”滅亡”まで
いよいよあと1週間のところまで迫ったその世界ー。
自暴自棄になった彼は、憑依で欲望の限りを尽くす
日々を送るー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーはぁ…はぁ…♡ あぁ……気持ちいい…♡」
陸翔の彼女・麻梨の身体を奪った速人は、
麻梨の身体で一人、散々遊びまくると、
乱れ切ったその姿で、ニヤニヤと笑みを浮かべていたー。
”凛花”の身体とはまた違う感覚ー。
感じ方が色々と違うし、
凛花より反応のイイところもあれば、
凛花よりも反応の悪いところもあるー。
同じ”女”でも、こんなに色々違うなんてー、と、
麻梨はゾクゾクしながら自分の身体を見つめるー。
こんな姿を、麻梨の彼女だった陸翔が見たら
恐らくは発狂してしまうだろうー。
そう思いながら、麻梨は静かに立ち上がるー。
世界の滅亡まで、いよいよあと3日となったー。
今から約2カ月ほど前ー、
地球の付近を通過した隕石から、
未知の化学物質が放たれ、光の雫となって地球上に
降り注いだー。
地面に到達したそれは、謎の黒い煙をまき散らし、
外にいた人間を含む生命体は液体となって消滅ー、
植物は唯一、生き残ったものの、
外にいた生命体のほとんどが全滅し、
人類の3分の2が1か月前に消滅したー。
人口の大減少により、社会のシステムは維持できなくなり崩壊。
それでも、人類はそれから約1か月間、なんとか生き延びて来たものの、
生き残った研究者たちによる調査で
”さらに規模の大きな同等の成分を持つ隕石”が”今から1か月後”に
地球付近を通過することが判明、
今度は”さらに強力な光の雫”が降り注ぐようで、
今度は建物ごと、全ては溶かされると、
研究者たちはそう予測し、対策を練っていたー。
最初の”未知の化学物質”が降り注いでから約2カ月ー。
”あと1か月でさらに強力な化学物質が降り注ぐ”と言われてから
もうすぐ1か月ー…。
滅びは、あと3日のところまで迫っているー
「ーーは~~もうどうにでもなれ~~!」
麻梨の身体で、速人は盗み出した酒を浴びるように飲み続けながら叫ぶー。
そこにーー…
憑依された彼女の行方を追い続けていた彼氏の陸翔がやってきたー。
「ーーあぁ、またお前かー」
麻梨は笑いながら、無視して酒を飲み続けるー。
「おいっ!麻梨の身体でなんてことをー」
陸翔がそう叫ぶと、麻梨は「ーどーせ、あと3日で滅ぶんだよ!どうでもいいだろ!」と、
酒のビンを投げつけるー。
「ーーふ、ふざけるな!
どうでもいいってんなら、一人で死ねよ!
麻梨の身体を返しやがれ!」
陸翔は怒り心頭と言った様子で、そう叫ぶも、
憑依されている麻梨は正気を取り戻す様子もなく、
酒の匂いを漂わせながら笑うー。
陸翔は、なおも麻梨に対してー、
麻梨に憑依している速人に対して、”麻梨を返せ!”と呼びかけるー。
がーー
「ーあ~~~~うるせぇよ!あと3日しかねぇんだから黙ってろ!」
”滅亡”の日が近付くにつれて、
さらに自暴自棄の度合いが増していく速人ー。
「ーーー黙ってられるか!
