負けず嫌いの彼女が、
不良男子に洗脳されてしまったー。
しかし、彼女は”正気”を保ったー。
”絶対に負けないから”と、
そう言葉を口にしてー、”洗脳”に抵抗するー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー」
島原 琴葉(しまばら ことは)は、自分の部屋で
困惑した表情を浮かべていたー。
「ーーー…絶対に負けないー…」
琴葉は、鏡を見つめながらそう呟くー。
彼女は、小さい頃から気の強い性格で、
悪く言うのであれば”頑固”な一面もある、そんなタイプだったー。
しかし、そんな彼女は今日の昼休みに、
男子生徒から呼び出されて”洗脳”されてしまったのだー。
その時のことを思い出す琴葉ーー。
・・・・・・・・・・・・・
昼休みー
隣のクラスの戸塚 直人(とつか なおと)から
呼び出された琴葉ー。
「ー何の用ー?」
琴葉は、不審げな表情を浮かべながら、
直人のほうを見つめるー。
直人は、派手な風貌からも分かる通り、
学校で問題を起こしている不良生徒だー。
その直人からの呼び出しとなると、
イヤな予感しかしないー。
「ーーー琴葉ー俺と付き合ってくれよ」
呼び出された教室に行くと同時に、
戸倉 直人はそう言い放ったー。
「ー付き合う?ーどういうこと?」
琴葉は困惑しながらもそんな言葉を口にするー。
”どうしてわたしがこんなやつと付き合わなきゃいけないの?”
そんな風に思いながら苛立っていると、
「ーへへ…とぼけるなよー?言葉の意味は分かっているくせにー」
と、直人はニヤニヤしながら言葉を口にしたー
「ーーーふぅ…言葉通りの意味なら、それは無理」
琴葉はそう言い放つと、直人は表情を歪めたー。
「知ってるかどうかは知らないけど、
わたしには彼氏がいるのー
だから、あなたとは付き合えない」
臆することなく、ハッキリとそう言い放つ琴葉ー。
琴葉は、彼氏の姿を思い浮かべるー。
同じクラスの
梶山 宗昭(かじやま むねあき)ー
直人とは正反対の真面目で優しい性格の男子生徒ー。
「ーーへへー別に結婚してるわけじゃあるまいし、
別れを告げて俺と付き合えばいいだけだろ?」
直人のそんな言葉に、
琴葉は「ふざけないで」と即答する。
すると、直人はその表情から笑顔を消して
舌打ちしながら言葉を口にしたー。
「俺も穏便に済ませたかったが、仕方がねぇ」
そう呟くと、近くに置いてあった紫色の不気味な手袋を右手にはめると、
「”これ”を試すかー」と、笑みを浮かべるー
「ーー…そ、それは…何?」
気の強い性格の琴葉も、さすがに少し不気味に思って表情を歪めるー。
”殴られる”
そんな風に思いながら後ずさる琴葉。
だが、直人はそんな琴葉の反応を無視して、
迷いなく琴葉に近付いてくると、
そのまま琴葉の頭をガッと掴み、笑みを浮かべたー。
「ーちょ!?離して!!!」
がー
次の瞬間、紫色の手袋から不気味な紫色の光が
放たれ始めるー。
見たこともないような、異様な光がー。
「ーーな…なに!? うっー!?」
頭の中に”今まで感じたことのないような”強い違和感を感じる
琴葉ー。
「ククククー…
この手袋は、人を洗脳することが出来る手袋ー。
脳の中に直接”特殊な電磁波”そうだなー…洗脳波を送り込み
その相手を洗脳するー。
お前は俺の彼女になるんだー」
その言葉に、
琴葉は険しい表情を浮かべながら、
「せ…洗脳ー…バ、馬鹿なこと言わないでー」と、
言葉を口にするー。
思考自体が塗り替えられるような今まで感じたことのない
奇妙過ぎる感覚を感じながら、
琴葉はそれでも直人を睨みつけるー
「わたしは、あんたの彼女になんて、絶対にならないー」
とー。
直人はニヤッと笑いながら
「ほぅ…そうかいー」と、笑みを浮かべるー。
やがて、直人は手袋をはめた手を琴葉から離すと
「抵抗しても無駄だぜ」と、得意気な笑みを浮かべるー。
「ーーぅ…」
少し苦しそうに頭を押さえながらも、琴葉は
「洗脳なんて、そんなことできるはずがないー」と、
直人のほうを睨み返すー。
「ククク…まぁ、普通はそう思うだろうけど、あるんだな、これが」
