<入れ替わり>ママ友の悪意②~混乱の行方~(完)

幸せな家庭に嫉妬するママ友によって
身体を入れ替えられてしまった…!

戸惑いの中、家を目指す彼女の運命はー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーママが…ママが僕を叩くからー…」
子供部屋に逃げ込んだ息子の節司は、
心配して後を追いかけて来た父・正樹に対して
そんな言葉を涙ながらに口にしていたー。

「ーーー…な、なんだってー…?ママがー?」
正樹が戸惑いながらそう言葉を口にするー。

「ー(う、嘘だろー…?)」
心の中でそう呟く正樹ー。

香苗とはもう長い付き合いだー。
今までそんなことはなかったと思うし、
そんなことをする人間とは思えないー。

もしも、もしも香苗が今までも正樹に隠れて
子供に暴力を振るうようなことをしていたのだとすれば、
女性不信に陥ってしまうぐらいの衝撃だー。

「ーーー…ま…まさか、いつもー?」
正樹が、息子の節司に対して、不安そうにそんな言葉を口にするー。

自分が気付いていなかっただけで、
もしかするといつも香苗は、節司に暴力を振るっていたのではないかと
そんな不安さえ感じてしまうー。

がー、それは杞憂だったようで、
「ううんー…今日がはじめてー」と、節司は泣きながら
そう言葉を口にしたー。

「ーー(…よかったー…今までずっと暴力を振るってたわけじゃないんだなー…)」
正樹は心の中で少しだけ安堵するー。
もちろん、今日だけでも息子を叩くなんて、そんなことはー、とは思うけれど
少なくともこれまで日常的に暴力を振るわれている様子では
なかったことは安心したー。

「ーー…ーー…ぁ」
節司が途端に怯えた表情に変わるー。

正樹がそれに気づいて振り返ると、
そこには香苗(阿佐美)の姿があったー

「ーパパに言っちゃだめって、言ったよね?」
香苗(阿佐美)は笑っているー。
が、その口調には怒りもにじんでいるー

「ご、ごめんなさいーごめんなさいー
 もう、叩かないでママー」

節司が泣きながら謝りだすー。

「ーーーーか、香苗!」
節司を守るようにして、前に立ちはだかる正樹ー。

「き、今日の香苗はなんだかおかしいぞ!」
正樹がそう言うと、いつもとは別人のように
おしゃれな香苗(阿佐美)はクスクスと笑うー

「どうだっていいじゃないー。
 そんなことより、わたし、
 ”わたしとあなた”の子供が欲しいのー」

笑みを浮かべながら、身体を密着させてくる香苗(阿佐美)ー

「ーな、何を言ってるんだー!」
正樹がそう言うと、香苗(阿佐美)は
うっとりとした表情で正樹を見るー

”なんてイケメンなのー”
欲情していることを隠そうともしない香苗(阿佐美)を前に
「こ、子供の前だぞ」と、正樹が言うー。

が、お構いなしにキスをしようとしてくる香苗(阿佐美)ー

その時だったー

♪~~
♪~~~~

部屋のインターホンが鳴り響くー

「ーチッーいいところだったのに」
香苗(阿佐美)が不愉快そうに言うと、
正樹は節司の安全を確保しながら、
そのまま子供部屋から出て、
来客をモニターで確認するー

「ーあれ…木下さんー?」
正樹は不思議そうにそう呟くー。

玄関の前に立っているのは、
妻・香苗のママ友である阿佐美ー。

「ーー…!」
香苗(阿佐美)が表情を歪めるー。

正樹が「はいー」と、応答すると、
”ーま、正樹ー、
 し、信じられないと思うけど、落ち着いて聞いて”と
阿佐美(香苗)は、突然そう言葉を口にしたー。

”正樹に話を聞いてもらえるうちに”
全てを伝えようと、阿佐美(香苗)は、
自分が香苗であること、身体を入れ替えられてしまったことを告げるー
さらには自分の誕生日や結婚記念日まで口にして、
”ママ友の阿佐美が知らないはずの”ことを口にしたー。

”ーい、家の中に”わたし”もいるんでしょ?
 ”わたし”の様子、いつもと何か違ったりしてないー?”

