<憑依>魂のパズル③~完成~(完)

10分割になってしまった自分の魂を取り戻すため、
自分の魂が憑依している人間を見つけ出していく…。

”行方不明”の魂は残り2つ…。
その行く先は…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーお、おい!待て!俺の話を聞け!」

自分の魂がバラバラになってから3日目ー。

隣のクラスの女子生徒・香奈枝(かなえ)に
自分の魂のひとつが憑依していることを突き止めた直道たちは、
香奈枝を追いつめていたー。

だが、香奈枝は必死に声を上げたー。

「ーー…お、俺を見逃してくれたら、この身体で
 いくらでも好きなことさせてやる!
 ほ、ほら、キスでも、Hなことでも、なんでもー」
顔を赤らめながらそう叫ぶ香奈枝ー。

直道は少しドキッとしながらも、
「ーーこのままだと、俺たちは消滅するんだぞ?」と、
瑠璃が言い放つー。

「ーー…ーーそ、そんなのお前が勝手に言ってるだけだろ!?
 大丈夫だよ!消滅なんかしないって!
 ほらー何なら、”わたし”が彼女になってあげてもいいんだよ?」
香奈枝が、必死にそんな言葉を叫ぶー。

「ーー俺が勝手に言ってるわけじゃねぇよ」
瑠璃はそう言うと、スマホを手に、
”魂分裂症”と書かれた画面を表示したー。

世界でもごくわずかしか実例のない症状であるものの、
実際に、直道と同じ状況になった人間は存在するようで、
”分離した魂をそのままにしておくと消滅する”という趣旨のことが
書かれているー。

「ーーく…く… だ、だったらお前が先に”本体”に吸収されろよ!」
香奈枝がそう叫びながら、瑠璃を睨みつけるー。

「ー俺は最後だー。お前みたいな”非協力的”な俺を先に回収した方が
 効率がいいだろ?」
瑠璃がそう言い返すと、
香奈枝はなおも反論するー。

にらみ合う瑠璃と香奈枝ー。
女子同士がにらみ合ってるような感じがして、直道は気まずそうにすると、
「ま、まぁまぁ…同じ僕同士なんだしー」と、そう言い放つと、
香奈枝は「ーくそっ!何で俺が消える側なんだー」と、不満そうに言葉を口にするー。

「ーー消えるんじゃない。”元”に戻るだけだー。元々俺たちは一つだったんだからー」
瑠璃がそう言うと、香奈枝に強引にキスをして、
香奈枝に憑依していた”自分”を吸収するー。

その場に倒れ込む香奈枝ー。

「ーーん?どうした?」
香奈枝に憑依していた”自分”を吸収した瑠璃は、
顔を赤らめている直道に気付いて、そう言葉を口にすると、
直道は照れくさそうに「ーじ、女子同士のキスはーちょっと、僕には刺激的でー」と、
目を逸らすー。

「ーはははーお前は”優しさ”だからなー」
瑠璃はそう言うと、「まぁほら、戻すぞ」と、今度は
直道にキスをして、香奈枝に憑依していた自分の魂を戻したー。

「これで、4つー」
直道がそう呟くと、
少し心配そうに「ねぇ…”回収された僕”はどうなるの?」と、
言葉を口にするー。

瑠璃は少しだけ考えながら
「元々1つだった俺たちが10に砕け散ったー。
 それを1に戻すだけー。
 だから、元に戻るだけさ」と、言葉を口にするー。

10分割された直道は、それぞれ”直道の元々持っていた要素”の一部が
強く出ている状態ー。

瑠璃に憑依している”魂”は、
”俺はお前の計算とか、打算とかー、そう、頭脳の部分が強く出てるみたいだし”と、
そう言葉を口にするー。

「まぁ、とにかく消えるわけじゃない。
 元々”俺”だったものが”俺”に戻るー。それだけだから、心配すんな」
瑠璃はそう言うと、「それに、砕け散ったままの魂をそのままにしておいたら、
消えるだけだからな」と、言葉を付け加えたー。

「でも、既に半分近くの魂を回収したのに、僕、まだ妹のことも
 思い出せないしー…大丈夫かな?」
直道がそう言うと、
瑠璃は、気を失っている香奈枝を壁に寄りかからせながら、
「それはー…多分全部回収すりゃ戻るんじゃないか?」と言葉を口にするー。

「ー俺もネットで色々な資料を漁ってようやく見つけただけだし、
 細かいことまでは分からないからなー」
と、そう言葉を口にするー。

「ーま、まぁ、それはそうだよねー」
直道はそう言いながら、”そういえばーー…僕もその資料見てみたいな”と、
瑠璃が見つけた”魂分裂症”に関する資料を見たい、と、そう言葉を口にするー。

