妹が2年以上前に男と入れ替わっていることを
知らないまま過ごしている兄ー。
しかし、2年以上も昏睡状態だった”男と入れ替わった妹”が
目を覚ましてー…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー♪~~」
今日もご機嫌そうに学校から家に向かって
帰宅している最中の真由美(康明)ー
学校で”女子高生”をやっているのもとても楽しかったし、
家に帰って”お兄ちゃん”を揶揄うのもとても楽しいー
自分自身、”元々男”だからこそ、
どうすればお兄ちゃんが喜ぶのかをよく熟知しているー。
”あざとい”とか言われることもあるけれど、
真由美(康明)自身、学校でも家庭でも
”悪意を持って相手を騙している”わけではないー。
ただ単純に相手が戸惑ったり、喜んだりしてくれるのを見て
個人的にちょっぴり楽しんでいるだけだー
”あ~、部屋に帰ったらまだおっぱい揉める~えへへ”
真由美(康明)が楽しみにしている”毎日のご褒美”ー。
もう、自分の身体が目を覚ますことのない今ー、
”自分の胸”を誰も見ていないところで揉む分には
誰の迷惑にもならないー。
そんなことを考えながら
”かつて入れ替わった原因”となったバスと同じバスに乗りー、
バスを降りるー。
「ーあ、おばあちゃん、大丈夫ですか~?」
真由美(康明)は、道端で重い荷物を持って苦しんでいるおばあちゃんを
見つけると、優しく微笑みながら声をかけて、
そのおばあちゃんを助けてあげるー。
”この身体”になって、心も優しくなった気がするー。
人間”身体”ー…というか、”見た目”も大事なのかもしれないー。
「ー本当にありがとうございますー」
「ーどういたしまして!気を付けて帰って下さいね!」
真由美(康明)が、そんな言葉を口にしながら、
そのまま家の方に向かおうと振り返るとー
「ーーーーえ」
”思わぬ人物”が立っていて、しばらく何が起きたのかを
理解することもできなかったー。
「ーーーーーーー…!!!!」
数秒間、”誰よりも知っている”男が目の前に立っている
この状況を、理解することができなかった真由美(康明)ー。
が、ようやくそれを理解したー
”俺の身体”が目を覚ましたのだとー。
「ーーーー…”わたし”ー…」
康明(真由美)が、そう言葉を口にするー。
「ーー……」
真由美(康明)は、戸惑いながら目をキョロキョロとさせるー。
”2年”以上だー。
2年も、真由美として生きて来た康明からしてみれば、
もう、”俺は”、いいや”わたしは真由美”という気分なのだー。
気分だけではないー。
行動も、完全に”真由美”になっているー。
まさかー、今になってー…
今になって、”真由美”が目を覚ますなんてー。
真由美(康明)は、どう反応するか、
動揺の中、頭をフル回転させて考えるー。
”どちらさまですかー?”
と、答えるかー、
あるいは入れ替わったことを素直に認めて話し合うかー。
ここで”どちらさまですか?”と、全く何も知らないフリをすれば、
このまま”真由美”の人生を奪うことはできるー。
自分には、真由美の記憶もあるー。
康明になった真由美にも、当然”真由美”の記憶はあるとは思うがー、
しかし、”入れ替わり”など誰も信じやしないー。
”お父さん”も、”お母さん”も、”お兄ちゃん”も、だー。
康明(真由美)が”わたしの身体を返して!”と、騒ぎ始めたとしても、
”知らない”を貫き、”元自分”を変質者扱いすれば、
逃れることはできるー。
今、この人生を守り抜くためには、それが最善の策ー。
「ーーー…」
会社のパワハラ気味のどうしようもない上司に苦しめられる日々を
元々は送っていた康明は、
”あんな日々に戻りたくないしー…ってか会社はもうクビになってるかー”と、
心の中で呟くー。
「ーーーあなたは…誰…?」
康明(真由美)は、そんな言葉を口にしたー。
もちろん、それは当然の疑問だー。
”真由美”からすれば、知らない男の身体で目を覚まし、
しかも”自分”が勝手に動いているー。
”真由美”からすれば、”真由美の姿で普通に生活している存在”に、
”誰?”と尋ねるのは当然なのだー。
「ーーーー」
真由美(康明)は頭の中で今一度色々なことを考えるー
”入れ替わりを認めてもー
この子は中3だしー……やっぱ騒ぐよなー…?”
