<入れ替わり>これは教育だ①~指導~

クラスで勃発した”いじめ”ー。

見かねた担任の教師は
いじめられっ子の女子と、いじめっ子の男子の身体を
入れ替えてしまうー。

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そのクラスでは、
一人の女子生徒が”いじめ”を受けていたー。

大人しくて、真面目そうな雰囲気を持つ少女ー、
峯島 香奈(みねしま かな)ー。

「ーーー…おっと、悪いー」
そんな彼女の机に”わざと”ぶつかったのが、
いじめっ子のリーダー格・茂木 淳司(もぎ じゅんじ)ー。

彼は何が気に入らなかったのか、
ある時から香奈をいじめるようになり、
自分の友達や、彼女の秀美(ひでみ)、秀美の友達も加えて、
香奈をイジメていたー。

「ーーー……」
淳司に”わざと”机にぶつかられて、机から落ちた筆箱を拾う香奈ー。

が、そんな筆箱を拾おうとしている香奈に気付きー、
淳司の彼女である秀美が「あ、ごめ~ん」と、わざとらしく
その場所に歩いてきて、筆箱を踏んでいくー。

「ーあはは!秀美ってば、性格わるぅ~!」
秀美の友達の一人が、揶揄うような口調でそんな言葉を口にするー。

誰の目から見ても、”ごめん”と心の底から思っていないのは
すぐに分かるー、そんな振る舞いだー。

「ーーー…」
悲しそうに筆箱を拾い終えた香奈は、
そのまま文句ひとつ言わず、授業の準備を始めるー。

「ーーー…峯島さんー…
 やっぱり、先生に相談した方がいいんじゃないかなー?」

昼休みー。
幼馴染の男子生徒・井沼 圭太(いぬま けいた)が、
香奈に対してそんな声をかけたー。

圭太は、小さい頃から香奈の近所に住んでいた幼馴染。
お互いに奥手なこともあり、彼氏と彼女の関係ではないものの、
高校生になった今でも、互いに悩みを相談できるぐらいの
関係性ではあるー

「で…でも…」
香奈が申し訳なさそうに目を逸らすと、
「ーこのままじゃ、あいつら調子に乗るばっかりだと思うしー」と、
圭太はそんな言葉を口にするー。

「ーー…う、うんー…ーーでも…そんなことしたら 
 きっとー…もっといじめられちゃうからー…」
香奈が怯えた様子でそう呟くー。

「峯島さんー…」
圭太は、悲しそうにその名を呼ぶー。

確かに、香奈の言う通り、先生に報告したら
”火に油を注ぐ”
そんな結果になってしまう可能性は十分に考えられるー。

とは言え、このまま放っておいてもそれは同じこと。
どんどんエスカレートしていき、
油を注がなくても、火は強くなるー。

かと言ってー…
”僕が、峯島さんを守るよ”
と、までは言えないー。

圭太は、臆病な自分自身を呪いながらも、
”僕にできるのはー”と、やはり、先生に対して相談するように、
香奈に促すのだったー。

そんな、圭太の想いが通じたのか、
香奈はその日の放課後ー、
担任の男性教師・熊沢(くまざわ)の元を訪れた。

「ーーいじめられている?」
熊沢先生の言葉に、香奈は申し訳なさそうに、
いじめのことを全部話したー。

すると、熊沢先生は「今まで気づいてやれなくてすまなかった」と、
そう言葉を口にしたー。

その上で
「今日はもう放課後でアイツらも下校しているだろうから、
 明日、ちゃんと話を聞いてみることにしよう」と、
優しく言葉を掛けてくれたー

熊沢先生は、小さい頃に見たテレビドラマの
熱血教師に憧れて教師になった先生で、
相談すれば、こうして親身になって話を聞いてくれる先生だー。

香奈は、そんな熊沢先生に
”仕返しが怖い”ということもしっかりと伝えたー。

いじめの相談をすれば、いじめっ子たちから”報復”があるかもしれない。
そういう話はよく聞くし、実際に見たこともあるー。

香奈のそんな不安にも、熊沢先生は
「よし。任せておけ」と、力強く返事をすると、
「今まで気付くことができなくて、ごめんな」と、
改めてそんな言葉を口にしたー。

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翌日ー

熊沢先生はいじめの主犯である淳司や、その彼女である
秀美を呼び出していたー。

「ーお前ら、峯島をいじめてるだろ?」
熊沢先生の言葉に、淳司は顔色を変えるー。

「え…え?そ、そんなー…だ、誰がそんなことをー?」
淳司がそう言うと、熊沢先生は
「この前まで、学校に出入りしていた清掃業者のおじさんが
 お前たちが、峯島をいじめているのを見かけたんだ」と、
あくまでも”香奈から聞いたわけではない”という風を装い、
そう言葉を口にしたー。

