<MC>絶対に負けないから②~呑まれる心~(完)

絶対に負けないー。

洗脳を受けた彼女は、なおもそれに抗い続けるー。

その先に待ち受けていた運命はー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”洗脳”を受けた翌日の夜ー。

琴葉は自分のことを改めて思い返すー。

「ー大丈夫ー」
昨日とは違い、今日は頭の感じもだいぶ良い感じだったし、
時々、頭が妙に”ぐちゃぐちゃ”してしまうような、
何とも言えない感覚に襲われることはあったけれど、
その頻度も減って来た気がするー。

”洗脳”に打ち勝ったということだろうかー。
いや、まだ分からない。
油断してはいけないー。

「ーーーー…」
琴葉は、彼氏の宗昭とLINEで連絡を取りながら、
強い不安を覚えるー。

明日には”あんたなんて大っ嫌い”とか、メッセージを送信していないかどうかー。
そして、自分自身がそれに気づくことすらできずに、
不良男子の直人の彼女になってしまうのではないかー、
そんな、不安をー。

”ー戸塚のやつと何かあったなら、いつでも相談に乗るからなー?”
宗昭のそんなメッセージに、”ありがとう”と返事を返す琴葉ー。

”戸塚”とは、不良男子の戸塚 直人のことだー。

けれどー、やはり宗昭に”洗脳”なんてことを言って
心配させるわけにはいかないし、
そんなこと言ったら、きっと宗昭は直人に文句を言いに行ってしまうー。

相手は”洗脳”の力を持っているのだし、
下手をすれば、宗昭まで洗脳されてしまうかもしれないー。

そんな風に思っていると、ふとスマホに連絡が入ったー。

画面には”直人”と、表示されているー

「ー!?」
琴葉はビクッと震えるー。

「なんであいつから電話がー…!?」
慌てて着信を拒否する琴葉ー。

すると、今度は直人からLINEでの連絡も入るー。

”琴葉ー、どうしてもお前と話したい”
とー、そんなメッセージがー。

”何なの!?もう、いい加減にして!”
琴葉は震えながらそうメッセージを返して、
慌ててLINEも拒否、着信も拒否して、スマホを机に置くー。

「ーーー…」
琴葉は、震えながら”あること”に対して、
非常に強い不安を抱くー。

それはー…
不良男子・直人からの着信があった際にー、
”直人”と画面に表示されていたことー。

「ーー…な…なんで…」
震える琴葉ー。

”何故、あの不良の連絡先を”直人”という名前で登録しているのかー”

「ーー…ーー…う、嘘よ…わたしは洗脳なんかー…」
琴葉は、表情を歪めるー。

既に”直人”のことを彼氏と思い始めているのではないかー。
自分の意思とは別のところで、直人と連絡先を交換したり
してしまっているのではないかー。

そんな強い不安を覚えるー。

「ーー……」
琴葉は今一度慎重に、昨日、洗脳されてから今日までのことを思い返すー。

直人の電話番号や連絡先を自分で登録した覚えはないー。

”あいつが勝手にわたしのスマホに登録したに決まってるー”
琴葉はそんな結論を自分の中で出すと「洗脳なんかに…絶対に負けないー」と、
困り果てた様子で言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

直人がまたもや声をかけて来るー。

「ーーーー」
そんな直人から逃げるようにして、琴葉は自分の教室に入ると、
宗昭が「だ、大丈夫かー…?顔色悪いぞ?」と、
心配の言葉を口にするー

「宗昭ー…」
琴葉は、怯えた様子を浮かべながら、
宗昭に対して言葉を口にするー。

「ーー………わたし、最近、アイツにつき纏われててー」

”洗脳”のことは伏せた上で、彼氏の宗昭に対して、
直人の”つき纏い”のことを口にする琴葉ー。
そんなことを言えば、宗昭が直人に文句を言いに行ってしまうかもしれないし、
宗昭まで”洗脳”されてしまうかもしれないー、というそんな不安はあるー。

しかし、それでももう、宗昭に相談せずにはいられないぐらい、
琴葉は強い不安に襲われていたー。

「ーアイツ…?戸塚のことか?」
宗昭が言うと、琴葉は頷いたー。

宗昭はいつものように穏やかな表情を浮かべながら
「ー分かったー…大丈夫。アイツのことは俺が何とかするし、
 話はつけておくからー」と、そんな優しい言葉を琴葉に向けるー。

琴葉は、不安でいっぱいだった自分の心が
少し暖かくなっていくのを感じながら、静かに頷くと
「ーーありがとう」と、そんな言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”クククー お前は俺の彼女になるんだー”

