仲良しだと思っていたママ友ー。
しかし、そんな彼女に
身体を入れ替えられてしまい、
家庭を奪われてしまうー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーママ~!」
送り迎えのために息子の節司(せつじ)を迎えに来た
母・香苗(かなえ)は、「節司~今日もいい子にしてた~?」と、
笑顔で我が子を迎えたー。
「ーうん!今日はね、浩太(こうた)くんと一緒に~」
そんな言葉を口にする息子の節司。
どうやら今日も楽しそうに1日を過ごすことができたようだー。
「あ、浩太くんのママだ」
節司がそんな言葉を口にするー。
香苗が振り返ると、そこには”ママ友”の阿佐美(あさみ)の姿があったー
「ーあ、木下(きのした)さんー」
香苗がそう言うと、ママ友の阿佐美は
「ーあ、野坂(のさか)さんー」と、微笑みながら言葉を口にしたー。
ママ友の木下 阿佐美は、
とても綺麗な感じにしている人で、”美人ママ”な感じの
お母さんだー。
息子の浩太をこの幼稚園に通わせていて、
香苗の息子・節司と浩太はよく一緒になって遊んでいるー。
一方の香苗は、結婚後は自分のおしゃれよりも家族のことを
優先する日常を送っていて、
阿佐美のようにキラキラした感じではなく、
”よくいるお母さん”な感じの風貌だー。
今ではとにかく子供のために時間を使っていて、
学生時代のようにおしゃれな服を着たり、
おしゃれなメイクをしたりするようなことは、
ほとんどなくなったー。
そんな香苗と、ママ友の阿佐美が会話をしていると、
ふと、息子の節司が言葉を口にするー。
「ーー…あれ?パパだ」
その言葉に、香苗が「え?」、と言葉を口にしながら
入口の方を見つめると、香苗の夫である正樹(まさき)が
車から降りて来て「香苗!」と、手をあげたー。
「ーあれ?どうしたのー?
今日は送り迎え、わたしがする日だったよね?」
香苗が少し不思議そうに言うと、
正樹は「お~節司~!」と、息子の節司を抱きしめながら、
少し間を置いて、香苗の方を見つめるー
「いや、部長が体調不良で休んで会議が中止になったから
早く仕事が終わってさー。
もし、香苗たちがここにいたら、ついでに車に乗せていけたらなって思って」
正樹が笑いながらそう言うと、
近くにいた香苗のママ友・阿佐美にも頭を下げるー。
香苗の夫・正樹は香苗と交代交代で、お互いの仕事の都合を考えながら
送り迎えをしているー。
そのため、他のママたちとも、それなりに面識があったー。
がー、正樹は浮気をするようなタイプではなく、
とにかく、香苗と息子の節司一筋ー。
他のママ友たちと過剰に親しくなることは一切なく、
”あくまでも保護者同士の社交辞令的な間柄”を超えることはなかったー。
「ーわざわざいいのにー
遠回りでしょ?」
香苗が苦笑いしながら「でも、ありがとう」と、言葉を口にすると、
正樹は「はははーいいさいいさ」と、優しく言葉を口にしてから
節司を抱っこするー。
香苗は、改めて阿佐美に挨拶をすると、
息子の節司も、友達の浩太に「ばいばい」と手を振るー。
そのまま夫・正樹の運転する車に乗り込む二人ー。
がーー
その走り去っていく車を見つめながら
”ママ友”の阿佐美は表情を歪めていたー
「ーーなに?わたしに幸せ自慢でもしてるの?」
不愉快そうにそう呟く阿佐美ー。
「ーーママ~?」
そんな阿佐美に、息子の浩太が声をかけて来るー。
阿佐美は何事もなかったかのように「なんでもない~」と、
言葉を口にすると、香苗の夫・正樹の車を見つめながら
険しい表情を浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後日ー。
息子の節司を幼稚園に送り終えた香苗は、
ママ友の阿佐美に声を掛けられたー。
「少し、お茶でもどう?」
そんな風に、近場の喫茶店に誘われた香苗ー。
特に不思議に思わず、香苗はそれに応じるー。
「ー美味しいお店を見つけたのー
最近、できたところみたいだけどー」
そう言いながら、今日も
キラキラした雰囲気を漂わせながら、
阿佐美が歩き出すー。
しばらく雑談をしながら歩く二人ー。
が、やがてー、
阿佐美がどんどん人通りのない通りの方に
入っていくことに違和感を覚えた香苗は
言葉を口にしたー
「あの…木下さんーこんなところにお店があるんですかー?」
