”相手に憑依することでしか脱出することができない”
そんな部屋に閉じ込められてしまった5組の男女。
それぞれの男女が選ぶ道は…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”俺に憑依すれば、外に出ることができる”
達也は、そんな言葉を口にしたー。
けれどー、野々花は不安そうに「ダメだよー」と、
首を横に振るー。
仲良しカップルの二人は、
”一人にならないと出られない部屋”に閉じ込められてからも、
冷静に、”他の方法がないかどうか”を探していたー。
しかし、やはり”部屋に置かれている憑依薬”を使うしかない、と
判断したのか達也が”野々花が俺に憑依して、ここを出よう”と
提案し始めたのだー。
部屋に置かれている憑依薬を使えば、
一人が霊体になり、相手に憑依ー。
”一人になると、鍵が開く”仕組みのこの部屋から出ることが出来、
この施設から脱出できるー。
施設の出口には”憑依を解除するための薬”も設置されているためー、
”二人のうち一人が相手に憑依して、この部屋から出て、
施設の出口でそれを使えば”二人はそのまま無事に外に生還できるのだー。
だがー…そう説明されても、なかなかそう簡単にいくものではないー。
「ーー…わたしが達也に憑依して、達也の身体に何かあったら、どうするのー?」
心配そうに呟く野々花ー。
「ーた…確かに、それは、そうだけどー」
野々花に言われてハッとした達也ー。
確かに”憑依薬”なる薬が、男の説明通りとは限らないー。
「ーもし本当に憑依できたとしても、わたしが達也から出られなくなっちゃったらー、
達也はずっと……元に戻れないままだし」
心配そうに言う野々花に対して、
達也は頭の中で”…そういえば、憑依薬自体が毒だったら、野々花も危ない…か”と、
冷静に考え直すー。
「ーーそっかー…そうだなーごめん。
冷静さを失ってたー」
達也が苦笑いしながらそう言うと、
「こんな薬に頼らず、外に出る方法を見つけよう」と、笑うー。
野々花も安心した様子で頷くと、
「誰かが助けに来てくれるかもしれないしねー」と、そう微笑んだー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
男は、残る4部屋のうち、達也・野々花ペアがいる部屋の様子を見つめながら
静かに笑うー。
「ーなるほど。甘い戯言だが、素晴らしいー」
そう呟きながら、男は、他の3部屋の様子が映し出された
モニターも見つめるー。
「ーー…」
男は、そのうちの一部屋の映像を見て苦笑いすると、
視線を逸らし、譲り合いを続けて居る正雄と由梨の二人が
いる部屋の映像を見つめたー。
「ーーど、どうぞー」
「ーーか、柏木くんこそ、どうぞー」
奥手な二人は、なおも譲り合いを続けているー。
自分が相手に憑依するのではなく、
相手を自分に憑依させてあげようと、譲り合っているのだー。
そんなやり取りを永遠と続ける二人ー。
しかし、やがて正雄のほうが
「つ、月野さんー…このままじゃ、ずっとこの部屋から出れないよねー」と、
そう言葉を口にすると、
由梨のほうも「そ…そうだね…ご、ごめんなさいー」と、
申し訳なさそうに言葉を口にしたー。
「じ、じゃあー、柏木くんがわたしに憑依してー?」
そんな言葉を口にする由梨ー。
しかし、「い、いやいやいや、月野さんが僕に憑依でいいよ」と、
また譲り合いを始めてしまう正雄ー。
「ーーー」
やがて、また譲り合いを始めてしまった二人は、
苦笑いすると、
”ジャンケン”で決めることにして、ジャンケンを始めるー。
「ー負けた方が相手に憑依して、この部屋から出るーってことでー」
正雄がそう言いながらジャンケンをするー。
しばらくあいこが続きー…
ようやく、ジャンケンに決着がついたー。
結果は、正雄の負けー。
約束通り、負けた正雄が、買った由梨に憑依して
この部屋から出ることになるー
「ご、ごめんなさいーごめんなさいー」
正雄が申し訳なさそうに言うと、
由梨は「あははー大丈夫だよ…柏木くん、変なことしないって信じてるしー」と、笑うー。
正雄はなおも申し訳なさそうにしながら憑依薬を飲むと、
