<女体化>あなたは来世も男です②~また次の人生~

来世も”男”ー。

来世は女として生きたかった彼は、
あの世の案内人にお願いして、
強引に女としての人生を手に入れることに成功したもののー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー」
鏡を見つめる沙耶ー。

高校生になった沙耶は、
毎日毎日、クラスメイトたちから”ブス”と呼ばれて
激しく落ち込んでいたー。

「ーーーーーわたし、もう疲れたー」
最近は、そんなことばかり口にするようになったー。

前々回の人生、”幹也”としての記憶は、既に彼女の中にはないー。

ただ、何故だろうかー。
”おしゃれ”への憧れは小さい頃からあったー。

”前世”における趣味や願いが、そのまま次の人生に
無自覚のうちに影響として現れることがあるー。

沙耶が、”おしゃれ”に憧れを持つのは
前々回ー、”幹也”として生きた時に、
おしゃれに強い関心があって、それが今も受け継がれているのだー。

しかしー、
少し可愛い小物を学校に持って行っただけで、
いじめられる毎日ー。

「ーーーー男に生まれれば、ブスとか言われなかったのかなぁ」
沙耶はそう呟きながら、
かつての自分とは別の願いを抱くと、
そのまま学校へと向かうー。

しかしー
この日ー…

いじめっ子たちに呼び出された沙耶はー、
階段の近くでいじめっ子たちに嫌がらせを受けている最中に、
いじめっ子の一人に突き飛ばされたことで、
階段から転落ーーーー

「ーーえ…ヤバいよー…
 ど、どうするのー?」

いじめっ子の一人が狼狽える中、
頭を強く打ち付けた沙耶は、血を流しながら
そのまま16年とちょっとの人生に幕を下ろしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー!!」
沙耶が表情を歪めるー。

「ー死んだあとの世界って…あるんだー」
”前”の記憶を失っている沙耶がそう呟くと、
「ーお疲れ様でした」と、背後から案内人のミズキが姿を現したー。

「ーーー…ーーえ…あ、はいー」
ミズキのことも覚えていない”前は幹也”だった沙耶が言葉を口にすると、
ミズキはこの世界のことや、自分の名前、
次の人生もあることを告げたー

「ーーあ、あのー…わたしの次の人生はー…?」
麻耶が言うと、
ミズキは「次も”女”ですねー」と、そう言葉を口にするー。

「ーーーえ…」
麻耶はイヤそうな表情を浮かべるー。

「ーわ、わたし、もう”女”はイヤですー…
 次は、”男の子”として生まれたいですー」

涙目でそう呟く麻耶ー。

そんな様子を見つめながら案内人のミズキは、
手元の光るタブレットのような端末で、
”この人、前回は”女になりたい”って言ってた人よねー?”と、
心の中で呟くー。

一見、不愛想で事務的なミズキだが、
内心では案外人間のような一面も持つ彼女は、
少しだけ心の中で笑うと、
「ーあなたは前回、”次は男”だったところを”女がいい”と
 希望して、今回、女になったのですが」と、
淡々と言葉を口にしたー。

「ーーえ…えぇっ…そんな」
麻耶が困惑の表情を浮かべるー。

「ーーただー…”裏技”を使えば次の人生を
 ”男体化”させることで、男にすることは可能です」
ミズキがそう言うと、
麻耶は「ほ、ホントですか?」と目を輝かせながら
お願いをするー。

「ーーー」
ミズキはそんな反応を見つめながら、少し揶揄おうと思いながら
麻耶にとって”前々回”の人生である”幹也”の記憶を一時的に”返却”するー。

すると、麻耶の姿のまま幹也としての記憶を取り戻した彼女は
声を上げたー

「ーーあ…そ、そうだーお、俺…!…」
麻耶はそう言うと、「ーー…っ 2回分の人生の記憶があると、頭がおかしくなりそう」と
苦笑いするー。

”充実していた幹也”としての自分ー
”大人しい麻耶”としての自分ー
どっちも自分であったことに変わりなく、麻耶は戸惑いの表情を浮かべるー。

「ーーって、そういえば、前に会った時ー
 強引に女体化させたから”副作用”がどうこう、って言ってましたよねー?
 今回のわたしがブスでいじめられてたのってー…」

麻耶がそう言うと、
ミズキは「まぁ、副作用じゃなくても元々そういう子もいますけど」と、言いつつも
「今回のあなたの場合、無理矢理”男”のはずの来世を”女”にしたから
 辛い人生になったのは間違いないですね」と、淡々と言葉を口にしたー。