大事な彼女が、お前みたいなやー
陸翔がそこまで言いかけると、
麻梨は突然、陸翔の首を絞め始めたー。
「ーーがっ!?」
急なことに驚き、そのまま床に押し倒されてしまう陸翔ー。
「ーごちゃごちゃうるさいなー
だったら、大好きな彼女の手で死なせてやるよー」
麻梨がクスクスと笑うー。
麻梨の身体が、ピクッピクッ、と痙攣のような反応を一瞬起こすー。
「ーーなんだよ。彼氏殺しに反応してるのか?」
麻梨がニヤニヤ笑うー。
彼氏をこの手で殺しそうなこの状況に、
麻梨の身体が強い拒否反応を示しているようだー。
こんなことは初めてー。
だがー
麻梨に憑依している速人は”お前ら”うるさいんだよー!と、
叫ぶと、そのまま陸翔の息の根を止めてしまったー
「ーへへ…へへへ
俺もあと3日で死ぬから、ははははっ」
麻梨は動かなくなった陸翔を蹴り飛ばすと、
そのままゆらゆらと廃墟の中を歩いていくー。
”生存者”の姿もほとんど見かけなくなってきたー。
今から約2か月前の、”最初の光の雫”が降り注いだ際に
人類の3分の2が死亡ー。
その後の1ヵ月で、略奪や持病の悪化などでさらに人口は減りー、
”1か月後に、滅びの運命が待っている”と判明してからは、
さらに略奪が増え、自ら命を絶つような人間も増えたため、
人口は”さらに”減っているー。
しかし、もうネット環境も死んでいるし、
ニュースのような情報発信も機能しておらず、
”今、どのぐらい人間が生き延びているのか”も、
速人には分からなかったー。
”誰か、別の女を見つけたら乗り換えるかー”
そんなことを思いながら、
麻梨はウロウロと廃墟の中を徘徊するー。
そしてー、
麻梨はー、元繁華街の町の中を歩く
可愛らしい少女を見つけて声をかけたー。
「ーーー…ひとり?」
ニヤニヤしながら声をかける麻梨ー。
相手は、まだ女子高生のようでー
”親”と共に身を隠しながらなんとか生きていたようだー。
今日は、外に食料を探しに来たのだと言うー。
相手が、”女子大生”だからか、その子は油断した様子だったー。
「ふぅん。希海(のぞみ)ちゃんねー…」
麻梨はそう言うと、ニヤリと笑うー。
「ーじゃあ、お前の身体で”滅亡”の日を迎えようかなー」
とー。
「ーーえ…?」
希海が、困惑した表情で麻梨のほうを見るとほぼ同時にー、
麻梨は、希海にキスをしたー。
速人が麻梨から希海に移動するー
「ーくくくくく…さ~て、早速ー」
希海は、自分の胸を揉みながら笑みを浮かべると、
意識を取り戻した麻梨を見て、
「ーーお前の彼氏、お前の身体で殺しておいたよ?」
と、邪悪な笑みを浮かべながら言葉を口にしたー。
そしてー…
新たに乗っ取った希海の身体で、乗っ取る前に聞き出しておいた
この子の父親がいる場所に向かい、
その父親を始末したー。
「ーーお父さんが死んでくれれば、食料が一人分で済むようになって
わたしがたくさん食べられるでしょ?」
と、言ってやったー。
あの哀れな父親は、
最後まで”娘に裏切られた”と思って死んだのだろうー。
「ーふふふふ…さ~て、お前の身体でも遊びまくってやるからなぁ…?」
希海は自分の顔をつつきながら笑みを浮かべると、
ひたすらに欲望に身を委ね始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”滅亡”まであと1日ー。
明日には、2か月前に地球を襲った”光の雫”を放出した隕石と
同等の成分を持つさらに巨大な隕石が地球付近を通過するー。
降り注ぐとされている例の光の雫は
研究者たちによれば、100倍ー。
とてもじゃないが、耐えられず、
今度は植物も建物も全て崩壊すると予測が出て居たー。
「ーーはぁぁ♡」
乱れ切った希海が、よろよろと街を歩いていると、
「ー見つけたー…」と、そんな声が聞こえたー。
「ー!」
振り返ると、そこには彼女の凛花の姿があったー。
「ーあは…何のこと~?」
とぼける希海ー。
だが、凛花は「速人でしょー?もう、そういうことやめて」と、
悲しそうな表情を浮かべながら言葉を口にしたー。
凛花は、先日、麻梨から希海に”移動”した速人を
目撃していたー。
しかし、その後希海を尾行している際に見失ってしまい、
今日まで見つけ出すのに時間がかかってしまったようだったー。
「ーーー…凛花ー。
明日、世界は終わるんだー
だから、こうやって遊びまくった方が得なんだよ!」
笑いながら、自分の胸を揉む希海ー。
凛花は「いい加減にして!速人、そんな人じゃなかったでしょ!」と、叫ぶー。
しかし、希海に憑依している速人は
「ー”どんな人だって”思われても、明日には終わるんだ!全部!」と、
目に涙を浮かべながら叫ぶー。
「ーだからって何をしたっていいわけじゃないでしょ!」
悲しそうに叫び返す凛花ー。
「ーいいも、悪いも、明日には全て消えるんだよ!」
希海に憑依している速人はなおも言い返すー。
そしてー、
希海は、凛花に近付いてくると、
「ーー女同士で、最後の宴を楽しもうぜー?」と、
邪悪な笑みを浮かべるー。
凛花は、希海を振り払おうとするもー、
