになってるはずなんだけど」

そう思いながら、
「まぁでも、たまに偏る人もいるけど」と、
ミズキはそうため息をつくと、
すぐに”幹也”に興味は失せた様子で、
そのまま次の案内に向かったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それからもー、
幹也の”その後”の人生は”男”ばかりだったー。

そしてーーー
そんなことがさらに5回ほど繰り返されたあとのことだったー。

ミズキは、”あること”に気付くー。

”あぁ、ほとんど男になってる理由が分かったわ…”
ミズキはそう思いながら端末を操作すると、
”5回目”ーー彼が江戸時代の呉服問屋の娘として
生まれた時の記録を確認するー。

その時はまだミズキが担当でなかったために知らなかったが、
5回目の人生では、”悪代官である男に相当酷い目に遭わされて死んだ”
ようだったー。
当時はまだ、女にとっては厳しい世界ー。
本当に、酷い目に遭い続けた様子だったー。

そして、その時、”あの世に来た”彼女は言ったのだー。

”もう2度と、女に生まれたくありませんー”
とー。

その時点での…後の幹也となる人物は、
それが本心だったのだろうー。

あまりにもしつこく騒いだために、”上”の者たちが、
男として生まれる割合を大幅に上げたようで、
そのため、”ほとんどの人生”が男になるようになっていたようだー。

「ーーーお疲れ様です」
ミズキは、”幹也”を名乗っていた男が、今回も人生を終えて
やってきたことに気付くと、
「次は女になりたいです!」と、笑う”幹也”だった男を見てから
端末を確認したー。

次も”男”ー。

「ーーーーー残念ですがーーー」
ミズキはそこまで言いかけて、ふと、表情を歪めるー。

そしてー
”男”と書かれた部分を操作すると、それを”女”に変更したー。

今までやってきた”女体化”とは違い、
純粋に”女”に生まれを切り替える”不正行為”をミズキは行うー。

案内人が勝手に”設定”をいじることは禁忌とされていて、
”裏技”は、妊娠後、母親のおなかの中にいる時点で
性別を転換させる方法で性別を変えているため”グレーゾーン”で
済んでいたものの、今回は完全な”ブラック”だー。

「ーー次は、女です。おめでとうございます」
ミズキが言うー。

「えっ!?本当ですか?」

「本当ですー。嘘をつく意味なんてありますか?」
淡々と答えるミズキー。

ミズキはふと、彼に”幹也”だった時の記憶を返すとー、
幹也は驚いて「あ…俺ー…」と、そう声をあげてから
「こ、今度はホントに女なんですね!?」と、嬉しそうに叫んだー。

「ーえぇ」
ミズキはそう呟くと、幹也は「なんかーー…ありがとう」と、そう言葉を口にすると、
”次”の人生へと向かっていくー

今度は、容姿にも恵まれて
彼が望んだおしゃれも楽しめる、”女”としての人生をー。

「ーーーー」
ふぅ、とミズキはため息をつくー

「ーたま~に、可哀想になっちゃうのよね」
ミズキはそれだけ言うと、
首を横に振りながら静かに歩き出すー。

”禁忌”を破った案内人は”再研修”を10年受けることになるー。

人間が”地獄”と呼ぶ空間でー。

「ーーま、10年ぐらいいいでしょ」
ミズキはそれだけ言うと、3つ存在する扉のうちの一つ、
”地獄への扉”に向かっていくー。

「ーー10年なんてーあっという間なんだから」
ミズキはそう呟くと、
背後を振り返って呟くー。

「ーーたまには楽しみなさいー。女としての人生もー」

とー。

普段は絶対に笑わないその顔に、ほんの少しだけ笑みを浮かべーー
ミズキは次に”あの人”に会うのをほんの少しだけ楽しみにしながら、
そのまま地獄の中へと姿を消したー

おわり

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コメント

とても変わった雰囲気のお話でした~!☆

幹也だった彼は、
この後、麗奈(れいな)として生まれて、
充実した人生を送っている設定デス~!

ここまでお読み下さりありがとうございました~!

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