「ーーん?待てよー?」
麻耶は、さっきまでの弱弱しい態度とは全然違う振る舞いで
そう言葉を口にすると、
「ー次は”女”ってさっき言いましたよね?」
と、嬉しそうに言葉を口にするー

”来世”は元々”女”の予定だとミズキは言ったー。
と、いうことは今度は”無理に来世の性別を変える必要もない”ために、
”強引に性別を変えたことによる人生ハードモード”ではなくなるー。
もちろん、自然にハードモードになってしまうことはあるかもしれない。
けれどーー

今度こそー

「ーー言いましたよ?」
ミズキがそう言いながら、”次の人生”の手続きをしているのか
端末をいじっているー。

「ーーーやった!ついに、ついに!今度こそ!」
麻耶の姿のまま嬉しそうに叫ぶー。

”幹也”としての人生は80年以上ー、
”麻耶”としての人生は16年ちょっとだったため、
両方の記憶を持った状態だと、どうしても”幹也”の要素の方が
多く表に出てしまうー。

「ーーーーでも次は”男”ですー」

「ーーは?」
麻耶が表情を歪めるー

「え…?つ、次は”女”だって、案内人さん、言いましたよね?」
麻耶が困惑しながら言うー。

すると、案内人・ミズキは
クスクスと心の中で笑いながら、
それを悟られないように、淡々と言葉を続けたー。

「ーーだって、あなたが”次は男にしてほしい”ってさっき言ったのでー
 もう、次の人生”男体化”させちゃいましたよ?」
とー。

「ーーー!!!!!」
麻耶は表情を歪めるー。

確かに、言ったー。
けれど、それはーー

「ーーえっ!?えぇっ!?ナシナシ!
 た、確かにさっきまで、わたし、次の人生でまでブスって言われたくない!
 って思ってたけどー…!」

麻耶が慌てた様子で言うも、
ミズキは「申し訳ありません。一度切り替えたら、それ以上は切り替えできないので」と
淡々とそんな言葉を口にするー。

「ーーそ、そんなーどうにか、なりませんか?」
麻耶が不満そうに言うー。

「例外はありませんー」
ミズキはそれだけ言うと、そのまま”次の人生はあちらです”と、
そう言葉を口にするー。

「ーー~~~~~~~~」
麻耶は悔しそうな表情を浮かべながら、
少し間を置いてから、言葉を続けたー。

「案内人さんー…
 実は、わたしの反応みて、楽しんでません?」

麻耶のそんな言葉に、
ミズキは内心でギクッとしながらも
「ーー別にー。わたしはただ、案内人としての仕事をしてるだけですから」と、
そう淡々と言葉を返してくるー。

「ーーーー…」
疑いの目を向ける麻耶ー。

が、やがて、
「無理矢理男体化させた次の人生ってことはー、
 ”男”で、人生に何らかの不具合があるんですよね?」と、
不満そうに言うと、ミズキは「不具合は起きないこともあります」と、
それだけ言葉を口にしたー。

「ーーー…つ、次は仕方ないからそれで我慢するとして、
 その次こそ、必ず、女になっておしゃれをしますからね!!」
麻耶は悔しそうにそう叫ぶと、
そのまま、”次の人生”の扉を開いたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”次の人生”が始まったー。

だがー

次の”人生”はーーー

「ーーーくそっ!オラフ!大丈夫かー?」
男が叫ぶー。

次の人生は、他の国とはほとんど接点のない”島”に生まれた男だったー。

”オラフ”として、貧しく過酷な生活を送って来た、
”前”は麻耶だった彼はー、
30代の頃に、島で疫病が流行り始めて、
それに感染してしまったー。

成す術もなく衰弱していくオラフ。

「ーーー…あぁ…くそー………」
オラフはそう呟きながら、苦しみのうちに人生の幕を下ろしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー”お久しぶり”ですー」
案内人のミズキは、オラフの姿をスキャンしながら、
”幹也” ”麻耶” であった人間であることを確認し、
そう言葉を口にしたー。

「ーー島の仲間たちは、無事ですか?」
オラフは心配そうにそう言い放ったー。

「ーーーはい。あの後、疫病は気温の上昇と共に落ち着き、
 島の皆さんは無事ですね」

ミズキは淡々とそう言うと、
オラフは「ーまさか、人生に”次”があるなんてー」と、そう言葉を口にしたー。

「ーーーまぁ、あなたはそれで10回目の人生だったのですけどね」
ミズキはそれだけ言うと、「10回目ぇ!?」と、驚くオラフを無視して
「ー次の人生はーーー」と、
手元の”光で出来たタブレット”のようなものを見つめるー。

「ーーあぁ、また”男”ですねー」
ミズキはそう呟くー。

”そういえばこの人、妙に男率が高いようなー…?”