その言葉に、前を歩いていた阿佐美は立ち止まるー。
「ーー野坂さんの旦那さんは、素敵な人ねー」
阿佐美は、そんな言葉を口にするー
「え…?あ、はいー。あ、ありがとうございますー?」
香苗が不思議そうにそう言葉を口にするとー、
「ーー…あなたの家は、とっても幸せそうねー」
と、阿佐美は振り返りながら、そんな言葉を口にして
香苗を見つめるー
「あ…あの…木下さん?」
香苗が困惑しながら不思議そうに首を傾げると、
「ーーいつもいつもいつも、幸せそうな雰囲気をわたしに見せつけてー」
と、そう言いながら阿佐美が近付いてくるー
「え…?? ど、どういうことですかー?」
香苗の困惑も膨らんでいくー。
すると、目の前までやってきた阿佐美は、
不気味な笑みを浮かべたー
「その幸せー、わたしが奪ってあげるー」
とー。
「ーーえっ!?」
香苗はその言葉にヒヤッとするー。
一瞬にして、”何かされる”と、そう思ったー。
がー、香苗が阿佐美にされたのは、
香苗の予想の斜め上を行く、とんでもない行動だったー
「ーー!?!?!?!?!?」
ママ友の阿佐美にいきなりキスをされた香苗はー
”ちょ、ちょっと!?”と、言葉にならない言葉を
口にしようとするー。
がー、次の瞬間、今までの人生で感じたこともないような
めまいのようなー、いや、めまいとも違う、
何だか気が遠くなる渦の中に放り込まれたかのような
変な感覚を覚えて、そのまま意識が途切れたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーー!!!」
ガバッと、起き上がる香苗ー。
「ーーわ…わたしー…」
一体、何が起きたのだろうかー。
あたりは既に暗くなっているー。
結構長い間、ここで意識を失っていたのかもしれないー。
そう思いながら、慌ててスマホを確認しようとすると、
そこにはー
「ーーえ…こ、これ…木下さんのバッグー…?」
そう思いながら、言葉を口にする香苗ー。
直後、”自分の声”がヘンなことに気付くー。
いつもと、自分の声が違うー。
それにー…
自分がハイヒールを履いていて、阿佐美のような
キラキラした服を、身に纏いー…
「ーえっ…」
スマホを手にした香苗は、呆然とするー。
スマホに反射している”自分”の姿が、”自分”ではないー。
「ーーー…う、嘘ー…?何これ…?」
呆然とする香苗ー。
そうー
スマホに反射したのは”自分自身”の顔ではなく、
ママ友であるはずの阿佐美の顔だったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
阿佐美になった香苗が目覚めるよりも前ー…。
「ーーー♪~~~」
鼻歌を歌いながらご機嫌そうに、
洋品店で、おしゃれな服を見つめる”香苗”になった阿佐美ー。
「ーふふ、野坂さんってば地味な服ばかり着てるんだものー
せっかく女に生まれたんだから、もっともっと楽しまなくちゃ」
香苗(阿佐美)は、いつもとはまるで別人のような
雰囲気で、ショッピングを楽しむと、
そのまま帰宅しー、
家の中を見つめるー。
「ーふふふふ…
あなたの代わりに、わたしが幸せになってあげるー…」
そしてー…
しばらくして、夫の正樹が仕事帰りに息子の節司を迎えに行って、
そのまま帰宅したー。
がー…
帰宅した正樹は、表情を歪めたー。
そこにはー、”女”であることを強調したかのような
妖艶な格好の妻・香苗の姿ー
いつもとは違うおしゃれな髪型に、
口紅で赤く染まった唇ー。
まるで別人のような香苗の姿がそこにはあったー。
「ーーー…あら、おかえりなさい♡」
香苗(阿佐美)が笑みを浮かべるー
「ただいま…な、何かあったのかー?」
正樹がそう言葉を口にすると、
香苗(阿佐美)は「ふふー。別に」と、微笑みながら、
息子の節司の方を見つめるー。
がー、節司は急に怯えたような表情を浮かべながら
後ずさると、そのまま父である正樹の後ろに隠れてしまうー。
「ど…ど、どうしたんだー?」
正樹がそう言うと、香苗(阿佐美)は「別にー」と、
クスクスと笑うー。
「ーー……ママがー…ママがーぼ、僕をー」
正樹に隠れながら、息子の節司が怯えた表情で
そんな言葉を口にするー。
が、そんな節司を、香苗(阿佐美)がキッ、と睨みつけると、
節司はビクッとして泣き出してしまうー
「ーー…な、何があったんだー…
