憧れの子に憑依した男子高校生。
しかし、憑依薬の副作用で、
その子の身体が巨大化してしまい、大変なことにー
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”少し、懲らしめてやるか”
巨大化してしまった由菜は、笑みを浮かべながら
そんなことを思うー。
巨大化した由菜のすぐ近くでニヤニヤしている
男子たちー。
服ごと巨大化した由菜の足元にいる彼らからは、
由菜のスカートの中が見放題の状態だったー。
”上を見上げるだけで”中が見えるという状態ー。
男子たちからすれば、夢のような光景…なのかもしれないー。
そんな男子たちを見て、巨大化した由菜は足を振り上げると、
ニヤニヤしていた男子たちが「や…やべぇ…!」と、声を上げるー。
「ーへへへへ…北沢さんの身体は俺のものであってー
お前らのものじゃないんだぞー?」
由菜の身体を支配したのは自分だー。
由菜は俺のものだー、と、そう思いながら、
足で、その男子たちのすぐ真横を踏むー。
「ーう…うあああああ…」
逃げ惑う男子生徒たちー。
「ーははは…いい気味だぜ」
由菜はニヤニヤしながらそう呟くと、
”それにしてもー”と、周囲の風景を見つめるー。
上空から地上を見ているかのような状況ー。
”これが怪獣の目線なのか”と、
由菜に憑依したのとはまた別の、
新鮮な感覚を噛みしめながら、
”もし、このまま俺が北沢さんの身体でダッシュしたりしたら、
町は大変なことになるんだろうなー”と、
そんなことを考えてしまうー。
もちろん、それは理性で抑え込んで、
「ーで…この状況…どうすればいいんだー?」と、首を傾げる由菜ー。
一体、どうして由菜の身体はこんなに巨大化してしまったのだろうー。
実は正体を隠していただけで、本当は由菜は大怪獣だったのだろうかー?
いいや、さすがにそれはないー。
「ーー…憑依薬の副作用的なやつかー?」
由菜はそう呟くと、考え事をしながら
いつの間にか胸を揉んでいたことに気付くー
「あ…やべー…」
由菜が周囲を見渡すと、”巨大な由菜”を少し離れた場所から
心配そうに見つめている人々の視線を感じて
顔を赤らめるー。
”やべ…堂々と胸を揉んでる姿を見せ付けてしまったー…”
周囲から見れば”巨人が胸を揉んでいる異様な光景”ー。
どよめきや悲鳴が周囲から聞こえて来るー。
「ーー……おいおい、写真も撮られてるし、やばいぞ…」
小声で呟く由菜ー。
このまま巨大化した状態が続けば、
由菜が全世界の晒しものになってしまうー。
いや、もう既に手遅れかもしれないー。
しかし、とにかく元のサイズに戻る方法を
見つけなくてはー。
そう思いながら、”何か方法はないか”と、
周囲を見渡していると、ふと、学校から少し離れた大通りを
複数のパトカーや救急車が走っているのが見えたー。
それが、だんだんとこちらに向かってくるー。
「ーーえ…」
由菜は表情を歪めるー。
やがて、パトカーや救急車が、学校の校庭付近まで
やってくると、警察官たちや、特殊部隊までもが
車両から降り立ち、由菜の付近に展開したー
「ーーえ…え、あ、あの…」
由菜に憑依している武治は唖然とするー。
思ったよりも大事になってしまったー。
そんな風に思いながら、ふと横を見ると、
由菜が巨大化した際に破壊されてしまった校舎部分から
”負傷した”生徒や教職員が次々と運び出されていくのが見えたー
”や…やべぇ……”
別に”憑依”で人を傷つけることが目的ではなかった
武治は、予期せぬ事態だったとは言え、
巨大化したことで、多数の人間を怪我させてしまったことに
激しく動揺していたー。
「ーー…わ、わたし…き、急にこうなってしまってー…!」
由菜の声でそう叫ぶー。
巨大化しているからか、その声は
いつもより不気味に大きく、響き渡るー。
「ーー…どういうことなのか、事情を説明してくださいー」
警察官の一人が、拡声器を使いながらそう叫ぶー。
”憑依のことは流石に言えないー”
由菜に憑依している武治はそう思いながらも、
できる限り”由菜が悪者にならないように”
そして、自分自身が悪者にならないように言葉を続けるー
「ー美術部の活動が終わったので、他の子を先に帰らせて
美術室の片づけと戸締りをしようとしていたら、
急に、こんな風にー!」
由菜がそう説明するー。
