<憑依>彼女に憑依しようとする俺を止めないと!②~過去の自分~

”軽い気持ちで彼女に憑依した”結果、
彼女は”憑依された副作用”で命を落としてしまうー。

それを阻止するため、過去に戻った彼は、
”過去の俺”を止めようとするー。

・・・・・・・・・・・・・・・

「ーお、今日は用事があるから早く帰るんじゃなかったのか?」
親友の喜平がそんな言葉を口にするー。

このセリフを聞くのはもう2回目だー。

幸治は”また”朱音が憑依される前に戻ったことを確信すると、
ガタッと立ち上がって、”自分”の家に向かおうとするー。

「ーえっ!?おい!?どこ行くんだよ!?」
喜平がそう叫ぶと、幸治は「急用を思い出した!」と
叫んで、慌てて走り出すー。

”まだ、俺が憑依薬を使うまで50分あるー
 全力で帰れば、過去の俺を止めることができるー”

そう思いながら、家に向かって走るー。

その間にも、幸治は”自分の家”=この時代の”俺”に電話を
掛けようとしたものの、”29日の幸治のスマホ”から、
”21日の幸治のスマホ”に連絡をすることはできずに、
電話を掛けることはできなかったー。

仕方がなく、公衆電話から”自分のスマホ”に連絡するも、
”この時代に、幸治のスマホが2つ存在する”ことで、
何かおかしくなっているのか、上手く電話はかからなかったー。

「くそっ!」
幸治は”過去の俺”を止めるには、”俺の家”に行くしかないー、と
そう判断して、慌てて家に向かうー。

タクシーを捕まえて、全力で家に向かった結果ー…
幸治は17:05には、自分の家にたどり着いていたー。

「俺が朱音に憑依するのは17時20分ー
 大丈夫だ…」

そう思いながら、家の中に飛び込むと、
家の中にいた”21日の幸治”が驚きの表情を浮かべたー。

その反応は当然だー。
朱音に憑依する日の幸治からすれば、
この後のことは知らないー。
彼から見て、約1週間後の自分が家に急に入ってきたら驚くだろうー。

「ーえ…お、俺??」
過去の幸治が戸惑うー。

「ーーじ、事情は後だ!朱音への憑依をやめるんだ!」
幸治がそう叫ぶと、過去の幸治は「は…いや?何のことだよ」と、
とぼけて見せたー。

「というか、お前は…誰だよ!?」
過去の幸治の言葉に、幸治は意を決して言葉を口にするー。

「ー俺はー…1週間後の未来から来たお前だー。
 聞いてくれー。
 朱音に憑依しちゃいけないー」

幸治はそう言いながら、憑依薬の説明書を開き、
副作用の部分を見せるー。

「ーー俺が朱音に憑依したら、憑依が終わったあと、
 朱音は死ぬー」

幸治の言葉に、過去の幸治は驚きの表情を浮かべるー。

「ーーで、でも副作用は0.1%、しかも死ぬようなことはないって」
過去の幸治が説明書を指差しながら言うー。

しかし、”憑依薬”の治験などほとんど行われていないだろうし、
まだ未知の部分もあるのだろうー。
実際、朱音は憑依の副作用で死んだのだー。

「ーー死ぬんだよ!!だから、俺がこうして”自分”を止めに来てるんだ!
 朱音はー…痙攣して泡を吹いてーー…死ぬ…」
目から涙を溢れさせながらそう叫ぶ幸治ー。

その言葉に、戸惑いの表情を浮かべる過去の幸治ー。

がー、
その時だったー。

突然、周囲の空間が歪み始めるー

”ま、またー!?”
幸治がそう思っていると、
意識が飛びーーー

また、大学のラウンジで目を覚ましたー
朱音に憑依する日ー21日の16時30分ー。
幸治が朱音に憑依するまで”50分”のタイミングだー。

「ーお、今日は用事があるから早く帰るんじゃなかったのか?」
親友の喜平が、またそんな言葉を掛けて来るー。

「ーーー…なんで…どうして?」
幸治は喜平を無視して呟くー。

前回は、結局最初と同じように朱音は憑依されてしまい、
朱音が死んだ後に”ここ”に戻されたー

だが、今回はまだ朱音に憑依する前ー、
しかも”過去の俺”を説得することができそうなタイミングで
”ここ”に戻されたー。

「ーーーー……」
幸治は、考えるー。

考え込んでいる幸治を心配そうに見つめる喜平ー。

そして、幸治はある可能性を思いついたー。

”まさか、過去の自分との接触はダメなのかー?”
そう考える幸治ー。

2回とも、”過去の幸治”と対面した少しあとに
ここに戻されているー。
つまりー、”過去の俺”と対面してはいけないのかもしれないー。

確かに、タイムスリップの物語で
”過去の自分”と会うことは法度だったりするー。
現実でも、そうなのだろうかー。

そう思った幸治は
「ならー…」と、彼女の朱音に電話をかけて、
朱音に叫ぶー

「朱音…!今、家にいるか?」
幸治がそう言うと、
朱音は”え…?うんーそうだけどー”と、そう言葉を口にするー。

幸治は慌てて、「今から行くから」と、そう叫ぶとー、
17:14…
幸治が朱音に憑依するギリギリに何とか朱音の家にたどり着きー、
朱音をすぐに外に連れ出したー。

”ー外に連れ出しちゃえば、過去の俺も朱音の居場所は分からないはずー”

