<入れ替わり>最後の1日をきみの身体で①~囚人~

翌日に刑が執行されるー。

極刑の判決を受けていた彼は、
特殊なルートで、そのことを知ったー。

が、そんな彼は今まで世話になった女性看守に、
最後に1日だけ、その身体で過ごしたいと”入れ替わり”を提案し…?

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泉沢 啓介(いずみさわ けいすけ)ー。
彼は、死刑判決を受けた死刑囚だー。

何人もの命を奪い、逮捕されー、
裁判の末に、死刑が確定したー。

がー、そんな彼は、
死刑囚とは思えないほどに穏やかで、物腰も低く、
丁寧な振る舞いの目立つ青年だったー。

そんな彼と接する機会の多い女性刑務官・峯山 奈美(みねやま なみ)は、
慶介のそんな人柄に、少なからず惹かれてしまっていたー。
いやー…仕事柄、それを表に出さないようにはしていたものの、
啓介のことを”好き”になってしまっていたー。

それがー、看守という立場としてふさわしいことではない、とは
分かりながらもー。

「ーーーあ、峯山さんー」
ある日ー、啓介は牢の中から、奈美の姿を見つけると、
声をかけて来たー。

「ーーどうかしたの?」
奈美が、啓介に近付くー。

「ーーー僕、明日で死ぬみたいですー」
啓介が穏やかに笑いながらそう呟くと、
奈美は少し驚いた様子で「え?どうしたの?体調でも悪いの?」と、
そんな言葉を口にするー。

がー、啓介は首を横に振ったー。

「峯山さんー。僕が”何”だか、忘れましたかー?」
啓介のそんな言葉に、奈美は少し戸惑いながらも、
「あなたは…死刑囚ー」と、そう返すと、
「そうです」と、啓介は穏やかに笑うー。

「僕の刑は明日執行されるみたいですー。
 ですから、僕は明日で死にます」

死を覚悟したような笑みー。

奈美は、表情を歪めながら、
「ー刑の執行が前日に通知されることなんてないはずだけど?」と、
啓介に確認するー。

が、啓介は自信を持ったかのような表情で笑うー。

「”特殊なルート”で情報を手に入れましたー。
 間違いなく、僕は明日、死刑になります」

啓介の言葉に、奈美はどう言っていいのか分からず、
「そ、そうー」と、言葉を口にしたー。

いつかは、そんな日が来ると思っていたー。
しかし、奈美は動揺を隠してそのまま啓介の方を見つめるー。

奈美はまだ若く、こういった経験もあまりしてきてはいないー。
それだけに、二重の意味で衝撃だったー。

この仕事を始めたきっかけは、
親戚のおじさんー。
親戚のおじさんが昔、悪さをして
数年間、刑務所に入っていたことがあり、
その時に”看守の人にお世話になった”と言っていたことから、
奈美はこの仕事を目指したー

そのおじさんは、奈美が小さい頃にはもう、とっくに刑期を終えて
出所していて、奈美からすれば”とてもいいおじさん”だったー。

が、おじさんは”昔の俺はクズだった”と、よく言っていて、
看守の人に世話になったことから心を入れ替えて、今の自分が
あるのだと、よく語っていたー。

そんなことがきっかけで、奈美もこの仕事を志したのだー。

そんな奈美は、服役している人たちの話をよく聞き、
出所後は、正しい道へと進める確率が”少しでも上がるように”
心がけて来たー。

「ーーーははー。そんな寂しそうな顔をしないでくださいよ。
 僕は、極悪人ですよ?」
啓介は笑うー。

この啓介は”死刑囚”ー。
外に出ることは、もうないー。

がー、実際、この啓介は大勢の命を奪っている極悪人で、
それは許されることではない。

しかし、毎日啓介と接していると、
それが本当なのかも分からなくなってくるー。

「ーそんな顔、してないけど」
奈美は、それだけ言うと、
「ー本当に明日執行されるのかは分からないけど、
 とにかく、今日は今日、明日は明日ー。
 悔いのないように、そこで反省しながら生きなさい」
と、そう言葉を口にして、立ち去ろうとするー。

「ーーー」
そんな奈美を見つめながら
啓介は、少しだけ笑うー。

”ーーー僕は知ってるよーー…
 君は僕のことが好きなんだろうー?”