憑依以外の部分は、特に嘘はついていないー。
こんな状況になってしまった以上、
とにかく、虚実を織り交ぜてでも
この場を乗り越えるしかないー。
「ーー…巨大化した心あたりはない、と、そういうことですか?」
警察官の一人の言葉に、
由菜は「あ、ありません!あるわけないです!」と、
そう叫び返すー。
「ーーー…」
ふと、周囲を見渡す由菜ー。
よく見ると、街中が大混乱に陥っているー。
たくさんの場所で、スマホを手に人がこちらを撮影しているー。
”そ…そりゃそうか。事情を知らない人からすりゃ
巨人が現れたみたいなもんだもんなー”
由菜は心の中でそう思うと、
警察官に向かって叫んだー
「わ、わたしも困ってるんです!どうか、助けて下さいー!」
とー。
その言葉に、警察官は
「ーとりあえず、その場から動かないでくださいー」と、
被害を拡大させないためだろうか。
そんな言葉を口にしたー。
「わ、分かりましたー」
由菜は、その場で大人しくする証明に、
「ーーい、一度、ここで座ります」と、そう言葉を口にすると、
校庭に座り込んだー。
座るだけでズシンと大きな音がして、
校庭のスペースがほぼ埋まってしまうー。
「ーー…ーーー」
巨大化してる北沢さん、胸も大きすぎだろー…と、
心の中でそんなことを思いながらも
”あ~、早く元のサイズに戻って遊びたいのにー”と、
舌打ちをするー。
警察官たちが連絡を取り合う中、
由菜はふと、”ある光景”を目撃したー。
「ーーー…え?」
それはー…
”武治”自身の父親が、病院に慌てて駆け込んでいく光景ー。
由菜は思わず再び立ち上がると、
周囲の警察官たちが警戒心を露わにするー。
しかも、病院の入口では武治の母親が、
泣きながら父親を出迎えて、何かを話しているー。
「ーーーー…」
”病院に何の用だー?”と、思いつつも、
”自分の身体”のことを思い出してハッとするー。
”ま、まさか、俺の身体ー…?”
憑依薬を飲んだあとの”自分”のことは気にしていなかったー。
それが、今になって急に不安になってしまうー。
武治は、少し慌てた様子で、パニック気味になると
そのまま由菜の身体から抜け出してしまうー。
「ぁ…」
巨大化したままの由菜が、立った状態で憑依を解除されたため、
その場に倒れ込んでしまうー。
倒れ込んだ由菜は、校舎に激突ー。
まだ無事だった校舎の部分が音を立てて壊れていくー
「ーー…な、なんだ!?」
警察官たちも、いきなり倒れた”巨大な由菜”に呆然とするー。
そんな中、武治は霊体のまま、
”病院”の方に向かうとー
「ーーー…え」
想像もしていなかったショッキングな光景に
しばらく言葉を失ってしまったー。
「お…俺…」
霊体のまま呆然とする武治ー。
そこにはー”死んだ”自分の身体が横たわりー、
母は泣き、父は悲しそうにその光景を見つめていたー。
「う…嘘だろ…??お、おいっ…!
嘘だろっ!?!?」
まさか、自分の身体が死んでしまうなどとは
思っても見なかった武治は、その場で叫ぶー。
「ー嘘だろ!!おいっ!?おいっ!!!」
自分の身体に向かって叫ぶ武治ー。
だが、身体は動かないー。
”そうだ”と、
憑依するかの如く、自分の霊体を動かすも、
全く憑依できる様子もなく、自分の身体は無反応ー。
既に、武治の身体は生命活動を停止しており、
憑依することすら、不可能な状態になってしまっていたー。
武治が使用した”憑依薬”は、
飲んだ人間を”死なせる”ことで、強制的に幽霊にすることで、
憑依を可能にする、かなり強引なタイプの憑依薬ー。
そのため、憑依薬を飲んだ時点で武治の身体はほぼ即死ー、
そして、幽霊になったことで他人に憑依できるようになったー…
そういう、ものだったー。
「ーそ、そんな…」
呆然としていると、突然、地響きが聞こえてきたー。
武治は慌てて霊体のまま病院の外に飛び出すと、
そこには、恐ろしい光景が広がっていたー
「な…………」
霊体の状態の武治は、さらに呆然とした表情を浮かべるー。
何度も、何度も衝撃音が響き渡るー。
今まで聞いたこともないような、音ー。
色々なものが崩れ去る音ー。
そして、強い衝撃が地面を通じて伝わってくるー
「ーーー…や…や、やべ…」
武治は真っ青になるー。
街が、壊れていくー。
”巨大化した由菜”によってー。
「ーー…な、何なの これ…!?
ど、どうなってるの…!?
