<入れ替わり>お前の知るわたしはもういない③~決意~(完)

今から数年前に、少女と偶然入れ替わった男ー。

”元自分”が昏睡状態に陥り、目を覚まさなかったために
そのままの状態で生活を続けていたものの、
2年振りに目を覚ました”元自分”が会いに来たことで、
その運命は大きく変わっていく…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

土曜日。

近くのファミレスにやってきた真由美(康明)と
兄の直樹は、戸惑いながら
「え…?ほ、ホントに、誰を紹介されるんだー?」と、
戸惑いながら言葉を口にするー

真由美(康明)は、いつもの明るい雰囲気がなくなり、
暗い表情だー。

”今から1時間後ー、俺はどうなってるんだろうなー”
そんなことを考える真由美(康明)ー

目の前にいる”優しいお兄ちゃん”からも
1時間後にはもう、”よくも俺を2年間騙したな!”と、
憎しみの目を向けてきているかもしれないー。

悲しい気持ちになりながら、そんな光景を頭の中に
思い浮かべていると、
やがてー、康明(真由美)がやってきて、
直樹と真由美(康明)のいるテーブルを見つめると
近付いて来たー

「ーーーーーえ…??な、なにー…?誰?」
直樹は小声で戸惑うー。

”康明”は30代後半ー
いや、事故があったのは2年前だから、
もう今年で40だー。

”妹から会って欲しいと言われた人が
”40代のおじさん”ともなれば戸惑いの反応を見せるのは
無理もないし、当然の反応と言えるー。

「ーーーーーお兄ちゃん…落ち着いて聞いてね」
真由美(康明)が緊張した様子でそう言葉を口にするとー、
「ーえ…?え…? い、妹とどういう関係ですかー?」と
康明(真由美)のほうを見つめながら、直樹は
既に落ち着いていない様子を見せるー。

”彼氏”か何かだと思っているのだろうかー。
流石に戸惑った表情を浮かべているー。

がー…

「ーーー…わたし…”2年前”にこの人と入れ替わってるのー」
真由美(康明)は、震えながらそう言葉を口にしたー。

「ーーはい?」
直樹が表情を歪めると、
やがて、康明(真由美)が口を開いたー。

「ーーーーーー…信じてもらえないと思うけど、
 わたしが真由美でー…こっちの”わたしの姿をしてる人”は、
 ホントはわたしじゃないってことー」

とー。

40のおじさんが突然、妹口調で話し始めたことに直樹は混乱するー。

「ーーえ……? え?」
助けを求めるかのように、”真由美”のほうを見る直樹ー。

「ーーずっと、隠していてごめんなさいー。
 全部、話をするので、最後まで聞いてもらえーーー……ますか?」

2年間ずっと”妹”として接してきた直樹に
敬語を使う真由美(康明)ー。

”真由美の声の敬語”が、とても辛い音として
自分の耳の中に飛び込んでくるー。

直樹は戸惑いながら「ーーーわ、わかったー」というと、
途中で口を挟まずに、
真由美(康明)の説明をじっと聞いたー。

バスで急ブレーキを踏まれた際に入れ替わったこと、
”康明になった真由美”はこの2年、昏睡状態でついこの間目を覚ましたことー
入れ替わった相手が昏睡状態だったため、康明は真由美として2年間生きて来たことー
お互いの記憶が流れ込んでいる状態で、相手のフリをすることもできることー

色々なことを口にしたー

「ーー…もし、このまま”自分”が目を覚まさなければ
 わたしはずっと…”真由美”としてー、生きていくつもりでしたー。
 もし、目を覚まさないなら、”入れ替わった”なんて言っても、
 お兄ちゃー…いえ、ご家族を混乱させるだけだと思い、
 ずっとずっと、黙っていましたー」

真由美(康明)は、歯を食いしばりながらそう説明するとー、
直樹は「ーーそ、そんなー…」と、呆然とするー。

が、直樹にも心当たりはあったー。
中学受験の最中から”真由美”が急に”変わった”のだー。
明るくなったし、おしゃれになったし、勉強も頑張るようになったー

けど、ちょうど”思春期”真っ只中で色々変わる時期だったし、
変化も”良い方向”だったために、やがて直樹も両親も
気にしなくなっていたー

今思えばあの頃、入れ替わったのだろうと妙に納得するー

「ーーお兄ちゃんー」
康明(真由美)が口を挟むー。

「ーーその人は、悪気があったわけじゃないと思うからー。
 責めないで」

康明(真由美)の言葉に、戸惑いながら直樹が頷くとー、
「ーーえ…でも… き、急にー…
 ごめんー頭が混乱してるー」と、
気持ちの整理がつかない様子を見せるー。

「ーーー正直ー…2年もいっしょにいたのでー
 わたしも、今、すごくつらいですー。
 ”お兄ちゃー…”いえ…あなたに敬語を使って
 話しているこの状況が、とてもー…」