「ぐ…」
淳司が表情を曇らせるー。

何とか言い逃れをしようとするも、
彼女の秀美の方が、観念してしまったのか、
素直に「ごめんなさいー」と、先生に謝り始めてしまったー。

「ーひ、秀美!」
淳司が慌てて言うと、
「ーし、仕方ないでしょ!もうバレてるんだから!」と、
秀美が謝るように反論してくるー。

淳司は屈辱の表情を浮かべながらも
「も…申し訳ありませんでした」と、熊沢先生に頭を下げると、
散々に熊沢先生に説教されたあと、
ようやく淳司と秀美は解放されたー。

「ーーくそっ…峯島のせいで俺たちがこんな目に…!」
案の定、香奈のことを逆怨みする言葉を口にする淳司。

だが、彼女の秀美は「もう放っておこうよ、あんな女ー」と
言葉を口にして、
いじめをやめるように、淳司にも促すー。

が、淳司はそれを聞き入れなかったー。

その後も、香奈をいじめる淳司ー。
淳司の友達や、彼女・秀美の友人も混じり、
いじめが止まることはなかったー。

相談して、唯一プラスになったのは、
淳司の彼女である秀美は、いじめから
手を引いたー…ことぐらいだろうか。

けれど、これでは何も解決していない。
そんな状況を見かねた香奈の幼馴染・圭太がすぐに熊沢先生に報告するとー、
熊沢先生は翌日、淳司たちを教室の前に立たせて、
指導を行ったー。

「ーーーぐ… ぐぐぐぐ」

クラスメイトの前で大恥をかかされた淳司は
さらに怒りに震えるー。

二度に渡る指導でも、
言うことを聞かない淳司ー。

そんな淳司の状況を知り、
熊沢先生は、帰宅すると一人、涙を流しながら
”なんとかいじめをやめさせる方法はないかー”と、考え始めるー。

「ーーー…」
”テレビの熱血教師”に憧れて教師になった熊沢先生。

だが、現実はドラマのようにはいかない、ということは
これまでの教師生活でよく分かったー。

それでもー…
それでも、教え子がいじめられているのであれば
やはり何とかしてあげたいし、
どうにかしなくてはいけないー。

「ーーー」
熊沢先生は”そうだ”と呟くと、
「どうして、いじめなんかするんだー」
と、うんざりとした表情で独り言を口にしながら、
操作していたパソコンの画面を見つめたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日の放課後ー。

香奈と、いじめっ子の淳司が呼び出されたー。

「っっ…峯島ーお前、俺のこと、何か言いやがったな!?」
不満そうな淳司ー

「わ、わたしは…何もー」
香奈は怯えた様子を見せながらも、
そのまま呼び出された生徒指導室に入ると、
既に熊沢先生はそこに待ち構えていたー。

「茂木ー…お前まだ、いじめを続けているようだな」
熊沢先生がそう言い放つと、
淳司は「あ、いや、そのー」と、表情を曇らせるー。

「ーーー…今日はじっくり話を聞かせてもらうぞ」
熊沢先生はそう言いながら、ティーカップにお茶を入れると、
それを香奈と淳司の前に差し出したー。

いじめはやめないものの、先生に呼び出されるたびに
顔色を悪くしていた淳司ー。
流石に今回はまずいと思ったのか、身体を少し震わせているー。

熊沢先生の”話”が始まり、淳司は心にもない謝罪の言葉を繰り返すー。

”ーくそっ…何で俺がこんなことにー…”
淳司は心の中でそう思いながら、
カラカラになった喉を潤すために、お茶を口に含んだその時だったー。

「ーー!」
淳司は、突然、身体から力が抜けるような不思議な感覚を覚えて、
驚いて先生のほうを見つめるー。

淳司は”お茶に何か入っていたのか”と思い、声を上げようとするー。

が、先にお茶に口をつけていた、隣にいる香奈も
「せ、先生…何か…急に調子がー」と、そう言葉を口にし始めー、
淳司は香奈のほうを向くー。

しかしー、
みるみると身体から力が抜けていきー、
先生の反応を聞く前に、淳司は意識を失ってしまったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーっ…」
淳司が目を覚ますー。

慌てて周囲を見渡すと、
そこは生徒指導室の中で、お茶を飲むのに使っていたティーカップはそのままー。
熊沢先生も目の前に座っていて、時間はほとんど経過していない様子だったー