「ーん?あぁ、いいよー。
 じゃあ、スマホを貸してくれー」
と、瑠璃が直道のスマホを手にすると、
スマホの画面が一緒に見えるようにしながら、
色々な資料があるサイトにアクセスしていくー。

「ーーーーーー~~」
少し顔を赤らめる直道ー。
真横に瑠璃の顔があって、中身が自分だと分かっていても、ドキドキするー

「ーーわ、わざとでしょ?」
直道がそうツッコミを入れると、
「ーへへ、せっかくだからさ」と、
瑠璃は”わざと”身体を近づけながら、魂分裂症について書かれた
サイトをいくつか保存したー。

「ま、こんなもんだろ」
瑠璃はそう言うと、”あと一人も、他の4人が探してくれてる”と、
言葉を口にして、そのまま立ち去って行ったー。

がー、その日は結局、”残り一人”は見つからず
そのまま帰宅することになったー。

ツインテールの妹・由夢のことはまだ思い出せないー。
もちろん、こうなった後に本人から言われたから、
もう”由夢が妹”だとは分かってはいるけれどー。

「ーーーーー」
魂分裂症について書かれた英文を翻訳しながら
確認していく直道ー。

現代では、翻訳サイトが誰でも使える時代。
英文を読むこと自体は不可能ではない。

「ーーーーー」

”記憶の欠損”
記憶は、分裂した際に、一部が欠損する。
分裂した魂を回収するごとに、記憶の一部が修復される

そう記述されている項目を見て、直道は表情を歪めるー。

”但し、回収した魂が、自分と同じ部分の記憶しか持っていなかった場合
 修復を実感できない場合がある”

そうも書かれてはいたが、既に直道は3つ、魂を回収しているー。
それでも、一向に欠けた記憶が戻っている様子はないー。

本当に大丈夫なのだろうかー。

そんな風に思いつつ、迎えた翌日ー。

クラス一の優等生・麻耶ら、
”協力的な4つの魂”が憑依している4人と、瑠璃が
放課後の空き教室に集まっていたー。

そしてーー…

「ーーすみませんでしたー」
身を隠していた最後の魂を見つけたー。
最後の魂は直道の”罪悪感”や”罪の意識”ネガティブな部分ばかりが集まっているようで、
発見された直後から、謝罪を繰り返すー。

憑依先は、”後輩”のスポーツ好きの女子生徒だったー。
が、いつもとは真逆のネガティブなオーラをさらけ出しているー。

瑠璃は、いつものように腕を握って、その魂を回収すると
そのまま直道にキスをして、それを移したー。

「ーこれで、俺たち、元に戻れるんだな」
麻耶に憑依している、直道の魂のひとつが言うー。

他の男女の生徒二人と、用務員のおばさんも頷くー。

「ーよし、じゃあー、一人ずつ回収していくぜ?」
瑠璃がそう言うと、男子生徒と女子生徒にキスをし、
用務員のおばさんの腕を握り、その魂を回収ー、
最後に、麻耶が残るー

「ーー…自分の本体に戻るってのは分かってるけど、
 いざ、その時が来ると少し緊張するなー」
麻耶がそう言うと、瑠璃は「そうだなー」と、苦笑いしてから、
麻耶にキスをしたー。

これで、協力的だった4つの魂も回収ー、
既に回収した”非協力的だった魂”4つも含め、
あとは元々の直道と、瑠璃に憑依している魂のみー。

「ーよし、じゃあ、お前に送るぞ」
瑠璃がそう言うと、直道は少しだけ表情を歪めたー。

「どうした?」
瑠璃が苦笑いするー

「ー逢坂さんが元に戻るのが寂しいのか?」
揶揄うような口調ー。

しかし、直道は「そうじゃなくてー」と、そう言葉を口にすると、
瑠璃のほうを見たー。

そして、スマホを手にするー。

昨日、瑠璃から渡されたサイト以外にも自分で
色々調べまくって、直道は”別の文献”も発見していたー。

そこにはー

”本体”
分離した魂の中には”親”と”子”が存在するー。
”親”は本体にあたる魂で、”子”は分離した魂ー。
必ず親にあたる魂は一つである
なお、分離した魂”子”の回収は”親”しか行うことができないー。