そのまま正雄の姿がその場で霊体のような状態になるー。
「ーー…」
由梨は少し緊張した様子で目を閉じると、
正雄はひと思いにそのまま由梨に憑依したー。
正雄の身体が霊体となり、由梨に憑依したことで、
この部屋にいる人間は”ひとり”になったー。
部屋の出口の扉の鍵が開く音が聞こえるー。
”すばらしいー。
これで君たちは外に出れる”
男が、そんな言葉をスピーカー越しに投げかけて来るー。
”ーークククー。
この二人が2番目の脱出者かー”
そう思いながら、男は由梨に憑依した正雄がいる部屋の
映像を見つめるー。
がー…
由梨は一向に外に出ようとせずー、
顔を赤らめながら
「ーーぼ、ぼ、ぼ、僕が月野さんなんてー…
おこがましいー」と、その場で恥ずかしそうに
目を閉じて、動かなくなってしまったー。
「ーおいおいおいー」
男は思わず呆れ顔でそう呟くと、
”しばらくは動かなそうだなー”と、思いながら
別の部屋の映像に視線をずらすー。
仲の悪い芳樹と愛佳の部屋は大変なことになっているー。
先程、憑依薬の容器を叩き割ってしまったことで、
”憑依による脱出”が困難になってしまった二人ー。
二人は先ほどから”殺し合い”を始めているー。
パニックになって、相手を殺してでも部屋から
出ようとしているようだー。
芳樹が、倒れた愛佳の首を絞めながら
”俺はこんなところから早く出たいんだ!”と
笑いながら涙目で叫んでいるー。
”狂ったかー”
男はそう思いながら、
残る一部屋…幼馴染の葵と亮介の部屋の映像を見つめるー。
この二人もー”予想外”の行動に出たー。
「ーー意外とこの部屋、暮らせるよなー」
亮介が言うと、葵は部屋に置かれていた本を読みながら
「これ意外と面白いよ~!」と、笑うー。
「ーえ?どれどれー?」
亮介はそう言いながら、葵の隣にやってくると、
そのまま二人で本を読み始めるー
幼馴染同士の二人が出した結論は
”助けが来るのを待つ”
そしてー、可能であれば”男を説得する”という結論ー。
亮介は部屋のカメラの方に向かって
「あの~?俺たちのこと見てますよねー?」と、
言葉を口にするー。
「ー俺たちのこと見ててもつまらないと思いますし、
そろそろ出してくれませんか?」
亮介は続けてそう言葉を口にすると、
「平和的に行きましょうよー。今、ここから出してくれれば
俺たちは黙ってここから立ち去りますからー」
と、説得を続けるー。
”ーーーー”
男は答えないー。
個別の質問には答えない、という姿勢のようだー。
「ーーはぁ…まだ無視されちゃったよ」
亮介はそう言いながらも、本を読んでいる葵の方に行くと、
「俺も何か読もうかなー」と、部屋の中の本棚を見つめながら
笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーただいま~」
愛梨に憑依した壮一は、
愛梨の身体で早速帰宅していたー。
「ーーおかえり~」
連れ去られて、謎の部屋に幽閉されてすぐ、
あっさりと同じ部屋にいた愛梨の身体を乗っ取って
そのまま脱出した壮一。
そのため、時間的にもまだあまり遅くなっておらず、
”普段学校から帰宅する時間”と、そんなに変わらない時間に、
”愛梨”は帰宅したー。
早速”愛梨”の部屋に入ると、
愛梨はニヤニヤしながら、自分の服を脱ぎ始めるー
「んふっ…ふふふふふふ…
まさか、憑依なんてことが、現実にできるなんてー」
ブレザーを脱ぎ捨てた愛花は、そのまま嬉しそうに
服の上から胸を揉み始めるー
「んふふふふ♡ すげぇ…これが…
うへ…うへへへへへへ」
下心丸出しな壮一と同じ部屋に幽閉されてしまったのが、
愛梨にとって”最悪”の事態だったのかもしれないー。
乗っ取られた愛梨は、次第にエスカレートしていき、
親が部屋に駆け付けるまで、夢中になって自分の身体を堪能するのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”おめでとうー君たちは2番目の脱出者だー。”
「2番目…」
由梨に憑依した正雄は、そんな言葉を口にするー
お互いに奥手な二人ー。
由梨に憑依したあと、正雄は一人で、
”月野さんの身体で歩くなんておこがましい”と、
部屋の隅に座っていたものの、