そう思いながら、”ご飯”の名目で朱音を外に連れ出した幸治ー

「ーーーーー」
朱音とご飯を食べつつ、時計を確認するー

17:50-

「よかったー…」
幸治は安堵するー。
”過去の幸治”は、幸治が朱音を外に連れ出したことで、
”朱音がどこにいるのか分からず”憑依を断念したのだろうー。

「ーーー…よかったって?」
不思議そうにする朱音ー。

幸治は「いやー」と首を横に振ると、
”こうして、もう一度朱音と会えるなんてー”と思いながら
朱音とのひと時を楽しんだー

がーーー
その翌日ー

「ーーーーーーそんな…」

朱音は”死んだ”ー

そうー
21日の憑依を阻止しても、”過去の幸治”の手元には憑依薬があるー。
当然、日程を変えて朱音にまた憑依するのだー。

結果ー、22日…朱音は憑依が終わった直後、突如として血を流し、
痙攣して、泡を噴きー、そして、死んだー…

結果は、変わらなかったー

「ーくそっ…!朱音に憑依するんじゃねぇよ!」
過去の自分のところに駆け寄って、そう叫ぶ幸治ー。

”過去の幸治”と口論しているとー、
やはりまた、空間が歪んで”21日”の大学のラウンジに戻されたー

”やっぱ、過去の俺と会うとここに戻るのかー”
幸治はそう思いながらー、

「ーお、今日は用事があるから早く帰るんじゃなかったのか?」
と、声をかけて来る親友の喜平を無視してー、
今度は、17時20分ー…
この日の幸治が朱音に憑依するタイミングまで待つー。

