異性に興味のない男子大学生。
女体化した後も、全くその変化にドキドキすることなく、
ただ単に面倒臭いと感じる日々を送るー。
しかし、その果てに待ち受けていたのは…?
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「ーーーお、お、俺と付き合ってくれ!」
「ーーーは…?」
女体化した哲雄は表情を歪めたー。
同じ大学に通う男子の一人に、”告白”されたのだー。
”大事な話がある”と呼び出された哲雄は
てっきり”元に戻れる方法”でも見つけてくれたのかと
期待してここにやってきたものの、
拍子抜けする言葉を言われて、唖然とした表情を浮かべていたー
「いや…いやいやいや、俺、男だぞ?」
哲雄が自分を指差しながら言うと、
「ーそ、それでもいいんだ!
大体今は、身体は”女”だろ!?」
と、相手の男子が叫ぶー。
「いや…身体は女でも、中身は男だしー。
それに、仮に女扱いするにしても”哲雄”なんて名前の女でいいのかよ?」
哲雄が呆れ顔でそう言うと、
「ー男のこと分かってる女なんて最高じゃないか!」
と、顔を赤らめながら相手の男子は叫んだー。
「ーーいやいや…却下ー…
俺、誰とも付き合う気ないしー。
相手が女でも、男でもー。
こうなる前から、俺がそういう奴だって知ってるだろ?」
哲雄がそう言うと、
振られた相手の男子は、悲しそうな表情をしながらも
「分かったー…」と、ようやく言葉を口にしたー。
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「ーはははは!ついに告白されたんだって?
やるじゃねぇか」
親友の明憲が、女体化した哲雄の胸を揉みながら言うー。
哲雄は、そんな明憲を無視しながら、
奢って貰ったジュースを手に、
「ー別に嬉しくねぇよー面倒臭いだけだー」と、
少し身体を震わせながら言うー。
「ーん?お?やっぱ気持ちイイのか?お?」
明憲が揶揄うように笑うと、
哲雄は「別に…」と、呟きながら
「っていうか、揉むの好きすぎだろお前ー」と、呆れ顔で、
明憲を振りほどいたー。
「ーーー…まぁ、今のお前は可愛いからな
そいつの気持ちもわかるぜ」
明憲が言うー。
「ー俺には全然理解できないな」
哲雄がそう言うと、
「ーーってか、お前、相変わらず
そのー…自分の身体を見てエロイな、とか、何とも思わないのか?」と、
苦笑いする明憲ー。
「ーあぁ。別に何もー。」
哲雄は、改めて自分の手を見つめるー。
”あぁ、女になったな”とは思うものの、
それ以上、何も思うことはないー。
「へへへへー…勿体ないなぁー
でもまぁ…お前らしいっちゃ、お前らしいかー」
明憲はそこまで言うと、
ふと、「まぁ、元気でやれよ」と、そう言葉を呟いたー。
「ーあ?」
哲雄が首を傾げるー。
「ーはは、何でもねぇ」
明憲は誤魔化すように首を横に振ると、
それ以上は特に何も言わなかったー。
がー…
明憲はその翌日、突然退学届を提出して、
何も語ることのないまま、大学を去ってしまい、
連絡もつかなくなってしまったー。
理由もわからないまま、
親友が突然消えたことに哲雄は困惑することしかできなかったー。
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数日後ー。
女体化した哲雄は、大学で菜々と一緒に
昼のひと時を過ごしていたー。
”菜々”のことは異性としては全く意識していないが、
幼馴染ということもあり、よく一緒に過ごすことはあるー。
もちろん、哲雄からすれば”恋愛感情”は全くなく、
”男友達と一緒にいる”のと、感覚的には何ら変わらないー。
それは、女体化してからも同じことだったー。
「ーどう?大分慣れて来た?」
菜々がそう言うと、
哲雄は「まぁなぁ…もう1か月以上経ったしな」と、呟くー。
「ーそう。それは良かったー」
菜々は少しだけ寂しそうに表情を曇らせるー。
「ーーなんだ?どうかしたのか?」
哲雄がそう言いながら、いつものように大盛のカレーライスを口にするー。
すると、菜々は少しだけ寂しそうに哲雄のほうを見たー。
「ー洞口くんが、そんな状態になってから、
こうやって話す機会が増えたのは嬉しいんだけどー…