せ、節司?」
正樹は戸惑いながらも、節司の頭を撫でると、
香苗(阿佐美)のほうを見つめるー。
「ーーふふ、なんでもないのー。気にしないで」
不敵な笑みを浮かべる香苗(阿佐美)ー
いつもと何かが違うー。
妻から”色気”のようなものを感じるー。
ここ最近は、感じることのなかった気配ー。
別に、それが悪いということではないー。
お互いに子供が生まれて、夫婦関係も新たなステップに進んだだけのことだー。
がー、今日の”香苗”は何かがヘンだー。
”母”としてのオーラを感じないー…
「ーーー……節司ー。パパを困らせちゃだめでしょぉ?」
香苗(阿佐美)がそう言いながら、節司に近付いていくと、
「お前なんかママじゃない!」と、節司が泣きながら叫ぶー
そして、そのまま子供部屋の方に逃げるようにして
走り去っていくー
「ーー…せ、節司ー!?」
正樹はさらに戸惑いの表情を露わにするー。
「ーふふふふ…ねぇーー正樹ー?」
”ママ友”の夫のことを下の名前で呼んで
この上ない興奮を感じる香苗(阿佐美)ー
”ふふふふ…たまらない…”
ゾクゾクしながら、正樹に近付いていくと、
「ー節司なんて放っておいて、わたしとー」と、
そう言葉を口にするー。
が、正樹は「”節司なんて”って、ど、どういうことだよー?」と、
困惑しながら、香苗(阿佐美)の手を振りほどくー。
「ーーーーーー…」
露骨に不快そうな表情を浮かべる香苗(阿佐美)ー
「ーーと、とにかく、節司と話をしてくるー」
正樹は、部屋に泣きながら逃げ込んだ息子・節司のことを
心配しながら、そう言葉を口にすると
そのまま節司の逃げ込んだ子供部屋の方に向かったー。
「ーーーーー」
一人残された香苗(阿佐美)は、表情を曇らせながら
「ふんー」と、不満そうに呟いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
阿佐美として目を覚ました香苗は、
慌てた様子で、自分の家に向かっていたー
「ーー木下さん…どこにいるのー?」
自分が”阿佐美”の身体になってしまったということは、
阿佐美が、自分の身体になっているのだろうかー。
そんなことを思いながら、困惑した表情を浮かべる
阿佐美(香苗)ー
意識を失う直前、阿佐美から言われた言葉を思い出すー。
”その幸せー、わたしが奪ってあげるー”
確か、阿佐美はそんな言葉を口にしていたー。
それは、いったいどういうことなのだろうー?
「ーー…木下さんー…どういうことなの…?」
阿佐美(香苗)は戸惑いながらも、
着実に”自分の家”に近付いていくー。
が、その時だったー。
”阿佐美”のスマホが鳴っていることに気付き、
表情を歪めるー。
そこには”クソ野郎”と、そう表示されているー
「…え…だ、誰…?」
スマホにそう表示されているということは、
阿佐美自身が、相手のことを”クソ野郎”と登録しているのだろうかー。
そう思いつつ、”阿佐美として、誰かも分からない相手を前に
ちゃんと振る舞えない”気がした、阿佐美(香苗)は
とりあえずその電話を無視するー。
がー
それを無視していると、今度はLINEでメッセージが届いたー
”おい阿佐美ー。どこほっつき歩いてやがる?とっとと帰って来いよ”
”俺を舐めてんのか?あ?”
”この野郎ー帰ったらただじゃおかねぇ”
そんなメッセージが次々と送られてくるー。
「な、なにこれー…」
阿佐美(香苗)が困惑していると、再びの電話ー。
”送り迎えまで俺にさせやがってー”
”おい、このクズ!どこにいやがる?”
LINEも嵐のように送られてくるー。
そんな状況に、阿佐美(香苗)は震えながらも、
それを無視して、「と、とにかく木下さんを見つけるか、
正樹に事情を説明しないとー」と、
”自分”のー…いや”元自分”の家を目指して再び歩き始めたー
②へ続く
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コメント
”ママ友”に身体を奪われてしまうお話デス~!
憑依空間では今年最初の入れ替わりモノですネ~!
無事に身体を取り戻せるのか、
それとも大変なことになってしまうのかは、
また明日のお楽しみデス~!
今日もありがとうございました~!
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