伯父の残した”預言書”に支配され、
豹変してしまった彼女。
別れを告げられてしまった彼氏は、
あることに気付き…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーこ…これは…?」
表情を歪める文哉ー。
講義が終わり、同じ講義を受けていた由香梨の座席の横を
偶然通った文哉は、
由香梨のノートを見て、表情を歪めたー。
講義が終わり、
由香梨は少し離れた場所の女子の友達と話をしていて、
座席から離れているー。
「ーーーーー…え…これってー」
文哉は、由香梨が離れた場所にいるのを目視で確認すると、
そのノートを今一度見つめたー。
由香梨のノートに書かれた字はー
”由香梨と全く違う筆跡”だったのだー。
しかも、その字はー
”かなり特徴のある癖のある字”で、
一度見たら忘れることのできないような、
独特な字だー。
そして、その独特な字を、文哉はつい最近、
見かけたことがあるー。
”この一度見たら忘れられない癖のある字”
それはー
由香梨が持っていた”伯父の家で見つけた伯父が書いた預言書”とやらと
同じ筆跡だったー。
「ーーーー…」
あの預言書は、伯父ではなく由香梨が書いたものなのかー?と
一瞬だけ思ったものの、
すぐに”いや、由香梨の字はもっと柔らかい感じで丁寧な感じだったはずー”と、
そう心の中で呟くー。
では、この字はー…?
「ーーー…まさか」
文哉は、イヤな予感を感じてもう一度ノートを見つめるー。
”ある日を境”に、由香梨の筆跡が明らかに変わっているー。
「ーーー…ちょっと!何見てんの!」
戻って来た由香梨が声を荒げるー。
髪型も、服装も、メイクの感じも最近は何だか変わった気がするー。
「ーー由香梨ー…この字…」
文哉がそう言うと、由香梨は鬼のような形相でノートのほうを見つめたー
「ーーー…字が、何なの?」
由香梨は少し気まずそうにそう言葉を口にするー。
「ーなんで、由香梨が”由香梨の伯父さん”と同じ筆跡なんだー?」
文哉がそう言うと、由香梨は表情を歪めるー。
がーー…由香梨は「ーわけわかんない」と誤魔化すように言葉を
口にすると、そのまま立ち去ってしまうー。
文哉は不安そうに由香梨の後ろ姿を見つめながら
”いったい、何が起きているんだー…”と、小声で呟きながら
困惑の表情を浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「え~~~~…別れちゃったの…?」
文哉の妹・恵が悲しそうにそう言葉を口にするー
「ご…ごめんー。最近、由香梨の様子がおかしくてさー」
以前、”久しぶりに由香梨さんに会いたい”と言っていた妹の恵に、
由香梨と別れたことを告げると、
恵は心底悲しそうに
「ーお兄ちゃん、何か悪いことしたんでしょ?」と、
頬を膨らませながら言葉を口にするー
「い、いや、ち、違うんだー…俺は何もー!」
文哉が戸惑いながら慌てて言葉を口にすると、
恵は「お兄ちゃんは気づいてないだけなんじゃないの~?
女の子は繊細なんだよ!?」と、ブツブツと文句を言い始めるー
「た、確かに俺が気付いてないだけの可能性も0じゃないけど、
でも…今回は絶対に違うんだー!」
文哉はそう言うと、仕方がなく恵に
”これまで起きたこと”を説明し始めたー
「ーはぁ…じゃあ…由香梨さんは、その変な預言書っていうやつを
持つようになってからおかしくなったってことー?」
恵は、疑いの表情を浮かべながらも、
基本的には”お兄ちゃん”のことを信頼していて、
「ーお兄ちゃんが言うなら、そうなんだろうけどー…」と、
渋々納得してくれたー。
「ーーーーーでも、それってあれじゃない?
由香梨さん、その伯父さんに取り憑かれてるんじゃないの?