目に涙を浮かべる真由美(康明)ー

「ーー…!」
まるで真由美が泣いているように見えてしまって、
「い、いいよー…い、今まで通りでー」と、そう言葉を口にするー

「ーで…でも……わたしは…、本当は40のおっさんですからー」
と、真由美(康明)がそう言うと、
「ーいい、いいよー。2年間妹だったのは事実なんだからー
 そんな顔するなって」と、直樹はそう言い放つー。

康明(真由美)はそんな様子を見つめながら、
少しだけ笑うと、
直樹は「そ、それで、二人はこれからどうするつもりなんだー?」と、
2人のほうを見つめるー。

今度はまるで、妹が二人いるような気分になってしまい、
頭の混乱は続いているー。

すると、真由美(康明)は言葉を口にしたー。

「ー”本当のわたし”が希望するなら、もちろん元に戻る方法を
 一緒に探そうと思いますー。

 …本音を言えば、2年も”真由美”として生きたのでー
 元に戻りたくない気持ちもあるんですけどー…
 でも、この身体は借りてるものですし、
 入れ替わった当時から、”返す”つもりでいたのでー…
 真由美さんがどうしたいかに、従います」

真由美(康明)はそれだけ言うと、
康明(真由美)は、少しだけ躊躇うような表情を浮かべてから、
「ーーうんー…わたしは、元に戻りたいー」と、
そう言葉を口にしたー。

”はは…やっぱりそうだよなー”
残念に思いながらも、真由美(康明)は、グッとその感情を堪えて
「わかりましたー」と、言葉を口にするー。

「ーで、でもー
 …真由美…いや…えっと… 君はそれでいいのかー?
 
 それとー、今、元に戻っても高校生活を”真由美”は
 全く知らないわけだろー?

 色々、困るんじゃないかー?」

康明はそう言葉を口にするー。

”今の真由美”を失いたくないような、
そんな気持ちと、真由美を元に戻してあげたい気持ち、
そして、元に戻ったあとを心配する気持ちー、
色々な感情がごちゃ混ぜになってしまい、そんな言葉を口にするー

「ーその点は、元に戻ったらちゃんと”今”どんな感じかお伝えするつもりですしー、
 多分、元に戻ればまた入れ替わっていた間の記憶も
 読めるんじゃないかと思いますー」

真由美(康明)はそう言葉を口にすると、
直樹は「そ、そっかー」と頷いたー

「ー2年間も”わたしの代わり”をやってもらったのにー
 ワガママいって…ごめんなさいー」

康明(真由美)は申し訳なさそうにそう言葉を口にすると、
真由美(康明)は「い…いえ、これは君の身体だしー謝ることはないですよ」と、
”大人の対応”を見せたー。

その日からー、
2人は”元に戻る方法”を模索し始めたー。

色々な方法を試していく二人ー。
ぶつかったり、握手したり、お互いに気まずくなりながらもキスをしたりー…

「ーーーーーー」
そんな様子を見つめながら、兄の直樹は
”ある違和感”を覚えていたー

”ーーー…どうしてもーー……”
直樹は、そう思いながらも
”二人の話は一致している”ことから、
2人が入れ替わっているのは事実であると思い直し、
首を横に振るー。

2人との話し合いの結果、
両親には入れ替わりのことは告げず、
兄である直樹だけがそれを背負うことにしたー。

これ以上、混乱を広げることは
2人も望んでいないようだったし、
直樹と真由美の両親も今更そんなことを知っても、
どうすることもできないし、複雑な感情に襲われるだけだー。

それなら、知らない方がいいー。

「ーーー…今度はこれを試してみましょう」
真由美(康明)がそう言葉を口にすると、
康明(真由美)が「うんー」と、頷くー。

「ーーーーーーー…」

確かに”妹”は口数はそんなに多い方じゃなかったー。
だから、2年前受験生だった頃に”真由美が急に明るくなった”と、
感じたのをよく覚えているー。

しかしー

「ーーーー…こういうのは、どうかなー?」
康明(真由美)が、真由美(康明)に何か提案をしているー。

しかしーーー
”あんなに”無口だっただろうかー。

「ーーーー…」
直樹がそんなことを考えていると、真由美(康明)が、
直樹の方に近付いてくるー。

「ーーー…”お兄ちゃん”ー
 短い間だったけど、ありがとうー。
 
 なんだか、そろそろ戻れそうな気がするから、
 挨拶しておこうと思ってー
 
 ほらー…元の身体に戻ったら
 なんかもう、”お兄ちゃん”って呼ぶの違和感あるしー」

真由美(康明)が少し寂しそうにそう呟くー。

「ーーーーーー」
この2年間ー
”妹”だと思っていた相手は”妹”じゃなかったー。

やはり、そこには色々と複雑な感情もあるー。

けれどー…

「ーーーーー”今の真由美”も、俺にとってはもう”妹”だよー」
直樹は穏やかにそう笑うとー、
真由美(康明)の頭を優しく撫でたー。

「ーーーがんばれ」
直樹が力強くそう言うと、真由美(康明)は嬉しそうに微笑んでからー…
「がんばる」と答えて、再び康明(真由美)の方に向かって行くー。

「ーーーー」
直樹に背を向けた真由美(康明)の目には少しだけ涙が浮かんでいたー。

”ーーありがとうー…”
真由美として、そして康明として、
真由美(康明)は心の中でそう呟くと、
それをどこか冷めた目で見ていた康明(真由美)は、
「じゃあ、あの時と同じような感じでー…」と、
”バスで転倒した時とほぼ同じ条件”で、お互いに転倒することを
試し始めたー。