「ーー…い、今のはー」
淳司が声を出すと同時に”大きな異変”に気付くー。

「ーーえ……」
淳司は、困惑した表情を浮かべながら、自分の口元に手を持って行き、
もう一度言葉を発するー。

が、その口から出る声は、
どう考えても自分の声ではないー。
それどころかー、男の声ですらないことが明らかに分かるような
声だったー。

「ーーー…!」
淳司はさらに衝撃を受けるー。

隣の席で、まだ”自分”が意識を失っているのだー。

「ー先にお前が目を覚ましたかー茂木」
熊沢先生の言葉に、呆然とした表情のまま、
熊沢先生のほうを見る淳司ー。

熊沢先生は鏡を手に、
それを淳司の方に向けるー。

すると、そこには
驚いた表情を浮かべている”香奈”の姿があったー。

「ーーーえ…な、な、なんだよこれー…」
”鏡の中の香奈”が、同じように口を動かしているのが見えるー。

「お、お、俺が、み、峯島にー!?」
香奈になってしまった淳司が驚いてそう声を上げると、
「ーーいじめられることが、どれだけ辛いことか、お前は分かってない」と、
そう言葉を口にする熊沢先生。

「ーー言っても分からないならー、
 お前にいじめられっ子を体験してもらうしかない」

目に涙を浮かべながら、熊沢先生はそう言い放つー

「ーーーそ、それはどういう…?」
香奈(淳司)が困惑しながら言うと、
淳司(香奈)も、程なくして意識を取り戻して、驚きの表情を浮かべるー。

「ーー峯島ー…
 今日からしばらくの間、茂木の身体で過ごしてもらうー。

 茂木が、”いじめ”を受ける側の気持ちが分かったら、必ず元に戻すー。
 だから、しばらくはこのまま過ごしてほしい」

熊沢先生は、そこまで言うと戸惑う淳司(香奈)に対して
「ー色々不安なこともあるだろうがー、我慢してほしいー
 俺は、いじめられている峯島のことも、
 それに、何度注意してもいじめをやめられない茂木のことも
 救いたいー」と、そう言葉を口にしたー。

昔から、”熱意”がおかしな方向に向くことがある、と
よく友達や先生から指摘されたこともあった熊沢先生ー。

そんな熊沢先生が、いじめられている香奈を何とか救いたい、そして
いじめをやめない淳司に、なんとか分かってもらいたいと
考えた結果ー

”いじめっ子といじめられっ子を入れ替えて、いじめっ子にいじめの辛さを分からせる”
という方法にたどり着いてしまったー。

「ーそ、そんな…お、俺、こんなやつの身体で過ごすなんて、冗談じゃねぇ!」
香奈(淳司)が、香奈が普段絶対に出さないような荒い口調で叫ぶー。

がー、熊沢先生は
「ーーこれは教育だ」と、二人を元に戻すことを拒むと、
「ーお前が心の底から、いじめの辛さを理解したら、元に戻してやる」と、
そう言葉を口にしたー。

生徒指導室を出る二人ー。

「ーお前のせいだからな」
香奈(淳司)は、淳司(加奈)を睨みつけるとそのまま立ち去っていくー。

いきなりいじめっ子と身体を入れ替えられてしまった淳司(香奈)は
困惑と不安の表情を浮かべながら、その場に立ち尽くすー。

「ど、どうしようー…」

熊沢先生の”熱意”の暴走は、
いじめられている側である香奈をも困惑させてしまっていたー。

そしてーーー

「ーーへへ…なんてなー」
立ち去った香奈(淳司)はニヤリと笑うー。

「ーー峯島のやつ…なかなかエロイじゃんー」
香奈(淳司)は、女子トイレの中で鏡を見つめながら、
制服の上から静かに胸を揉むと、
「ーー熊沢もバカだなぁ…俺にとっちゃ、むしろラッキーだぜ」と、
いじめていた相手とは言え”かわいい”身体になれたことに
むしろラッキーだと感じながら、不気味な笑みを浮かべたー。

②へ続く

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コメント

熱血教師の暴走(?)によって、
いじめっ子といじめられっ子が入れ替わり生活を送ることに…

先生が描くような理想の展開には…
ならなそうな気がしますネ~笑

続きはまた明日デス~!

コメント

  1. TSマニア より:

    どんな展開になるんでしょうネ~!☆

    熱血教師、自分は学生時代いなかったなぁ~笑

    無名さんは学生時代に熱血教師いましたか??

    ちなみに小学校と高校の担任とは今でも年賀状のやりとりしてます笑

    • 無名 より:

      熱血な先生~…★!
      ドラマみたいな人は流石にいなかったかもデス~笑

      年賀状のやりとり~!☆私も何人かやってますネ~笑