と、書かれていたー。

「ーーーー……いつも、”回収”は、ーーーその…
 逢坂さんに憑依した”僕”が行ってるよねー?」

直道が言うと、
瑠璃は笑ったー。

「ー俺の方が詳しいからなー。
 で、そのあと、お前に移してるー」

瑠璃がそう言うと、直道は「でもさー」と、言葉を遮るー。

「ーーここに”本体”しか、分離した魂は回収できないって書いてあるよねー」
直道がそう呟くー。

「ーーーそれが間違ってるんじゃね?現に、俺だって分離した魂を
 回収できてる」

瑠璃がそう言うと、
直道は「ま、まぁ、そうだけどー」と、言葉を口にするー。

「ーーーとにかく、これで俺たちは無事に元に戻れるー。
 俺もそろそろ、戻るとするよ」
瑠璃がそう言うと、「最後も、キスで決めるか?」と、
笑いながら直道を見つめたー

「ーぼ、僕がイヤだって言っても、君はきっとキスするだろ?」
直道がそう言うと、
瑠璃は「さすが俺の一部。よく分かってるー」と、笑みを浮かべたー。

そしてー、
瑠璃が直道にキスをするー。

その途端ー
直道は”自分”が吸い込まれるような不思議な感覚を感じてー、
キスをしてきた瑠璃を引きはがそうとしたー。

がー、
瑠璃が、直道が逃げられないように、突然直道を抱きしめて来るー。

「ーー!?!?」
直道が驚くと、瑠璃は一旦キスをやめて、抱き着いたまま笑みを浮かべたー。

「ーーー”お前が本体”だと、いつから錯覚していたんだー?」
瑠璃の言葉に、直道は目を見開くー。

「ーお前は”本体”じゃないー。”戸部 直道”の本体は、逢坂さんに
 憑依している”俺”だー」

瑠璃はそう言うと、言葉を続けたー。

「ーーお前は、俺の”優しさ”とか”頑張り”の部分が強く出ている、
 砕け散った魂のひとつー。
 お前は”回収される側”だよー。

 でも、俺の身体に残ったお前は利用しやすかったし、
 ”回収”を手伝ってもらったんだー。

 ーそうそう、さっき 
 ”本体しか分離した魂は回収できない”って言ってたよなー?
 それはその通りー。
 
 だから、俺が分離した魂を回収してたー」

瑠璃がそこまで言うと、
直道は「で、でも、僕だってー!」と、瑠璃が魂を回収したあとに
自分が受け取っていたことを指摘するー

「ーはは、ありゃ、ただ”キス”しただけだよー
 回収した魂を移すなんてこと、できないー。

 ”欠けてる記憶”全然戻ってないだろ?
 回収した魂をお前に移してるってのは俺の嘘だー。」

その言葉に、直道は震えるー

「じ、じゃあ、消えるのはー、僕?」
直道が吐き出すように言うと、瑠璃はにこっと笑ったー。

「ーそうそうー。
 っていうかさ、俺、元々、一人称”俺”だっただろー?
 ”僕”なんて使ってる時点で、お前は本体じゃないんだよなぁ」

瑠璃はそこまで言うと、
「ーじゃ、おやすみ」と、キスをして、
”直道自身の身体に残っていた分離した魂”を、
吸収したー。

倒れ込む直道ー

「ーふ…ふふふ…やったー」
瑠璃は自分の手を見つめながら笑うー。

魂が砕け散った状態ー。
もちろん、自分の身体に戻ることもできるー。
”今”、キスをした時に自分の身体の方に魂を”吹き込む”ような形にすれば
自分の身体に戻れたー。

しかしー
自分の砕け散った魂を”全部”、他人の身体に集めればーー

「ーーー…ふふふふ…俺が逢坂さんだー」
瑠璃は笑みを浮かべるー。

他人の身体を、完全に支配することもできるー。

砕け散った魂が全て集まった今、もう身体を移動したりすることはできないー
けれどー

好きだった逢坂 瑠璃の身体を手に入れた直道は
そのまま嬉しそうに笑みを浮かべるー

「ーーー…まさか、非常階段から落ちてあんなことになるとは
 思わなかったけどー
 おかげで俺はー」

瑠璃の姿を鏡で見つめながら、嬉しそうに笑うと、
瑠璃は倒れている”元自分”を見つめながら
そのまま満足そうに空き教室を後にするのだったー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

①の冒頭で、直道くんは
自分のことを”俺”と言っています~!☆
(階段から落ちるまでの部分デス~!)

本体っぽく描かれていた直道くんの身体に残っていた彼は、
ずっと”僕”と言っていましたネ~!
気付いた皆様は、鋭いのデス…!

お読み下さりありがとうございました~!

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