そしてーーー

「ーーーーっ!!!」

「ーーー!!!!」

あの時と同じような感じで”転倒”した二人はー、
身体に強い違和感を感じー、
そのまま派手に転倒したー

直樹が少し表情を変えながら
その様子を見つめるーーー

やがてーーー

「ーーーーー…!」
”康明”が立ち上がると、自分の身体を見つめてから
寂しそうに直樹の方を見つめると、静かに頷いたー

「ーー戻れましたー……」
とー、それだけ呟きながらー。

「ーーーーほ、本当にー?」
直樹が康明に駆け寄りながらそう言うと、康明は
悲しそうに、それでも歯を食いしばりながら
「本当ですー。今まで…ありがとうございましたー」と、
改めて言葉を口にするー。

直樹は”自分よりはるか年上”の康明の方を見て、
優しく笑うと、
倒れている”真由美”の方に駆け寄ったー。

そしてーー
真由美に声をかけるー

「ーーーぅ…」
ゆっくりと目を開く真由美ー

「ーーーーーー」
真由美は、自分の身体を見つめると、
「も、元に戻ったー…」と、そう呟くー。

「ーーーーー…よかったーーー
 身体をちゃんと返すことができて、本当によかったですー」
康明が真由美に駆け寄り、真由美に手を差し伸べると、
真由美は突然ーーー

ニヤッと笑ったー

パン!

「ーー!?」
康明の手を振り払い、
兄である直樹の手も振り払う真由美ー

「ーーー…え…」

「真由美ー…?」

康明も直樹も戸惑いの表情を浮かべるー。

するとーーー…
真由美はニヤッと笑みを浮かべながら、
自分の胸を狂ったように揉み始めたー。

「ーーひひひひ…ひひひひひひひ…!
 やった…!やった…!
 ようやくエロイわたしの身体に戻れたー!

 やった… やった! ふふふ…ふふっ…」

真由美のおかしな様子に康明は表情を歪めるー

兄の直樹は困惑しながら
「ま…真由美ー…?」と声をかけるー。

がー、
真由美は邪悪な笑みを浮かべながらー、
直樹の方を見つめたー

「お兄ちゃんーーー

 いいやー、”お前”の知るわたしはもういないんだよー!」

とー、そう言葉を口にしながらー

「ーーーな……」
直樹が困惑しながら、真由美を見つめるー

真由美はクスクス笑いながら、言ったー。

「ーーわたしはー…今のわたしはもう、
 ”女”の身体をエロい目でしか見られないのー!

 くくっ…ふひひひひっ!
 やった…これからは…えへへへ…毎日毎日楽しめるー…えへへへへっ」

狂気に満ちた笑みを浮かべる真由美ー。

「ーーー…!」
康明は困惑の表情を浮かべながら思うー。

”入れ替わった”あと、自分には真由美の記憶が流れ込んできていたー。
それは、恐らく”康明になった真由美”も同じだったはずー。

しかし、”康明”の身体は2年間、眠り続けていたー。
眠り続けている間に”別人の記憶”が流れ込んだことにより、
真由美の自我は壊れてしまったー。
康明の記憶に拒絶反応を起こし、けれども意識の戻らない中で、
真由美の自我は壊れてしまったー。

いやー、あるいは”転倒した際に”2年間も昏睡状態に陥るほどの
衝撃を受けたことで、既に真由美は”壊れていた”のかもしれないー。

人間、頭にけがをしたり、病気をすると人格が変わることがあるー。

そういう状況なのかもしれないー。

いずれにせよーーー
”真由美”は目を覚ました時から、自分の身体を取り戻すことだけを考えー、
自分の身体を取り戻すまでの間、本性を見せないように
必死に耐えていたのだー

”欲望”に満ちた人生と身体を手に入れるためにー。

「ーーーえへへへ お前たちのその顔、最高ー」
”狂った”真由美の言葉に、呆然とすることしかできない直樹と康明ー。

そこにいる真由美はー、
もう、兄・直樹の知る以前の真由美でも、
ついさっきまで康明が中身だった真由美でもなかったー…

もうー、
自分たちの知っていた真由美は、そこにはいないー…

おわり

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コメント

最終回でした~!☆

真由美と入れ替わった男の人が
悪さをするお話……ではなく、題名は
結末を示しているものでした~★笑

ここまでお読み下さりありがとうございました~~!

コメント

  1. 匿名 より:

    いやーさすがです、いつもむみょさんは斬新で見たことのないお話を書いてくださる

    • 無名 より:

      笑~★
      ありがとうございます~!☆

      せっかく毎日書いているので、
      色々なパターンのお話を皆様にお届けできればと思ってます~!☆