啓介は、奈美の普段の振る舞いから、
奈美に好意を抱かれていることを既に察知していたー。
自分自身のことをカッコいいとか、そんな風に思ったことはないが、
小さい頃から”人間観察”が趣味な啓介は、
奈美のそんな感情に気付いていたー。

その上で、言葉を口にするー。

「ーー峯山さんには、本当にお世話になりましたー。
 明日はお会いできるか分からないので、
 先にお礼を言っておきますー。

 本当に、ありがとうございましたー」と、
礼儀正しく頭を下げるー。

「ーーーー」
奈美は、背を向けたまま、悲しそうな表情を浮かべるー。

情が移るようなことがあってはいけないー。
それは、重々承知しているー。

けれど、刑務官も全員人間。ロボットではないー。
毎日接していると、どうしても感情が邪魔をしてしまうこともあるー。

この泉沢 啓介は
”ブラック企業”とかねてから批判されている企業に、
勤務していた男だー。

入社2年目ー。
彼の先輩であり、指導役だった社員が過労が原因で”自殺”したー。

しかし、会社側はその先輩社員の過労を認めようとはせず、
挙句の果てに”元々精神的に不安定だった”だとか
”会社で不正を働いていた”だとか、そんなことを言い始め、
自殺した社員に罪を擦り付け始めたー。

やがてー、彼の上司は言ったー。

「ー会社に散々迷惑をかけて、自殺するなんて
 迷惑な野郎だよー」

とー。

その後も、上司は同僚の女性社員にパワハラを繰り返し、
その子を休職へと追い込んだー。

そんな”地獄”の中でー
彼は罪を犯してしまったー。

会社の”ブラック”の部分に関わる人間を、
ある日の出社直後に次々と襲撃ー、
その命を奪ったのだー。

彼はー、結果的に10人以上の命を奪ったー。

命を奪われた人間は、全員、
自殺した先輩や、休職に追い込まれた同僚に
絡んでいた者たちー。
つまり、パワハラや不正に関与していた人間たちだ。

他の人間には一切手を出さず、
彼は、狙った人間だけを葬り去り、そして、逮捕されたー。

しかし、相手がどんな人間であろうと、
罪は罪ー。
彼は死刑判決を受け、そして明日、刑が執行されようとしていたー。

”泉沢 啓介”は、真面目過ぎたのかもしれないー。
それが、過酷な環境で歪み、凶悪犯の道を歩んでしまったのかもしれないー。

「ーひとつだけ、お願いを聞いてもらえたりしますかー?」
啓介が、奈美に対して、ふと言葉を口にするー。

「ーー…お願い?」
奈美が振り返ると、啓介は悲しそうに頷くー。

「ー僕は、罪を受け入れる覚悟はできていますー。
 言い訳も何もするつもりはありませんー。

 明日、死刑と言われれば、僕はそれを素直に受け入れますー。

 ただー」

啓介の言葉に、奈美は首を傾げながら「ただ?」と、
そう呟くと、
啓介は寂しそうに言葉を続けるー。

「ただー…最後にーー…
 最後に”母”に謝りたいー。
 僕のせいで、母には迷惑をかけてしまいましたー。
 だから、最後に一目会って、一言、謝りたかったー。

 もちろん、僕が今更謝ったところで、
 母が許してくれるとは思っていませんしー、
 僕は許されないことをしたわけですけどー」

啓介はそれだけ言うと、
奈美の方を見つめるー。

啓介は、逮捕されたあとから全ての罪をあっさりと認め、
何の言い訳もしなかったー。

裁判においても、弁護士も不要だと話し、
全ての罪を受け入れ、死刑判決を受け入れたー。
何も隠そうともせず、事件の全てを包み隠さずに
彼は語りー、
控訴も何もせず、裁判はあっという間に終了したー。

そんな啓介が言うー。

「ーー峯山さんー
 ”1日だけ”ー
 ”身体”を貸しては貰えませんかー?」

とー。

「ーーえ…?」
奈美は表情を歪めるー。

「ーあぁ、すみませんー…
 急に変なことを言ってー。

 実は僕、”他人と身体を入れ替えることができる”
 そんな、夢のような眼鏡がネット上に売られていると聞いたんですー。

 それを使って、今日だけ、峯山さんの身体を貸してもらえませんかー?」

啓介のそんな提案に、奈美は困惑の表情を浮かべながら言うー。

「ーーい、入れ替わり…?そんなことできるわけがー」
奈美の疑問は当然だったー。

が、啓介は自分が明日死刑になると知った”特別なルート”で、
その存在も知ったのだと言い、
既に、この刑務所内に、その”入れ替わりのための眼鏡”が、
届いているのだと言うー。

