<憑依>私が強盗~絶望編~

バイトの最中に、
同じコンビニで働いていたあの子が、憑依されてしまったー…

あの時から始まった、彼のとんでもない人生…。

激流のような日々から、絶望へー…
憑依に翻弄される彼の、行きつく先は…?

私が強盗の最新作デス~!

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俺の名は張本 斗真(はりもと とうま)。
元コンビニバイトであり、元コンビニ店長であり、
死にかけた経験を持つ男でもあり、
元ニートであり、前科者でもある。
さらには憑依薬の売人を経て、
そして、ついでに憑依される側も経験することになった、
ヤバすぎる人生を送る男だー。

憑依薬の売人となっていた俺は、
”おじさんに憑依しちゃえば、その憑依薬、全部わたしのものだよね?”
などと言って来た女に憑依されて、
そのまま意識は途切れたー。

それからー、どのぐらい年月が経ったのだろうかー。

長い、長い夢を見ていた気がするー。

だが、ようやく俺は目を覚ましたのだー。

そう、俺に憑依していた女が、俺の身体を捨てたのだー。

ようやく、俺の人生が再び始まるー…
はずだったのに、
今、俺は絶望しているー。

「ーー誰だこのジジイ!」
俺は鏡に向かって、そう叫んでいたー。

深夜の駅で意識を取り戻した俺は、何だか痛む身体を
何とか奮起させて、トイレにたどり着いて鏡を見た。

だが、鑑に映っていたのはジジイだった。

「誰だお前?」
思わず俺は鏡に向かってそう呟いた。

しかしー、鑑の中のジジイも俺と同じ口の動かし方をしているー。

おい、人の真似をするなんて、
このジジイなめてやがるのか?

そう思いながら、俺は鏡に拳を叩きつけたー。

すると、鑑の向こうのジジイも同じ動きをして、
同じように、鑑を殴りつけた衝撃で苦しんでいたー。

それを見た俺はようやく気付いたー。

”あぁ、俺はジジイになってしまったのか”

とー。

おわったー。
絶望だー。

俺は、女に何十年も憑依されて、
こうしてジジイになってしまったのだー。

残されていた滅茶苦茶小さい謎の端末を操作したら
スマホの画面みたいのが空中に表示された。

おぉ…これが未来のスマホか、と思いつつ
俺はタイムスリップしたような感動を味わいながら、
色々なことを調べたー。

あぁ、くそっー。
俺の好きだったゲーム、15年前で最後の新作が途切れてやがるー

あぁぁ、くそっ!
やっぱあの休載の多い漫画、最後まで完結しなかったのかー!

あぁぁぁぁぁぁ!くそくそくそっ!
俺が買おうと思ってたCD、とっくに生産終了してプレミア価格になってるじゃねぇか!

うぉぉぉぉぉお!?
憑依空間ってサイト、まだ更新してやがるー!?一体書いてるやつ、ナニモンなんだ!?

俺は、憑依されている間に何十年も経過してしまったことに
驚きを感じながら、
そんなことを思ったー。

そしてー…
俺は端末の中に残されていた”メッセージ”を見て愕然としたー。

”余命宣告 受けちゃったー。 余生、楽しんでね”
とー、そう書かれたメッセージ。

「ーは… おいおいおい、嘘だろー!?
 ふ、ふざけんなー!
 た、他人の身体を勝手に使っておいて、何て無責任な!?」

どうやら、俺の身体を勝手に使っていた女は、
俺の身体が余命宣告を受けて抜け出したらしいー。

なんてやつだー。
他人の人生を勝手に奪うなんてー。

今まで、散々奪う側も経験してきた俺が言えた義理ではないかもしれないが、
そんなことはどうでもいいー。

くそくそくそっ!
そう思いながら、深夜の駅のベンチに一人座り、
口を半開きで、3時間20分ほど絶望していた俺は、
あることを思いついたー。

”ージジイになったなら、憑依して若い身体を手に入れればいいじゃない”
とー。

そう思い立った俺は、早速憑依薬を買おうと立ち上がったー。

そしてー、手に入れた。
憑依薬をー。

絶望から希望へー。
そうだ、この俺がー
変態ロードを突き進む誇り高きシマウマである
この張本 斗真がこんなところで終わるはずがない。

俺は早速、憑依薬を使いー、
”原点”に帰ることにした。

そう、俺の原点はコンビニバイトだ。
コンビニでフランクフルトを売りさばきながら、
フランクフルトを勃起したアレに見立てて興奮したり、
同じバイト先の女の子に恋をしたり、
同じバイト先の女の子で夜に抜いたり、
そういうところが、俺の原点だったはずだ。