朱音の家の周囲でスタンバイし、
お互いに預けている合鍵を手に、
”朱音が憑依されるまで”待ったー。

そしてー
17時25分ー
もう、憑依を終えたであろう時間に
朱音の家の中に踏み込んだー

「ーーあっ…?」
部屋の中には嬉しそうに胸を揉んでいる
”憑依された朱音”の姿があったー

「ーえ…な、何で俺がー!?」
憑依された朱音が叫ぶー。

幸治は「ま、待ってくれ!話を聞いてくれ!」と、そう叫ぶと、
朱音は不満そうに「だ…誰だよお前は…!?」と、そう言葉を口にしたー。

不機嫌そうに胸を触りながら、話を聞く姿勢を示す朱音ー。

幸治は手短に未来から来たことなどを説明すると、
「ー今すぐ、朱音から出てくれ!」と、そう叫んだー。

”ーーーー”
会話をしつつ、ちらっと時計を見つめる幸治ー。

既に”憑依された朱音”と対面してから5分以上経過したー。

”いつも”過去の自分と会うと”5分以内”に、空間が歪んで
大学のラウンジに戻されているー。

と、いうことは、
”過去の俺本体じゃなくて、過去の俺が憑依している人相手なら
 直接会っても大丈夫なんだなー”
と、そう判断するー

「ーあ、朱音が憑依のせいで死ぬ?嘘だろー?」
目の前にいる朱音がそう言い放つー

「ほ、本当なんだ!とにかく今すぐ朱音から出るんだ!」
幸治が叫ぶー。

”朱音に憑依していた時間”は約1時間ー
それを、10分ちょっとに減らせれば、朱音の身体に副作用は起きず、
助かるかもしれないー。

そう判断したのだー。

「ーで、でも、せっかく朱音に憑依したんだしー…」
そう言いながら、名残り惜しそうに自分の髪を触る、
朱音に憑依した過去の幸治ー。

「ーは、早く!いいから!
 予定通り1時間憑依してると、朱音は副作用で死ぬんだ!」
幸治は必死にそう叫ぶー。

朱音が痙攣しながら泡を噴きー、そして死んでいくあの光景が
脳裏にフラッシュバックするー。

”犯した罪は決して消えない”ー。
それは分かっているー。

例え過去を変えたとしても、朱音に憑依したという事実は
自分の中では永遠に消えることはないかもしれないー。

けれどー、それでもー、
朱音を助けたかった。
何としてでもー。

「ーわ、わかったー
 今、朱音から抜ければ、朱音は助かるんだな?」
憑依された朱音がそう呟くー。

「ーーー…わ、分からないー。でも、やるしかないー」
その言葉に、朱音が頷くと、朱音は気を失って
その場に倒れるー。

どうやら、”過去の自分”は、幸治の言葉に納得してくれたようだー。

幸治は、朱音のことを本当に大事にしているー。
だから、説得すれば話は通じるー。

過去の自分と争うようなことにならないのだけは、幸いだったかもしれないー。

「ーーぅ…」
目を覚ます朱音ー。

幸治が「朱音!」と、すぐに朱音の名前を呼びかけるー。

”この時点の朱音”からすれば目の前にいるのは”未来の幸治”だが、
1週間ちょっとしか経過していない未来からやってきただけだし、
特に朱音はそんなことに気付かず、
「あれ…わたし…? …え?なんで幸治がわたしの家にー?」と、
戸惑いの言葉を口にするー。

幸治はすぐに「よかったー」と、そう呟きながら
朱音を抱きしめるー。

がー、その時だったー

朱音が咳き込んでーーー
”吐血”したーー

朱音の血が幸治の顔面に飛び散るーー

「ーーあ…朱音ー?」
震える幸治ー

朱音は苦しそうに「ーあれ…な…なにこれ…?」と、
怯えた表情を浮かべると、身体が痙攣し始めて、
すぐに意識を失い、倒れ込んでしまうー。

「ーそ、そんなー…朱音!」
幸治の目から涙があふれ出すー。

朱音はまた、口から泡を吹き出しながら、
みるみる顔色が悪くなっていくー。

”憑依”の時間は関係ないー。
朱音の身体は”憑依薬によって憑依されること”に、
耐えられないようだー。

例え、1秒であっても憑依させるわけにはいかないー。

「ーーそうだ…」
幸治はすぐに救急車を呼ぶー。

”すぐに”救急車を呼べば助かるかもしれないー。
そう思って慌てて救急車を呼びーーー
駆け付けた救急隊員に朱音を託すー。

がーーー…
朱音はやはり、助からなかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”どうすれば、朱音を助けることができるのかー”

幸治は、頭を抱えるー。

「ーそもそも、俺は自殺したはずなのにーどうして」
幸治はそんなことを呟きながら状況を整理するー。

軽い気持ちで朱音に憑依し、
憑依薬の副作用で朱音を死なせてしまったー。

その罪悪感に耐え切れず”自分を裁くため”に、自殺した幸治ー。

しかし、何故か、朱音に憑依する日の21日16時30分の
大学のラウンジにタイムスリップしてしまいー…
”朱音に俺が憑依する50分前”に戻されるー。

しかし”過去の自分自身”と接触することはタブーなのか、
5分もしないうちにまた、大学のラウンジに戻されてしまう状況ー。

この状況で、”過去の俺”による憑依をどうにか阻止する方法はー、
あるのかどうかー。
朱音に憑依後に、すぐに過去の自分を説得して、朱音から離脱させても、
朱音は結局死ぬー。
1秒たりとも憑依させてはいけないー。

・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーお、今日は用事があるから早く帰るんじゃなかったのか?」
親友・風村 喜平にいつものセリフを言われる幸治ー。

”くそっ”ー
幸治は表情を歪めるー

憑依が実行される50分以内に、幸治自身の家に戻ることはできるー。
が、過去の自分と接触すると、すぐに時空が歪み、
また21日16時30分ー…大学のラウンジに戻されてしまうー。

直接接触することはできないー。

しかし、電話もできないー。
幸治の家には固定電話がないし、
”スマホ”は、未来から一緒に来ているせいで、上手く繋がらないー。

恐らくー、
”幸治自身の幸治のスマホ”と”過去の幸治の幸治のスマホ”の2つが
この世界に存在してしまっている故に、上手く繋がらなくなって
しまっているー。

公衆電話から自分のスマホに掛けても、”自分が持っているほう”が
反応してしまい、過去の幸治と連絡することもできないー。

かと言って、”朱音を避難”させてもダメだったー。
結局、”別のタイミング”で、朱音に過去の自分が憑依してしまい、
朱音は死ぬー。

どうにか”過去の幸治が、朱音に憑依する前に”
阻止しないといけないー。

「ーいや、待てよー…
 朱音に憑依している過去の俺と話すことはできたー…
 ”直接”以外に説得できる他の方法があればー…」

幸治はそう考えると、
”そうだ!インターホン越しに話せば大丈夫かも!”と、
そう思いながら、自分の家に向かって走るのだったー…

必ず、朱音を救うー。
それが、朱音に憑依してしまった自分にできる、
唯一かもしれない罪滅ぼしなのだからー…

③へ続く

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コメント

次回が最終回デス~!

”過去の自分”による憑依を阻止して
彼女を救うことはできるのでしょうか~?

結末もぜひ見届けて下さいネ~!

今日もありがとうございました~!☆

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