えっ…!?えっ…!?」
武治が憑依から抜け出したことによって、
巨大化した由菜は正気を取り戻してしまっていたー。
しかし、一度”憑依された”ことによって
巨大化してしまった身体は、正気を取り戻しても
元のサイズに戻ることはなく、
巨大化したままー。
意識を取り戻して、自分自身が巨大化している状態に
パニックを起こした由菜は、
状況も理解できないままに動き回りー、
結果的に…”街”を破壊し始めてしまっていたー…。
「ーーーこ、これ…夢…? えっー…?」
巨大化した由菜がそう言いながら
街を移動しているー。
大怪獣のようなサイズになってしまった由菜が
あちらこちらに動き回ることで、
街がどんどん破壊されていくー
悲鳴や、怒声、サイレンー、
色々な音が響き渡る中ー、
しばらく呆然とその光景を見つめていた武治は
「や…やばい…これ以上、ヤバいことになる前に、
早くどうにかしないとー…!」と、
そう言葉を口にして動き出すー。
もはや、自分の身体が死んでしまったー、ということを
考えている場合じゃなかったー。
由菜を止めないといけないー。
「ーーー…どうしよう…どうしよう」
巨大化した由菜が座り込んで、泣きながら頭を抱えているー。
「ーーと、とにかく北沢さんを止めないと……」
武治は霊体のまま、巨大な由菜に近付くー。
「ーーき、北沢さんー、き、聞こえーー」
そう声をかける武治ー。
が、由菜は何の反応も見せていないー。
「ーーー…き、聞こえるわけないよなー…
俺、幽霊みたいなものだしー」
武治はそう呟くと、
”巨大な由菜”が移動した周囲の惨状を見つめながら、
再び青ざめるー。
多数の建物が崩壊ー、
既に犠牲者も確実に出ている状況ー。
巨大化した由菜が周囲を移動したことで、
怪獣映画で言う、大怪獣が街を移動したのと同じ状況に
陥っていたー。
”ーーそこの巨大生物ー…止まりなさい”
ヘリコプターがやってくるー。
”巨大な女子高生”の出現の通報を受けて出撃したと思われる
ヘリコプターがそんな言葉を掛けると、
由菜は「ー…き、気付いたらこんな風に、わたし、どうすれば…!」と、
声を上げるー。
”ーー…と、とにかく止まりなさい!”
ヘリコプターがそんな声をかけるー。
そうこうしているうちに、1機、また1機と
ヘリコプターがやってくると、巨大な由菜を包囲したー。
「ぐ…くそっ…お、俺のせいで大変なことにー」
自分の身体が死んでしまったー
由菜が巨大化してしまったー
由菜をこんな目に遭わせてしまったー
街が破壊されるきっかけを作ってしまったー
死者も出ているように見えるー
まさに、地獄のような状況ー。
”と、とにかくまずは北沢さんにもう一度憑依してー…”
武治はそう考えるー。
由菜からすれば、意識を取り戻したら急に
自分が大怪獣のようなサイズになっていたのだから
パニックを起こして当然だー。
しかも、こんな武装したヘリに囲まれれば、
由菜もさらにパニックを起こすー。
落ち着かせるためには、自分が由菜に憑依して、
このヘリの部隊と話し合うのが一番だろうー。
”ーーとにかくできる限り、これ以上騒ぎを
大きくしないようにしないと、
こうなったのは俺の責n
ぷちっー…
武治の思考は、そこで途切れたー。
「ーーいやあああああ!誰か助けて…」
由菜は悲鳴を上げながら、ヘリコプターから
逃げ始めるー
由菜が移動したことで、また、街が壊れていくー。
武治はー、自分の身体が死亡したことで、
少し時間差はあったものの、”消滅”してしまったー。
もう、どうすることもできないー。
粗悪品とも言える憑依薬を使ってしまった武治は
大きな悲劇を起こし、自分自身も消えてしまったのだったー。
巨大化した由菜によって、この先起きる悲劇を、
もう、武治は知ることもないー。
おわり
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コメント
”憑依されて巨大化してしまう話”という
随分前から私のネタストックにあったネタを、
(具体的にお話の流れが固まったので)書いて見ました~!☆
憑依した本人は自業自得として、
憑依されたほうからすれば、災難すぎる結末ですネ~…!
お読み下さりありがとうございました~~!
コメント
うーん、大惨事ですね☆
どうやっても元に戻れないなら、可哀想だけど、もう由菜を始末するしか事態を収める方法がない気がしますね。
仮に元に戻れたとしても大量破壊と殺戮で犯罪者みたいな扱いを受けそうですし。
コメントありがとうございます~!☆
巨大化した身体を元に戻す方法は無さそうなので、
なるべく犠牲が増えないようにするためには、
始末するしかない状態ですネ~…!
とっても災難なのデス…!