<女体化>あなたは来世も男です①~次の人生~

「あなたは来世も男です」

あの世にやってきた男は、そう言葉を告げられるー。

しかし、彼はどうしても来世は”女”になりたいと言い始めてー…?

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「ーーーー」

80代の高齢男性・寺門 幹也(てらかど みきや)が、
うっすらと目を開くー。

自分は、もう長くはないー。

しかしー、十分に人生を全うすることができたー。
後悔は、ないー。

定年まで一生懸命働き、趣味も楽しみー、
定年後はボランティア活動などもしながら徳を積んだー。

存分に、楽しんだし、
存分にいいこともしたー。

人生に後悔はないー。

今までの人生を穏やかに振り返りながら
彼、寺門 幹也は80年以上の人生を全うし、
数日後、眠るようにして息を引き取ったー。

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「ーーーーー…!」

幹也が気付くと、見たこともないような
幻想的な空間に立っていたー。

「ーーーここはー?」
そう呟く幹也ー。

が、声が”若い頃の自分”のものであることに気付き、
驚いて自分の身体を見つめると、
身体もしっかりと若返っていたー。

「ーーー……死ぬ直前の夢ってやつなのかー…?」
幹也がそう困惑していると、
「ーー人生、お疲れ様でしたー」
と、背後から女の声がしたー。

幹也が驚いて振り返ると、
そこには、可愛らしい風貌の感情を感じさせない女が立っていたー

「ーーえ… あ、わし、もう死んだのー?」
幹也が言うー。

若い姿のまま”わし”と言っていると、
何だかヘンな感じだー。

「ーーはい。昨夜、老衰により病院で息を引き取られましたー。
 ここは、そうですねー
 皆さんが言う”あの世”ですー。

 と、言ってもー、あなたも既に何度かここに来ているのですがー」

その女の言葉に、幹也は驚くー。

「ーわ、わしが前にもここにー?」
幹也が言うと、女は頷きながら
「あなたは今回で、”7回目”の人生ですからねー」と、
タブレットのような形の光を操作しながら、その女は言葉を口にしたー。

「な…7回目…じ、人生一度きりじゃなかったのかー」
幹也が驚くー。

「ーえぇ。ただ、生きている間にその記憶が残っていると、
 適当に死んだり、”今回は悪いことをするか”みたいな人が増えたり、
 色々問題がありますからねー。
 生きている皆さんには”人生は一度きり”と思っていただいています」

女はそこまで言うと、

「ーーあ、申し遅れましたー
 わたしは案内人のミズキですー。あなたの担当ですので、
 短い間ですが、宜しくお願いします」

ミズキは淡々とそう呟くー。

幹也が周囲を見渡すと、
周囲には幹也と同じく死んだと思われる人間らしき人が何名か見えたー。

「ーーー未練があって、”ここ”に留まる人もいますがー
 基本的にはここは”次”に進むための中継地点ですー。」

ミズキのそんな言葉に、
幹也は「そ、そうだー7回目ってことは、またわしはー…」
と、そこまで言いかけて
「ーわ、若い姿に戻れたんだからわしってのは変かー」と、
ボソッと呟きながら「俺はまた、”人生”を送れるんですか!?」と、
そう言葉を口にするー。

「ーーはい。基本的には”また次”がありますー」
ミズキのそんな言葉に、幹也は「じゃあ早速!次は女でお願いします!」と、
そんな風に叫んだー。

がー、その言葉を聞いたミズキはノーリアクションのまま
「あなたは来世も男です」と、それだけ言葉を口にしたー

「はーー…? え…?選べないんですか!?
 今回、男だったんで、女になりたいんですけど!」

幹也はすぐにそんな反論をするー。

しかし、ミズキも引く様子はなく、
「既に決まってることですからー。例外はありません」と、
淡々と言葉を返して来たー。

「ーえ…えぇ…?も、もしかして一度男に生まれたら
 ずっと男ってことですかー!?」

幹也がそう言うと、
「いえ、そういうことではありませんー。
 あなたはー
 そうですね。5回目の人生の時は江戸時代で
 呉服問屋の娘でしたー」
と、ミズキはそう言葉を口にするー。