今、”真由美の身体”は高校生だが、
あの事故が起きた当時は、真由美は高校受験の最中だったー。
それからずっと”昏睡状態”だったため、
康明の中にいる真由美は、”まだ中3”の精神状態と言っていいー。
「ーーー…ーー」
真由美(康明)は、歯ぎしりをしながら考えるもー、
やがて、意を決して口を開いたー。
「ーーやっと、目が覚めたんですねー」
とー。
「ーーう、うんー」
康明(真由美)は、少女らしく素直にそう答えると、
真由美(康明)は「ー…状況を説明するのでー」と、
言葉を口にしてから、周囲をキョロキョロと見回すー。
”ってー…30代後半のおっさんと、女子高生が話をしてたら
目立つよなー…”と、
心の中で考えながら、あまり目立たない場所を見つけると、
「ーあの公園で話をしましょう」と、
そう言葉を口にしたー。
真由美になった康明に”え?どちら様ですか?”と、
とぼけることは、できなかったー。
もしかしたらー、真由美としての人生を失うかもしれないー。
この楽園のような人生を失うかもしれないー。
それでも、”元自分”が目を覚ましてしまった以上、
”元自分を変質者扱いして逃れる”ことはできなかったー。
真由美(康明)は、公園に移動すると、
”今までのこと”を包み隠さず話し始めたー。
バスの急ブレーキの際に転倒して入れ替わったことー、
頭を打った康明(真由美)は2年以上昏睡状態だったことー、
”自分”が目を覚まさなかったためにさ真由美として生活せざるを得なかったことー
”真由美”は今、高校生になっていることー”
”日常生活はちゃんと送っていることー”
そんなことを、全て話したー
…家で胸を揉んだりしていることだけは、隠したけれどー…
すると、驚いた表情を浮かべながらも、
康明(真由美)は「ーーそうなんだー…」と、そう言葉を口にしたー。
「ーーー」
てっきり、素直に説明しても
”わたしの身体を返して”とか、そう言われると思っていたものの、
意外と落ち着いた反応を示す康明(真由美)ー。
「ーー…この先、どうしたいですかー?」
真由美(康明)が、恐る恐るそう尋ねるー。
まぁ、答えは分かっているー。
30後半のおっさんになりたいなんて子はいないだろうー。
元に戻りたいに決まっているー。
「ーーーー…元に戻る方法はあるのかな…?」
康明(真由美)が、そう言葉を口にすると、
「それは、分かりませんー」と、
真由美(康明)は、そう返事をするー。
事実、元に戻れるかどうかは、分からないのだー。
「ーーー……」
康明(真由美)は少し考えたあとに、
「お兄ちゃんと、お話できるー?」と、
そう言葉を口にしたー。
「ーー……」
真由美(康明)は表情を歪めるー。
だがー、
”二人で協力していく”と、なれば、
兄・直樹には打ち明けなくてはならないー。
「ーーー……分かりましたー
じゃあ、お兄ちゃんとお父さんとお母さんで、話をー」
真由美(康明)は”俺のJKライフも終わりかー”と、
内心で思いながら、社交辞令的な敬語を使いつつ、
そう言葉を口にするー。
がー
「あ、待ってー。
まだお兄ちゃんだけー。
このあと、どうなるかも分からないし、
混乱するだけだと思うからー」
康明(真由美)は、そう言葉を口にしたー
「ーえ?」
真由美(康明)は意外そうな表情を浮かべるー。
”入れ替わったことを話せば混乱する”
だから、最小限の相手にだけ相談したいー、ということのようだが、
”中3”の子に、そんな冷静な考えができるのは意外だったー。
もっと”わたしの身体を返して!”とか”こんな身体嫌だ!”とか、
そう叫ぶと思っていたからだー。
「ーー意外に…冷静ですねー。なんか安心しましたー」
真由美(康明)がそう言うと、康明(真由美)は「あ…うんー」と、
少し目を逸らしながら、照れくさそうな、そんな仕草を見せたー。
”真由美”になった康明は、入れ替わった直後から
真由美の記憶を引き出すことができるようになっていたー。
そのおかげで、”真由美”としてここまでやってくることが出来ているー。
しかし、”真由美”の記憶の方に引っ張られて
自分自身、変わったところもあるのも事実だー。
その”逆”ー
きっと、康明になった真由美にも、”康明”の記憶が