ってことで、俺はコンビニバイトに憑依したー。

何十年経過しても、コンビニバイトってあるんだなー。

一度、ロボット化も試されたようだが、
どうやら色々やべぇことが起きたみたいで、
結局、人間の店員が接客を続けているー

「ーーー三森(みもり)さんー」

そんな声を掛けられて、俺は振り返るー。

「はいっ!」

今の俺は、現役女子大生ー
三森 結花(みもり ゆか)だー。

「ーーあ、はい~!やっておきます~!」
店長に向かって可愛らしくそう言い放つ俺ー。

自分の可愛さに思わず酔いしれそうになってしまうがー、
今の俺は真面目で優しい女子大生を演じているー。

欲望のままに身を委ねるのも良かったが、
これからしばらくの間は大人しくしておこうと、
そう思っているー。

「ーーあ~~わたしってば可愛い~~~」

家に帰宅した俺は、そんなことを言いながら
鏡に何度も何度も何度もキスを繰り返すー。

今の俺は”自分大好き女子大生”だー。

いやぁ、ジジイになったときは
どうしようかと思ったけど、
こうして鏡にチュッチュッしまくる日々を送れるなんて、
へへー、たまらないなぁ…

鏡が唾液まみれになってしまうほどキスを繰り返した俺は
ようやくそれに飽きると、
「ーあ~結花、かわいいなぁ~」と、もう一度呟いてから
そのままお風呂に向かうー。

正直、お風呂も長くなるー。
洗うだけじゃなくて、色々シてしまうからだー。

けど、色々シてるところまで語ってたら、
俺の数少ない出番が風呂で終わっちまうから、
語るのはこのぐらいにしておこう。

そう、尺の都合というやつだ。

ん。自分でも何を言ってるか分からないが、
とにかく俺は、女子大生・三森 結花に憑依して、
コンビニバイトライフを送っている。

あぁ、懐かしい感覚だー。
こんな風に働いている時に、当時好きだったあの子が
俺の目の前で憑依されて、
俺のとんでもない人生が始まったんだったなー。

そう思いながら、俺は今日も、
可愛い結花ちゃんとしてバイトを続けるー。

「ーえへへへ…」
うっかり、R18な本を売っている売り場の側で
ニヤニヤしてしまった俺は
「いけないけない。今は真面目で可愛い結花なんだからー」と、
呟きながら、真剣な表情に戻すー。

今日もしっかりとバイトをこなしながら、
シフトを終えて上がろうとした俺はー、
バイト仲間の男子大学生、行本 斗真(ゆきもと とうま)とかいうやつから
告白されたー。

つーか、俺に名前そっくりじゃねぇか。
俺の劣化コピーか何かか?

そう思いながら俺は、
にこにこと、行本斗真を振ったー。

へへー、俺が男だった時は告白されたなかったのに
こうやってかわいい子に憑依しているとすぐに告白されるー。
なんだか嬉しいような、悲しいようなー。

告白された自分に酔いしれながら、「ごめんね!行本くん!」と、
言いながら、俺は今日も帰宅するー。

あ~なんか俺に名前も姿も何となく似てるやつを振るのは
たまんないなー
ゾクゾクするー。

今日は”行本くんを振ったわたし”で色々妄想しながら
お楽しみをするとしようー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

問題が起きたー。

何が起きたかって?
今、俺はコンビニの店内で胸を揉みながら、
大笑いしているー。

俺が再び血迷ったのかって?
そうじゃないー。

俺はーー…
昨日、振った行本 斗真とかいうやつに
憑依されてしまったー。

三森 結花の身体が勝手に動いてー、
コンビニの店内で胸を揉みー、勝手にパンをあけて貪りー、
ホットスナックのフランクフルトを口に加えて、
「フェラっちゃいまぁ~す」とか、叫んでるー。

ぐぐぐ……
くそっ、まさか今度は”意識を残したまま”憑依されるなんてー。

”おい!やめろっ!”と、
心の中で叫んでみたものの、どうすることもできないー。

俺の…いや、俺の身体じゃないんだけど、
今は俺の身体な結花の身体が勝手に動いているー。

コンビニの他のバイトも、コンビニの客も、
フランクフルトをイヤらしい感じでペロペロしている俺を見て
唖然としている。

あぁ、もうクビかー。

っていうか、まさかまた俺、何十年も
憑依されるんじゃないだろうなー?

くそっ!
人の身体を勝手に使うなんて、
人の心というものはお前にはないのか!行本!

しかも、俺に名前が似ててなんかむかつくしー。

ん?俺も人の身体を使ってるってー?
はは、そんなことはいいんだー。
俺は特別だからなー。

…コンビニでやりたい放題をした乗っ取られた俺は、
そのまま帰宅して、家の中で狂ったように喘ぎ続けたー。

乗っ取られていても、その気持ち良さが俺の中に
伝わってきて、それはそれで心地よかったー。

次の日もー、
そのまた次の日も、
俺は結花ちゃんごと乗っ取られたまま、
欲望の日々を送ったー。

にしても行本とかいうやつ、本当に、
やりたい放題だな…
この感じだと、結花ちゃんの人生が破滅するのも
時間の問題だなー…

大学も行くつもりがないみたいだし、
この感じは、短期間で結花ちゃんの身体を捨てるつもりだろうー。

ーーまぁ、結花ちゃんの人生はもう滅茶苦茶だし、
昨日なんかHな自撮りをネットに上げまくっていたから
解放されてももう結花ちゃんの身体は使えないなー。

俺もさっさと次の身体に移動するかー。

とりあえず、行本とかいうやつが
結花ちゃんから出て行かないと、俺もこのままどうすることもできない。

結花ちゃんに憑依した俺、結花ちゃんに憑依した俺に憑依した行本…
どうやら、憑依は”一番上”のところから優先されるらしく、
行本がいる限り、俺は結花ちゃんの身体を動かすこともできなければ
結花ちゃんから抜け出すこともできない。