直人はニヤニヤしながらそこまで言葉を口にすると、
そのまま琴葉のほうを見つめるー。
「ーーー……」
”洗脳”なんてあるはずがないー。
あまりにも非現実的だし、信じられないー。
あの不気味な光を発した手袋も、どうせLEDか何かが
仕込まれているのだろうー。
そうに決まっているー。
そう思いながらもーー
頭の中の異様な感覚ー
今までに感じたことのないモヤモヤするようなー
”脳を直接いじくられているような”この感覚はー、
”洗脳”がハッタリではないことをイヤでも理解せざるを得ないー。
「ーーーー…絶対に負けないから」
琴葉は、直人を睨みつけながら言うー。
「ーーー仮に洗脳が本当にあるんだとしても、
洗脳になんて、絶対に負けないからー」
琴葉がそう言い放つと、直人はニヤッと笑うー。
「ーーもう、お前は”洗脳”されているよー」
とー。
しかし、その言葉に、琴葉は笑ったー。
「ーーーだったら…あんたの洗脳は無意味ってことねー」
とー。
直人が表情を歪めるー。
「だってー…わたしは、あんたのこと好きじゃないし、
彼女になることも絶対にないからー…!」
その言葉に、直人は少しだけ笑みを浮かべながら
「いつまでそんなことを言ってられるかなー」
と、そう言葉を口にしたー。
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それが、今日の昼の出来事ー。
琴葉は、頭のモヤモヤが消えずに
少しだけ苛立ちながらも、
「絶対に洗脳になんて負けないー」と、
そう言葉を口にするー。
”ーー今日、何だか元気なかった気がするけど、大丈夫か?”
宗昭から届いたメッセージを確認する琴葉ー。
彼氏の宗昭を裏切り、あんな不良男子と付き合うなんて
絶対にあり得ないし、絶対にそんなことにはならないー。
「心配かけちゃったかなー…」
まさか、直人に洗脳されたなんて相談できるはずもないし、
昼休み以降、例の件があったことで
少し落ち込んでいる感じが、宗昭にも伝わってしまったかもしれないー。
そんなことを思いながら、琴葉は
宗昭に返事を送るー。
”大丈夫ー。ちょっと疲れてただけー”
そう返事を送り、琴葉は大きく深呼吸をすると、
「大丈夫ー。洗脳になんて負けないー」と、
今一度決意するかのように言葉を口にしたー。
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翌日ー
不良男子の直人が笑みを浮かべながら近づいてくるー
「琴葉ー」
堂々と下の名前で呼んでくる直人ー。
そんな直人に対して、琴葉はカチンとすると、
「わたしの名前を気安く呼ばないでよ!」と、言葉を投げかけるー。
「ーーえー な、なんだよ~」
苦笑いする直人ー。
一晩のうちに、洗脳が進んだとでも思ったのだろうかー。
そんなに簡単に支配されると思ったら大間違いー。
「ー…わたしのことを甘く見ないで」
琴葉はそれだけ言うと、逃げるようにして直人の前から離れて、
そのまま教室に向かうー。
教室に到着した琴葉が自分の座席でため息をついていると、
彼氏の宗昭が少し心配そうにしながら
「おはよう」と、そう声をかけて来たー
「あ、宗昭ー…おはよう」
琴葉はそう言いながらも、少しだけ不安そうな表情を浮かべるー。
今はまだ、大丈夫ー
けれど、もしも…もしもこの先、”洗脳”の影響が
出てしまったりしたら、宗昭のことを嫌いになったり、
宗昭に敵意を向けたりしてしまうのだろうかー。
急に、そんなことを思うと不安になるー。
昨日よりも、脳が直接いじれられているような、
何とも言い表しがたい不気味な感触は大分なくなった。
だが、まだ不安はあるー。
今、宗昭のことを好きでも、放課後になったら宗昭のことを
敵だと思い込んでしまっている可能性も十分に考えられるー。
「ーーどうか、したか?」
宗昭がそう言うと、琴葉は「えっ…?あ、ううんー…なんでもないよ」と、
無理に笑顔を浮かべるー。
宗昭のことを心配させるわけにはいかないー。
暗い表情を浮かべていれば、それだけ彼のことを心配させることにも
繋がってしまうー。
そんなことにならないようにしなければならないー。