読み込める状態にあるのだろうー。
そうなれば、彼女にとってはまだ”昏睡状態に陥った当時”…
中学3年の彼女に”大人”の記憶が読める状態になっているはずー。
大人としての色々なことが一気に分かるようになってー、
妙に落ち着いているような、そんな感じに見えるのかもしれないー
「ーーーー………」
真由美(康明)は、深く息を吐き出すー。
”お兄ちゃん”は何て言うだろうかー。
やはり、2年以上も騙して来たことを罵倒されるだろうかー。
できることなら”真由美”としての人生を失いたくはないー。
けれどー…
自分は真由美ではない。
本当の彼女が目を覚ましたのであれば、
やはりこうすることが、正しい道なのだと
自分に言い聞かせながら、真由美(康明)は、
「ーお兄ちゃんに、いつなら話せるか確認してみますー」と、
そう言葉を口にするー。
「ーーー」
康明(真由美)は、そんな真由美(康明)のほうを見つめながら、
「ーお兄ちゃんのこと”お兄ちゃん”って呼ぶんだねー」と、
そう言葉を口にしたー
「ーーえっ…あ、ごめんなさいー
…2年も一緒にいたから、もう本当のお兄ちゃんのように思えてー」
真由美(康明)は、そう言葉を口にするー。
兄である”直樹”のことは、もう”お兄ちゃん”としか思えないー。
それは、紛れもない事実ー。
今更、直樹と他人になることは考えられなかったー
それでもー…
「ーーー……そっかー」
康明(真由美)は、あっさりと頷くー。
自分の身体を勝手に2年以上も使い、
自分のお兄ちゃんを勝手に”お兄ちゃん”と呼び続けていた
康明に対して、今の”康明(真由美)”からは怒りのような感情は
微塵も感じられなかったー。
「ーーーーーじゃあ、…お兄ちゃんの予定が決まったら
教えてー」
康明(真由美)がそれだけ言うと、
真由美(康明)は「あ、はいー」と、頷きながら、
そのまま連絡先と、今いる場所を改めて確認しー、
そのままその場は解散となったー
”ー思ったより、冷静でよかったなー…
まだ子供だし、泣き出したり怒ったりするかと思ったけどー”
真由美(康明)は、そう心の中で思いながら
帰宅すると、兄の直樹に対して
”明後日の土曜日、時間あるかなー?”と、確認するー
「ん?あるけど、どうしたんだ?」
直樹が不思議そうに首を傾げるー。
「ーーえ…あ、うんーどうしても会って欲しい人がいて…」
真由美(康明)は、自分が震えているのに気づいたー
”この2年間”を失うのが怖いのだー
”お兄ちゃん”から”よくも騙したな!”と言われるのが怖いのだー。
目から涙が溢れそうになるー。
けれど、それでも”借りたもの”は返さないといけないー。
元々、自分は”真由美”が昏睡状態に陥らなければ、
すぐに話し合って、元に戻るための方法を
色々と試すつもりだったのだー。
それが2年間、先延ばしになっただけー。
今更、逃げるつもりなどないー。
「ーーー…会って欲しい人?」
兄の直樹が少し困惑した表情を浮かべるー
「うん!お願いお兄ちゃん!」
いつものように甘える仕草をする真由美(康明)ー
”こういう振る舞い”が似合うのもあと数日で終わりかも知れないー
そう、思いながらー
真由美(康明)は、あざといと言われそうな仕草を
交えながら、兄にお願いするー
「はははー、彼氏でも紹介されるのかなぁ~」
笑いながら妹からのお願いを聞き入れる兄・直樹ー
そんな直樹の後ろ姿を見つめながら、
真由美(康明)は少し寂しそうな表情を浮かべると、
「お兄ちゃん、ありがとうー」と、言葉を口にしながら
自分の部屋に戻って行ったー。
”お願いを聞いてくれてありがとうー”
そしてー
”今までありがとう”
そんな、意味を込めながらー。
③へ続く
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コメント
タイトルが今のところ、あまりお話と関係ない…?
と、感じてる人もいるかもしれませんネ~!
ちゃんと”意味がある”ので、
明日を楽しみにしていて下さいネ~笑
今日もありがとうございました~!
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