そう思いながらも、
”次にどんな風に生まれるか”を決めているのはミズキではないため、
淡々とミズキはその処理を行うー。

「ーーーーーー」
チラッと、”幹也”であった男、オラフのほうを見つめるー。
今の彼に、幹也としての記憶は残っていないー。

がー、オラフはふと言葉を口にしたー

「できれば、次は女が良かったなぁ」
とー。

「ーーそれは残念でしたー」
ミズキは淡々とそう言葉を口にするー

何度生まれ変わってもー
その都度記憶が回収されたとしてもー、
本質的な”何か”は残るのかもしれないー。

「ーーーふふー」
ミズキは少しだけ笑うー。

すると、オラフは「何を笑ってるんですか?」と、
少し苦笑いした様子で尋ねてくるー。

「ーーーいえー。前のあなたにも同じことを
 言われたことがあるのでー」

ミズキがそう言葉を口にすると、
「ーあなたの次の人生を強引に女性にすることもできます。
 ただし、裏技的な方法で、男として生まれるはずだった人生を
 無理矢理女体化させるので、次の人生に”副作用”が
 生まれる可能性があります」と、そんな言葉を続けたー。

「ーーふ、副作用ー…例えば?」
オラフの言葉に、
「ー前にもあなたは”裏技”で女として次の人生を始めたことが
 ありますがー…
 その時は親から虐待を受けてすぐに死んだりー
 あとは…容姿がイマイチだったことでいじめを受けて事故死したことがありましたね」と、
ミズキは淡々と過去の記録を見つめながらそう言葉を口にしたー。

「ーーーえぇ……
 普通の人生は歩めないってことですかー?」

「ーいえ。悪い副作用は必ず出るとは限りません」
ミズキの言葉に、オラフは「じ、じゃあ…次の人生は女にして下さい!」と、
そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー

「ーーーーー…」
ミズキは、いつものように感情を感じさせない
表情で、赤ん坊を見つめていたー。

彼女はー”綾乃(あやの)”と名付けられた3日前に
生まれたはずの子ー。

だが、もうここにいるー。
生後3日で容体が急変して、3日で人生を終えたのだー。

「ーーーー」
その赤ん坊は、3日前に”オラフ”から、次の人生へ進んだ人間だったー。

”このままの姿じゃ話せないからー”

そう思いながら、ミズキが手をかざしー、
”今までで一番長かった人生”である幹也の姿に
その子を変え、”幹也”としての記憶を戻し、話を始めたー

「ーーー…! あ、俺ー…
 そ、そっかー… 今回はすぐ死んだのかー」

幹也がそう言うと、
ミズキは「災難でしたね」と、だけ言葉を口にするー

”幹也”として生きたあとの人間の記憶も全部一時的に返却された状態の彼は、
「ーー女として生まれるときは、ホントきつい人生ばっかですね」と、
苦笑いするー。

「ーーーーまぁ、無理矢理女体化させた場合は
 そうなりやすいです」

ミズキは淡々と言うと、
「ーあなたの次の人生はー」
と、そう言葉を口にしたー。

「ーー男、なんですよね?どうせ」
幹也が笑いながら言うと、
「はい、男です」
と、ミズキは淡々と言葉を口にしたー。

「ーーは~~~~~~」
幹也はため息をつくと、
「まぁ、いいですー。今回は男で。
 男として真っ当に生きれば、今度は女かもしれませんし」
と、少し諦めたかのような笑みを浮かべるー。

「ーーそうですか。分かりましたー
 では、次の人生へお進みください」

何度会っても淡々としているミズキー。

幹也は”っていうか、何のために俺たちは何度も人生を繰り返してるんだろうな?”と、
そう思いながら、そのまま次の人生へと向かうのだったー

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

次回が最終回デス~!

生きている間に記憶がないだけで
実はこんな風に人生を繰り返しているのだとしたら、
それはそれで面白いかもですネ~笑

ちなみに、今回のお話に登場している
あの世の案内人・ミズキは、少し前に書いた
「あの世から娘を見ていたら」のミズキと同一人物デス~!
(特に物語上繋がってないので、↑を知らなくても問題ありません~★
 ただ、あの世が出て来るお話同士だったので 
 せっかくの機会ということで再登場しました~笑)

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