「あと、4回目の人生の時も
 女でしたねー。
 この時は、魔女裁判にかけられて死んでますがー。

 ーーそれとー、1回目も女性で
 この時はマンモスの下敷きになって死んでますね」

ミズキがそう言うと、
幹也は「ーーて、適当なこと言ってません!?」と、
そう言い放つー。

「ーいえー本当ですがー。その時の記憶、返しましょうか?」と、
ミズキはそう言葉を口にするー。

試しに”魔女裁判”で死んだ”4回目”の記憶を一時的に
返してもらう幹也ー

「ーー…あ…… わ、わたしー…」
4回目の記憶を思い出してそう呟くと幹也は
”魔女裁判”によって死罪となった時の恐怖を思い出して震えるー。

すぐにミズキがその記憶をまた回収すると、
「ーとにかく、あなたは来世は男です。頑張ってください」と、
愛想なくそう言い放つー

「い、いやいやいやいやー
 次は俺、女になりたいんだー。
 
 どうかー、どうか、お願いしますー」

生前、”女性のおしゃれ”に興味があった幹也ー。
それが理由でアクセサリー業界で働き、
色々なヒット商品も生み出して来たー。

今回は、”男”だったから自分自身がそれを使うことは
なかったものの、
次回はぜひ、女として自分自身が”女のおしゃれ”を
してみたいとー、強くそう思っていたー。

「ーーーーー」
ミズキは呆れ顔で幹也を見つめるー

「お願いします!今度は女にして下さい!」

「ーーーー例外はありません」
ミズキがそう言い放つー。

しかし、それでも土下座を続ける幹也ー。

「ーーーっ…はぁぁ~~~~~」
ミズキはうんざりした様子でため息を吐くと、
「ーー例外はありませんが、”裏技”はあります」と、
そう言葉を口にしたー。

「ーーほ、本当ですかー!?
 冷徹に見えるけど、実は優しいんですね!」

幹也が嬉しそうに顔を上げると、
ミズキはその言葉は無視して、
「どうしても、”女”がいいんですね?」と、
そう言葉を口にするー。

「はいー…ぜひ!」
幹也のその言葉に、
「ーーでは、”次”の人生を”強引に”女体化させることで
 女として生まれるようにしておきますので」と、
ミズキは、何やら光のタブレットのようなものを操作して、
そのまま淡々と、奥にあるゲートを指差したー。

「あそこから、次の人生に進むことができます」

そう言いながら、”3つ”存在する扉の内の
一つを指差すー。

「残りのふたつは?」
幹也が興味本位で聞くと、

「ひとつは”地獄”への扉です。問題のある魂は
 あそこで”服役”してから、次の人生に向かいますー。

 もうひとつはー…
 そうですねーあなたが知る必要はありません」

ミズキは愛想なくそう言うと、
「ーーお、教えてくれてもいいじゃないですかー」と、
幹也は苦笑いするー。

が、教えてくれそうにないので諦めて
”次の人生”に繋がる扉を開けようとするー。

「ーー色々、ありがとうございましたー
 また、次の人生が終わった時もよろしくお願いします」

幹也が礼儀正しく頭を下げると、ミズキは「はい」と、だけ
答えて、そのまま”次”の人の応対に当たり始めたー

「ーーはは…愛想のない案内人だなぁ…」
幹也はそう言いながら”次”の人生をはじめたー。

”次”の人生はー、
本来”男”として生まれるはずだった身体を
強引に”女体化”させることで、”女”として誕生したー。

”えっ…!?”

生まれた直後ー、幹也だった”存在”はそう思うー

”えっ…!?なんで俺”幹也”としての記憶、残ってるんだー!?”

戸惑う幹也ー。

生まれて、赤ん坊として泣きながら
何故かそんなことを考えることが出来る状態だったー。

”え…???前の6回分の人生の記憶はなかったのに、
 なんで前回ー7回目の”幹也”の記憶はあるんだー?”

そう思いながらも、
医者の”元気な女の子です”という声が聞こえて来てー、
”ありがとうミズキさんー”と、心の中で呟くー。

”っても、赤ちゃんの時代からスタートかー…
 まぁ、また生まれ変わるわけだし、そうだよなー”

”奈央子(なおこ)”と名付けられ、
新たな人生をスタートさせた幹也ー。

何故、自分の記憶が残っているのかは分からないが、
むしろ、良かったかもしれないー。
今度は女の子として、色々なおしゃれを存分に楽しむことができるー。

そんなことを思いながら、
”赤ちゃん”としての日々を過ごす幹也ー。

正直、まだできることはほとんどないが、
逆に”何もしなくても”問題ないので、
ゆっくりすることができるー。

”大人としての記憶があるのに、赤ちゃんとして過ごせるのも最高だなー
 1年中休みで寝てられるような、そんな感じでー”

そう思いながら生活を続ける幹也ー。

しかしー…

「ーーあ~~~~も~~~~~ こいつホント邪魔!」

時が経つにつれてー、
母親の態度が、次第に悪くなり始めたー。

父親も、同じー。

”ーは…?おいっ!やめろよ!?”