戸塚 直人の邪悪な笑みー

琴葉は、必死に闇の中を逃げるー。

そしてーーー…
直人と一緒に買い物に行ったり、映画館に行ったり、
遊園地に行ったりー、
そんな光景が、目に移るー

「ーー…やめて…」
琴葉は悲痛な叫び声を上げるー。

「ーーやめて…嫌だー… いやだー…!」
そんな言葉を口にしていると、
さらに別の光景が目の前に広がったー。

彼氏の宗昭から告白されて、それを断る琴葉ー。

そんな、光景がー。

彼氏の宗昭が悲しそうな顔をして立ち去っていくー

「待ってー…行かないで!」
泣きじゃくる琴葉ー。

やがてー

「ーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」

はぁ、はぁ、と息を吐き出しながら目を覚ました琴葉は、
悪夢から目を覚ましたー。

「ーーーはぁ…」
”夢”を見ていたー。

”夢の中でのわたし”は、完全に洗脳の影響を受けてしまっていたー。
そう思いながら、一旦ベッドから立ち上がって窓の外を見つめるー。

”ーアイツは敵ー、宗昭は彼氏ー… うん…大丈夫”
自分の認識が変わっていないことを再確認するー。

”まだ”夢のようにはなっていないー。
でも、やっぱりいつかはああなってしまうのだろうかー。

そんなことを思いながら、再びベッドに潜り込んだ琴葉は
目に涙を浮かべながらも「負けないよー絶対にー」と、
気丈にそう呟いたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その翌日ー。

彼氏の宗昭が、不良男子の戸塚 直人を呼び出したー。

「ーーーなんだよ、お前はー」
直人が不満そうに言葉を口にすると、
宗昭は穏やかな笑みを浮かべながら言葉を口にしたー。

「ーー…琴葉が怖がってる。2度と琴葉に近付かないでくれー」
とー。

「ーーーあん?」
直人は、不満そうに宗昭のほうを見つめると、
「何で琴葉が俺のことを怖がるんだ!?琴葉は俺の彼女だぞ!」
と、そう叫んだー。

「ーーーはは」
宗昭は少しだけ笑うと、
「いいや、違うねー」と、言葉を口にしたー。

「琴葉はもう、”俺の彼女”なんだー。
 お前の彼女じゃないー。

 今の琴葉は、お前のことを”不良男子”だと思ってるし、
 俺のことを”彼女”だと思ってるー」

宗昭の言葉に、直人は「な…なんだとー…?」と、表情を歪めたー。

直人はー
”不良男子”などではないー。
確かに、態度はがさつな感じで適当だし、
見た目はちょっと怖い感じもあるー。
けれど、裏表のない気さくな性格で、琴葉にとっては”幼馴染”でもあり、
本当の”彼氏”だった人物ー。

そしてーー
穏やかで優しい雰囲気の宗昭は”彼氏”ではないー。
彼こそが、琴葉を洗脳した人物ー。

琴葉が”夢”で見た、
直人と一緒に映画館や遊園地に行っている光景は”実際にあったこと”ー、
そして、宗昭のことを振っている光景も、実際に起きたことだー。

琴葉は、宗昭に告白された際に「彼氏がいるからー」と、それを断っているー。

そしてー、
そのことに腹を立てた宗昭が、”琴葉”を洗脳したのだー。

”わたしは負けないー”
そう言っている琴葉は、既にもう完全に洗脳の術中に陥っていて、
彼氏である直人のことを不良男子だと思い込みー、
彼氏でもなんでもない宗昭のことを彼氏だと思い込んでいるー。

洗脳された時の記憶も、既に”本当は”相手が宗昭だったのに、
今では”直人に洗脳された記憶”に、すり替わってしまっているー。

琴葉の危惧していた通り、既に
”自覚できないうちに支配されてしまっている”のだー。

琴葉が不良男子だと思い込んでしまっている直人が、
琴葉のことを下の名前で呼んでくるのは本当の彼氏だからー

親友の栄子が「”直人と何かあったの?”」と聞いて来たのは、
直人と琴葉が恋人同士だと知っているからー。

琴葉のスマホに”直人”の連絡先が入っていて、
”直人”と表示されていたのは、本当は恋人同士だからー。

しかし、既に洗脳で、
彼氏である直人を不良と、そして彼氏でもなんでもない宗昭を彼氏だと
思い込んでしまっている琴葉は、
全て、悪い意味で考えてしまっているー。

「ーーククク…琴葉もう”俺”の彼女なんだー
 お前の彼女じゃない」
宗昭がニヤニヤしながらそう言うと、
直人は怒りの形相で「こ…琴葉を元に戻せ!」と、
そう叫んだー。