やがて”このままこうしていたら、月野さんに身体を返すまでの
時間が長くなっちゃう!”と、今度は猛ダッシュで部屋を飛び出して、
途中で転んでしまって、打撲を作ってしまい、
散々な目に遭い、ようやく施設の出入り口にたどり着いたー。
”僕たち以外にも、先に出たペアがいたんだ…”
由梨の身体でそんなことを思う正雄ー。
この施設には5組の男女ー、計10名が連れて来られていたものの、
”他に誰か”連れて来られていたのかは知らないー。
しかしー、他のみんなはみんなで上手くやるだろうしー、
ここに残っても何もできないだろうから、
まずはとにかくー
「これを飲めば、いいんですね?」
由梨の身体で、そう確認する正雄ー
”あぁ、そうだともー”
スピーカーから男の声が響き渡るー。
「ーわかりました」
由梨はそう言うと、すぐに”分離薬”を飲みー、
その場で、由梨の身体からはじき出されるようにして、
正雄の霊体が飛び出し、すぐに正雄は人間の身体に戻ったー
「ーー!…!!」
正雄は、慌てた様子で自分の身体を見つめて
無事であることを確認すると、
その場に倒れ込んでいた由梨のほうを見て、
「つ、月野さん!」と、声を上げたー。
やがてー、無事に由梨も目を覚ますー。
「あ…柏木くんー…おはよう」
少し寝ぼけた様子の由梨ー。
やがてすぐに「あ…そうだった!あの部屋、出れた?」
と、そんな言葉を口にすると
「出れたよ!ここは施設の出口で…!」と、
正雄は嬉しそうに言葉を口にするー。
”おめでとうー。
それにしても君は、女子に憑依しても何もせず、
只々、脱出を目指したー。
素晴らしいよー。”
男の声がスピーカーから響くー。
「そ、そんなの当たり前だろ!」
正雄が少し顔を赤らめながら言うと、
男は少しだけ笑いながら、
”さぁ、君たちは自由だー。このままノータッチでも、
警察に通報しても、構わないー。
そうそうー、私はもう君たちに手出しは一切しないから
安心したまえ。”
と、そう言葉を口にしたー。
正雄はぺこりと頭を下げて、
そのまま由梨と共に脱出していくー。
”ーあの人の目的は一体ー…?”
正雄はそう思いつつも、入口付近に置かれていた
自分の鞄を回収して、そのまま由梨と共に歩き出したー
「ーー学校も、親も心配してるだろうしー、まずは連絡しよっと…」
由梨はそう呟くと、正雄は「あ、僕もー」と、そんな言葉を口にしたー。
二人が脱出していく様子を見つめながら男は、
他のモニターの方に視線をずらすー。
”わたしを、馬鹿にするな!”
そんな罵声がモニターのひとつから聞こえるー。
男はそのモニターに目を向けて
「ーー先ほどの二人とは対称的だなー」と、失笑したー。
”ぐ…や…やめ…”
苦しそうな言葉を吐き出す芳樹ー。
仲の悪い二人が幽閉されている部屋ではー、
憑依薬の容器が破損して、”憑依による脱出”が困難になった状況に、
芳樹がパニックを起こし、愛佳を襲撃ー、
首を絞めて本気で命を奪おうとしていたものの、
愛佳に急所を蹴られて形勢逆転ー。
愛佳は「殺されるぐらいなら、殺してやるー」と、
部屋の中にあったイスで芳樹の頭を殴打したー。
倒れ込んだ芳樹は、愛佳に「死ね!死ね!」と、
ひたすら攻撃を加えられているー。
二人ともパニックになって、もはや理性を失っていたー。
”ーーおいおいーいいのか本当にー?”
男が思わずスピーカーから口を挟むと、
「うるさい!」と、愛佳の怒声と共に、イスがスピーカーに叩きつけられて
スピーカーも破損するー。
「おぉ…怖い怖いー」
その様子を、監視室のような場所で見つめながら
男は首を横に振るとー、
「あと、三組かー」と、静かに笑みを浮かべながら
”憑依薬耐久テスト”と書かれた書類の方に視線を逸らしたー…。
③へ続く
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現在、5ペアのうち2ペアが脱出デス~!
(うち1ペアは身体を乗っ取られたままですケド…笑)
残り3組は無事に脱出できるのでしょうか~?
答えは明日のお楽しみデス~!
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