阿佐美(香苗)のそんな言葉に、
正樹は戸惑いながら、背後にいる香苗(阿佐美)のほうを見つめるー

「(か、香苗と、木下さんが入れ替わってるー?
  そんな…入れ替わりなんてできるはずがー…
  いや、でも、誕生日や結婚記念日はー…)」

心の中でそうは思いつつも、
一方で、”今日のママ”の様子は変であるということは、
イヤと言うほど実感しているー。
その上、誕生日や結婚記念日まで正確に口にしているー。
もちろん、誕生日や結婚記念日は単に
”調べただけ”の可能性もある以上ー、
すぐに鵜呑みにするわけにもいかないー。

がー…

「ーーー……本当に、香苗なのかー?」
正樹がそう応答すると、
”ーうん…お願いだから、信じてー”と、
そう言葉を口にするー

「ーーーー」
正樹は、混乱していたー。

が、そんな正樹の思考を香苗(阿佐美)が遮るー。

「ーー何言ってんの!?入れ替わりなんてできるわけないでしょ!」
香苗(阿佐美)が苛立った様子でそう叫ぶと、
「ーパパも”そんなやつ”のことを聞いちゃダメ!」と、
香苗(阿佐美)は不満を露わにするー。

「ーーそ、そんなやつー?」
さらに戸惑う正樹ー。

香苗と阿佐美の間に何かあったのだろうかー。
いや、しかし、それでも香苗がママ友のことをー
いいや、他人のことを”そんなやつ”と言うような人間とは思えないー。

”お願い!信じて!”
阿佐美(香苗)が必死にインターホン越しに叫ぶー。

戸惑いの中ー、
それを打ち破ったのは、息子の節司だったー

「ーー…ママー…”あいことば”はー?」
節司がそんな言葉を口にするー

「ーあいことば…?」
香苗(阿佐美)が表情を歪めるー。
父親の正樹も、不思議そうにしているー。

「ーうん!僕とママだけのあいことば!」
節司がそう言うと、
香苗(阿佐美)は「そ、それはー」と、言葉を口にするー

それを聞いていた正樹は香苗(阿佐美)に
「ー香苗。”あいことば”ー分かるんだろ?」と、
そう言葉を口にするー。

しかしー、香苗(阿佐美)は「わ、分かるに決まってるでしょ!」と、
その答えを言おうとしないー。

正樹はそんな様子を見て、
インターホン越しに「節司との”あいことば”はー?」と確認すると、
阿佐美(香苗)はすぐに答えたー

”にんじんだいっきらい”
とー。

「ーーー…ママ!」
節司が嬉しそうに玄関の方に走っていくー

香苗(阿佐美)が困惑の表情を浮かべながら
呆然としているー。

節司によって玄関の扉が開かれると、
阿佐美の身体になってしまった香苗が、
困惑の表情を浮かべながら
家の中に入って来たー。

「ほ、本当に香苗なのかー…?」
正樹が言うと、阿佐美(香苗)は「うんー」と、
今一度、入れ替わりのことを手短に説明したー

「あ…あいことばって何よー?」
悔しそうに座り込んだまま言い放つ香苗(阿佐美)ー。

すると、阿佐美(香苗)は答えたー

「ーー節司が好きな絵本の中で
 わるものが扉を開くために使っているあいことばですー。」

とー。

節司は、その絵本が好きで
その絵本の悪者が使っているあいことばを、よく母・香苗の前で
口にしていたー。
”僕とママの合言葉”などともいつも言っていたし、
それで、阿佐美(香苗)はすぐに答えることができたー。

「ぐ…」
香苗(阿佐美)はなおも悔しそうにしているー。

そんな香苗(阿佐美)に対して
「やっぱりお前はママじゃないー!ママを返せ!」と、叫ぶー

「ーーー」
正樹は、阿佐美(香苗)のほうを見て
安堵の表情を浮かべると、
座り込んだままの香苗(阿佐美)のほうを見つめるー。

「ーーーどうして、こんなことをしたんです?」
とー。

「ーーー……だって……野坂さんばっかり幸せそうで、悔しくて」
歯ぎしりをする香苗(阿佐美)ー

「その幸せを奪ってやろうってー」

入れ替わりを仕掛けた理由を、そう口にする香苗(阿佐美)ー

「木下さんー」
阿佐美(香苗)はそう呟きながら、
とても悲しそうに香苗(阿佐美)を見つめるー

「ーーーーだからって、こんなことはしてはいけないー」
正樹は、諭すようにそう言うと、
香苗(阿佐美)は涙目のまま頷くー

「ー元に戻す方法はあるんですか?」
正樹が確認すると、香苗(阿佐美)は
静かに頷きー、”入れ替わり薬”のことを自白したー。

「ーーーこれです」
香苗(阿佐美)は、入れ替わった直後に自分の荷物から
持ち出していた入れ替わり薬が入った容器を手にしたー。
使い切りではなく、複数回分入っているようで、
容器の中にはまだ液体が残っているー。

「ーー…これを飲んで、相手にキスをすれば入れ替わることが
 できますー」
香苗(阿佐美)が、しょんぼりした様子で言うと、
「ーーま、ママを返せ!」と、節司は、
何が起きているのかを理解しているのか、
それとも完全には理解できていないのか分からないものの、
そんな言葉を口にするー。