「ーそれは無理だねー」
宗昭はそう言うと、笑みを浮かべるー。

「洗脳をより強固なものにするために、君をしばらく野放しに
 していたけど、もう終わりだー。

 今日ここで、”俺が琴葉のために不良のお前を撃退した”って
 シチュエーションを作り、琴葉の心を完全に手中に収めて
 邪魔者であるお前を消すー」

宗昭の言葉に、
直人は「ふ、ふざけるな!」と、声を荒げると、
宗昭はニヤッと笑みを浮かべながら、
紫色の手袋をはめて、その手で直人の頭を掴んだー

「ー琴葉もこうやって俺に洗脳されたんだー。
 そして、お前もー

 そうだなーお前は
 この学校を自ら退学ー、夜の街で好きなだけ遊び回るー…
 そんな、不良にしてやるよ」

宗昭の言葉に、直人は「や…やめ…!」と、声を発するー。

だがー、手袋から不気味な光が発されてー、
直人も”洗脳”の餌食になってしまったー。

この日を境に、本当は不良ではなかった直人は、
洗脳によって、本当の不良にされてしまい、
退学届を自ら提出し、そのまま学校から姿を消したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー宗昭が、アイツを追い払ってくれたんだねー。
 ありがとうー」

後日ー。
琴葉が安堵の表情でそう言うと、
宗昭は「琴葉のためだし、なんてことないよ」と、
笑みを浮かべたー。

「ーー本当にありがとう」
琴葉は、そんな言葉を口にしながら、穏やかな表情を浮かべたー。

最近は、頭がごちゃごちゃするような
不思議な感覚もなくなったー。

きっと、”直人”による洗脳に打ち勝ったのだろう、と
琴葉は思っているー。

本当はー、”宗昭”による洗脳に、脳がわずかに抵抗していたことによる
”違和感”で、それが消えてしまった今ー、
琴葉は完全に洗脳の術中に陥ってしまったことを意味しているー…

しかし、琴葉にそれは認識できいないー。

「ーーーわたし、洗脳になんか負けないからー」

”洗脳に勝った”
そう思いながら、安堵の表情を浮かべる琴葉ー。

”彼氏は宗昭で、アイツは大っ嫌いな不良ー”
琴葉は、今一度、自分が洗脳の影響を受けていないかどうか
頭の中で考えるー。

”うん、大丈夫ー”
琴葉は、”洗脳”の影響を受けていないと改めて確信するー。
それが”既に”洗脳の影響を受けている自分の考えだとは分からずにー。

「ーーーねぇ、直人とは別れたのー?」
親友の栄子が、心配そうに言葉を口にするー。

「ーえ?アイツと?あははー、何言ってるの?」
琴葉は、栄子の言葉を冗談だと受け止めながら笑うー。

栄子は心配そうにしていたものの、
”喧嘩でもしたのかな?”と、それ以上触れるのは、
申し訳ない気がして、その話題にはもう触れようとしなかったー。

「ーークククク…
 ”彼氏がいるから”とか言ってたお前が、
 今じゃ俺の彼氏だー」

宗昭は、琴葉の様子を見つめながら
満足そうに笑みを浮かべるー。

「ーーさて…邪魔者の”元カレ”も排除したことだし、
 もうちょっと、琴葉のやつを俺好みにしてやるかなー

 琴葉、コスプレとかも似合いそうだし、
 コスプレ好き女にしてやるかー」

宗昭はそう呟きながら、自分の鞄の中に潜ませてある
”洗脳手袋”を見つめると、静かに笑みを浮かべたー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

①の時点(琴葉が洗脳された初日に帰宅した時点)から、
既に琴葉は完全に洗脳の影響を受けてしまっていて、
本当の彼氏のことを不良だと思い込んでいる状態に
なってしまっていました~!

今、思っていることが本当に正しいことなのかどうか、
それすら分からなくなってしまうのは怖いですネ~!

お読み下さりありがとうございました~!!

コメント

  1. 名無し より:

    うわ〜最高
    自分はあまり洗脳モノ好きじゃないと思ってたのですが、コレ読んで意識が変わりました、洗脳NTR、脳に効く。

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!☆
      新しいジャンルに目覚めてしまった瞬間(?)ですネ~笑
      楽しんでいただけて何よりデス~!!