やっぱり、ほら…好きだった人が異性から同性になるのは
複雑だなぁって」
菜々のそんな言葉に、哲雄は「そういうもんかー?」と、
不思議そうにしながらも、
「まぁ…なんか色々振り回して悪かったなー…。
女としての過ごし方、アドバイスくれて助かってるよ」と、
お礼の言葉を口にするー。
「ーーううん。別にー。
戸惑う洞口くんを見るのは楽しいしー」
菜々は悪戯っぽく笑うー。
哲雄はそんな菜々を見ながら「どいつもこいつも、楽しそうにしやがってー」と
冗談っぽく笑いながら言うと、
カレーを食べる手を止めたー
「またやっちまった」
その言葉に、菜々が首を傾げると、
哲雄は笑いながら答えたー。
「女になってから、食える量が減った気がするんだけどー
つい、前の癖で大盛にしちゃうんだよなー」
カレーを見つめながら自虐的に笑う哲雄ー。
そんな哲雄を見ながら、菜々は
「少しずつ、慣れていきなよー。焦ることはないし」と、
優しく言葉を口にしたー。
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”女子大生”としての生活を始めてから、
3か月が経過したー。
哲雄は、女体化した直後と変わらず、
生活を続けていたー。
いやー、変わったこともあるー。
長かった髪を、医師の許可が出たことでバッサリと切り、
今はショートヘアーにしている哲雄ー。
本当は、男の時と同じぐらい短くしたかったのだが、
幼馴染の菜々から猛反対されて、結局、
”でも俺は長い髪は面倒臭い”という理由で、
このぐらいの状態に落ち着いたー。
医師からの勧めで、
”女”として名乗る時の名前も考えて置いた方がいい、と
言われて、最近では菜々と一緒に”名前”を考えているー。
”戸籍上は、洞口 哲雄のままだけど、本名じゃなくてもいいところ・場面で使うための
女としての名前も持っておいた方がいい”
というのが医師の考えだったー。
まさか、”自分に女の名前を、自分でつけることになるなんて”と、
自虐的に笑いながら、
菜々や、両親とも相談しながら名前を考えるー。
しかし、両親は”菜々ちゃんも考えてくれてるなら、二人に任せる”との
返答で、結局自分で決めることになってしまったー。
「ーーー…うーん…もう面倒だし、鉄子(てつこ)でいいんじゃないか?」
哲雄が言うと、
「え~適当すぎだよ~!自分の名前をちょっと変えただけじゃんー」と、
菜々が反対するー
「はぁ…名前なんて何でもいいだろー。
確かに、先生の言う通り、この姿で”哲雄”はまずいと思うケドさー」
哲雄がそう言うと、
「あぁ、じゃあ、栄子(えいこ)とかどうかなー。
面倒くさいから、A子的な感じでー」
と、思いついたように言うー。
「ーえ~~!やっぱ適当!
もうちょっとちゃんと考えようよ~!
あー、じゃあ、菜々美(ななみ)とかどう?
わたしと似てて、お揃いみたいでいい感じじゃない?」
菜々が嬉しそうに言うー。
「いやいや、お前も適当すぎだろー。却下」
哲雄がそう言うと、
「え~~!お揃いがいい~~!」
と、菜々は、何故か駄々をこね始めたー。
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それから、さらに時は流れたー。
女体化したことで”問題”も発生したー。
それは”就職が困難になってしまった”ことだー。
女としての仮の名前を決めたとはいえ、
就職を偽名でするわけにはいかないー。
戸籍上の性別は男のままで、名前も哲雄。
しかし、今の哲雄は完全に女であり、
そのままの状態で就職するのは、非常に難しいという現実に
直面したのだー。
しかしーーー
「ーわたしのお店で働きなさい!」
菜々がそう叫んだー。
「ーーーはい?」
哲雄が、”化け物を見るような目で”菜々のほうを見つめるー。
「な、な、な、何よその顔!」
菜々が恥ずかしそうに言うと、
哲雄は「いや…」と、困惑の表情を浮かべるー。
確かに、菜々の実家は”洋菓子屋”か何かをやっていたー。
がー、その店で働くとはどういうことなのかー。
「ー元々わたしは、大学で経営とか色々学んで、
親のお店を継ぐつもりだったしー、
ほら、そこそこお店、上手く行ってるんだよー?