「ーーーーー…ーー…」
香苗の夫・正樹も困惑の表情を浮かべながらも
”絶対に逃がさない”という強い意志を、
その視線で示すー。

観念した香苗(阿佐美)は「…分かってます。元に戻しますよ」と、
そう言葉を口にして、入れ替わり薬が入った容器を手にするー。

「ーーーーー…待ってください」
正樹がそう言葉を口にすると、
「ーー…香苗が、その薬を飲んで、香苗からあなたに…そのキスをしても、
 元に戻れるってことですよね?」と、
そう確認するー。

「ーーーはい」
香苗(阿佐美)がそう呟くー。

「ーじゃあ…」
正樹がそう言いながら、阿佐美(香苗)を見ると、
阿佐美(香苗)も頷くー。

”香苗の身体”の中に得体の知れない薬を入れたくない、という思い、
そして、香苗(阿佐美)が入れ替わり薬を飲んだ後に、
素直に阿佐美(香苗)とキスをせずに、夫である正樹や
息子の節司に無理矢理キスをしてくる可能性も考えて、
正樹は「ーーそれは、香苗が飲みます」と、そう言葉を口にしたー。

香苗(阿佐美)が、実際にそんな悪だくみをしていたかどうかは
分からなかったが、少し表情を曇らせてから
抵抗する様子はなく、入れ替わり薬の容器を阿佐美(香苗)に
手渡したー。

「ーー本物のお母さんを取り戻すからー、
 節司は部屋で遊んでてくれるか?」
父・正樹が優しく言うと、息子の節司は静かに頷くー。

節司が部屋に入ったのを確認すると、
入れ替わり薬を飲んだ阿佐美(香苗)は、
そのまま、香苗(阿佐美)にキスをしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー……」

無事に元に戻った二人ー。
険しい表情を浮かべる阿佐美ー。

悲しそうに”ママ友”の阿佐美を見つめる香苗ー。

「ーーー…もう、あなたと話すことはないー。
 あなたも、わたしのこと、嫌いになったでしょ?」
阿佐美はそれだけ言い放つとー、
香苗はすぐには答えを口にすることが出来ず、口を閉ざすー。

自分の身体を勝手に奪われてー、
”わたしは、全然怒ってませんよー”とは言えないー。
香苗がどんなに優しい性格でも、
どんな事情が阿佐美にあっても、香苗には、
それは言えなかったー。

阿佐美にされたことは、許せないし怒っているー。

でもー、阿佐美の身体になってここに来るまでに
”阿佐美の夫”から恐ろしいメッセージの数々が来たー。
何か、事情があるのだとは思うー。

そんなことを思えば、少し複雑な感情もあるのは事実だったー。

もちろん、だからと言って、”わたしの身体をあげます”
なんてことには絶対にならないけれどー。

「ーーーお騒がせして、申し訳ありませんでしたー」
阿佐美は、それだけ言うとそのまま二人の返事を聞くこともなく、
逃げるように立ち去って行ったー。

「ーーー」
香苗と、正樹は険しい表情を浮かべながらも、
ホッとした様子を浮かべるー。

「ーすぐに気付けなくて、ごめん」
正樹がそう言うと、
香苗はようやく安堵の表情を浮かべながら
「ううんー。ふつう、様子がおかしくても 
 ”入れ替わっちゃったんだ!”なんて思わないし、当然だよー」と、
優しく言葉を口にするー。

ようやく”ママ”が帰って来たー。
部屋で遊んでいた息子の節司も安堵の表情を浮かべながら、
「おかえりママ!」と、嬉しそうに香苗に飛びついたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

暴力ー
暴言ー
束縛ー。

どうして、わたしの家庭は地獄のような家庭なのかー。

全部全部、アイツのせいだー。

香苗の家から立ち去った阿佐美は、
表情を歪めながら、
夫を呪ったー。

香苗の夫・正樹のようにー、
優しい夫だったらよかったのにー。

そう思いながら、
阿佐美は握りしめた入れ替わり薬を見て笑うー。

あと1回分残っているー
そうだー。

あのクソ野郎の身体を奪ってしまおうー。

そして、”わたし”がどれだけ辛い思いをしてきたか、
分からせてやるー。

阿佐美は、そう心の中で呟くと、
自分自身の夫の身体を奪うことを決意して、
笑みを浮かべるのだったー。

おわり

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コメント

2話完結の入れ替わりモノでした~!

無事に身体を取り戻すことができましたネ~!

ちなみに、阿佐美はこのあと自分の夫と身体を入れ替えて
身体を奪うことに成功しますが、
阿佐美になった夫に”女”を武器に使われて
自分が窮地に陥ってしまう…という設定デス~!

お読み下さりありがとうございました~!☆!

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