やがて、赤ん坊である”奈央子”への暴力が始まるー。

そして、そのままーーー

「ーーー!!!」
また、”あの世”に来てしまったー。

「ーーーーー…」
赤ん坊の姿のまま、ハイハイする幹也ー。

「ーーーー…」
そんな幹也=奈央子と目が遭った
あの世の案内人・ミズキは、
少しだけため息をつくと、「その姿じゃ話せないだろうから」と、
手をかざすと、”前の人生”である幹也の姿に戻して、
そのまま言葉を口にしたー。

「ーーーーもう、死んだの?」
とー。

「ーー…ーーはい…最悪の人生でした」
幹也がそう言うと、ミズキは少しだけ戸惑ってから
「ーー”本当は来世が男だった”のを、無理矢理女体化させて
 女として生まれるようにしたから”副作用”が出たようですね」と、
淡々と言葉を口にしたー。

ミズキが言うには
”本来、”次”に生まれる性別を無理やり捻じ曲げると、
次の人生に”何らかの副作用”が出るのだという。

”奈央子”がいきなり虐待されて死ぬことになったのも
その副作用だろう、と、ミズキは言ったー。

「ー”次”になっても記憶が残ってたのはー?」
幹也がそう言うと、ミズキは「それもたまにある副作用です」と、
それだけ言うと
幹也は「ま…まぁいいやー…早速次へー」と、
そう言葉を口にする。

するとミズキは言ったー。

「来世も”男”ですね」
とー。

「ーえぇ!?なんで!?」
幹也が思わず声を上げると、
「ーさぁ?わたしは案内人で、決めてるのは”上”ですから。
 まぁ、色々な条件や判断基準があるとは聞きますけど」と、
ミズキは興味なさそうに呟いたー。

「ーーつ、つ、次も…次も女にして下さい!
 っていうか、”奈央子”としての人生は、
 短すぎて人生やってきた感じもしないし!」

幹也が必死に頼み込むと、
面倒臭そうにミズキはため息をつきながら
「ーはぁ…まぁ、いいでしょうー」と、そう呟くと、
次に幹也が生まれる身体を、また”女体化”させてくれることを
約束してくれたー。

「ーただし、”副作用”がまた出る可能性がありますからー。
 それだけは覚えておいてくださいー

 ーーーって、言ってもー
 ”次”は覚えてないかもしれませんけど」

ミズキが言うー。

次の人生の性別を強引に変えても、毎回記憶が残るわけでは
ないのだとー。

今度は、”幹也”としての記憶も失うかもしれないようだー。

「ーまぁ、それはー。大丈夫ですー。
 どうせ、”幹也”になる前の6回の人生も覚えてませんし」

そう言い放つと、幹也は再びミズキに案内されて、
”次の人生”が始まる扉を開いたー。

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沙耶(さや)として、
新しい人生を始めた幹也ー。

”幹也”としての記憶は失い、
あの世での出来事も忘れて、
本来男として生まれるはずだった身体を、
ミズキの力で強引に女体化させた状態で、
女としての人生を送っていたー。

過去のことは忘れー、
沙耶として生きー、
高校に入学ー、
高校生になった沙耶はーー

理想の人生をーーー

「ーー寄ってくんなよ!ブスなんだから!」

ーー送ることはできていなかったー。

”女体化した副作用”とやらなのだろうかー。

容姿に恵まれず、
周囲から”ブス”といじめられる人生を送っていた沙耶は、
今日も、教室の端っこで暗い表情を浮かべながらー、
”幹也”だった頃に願った”おしゃれ”を楽しむこととも無縁の
辛い人生を送っていたー…

②へ続く

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来世の性別を強引に変える
少し変わったタイプのお話デス~★笑

なかなか、思い通りの人生を送ることはできない状態が
今のところは続いていますネ~!

続きはまた明日デス~!★!

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