だって、筆跡が伯父さんのものになってて、”俺”とか
言ってたんでしょ?」
恵の言葉に、文哉は「ーー分からないけど…とにかく、
今の由香梨は普通じゃないと思うー」と、言葉を口にするー。
実際には、伯父そのものに取り憑かれたりしているわけではなく、
伯父が生前に、古文書に記された方法に従い、預言書を残したことで、
その予言書に伯父の怨念や思念が残りー、
それを読んだ由香梨が”洗脳”されてしまった状態ー。
今の由香梨は、
”伯父に取り憑かれた由香梨”ではなく、
”自分を”由香梨を乗っ取った伯父”だと思い込んでしまっている”状態ー。
しかし、いずれにせよ正気ではないのは確かだし、
由香梨本人以外からすれば、由香梨の叔父が、由香梨を乗っ取っている
ように見えてしまう、そんな状況だー。
「ーーでもさ、そんなに様子がおかしいなら、
由香梨さんの親も知ってるはずだよねー?」
妹の恵の言葉に、「ーーーーーそっか…そうだーー…それだ!」と、
そう言葉を口にする文哉ー。
「ーーえ?え?」
恵は、急な兄の反応に、少し戸惑いながらも
「ーーそうだー…由香梨の両親にも相談してみよう!」と、
そう言葉を口にするー。
正直、一人ではどうすることもできず、”打つ手なし”に近い状態だったー。
が、妹の恵と話して、
この状況を打開するチャンスが見つかった気がするー。
そう思いながら、文哉は恵にお礼を言うと、
由香梨の親と連絡を取るために、スマホを手にしたーー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
由香梨の両親と連絡を取ることに成功した文哉は、
少し前に由香梨が突然実家を出たことを告げられたー。
やはり、家でも様子がおかしかったようで、
由香梨の母も、父も混乱している様子だったー。
かねてから由香梨の両親とある程度面識のあった文哉は、
これまでの出来事を丁寧に両親に説明したー。
すると、由香梨の両親は心底驚きー、
特に、由香梨の父親は”自分の兄”であり、由香梨からすると”伯父”にあたる
存在の凶行に、怒りを露わにしていたー。
そしてー、由香梨の父親はある提案をしたー。
”由香梨の正確な状況を知るために”
由香梨が一人暮らしをしている部屋にカメラを設置して
証拠を手に入れたいー、と。
”今の由香梨”には、由香梨の父親は激しく嫌悪されているー。
が、由香梨の母であれば、由香梨の家に恐らく入れてもらうことが出来るー。
そこで、由香梨の母が、由香梨が一人暮らしをしている部屋を訪れ、
何も知らないフリをして話をしながら、カメラを設置、
そのカメラで由香梨の様子を確認ー、
もしも”伯父”に繋がる何かを確認できたら、
その証拠を手に、由香梨を追いつめるー。
そんな提案だったー。
”娘の部屋にカメラを仕掛ける”
そんなことはしたくなかったが、今は緊急事態ー。
由香梨の両親は、文哉からの話を聞いて、
それを実行する決意をしたー。
その、数日後ー
”ーへへへへ…由香梨は俺のもんだー…
あいつも、まさか自分の娘が俺のもんになっちまうなんて
思わなかっただろうなぁ”
監視カメラの映像に映っていた光景は
ショッキングなものだったー。
預言書に洗脳された由香梨は、その最後のページに書かれていた
”俺になる”という記述通り、自分を伯父だと思い込み、
自分の身体をまるで他人のように弄び、
男のような生活をしていたー。
それを見た由香梨の母は泣き崩れるー。
由香梨の父は、その証拠を手に、”俺も行きます”と、自ら名乗り出た
文哉と共に、由香梨の家に乗り込んだー。
証拠を突き付ける二人ー
すると、由香梨は本性を露わにしたー
「ーえへへへ…すごいだろ?哲雄(てつお)!
お前の娘の身体で、俺は生き返ったんだ!」
”哲雄”とは由香梨の父親の名前だー。
実際に”伯父”は生き返ってはいないー。
が、自分を伯父だと思い込んでしまっている由香梨は
嬉しそうにそう叫ぶー。
「ーーぐ……あ、兄貴ーなんてことをー!
由香梨を返してくれ!」
娘に向かってそう叫ぶ由香梨の父・哲雄ー。
「ーーへへ…昔から、お前ばっかりー
俺だって子孫を残したいんだよー。
だから、お前の娘を貰ったんだー。
身体はお前の”子孫”だけど、
心は”俺の子孫”だー。
へへー半分ずつでちょうどいいじゃないかー」
生前の”伯父”が
思っていたことを、自分を伯父だと思い込んでいる
洗脳された由香梨が口にするー。
「ーふ、ふざけるな!由香梨を返せ!」
文哉がそう叫ぶー。
がー、由香梨はゲラゲラと笑いながら
「ーー返すもんか!」と、叫ぶと
「ーそれよりお前ら、状況を理解できているのか?」と、
ニヤニヤし始めるー。
「ーーー…ーーーー」
文哉は、そんな言葉を聞きながら周囲を見渡すー。
「ーーー状況ー?」
由香梨の父・哲雄はそう呟きながら、
由香梨の方を見つめると、
由香梨はニヤニヤしながら言葉を続けたー。
「ーーー今の俺は女子大生ー。
俺が、ここで悲鳴を上げて、お前ら二人に乱暴されたって
言ったらどうなると思うー?」
由香梨の邪悪な言葉に、父・哲雄は戸惑いの表情を浮かべるー。
「ーーー!」
そんな会話を聞きながら、文哉は”目当て”のものを見つけたー。
そうー”預言書”だー。