希海はゲラゲラと笑いながら、凛花に無理矢理キスをしてー、
そのまま凛花を強引に押し倒すー。
「ーーへへへ…抵抗するなよ凛花ー
今は女の子同士なんだからー
へへっ…へへへへへへへっ♡」
希海は、悲鳴を上げる凛花を無視して、
欲望の笑みを浮かべるー。
希海の身体が、この上ない快感を感じているのが分かるー。
自分の父親を手にかけ、関係のない人を襲っているこの状況なのに、
乗っ取られている希海の身体は激しく興奮しているー。
憑依は最高だと速人は改めて思うー。
狂ったように笑いながら、強引に凛花と共に
欲望を楽しむ速人ー。
やがてー、凛花が抵抗する気力も失い、
希海の身体がはじけ飛びそうになるほどの快感を味わってー、
速人は、最後の晩餐とも言える時間を過ごしたのだったー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
最終日ー。
希海は、最初に憑依薬を飲んで”凛花”に憑依した際に
”抜け殻”となった自分の身体を保管している場所へと向かうー。
そして、希海の身体を捨てて、自分の身体へと戻るー。
最後の瞬間は、自分の身体で迎えたいー。
そんな風に彼は思っていたー。
身体を震わせながら、速人は自分の身体へと戻ると、
少しだけ懐かしそうに、自分の手を動かしながら
自虐的に笑ったー。
「どうせ、死ぬんだー」
とー。
拾ったラジオを手に、最新情報を手に入れようとする速人ー。
もう、ネットもテレビも機能しておらず、
唯一、わずかにラジオの放送だけが生きている状況ー。
だが、ラジオから流れて来た音を聞いて、
速人は表情を歪めたー
ラジオからは歓喜の声が響き渡っているのだー。
「ーなんだ?世界の滅亡を前に、狂ったかー?」
速人がそう呟くと、
”このラジオをお聞きの皆さん!奇跡です!”
と、そんな声が聞こえたー
”たった今、地球への接近が予測されていた隕石が、
予測より地球から離れた場所を通過しー”
その言葉を聞いて、速人は呆然とするー。
地球に壊滅的被害をもたらした”謎の化学物質”を降らせた
隕石のようなものよりもさらに巨大なものが地球の付近を通過ー、
地球は今度こそ滅亡するー
その予測はー、”外れた”のだー。
未知の隕石状の物体は、通常の隕石とは異なる動きを見せ、
予測よりも地球を離れた場所を通過、
”100倍の量の化学物質”は地球に降り注がなかったのだー。
それでもー、
既に地球は人口の3分の2を失い、
社会システムも停止、崩壊した世界であるのは違いないー。
けれどー、滅亡はしなかったのだー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
「ーーあぁ…ぁ… ぁぁぁ…俺はなんてことをー」
速人は絶望していたー。
滅亡は回避されたー。
だがー…
彼女の凛花は、滅亡の前日、欲望を満たしたあとに
”どうせ死ぬんだから、俺が先に楽にしておいてやる”と、
自暴自棄になった速人が自らの手で息の根を
止めてしまっていたのだー。
「ーーー…ぁ…ぁあああああああ!
うあああああああああああああ!」
速人は、自分がしてきたことを思い出しながら
耐えきれずに叫び声をあげるー。
世界は、滅亡しなかったー。
他の多くの生存者が、必死に可能性に賭ける中、
速人は自暴自棄になり、憑依三昧を繰り返し、
多くの人を傷つけ、命まで奪ったー。
”ーーーそうやって諦めて自暴自棄になって、
どうやってるのか知らないけど、人の身体を勝手に使ってー、
俺の前に自分の姿を見せようともしないー!
あんたはただの臆病者!
チキン野郎だ!”
乗っ取った身体の彼氏・陸翔の言葉を思い出すー。
「ーうるさい!うるさい…うるさい!俺はー」
速人は一人、そう呟きながらも、
どうすることもできずに涙を流したー。
そしてーーー
さらにその翌日ー
「ーーーーー」
速人は、自虐的な笑みを浮かべながら呟いたー。
滅亡すると思い込んで、自暴自棄な行為を繰り返した速人ー。
滅亡を回避した今ー、
彼はその罪悪感に耐えられなかったー。
”さよなら この世界ー”
彼はその日、自らの命を絶ったのだったー
おわり
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コメント
自暴自棄になってやりたい放題をしていたら
滅亡しなかった…
そんなお話でした~!★
彼がもっと極悪人だったら、
まだ使えるであろう憑依でもっともっと
悪事を繰り返す道を選んだかもしれませんネ~…!
お読み下さりありがとうございました~!
コメント
世界が滅亡すると思ったからやりたい放題やったのに、やっぱり滅亡しませんでした、みたいなことになっちゃったらもう取り返しがつきませんよね。
昔のノストラダムスの予言を信じた人達も、後先考えずに滅茶苦茶やって、人生が狂ってしまった人が結構いたらしいみたいですね。
コメントありがとうございます~~!☆★!
彼の場合は、憑依能力を持ったままだったので
精神的に罪悪感を感じないタイプの人だったら
そのまま好き放題できていたかもしれませんネ~★!