くそっ…なんてかわいそうな俺なんだー。

「ーーーーーーーおっ!?」

そんなことを考えながら、さらに数日を過ごした俺は
ようやく、”解放”された。

行本のやつが「もうこの身体はだめだ」などと呟いて、
そのまま抜け出していったのだー。

ふん。後始末もせずに抜け出すとは無礼なやつめ。

俺は、行本斗真とかいうやつとは違う。
俺は誇り高き張本斗真だ。
俺とそっくりの名前の割に、やつはとんだカスだ。

でも、俺は違うー。

俺は、結花ちゃんの身体で鏡の前に正座して、
「今日も、憑依に感謝ー」と、憑依への感謝を
言葉にして、その場で頭を下げた。

そう、俺は憑依への感謝の気持ちを忘れない。
行本とかいう、雑魚とは違うのだー。

「さて…結花ちゃんの身体は捨てて、次の身体を探すかー
 俺の身体は余命宣告されているしー」

早速俺は、結花ちゃんの身体を捨てて、
近くの高校のツインテールのJKに憑依したー

これから、俺はーーー
この身体でーー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーあ?」

俺は、首を傾げたー。
ツインテールのJKに憑依したはずが、なんだか急に
意識が飛んで、
なんか…骨みたいのが転がってる場所にー…!?

「ーーーようこそ」

ー!?!?

背後から声がして、振り返ると
死神みたいなコスプレをしたやつがいたー。

「はは、今はハロウィンじゃないぞ」
俺は迷わずそう言い放つー。

けどー、
そいつは言ったー。

「ーーははは、面白い人間だな。
 ここがどこだか分かってるのかー?」

とー。

「あん?」

俺は周囲を見渡し、まるで地獄のような光景に唾を
ゴクリと飲み込んだー。

「ーここは、地獄だー。
 あんたは死んだー。
 既に余命宣告を受けていただろう?
 他人の身体に憑依していても、あんたの寿命が尽きて
 それであんたは消えたんだ」

そう言い放つのはーー

え…??

え????

は?????

まさか、お前は…死神のコスプレじゃなくて、
本当の死神ー!?!?

「ーー地獄へようこそ。張本斗真」

笑みを浮かべる死神ー

いやいやいやいや、冗談じゃねぇ
俺は何十年も変な女に憑依されていて、ジジイになっちまったんだぞー?

このまま死ぬとか、あり得ないだろ!?

「ー閻魔大王はどこにいる?」
俺は、迷わずそう言い放ったー

「は?」
死神が困惑しているー。

が、そんなことは関係ないー。

「ー俺が死んだ?
 しかも、何で天国じゃなくて地獄なんだー?」

俺は、不満を死神にぶちまけたー。

ふざけるなー
異議ありだ。ありまくりだ。

俺は、閻魔大王とやらに会い、
生き返るための交渉を始めることを決意したー。

今度は、地獄の冒険かー。
やっぱ俺の人生は、とんでもない人生だなー。

まぁいいー
生き返ったら、誰に憑依するか今から考えておくかー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

久しぶりの「私は強盗」でした~!☆
何故か、地味にずっと続いていますネ~笑

次に登場することがあれば、私が強盗~地獄編~になりそうですネ~笑

お読み下さりありがとうございました~!

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憑依<私が強盗>

コメント

  1. TSマニア より:

    さすがですネ!

    無名さんは常に進化してますネ!

    まさかの憑依空間が出てくるとはっ!?笑

    • 無名 より:

      ありがとうございます~!☆

      笑~
      このシリーズなら、こういうこともできるかと思ったので
      出しちゃいました~笑

      • TSマニア より:

        まさかの憑依空間…スゴい意外性でビックリしました!!笑

        しかも主人公も憑依空間チェックしてた事実…( *´艸`)笑

        主人公も地獄にいっても憑依する事しか考えてないし、意味不明に前向きだし

        続編の~地獄編~いつか、ありそうですね笑

        無名さんもこのシリーズに前向きですし!☆笑

        憑依空間よ永遠に…☆\(^o^)/☆

        • 無名 より:

          たまには、こういうネタも盛り込んじゃいます~笑

          地獄編があるかどうかは…
          まだ、私自身にも分からないのデス…笑☆