「ーーー……ーー…俺は味方だよ」
宗昭が、ふとそんな言葉を口にするー。
「ーー…琴葉は俺の大切な彼女だからー、何があっても
俺は琴葉の味方だー」
宗昭のそんな言葉に、琴葉は暖かい気持ちになりながら
「うんー。ありがとう」と、改めてそんな言葉を口にしたー。
「ーーー」
宗昭が琴葉の座席の側を離れて、自分の座席の方に戻っていくー。
「ーーーーー…」
が、琴葉はふと、教室の入口付近で、不良男子の直人が
こちらのほうを見つめていることに気付いたー。
琴葉への洗脳の効果を確認しに来たのだろうー。
直人の計算より効果が出ていないのだろうかー。
直人は少し不満そうな表情を浮かべているー。
「ーーーあんたの思い通りになんてならないからー絶対に」
琴葉が小さくそう呟くと、
ズキッ、と少しだけ心が痛むような、不気味な感触を感じたー。
”負けないー”
絶対にー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーねぇねぇ、直人と何かあったのー?」
昼休み…。
親友の栄子(えいこ)が、そんな言葉を口にするー。
「ーべ、別に何もー」
琴葉は少しイヤそうな表情を浮かべながら
そう言葉を口にするー。
まさか”洗脳された”などとは言えないし、
普通、そんなことを言われてもあまりにも非現実的すぎて
誰も信じないだろうー。
仮に立場が逆だったとして、琴葉自身が栄子から
”ねぇねぇ、わたし洗脳されたんだけど”なんて言われても
「え~?何冗談言ってるの?」と、返すと思うー。
「ーーーそう。それならいいけど。
なんか琴葉、元気ないように見えたし」
栄子のそんな言葉に、琴葉は「大丈夫。気にしないで」とだけ返事をすると、
栄子はなおも不安そうな表情を浮かべたー。
”今のところ”は、まだ大丈夫ー。
彼氏の宗昭に対して、何か憎しみのような感情を抱いたりはしていないし、
不良男子の直人のことを好きになったりもしていないー。
けれど、”少しでも”変化が起きたら、
どうにかしなくてはいけないー。
どうにかできるかどうかは分からないけれど、自分が変わってしまう前に、
どうにか対処しなくてはいけない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
放課後ー
「ーーなぁ”琴葉”ー」
下の名前で馴れ馴れしく声をかけて来る不良男子の直人ー。
「ーーー…話しかけないで。わたしはあんたなんかに負けないから」
琴葉がそう言うと、直人は表情を歪めるー。
「ーーへ…へへへ…何があったんだよー?」
ニヤニヤしながらそう言い放つ直人ー。
「ーーわたしは、あんたの彼女になんて絶対にならないから!」
”洗脳”への抵抗を口にする琴葉ー。
それでも直人は言うー。
「ーへへへ…もう彼女だろ?」
とー。
「ーーふざけないで!」
琴葉がそう叫ぶと、また”頭がぐちゃぐちゃするような”
不気味な感触に襲われるー。
「ーーーー…」
琴葉は歯を食いしばりながらその感触に耐えると、
直人の言葉を遮って「あんたの思い通りになんてならない!」と叫ぶー。
そんな様子を、偶然校舎から出て来た宗昭が遠目から見つめるー。
琴葉が直人に声を荒げている様子を見て、
心配そうに宗孝は琴葉の方に近付いていくと、
琴葉は直人から逃げるようにして「いこっ!」と、
宗孝の手を引っ張るー。
”わたしがわたしでなくなる”
そんな恐怖に怯えながら、
彼氏の宗昭の手をしっかり握りながら、
大切なものを見失わないように、と、心の中で願う琴葉ー
「ーーだ、大丈夫かー?琴葉ー」
宗昭のそんな言葉に、琴葉は自分にも言い聞かせるように答えたー。
「わたしは大丈夫ー…」
とー。
②へ続く
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洗脳への抗い…★
果たしてどうなってしまうのでしょうか~?
洗脳に負けてしまうのか、それとも打ち勝つのか、
それは明日のお楽しみデス~!
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