しかし、自分でそれを回収することはできないために、
奈美に回収してきて、それをここで自分に使って欲しい、とのことだったー。

「ーーーははー…まぁ、こんなこと言えば
 逃げるつもりだって思われるかもしれませんー

 でも、僕は逃げませんー。
 どうか、信じて下さい。
 必ず、身体を返しに戻ってきます」

啓介のその言葉に、奈美は表情を歪めるー。

奈美はー、啓介の読み通り、啓介のことが好きだったー。

もちろん、立場上、それが絶対にいけないことだとは理解していたし、
命を奪った相手がどんなに極悪人だったとしても、
啓介のしたことが許されることではないことも、頭で理解しているー。

けれど、人間は愚かだと自分でも思うー。
啓介が罪を犯した瞬間を実際に見ていないからだろうかー。
奈美には、彼がどうしても好青年に見えてしまうー。

「ーーーー……」
そんな奈美でも、さすがに”入れ替わり”の提案には戸惑うー。

当然、奈美の身体で変なことをする可能性もあるし、
奈美の身体を奪って逃走する可能性だってあるー。
仮に、啓介本人の言う通り、”明日”啓介の刑が執行されるのだとすれば、
啓介と入れ替わる…ということは、最悪の場合、
奈美自身の”死”を意味することになるー。

「ーーどうかー。お願いしますー。
 こんなことを頼めるのは、峯山さんしかいませんー。
 もちろんー…峯山さんの身体で、迷惑をかけるようなことは絶対にしませんー。

 ただ、最後に母を一目見て、謝りたいー。
 それだけですー。

 必ず、僕は”ここに戻って”来ますー」

目に涙を浮かべながらそう言い放つ啓介ー。

「ーーー……」
奈美は、理性で自分がそれを受け入れてしまうのを必死に抑えようとしたー。

けれどー…

「ーーー…分かったわー…」
奈美は、”それ”を受け入れてしまったー。

啓介が裏から手を回して手に入れたという”入れ替わりの眼鏡”を、
回収する奈美ー。
啓介の言った通り、既に刑務所内にそれは届いていたー。

そしてー…

「ーー必ず、戻りますー」
啓介のその言葉に、奈美は頷くと、
眼鏡をかけて、そのまま啓介に言われた通り、啓介のことを見つめたー。

するとー

「ーー!?!?!?!?」
奈美は、自分が牢屋の中に移動したことに気付くー

「ーわ、わたー…」
声を出しかけて”啓介”の声が自分の口から出ていることに驚く奈美ー。

目の前に”奈美”がいるー。

「ーー…ありがとうございます」
奈美になった啓介は、穏やかな笑みを浮かべると、
啓介(奈美)の方を見つめるー。

眼鏡を外して、それをしまう奈美(啓介)ー

啓介(奈美)は本当に入れ替わったことに戸惑いながらも、
自分が”心の中で密かに思っている死刑囚”と入れ替わってしまったことに
ドキドキとし始めるー。

そんな啓介(奈美)の心理を読んだのか、
奈美(啓介)は少しだけ笑みを浮かべると、
「ーーでは、必ず戻ってきますー」と、そう言葉を呟くー。

啓介になった奈美は「ーーお母さんの居場所は分かってるの?」と
だけ確認すると、
奈美(啓介)は笑みを浮かべながら「ええー。母は認知症で、入院中です」と
だけ答えると、そのままゆっくり歩きだすー。

啓介(奈美)に背を向けると、
何かをボソッと呟く奈美(啓介)ー

そのまま、笑みを浮かべながら、
その笑みを啓介(奈美)に見せることなく、立ち去っていくー。

一人残された啓介(奈美)は、不安とドキドキが入り乱れた感情の中ー、
自分の手を見つめるとー
”こんなに元気なのに、この身体は明日には死ぬんだねー…”と、
死刑執行のことを心の中で思いながら、
立ち去っていく奈美(啓介)の背中を見つめたー…。

②へ続く

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コメント

明日刑が執行されることを掴んだ、死刑囚との入れ替わりデス~!

なんだか嫌な予感がしちゃいますネ~★!

続きはまた明日デス!

コメント

  1. TSマニア より:

    嫌な予感しますし危険な入れ替わりですよネ★!

    ダークなのか!? 平和に終わるのか!?

    自分が無名さんのカラダと入れ替わった時はちゃんとお返ししますのでご安心を笑

    たまに30分、延長するかもデス\(^o^)/笑

    無名さんのカラダで理想的なオシャレしてる時などデス( *´艸`)笑

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~~!☆

      とっても嫌な予感がしちゃいますネ~!
      ハラハラドキドキデス…!

      延長料金が発生…★…しないのデス~笑