でも、親ももう高齢だから、そろそろ引退かなって」
菜々のそんな言葉に、
女体化したままの哲雄は、
「いや…でも、今の時代に店ってきつくね?」
と、困惑の表情を浮かべるー。
「大丈夫!ネット通販もあるし、
そういうの全部こなすために、わたし、大学で色々学んだんだから!
大丈夫大丈夫!」
菜々の言葉に、不安を感じながらも、
哲雄は「いや…でも、何で俺?」と、首を傾げるー。
「ーわたしの店で働けば、女体化のことも全然問題ないし、
事務的な手続きとか、税の関係とかは本名でやればいいでしょ?
それとー、親は引退しちゃうし、手伝ってはくれるだろうけど、
元々わたし一人でやるのは難しいと思ってたからー
ちょうどいいと思ってー」
菜々のそんな提案に、
女体化した哲雄は「本当に、大丈夫なのかー?」と確認をするー。
菜々は「大丈夫!信じて!ほら、もう恋愛的な感情はないし!
今は”女の子同士”だから!ね!幼馴染として助けてあげたいの!」と、
熱弁したー。
「ーーーーー…」
女体化した哲雄は、少しだけ悩むー。
女体化した自分…という状況に就職の上で困っていたのは、
確かに紛れもない事実ではあるー。
やがてー、色々なことを考えた上で
「ーじゃあ…よろしく…お願いします」と、そう言葉を口にすると、
菜々は嬉しそうに笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
大学を卒業し、菜々の店で働き始めるー
ネットの通販から、事務的な作業、
さらにはーー
「ーは~い!菜々と寧々(ねね)の配信のお時間だよ~!」
菜々が嬉しそうにカメラの前に向かって手を振るー。
”寧々”とは、女体化した哲雄の名前だー。
菜々から、”菜々美にしなよ!お揃いにしようよ!”と言われた結果ー、
”それはちょっと”と、思いながらも
妥協して”「寧々」なら同じ”な行”の2文字だし、お揃いな気がするだろ?”と、
その名前に決めたのだったー
そしてー…今、お店の公式チャンネルで動画を配信しているー
お店のPRをしながら、雑談したりするチャンネルだー
”くそっー…俺がどうしてこんなことをー…
菜々のやつ、最初からこれが目的だったんじゃないかー?”
菜々は、女体化した哲雄=寧々も使って、
色々なPRをして、お店は親がやっていたころよりもさらに繁盛しているー。
もしかすると、上手く利用されているのかもしれない、と
哲雄は何となくそう思うこともあるー。
いや、もしかすると女体化したのも菜々の仕業なのではないかとー。
しかしー…
”女には興味ねぇけどー…まぁ、でも、これはこれで楽しいからいいかー”
そんな風に思いながら
哲雄は今日も”寧々”として笑顔を振りまくのだったー。
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街を歩く一人の美人女性ー。
彼女はーー…
”哲雄”と同じー。
元々は男だった人物ー。
「ーーー…そういや、アイツ、どうしてるかなー?」
その女性は呟くー。
大学時代の同級生であり、”親友”だった哲雄のことを思い出しながらー。
彼女はー…
哲雄の親友・明憲が”女体化”した姿。
哲雄が女体化した原因は、彼ー。
”女になりたい”
そんな夢を抱いていた明憲はネットで”女体化の針”という怪しいものを
発見しー、それを哲雄で試したのだー。
”ものすごく細い針”をどさくさに紛れて哲雄に刺しー、
哲雄はその数日後に、女体化したー。
あまりに針が細く、ほぼ痛みもないため、哲雄はまるで気付かなかったー。
そしてー…女体化が本当に可能だと確信した明憲は、
大学を退学し、自らもその針を使い、女体化したのだー。
「ーーー…実験台に使って悪かったなー
でもー…まぁ…お前のことならきっとどこかで上手くやってるだろー」
女体化した明憲はそう呟くと、今日も”おしゃれな自分”の姿に
満足そうに微笑みながら、そのままどこかへと歩き去って行ったー…。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
最後まで、女体化した彼は
自分の身体にドキドキすることはありませんでしたが、
何とかうまく生活していくことができそうですネ~!
お読み下さりありがとうございました~!★★!
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