今の由香梨に話が通じないことは分かっていたー。
由香梨の父親同伴でここにやってきたのはー、
”予言書”を手に入れるためー。
文哉は”あの預言書をどうにかすれば”
由香梨が元に戻る可能性があるのではないかと、
そう考えていたー。
もちろん、その確証はないー。
しかし、預言書を”物理的に破壊する”ことが、
今、考えられる最善の方法だと、文哉と由香梨の両親はそう考えたー。
「ーーー俺は由香梨の父親だぞー?」
由香梨の父・哲雄がそう言い放つー。
「ー変質者扱いしようとしたって、そう上手くはー」
由香梨の父が、文哉の方を見つめながら由香梨の気を引きつつ、
時間を稼ぐー。
「ーへへ…なら試してみる?”お父さん”ー」
由香梨が挑発的に笑うー。
その時だったー
「ーー!」
文哉が預言書にこっそり近付き、それを奪い取ろうとしていることに
由香梨が気付くー
「ーテメェ!このクソガキ!」
由香梨が本性を隠そうともせずにそう叫ぶー。
がー、文哉は由香梨の近くに置かれていた預言書を取り上げることに
成功すると、そのまま部屋の外に飛び出したー。
「ーーおい!待て!」
由香梨が叫ぶー。
がーー、由香梨の父・哲雄がその行く手を阻むー。
”ー文哉くん、頼んだぞー”
由香梨の父・哲雄が由香梨を足止めしている間に、
文哉は外に飛び出すと、川辺まで移動して、
奪い取った預言書に予め用意していたライターで火をつけー、
そしてー、十分に燃えたことを確認すると、
そのまま川へと投げ込んだー
音を立てて、川へと沈んでいく”預言書”ー。
川の水が、預言書のページを水浸しにしてー、
そのまま預言書は、二度と読むことができない状態へと変わっていくー
「ーー由香梨ー」
文哉は預言書が流れていくのを確認しながら、由香梨のアパートのほうを見つめるー。
そしてーーー
「ーーうっ… うああああああああああああああっ!!」
預言書が川に放り投げられたタイミングと同じタイミングで
由香梨のアパートでは、由香梨が突然絶叫して、
そのままその場に倒れ込んだー。
「ーー由香梨!」
父・哲雄が慌てて駆け寄るー。
数分後ー、川から引き返して来た文哉も合流すると、
やがて、由香梨は静かに目を覚ましたー
「ーーー……わたし……」
由香梨は父・哲雄と、彼氏である文哉を見つめるとー、
「ごめんなさいー」と、目に涙を浮かべながら謝罪の言葉を口にしたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
由香梨は、預言書を手にした瞬間に、
”この予言書の通りに行動しないといけない”という考えで
頭がいっぱいになり、
最初は自分でも疑問を感じていたものの、
やがてそれすら分からなくなって、預言書に完全に
操られている状態にあったのだと言うー。
また、途中からは自分を伯父だと思い込み、
完全に自分のことを”由香梨になった俺”だと思い込んでしまっていたと
そう説明したー。
「ーーーー本当に…ごめんなさいー」
正気を取り戻した由香梨は、心底申し訳なさそうに、
両親や、文哉に謝罪の言葉を口にするー。
がー、両親も、文哉も、由香梨のことを責めることはしなかったー。
全ては、伯父の残した預言書が原因ー。
由香梨に罪はないー。
その後、由香梨は文哉と復縁し、
一人暮らしを始めたアパートは、せっかくだから、と、
そのまま一人暮らしを続けることにして、
元の日常を取り戻したー。
文哉は一瞬、”元に戻ったフリを続けている”という不安も
抱いたものの、そんなことはなく
由香梨は本当に、正気を取り戻した様子だったー。
「ーーー本当に無事でよかったー」
文哉はそう呟くと、”しかし、恐ろしい預言書だったな”と、
あの日々のことを思い出しながら、
困惑の表情を浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーあれ…?これなんだろうー?」
由香梨が正気を取り戻して半月ー。
「ーーーーー…」
友達と下校中だった文哉の妹・恵は
下校中に通る川辺で、”あるもの”を見つけたー。
それはーー…
半月前、文哉が洗脳された由香梨から取り上げ、
火をつけた上で川に放り投げた”預言書”の、表紙の部分ー。
既に中のページは消失していて、
固い素材の表紙の一部だけが、この川辺に流れ着き、
ボロボロの状態で残っていたー。
不思議そうに、それを見つめる恵ー。
「ーー恵~!どうしたの~?」
友達が声をかけると、
恵は「ううん!なんでもない!」と、返事を返すー。
そしてーー
恵は、不思議そうな表情を浮かべると、
吸い込まれるように、表紙の一部の残骸を拾いー、
そのままその場を後にしたー…
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
最終回でした~!☆
預言書の破片の一部を拾ったことで、
妹に何か影響が出てしまうのかどうかは…
皆様のご想像にお任せデス~!☆
何か影響が出てしまうとしたら…
また大変なことになりそうですネ~!
お読み下さりありがとうございました~!
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