<憑依>魂のパズル②~回収~

非常階段から転落したことで、
自分の魂が”10分割”されてしまった。

他の人に憑依している残り”9”の自分を
見つけ出し、元に戻ることはできるのか…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーおはよ~~!ちょっと、話があるんだけど」

朝ー。
幼馴染の瑠璃が、登校してくると
少し強引な様子で、
直道を別の教室へと移動させー、
話を始めたー。

「ーーへへへーここならいいか」
瑠璃はそう言うと、置かれていた机に飛び乗って
その上に座りながら言葉を続けたー。

「ーほ、本当に僕なんだー…」
直道は戸惑いながらそう言葉を口にすると、
瑠璃は「へへ…そうそうー。好きな子に憑依するってのもいいもんだぜ?」と、
笑いながら自分の胸を触り始めるー

「ちょ、やめろよー」
直道が戸惑いながら言うと、
瑠璃は「へへ…真面目な部分がそっちに残ったのかなぁ?」と、
揶揄うように言葉を口にしたー。

「ーーと、朝の学活まで時間がないし、本題だ」
瑠璃は、冗談をやめて本題に切り替えると、
このまま”直道”の魂が分離した状態が続くと、
やがて”魂”を維持することができなくなり、
10に分離した直道は消滅してしまう、と、
昨日と同じような説明を繰り返したー。

「ーーー俺とお前以外に、あと”4つ”の俺は、
 それぞれ誰に憑依してるか突き止めたから
 すぐ”回収”できるんだが、残りの4つの居場所が不明だー。

 そのまま宙に漂ってると、分割された俺たちの魂は弱く、
 すぐに消えちまうから、たぶん他の誰かに憑依してるとは思うんだけどー、
 ただ、昨日言った通り、本体に吸収されるってことは
 本体から分離したやつらにとっちゃ、消滅を意味するからなー。

 だからー…多分憑依した身体で本人のフリをして
 身を隠してるんだと思うー」

瑠璃はそこまで言うと、
「ーでも、俺もそうだけどさー、
 完全にその本人に成りきるってのもむずいからー
 注意深く観察してりゃ、必ず”ボロ”が出るー」
と、言葉を付け加えるー。

「ーー…つまり、”いつもと違う雰囲気の人”がいたら、怪しいってことかな」
直道の言葉に、瑠璃は「そう!流石俺!」と、嬉しそうに言うと、
既に誰に憑依しているか分かっている”他の4つの魂”にも協力を依頼すると
告げて、そのまま先に空き教室の外へと出て行ったー。

瑠璃に憑依している直道曰く、
”既に誰に憑依しているか分かっている俺を含む”5つの俺”の回収は後回しの方がいい”との
ことだったー。

先に、協力的な5つの魂を回収してしまえば、
”協力者”がいなくなってしまうためだー。
そうなれば、直道一人で、身を隠していると思われる”残りの4つの魂”を
見つけなければいけなくなってしまうー。

それなら、先に”身を隠している残りの4つの魂”を、
本体の直道を含む、”6つの直道”で見つけ出し回収ー、
その後、協力的な残りの5つを回収した方がいいー。

”それもそうだな”と、思いつつ
直道が教室に戻ると、
早速”怪しいクラスメイト”を見つけたー。

杉島 理香子(すぎしま りかこ)ー
おしゃれな感じの女子生徒なのだが、今日は妙にソワソワしていて、
顔を赤らめて恥ずかしそうにしているー。

”ーーアイツはたぶん”俺”の一部が憑依してるー”
瑠璃が小声でそう呟くー。

確かに、理香子はいつも”わたしってばかわいい!”みたいな子なのに、
様子がおかしいー

「ーー次の休み時間に確認してみようー。
 あ、でも、お前はいいー。
 ほら、今の俺は”女子”だろー?
 女子相手なら、女子の俺が声をかけた方がいい」

瑠璃の言葉に、直道は「そ、そうだねー。じゃあ、お願いするよー」と、
そう言葉を掛けてから授業の準備を始めるー。

そしてーー
1時間目が終わったタイミングで、瑠璃が理香子に声をかけて
”ーー憑依してるよな?”と、小声で理香子に確認するとー、
理香子は一目散に逃げ始めたー。

瑠璃が理香子を追いかけ始めたため、
直道も一緒になって二人を追うー。

やがて、人があまり来ない廊下の一角で、追い詰められた理香子は
「ぼ、ぼ、僕は消えたくないんだ!」と、そう叫んだー。

やはり、”10に分割されてしまった直道のひとつ”のようだー。

「ーーんなこと言うなよ。別に消えるんじゃねぇ。
 元に戻るだけだー」
瑠璃がそう言うと、
「ーーで、でも、僕の意思はどうなる!?消えるのと、お、同じじゃないか!」
と、そう叫ぶ理香子ー。

「ーーー…」
瑠璃は、そんな理香子を見つめながら、
「でも、俺たちは分割したままじゃいずれ魂が薄れて消えていくー。
 本体もろともー。だから、元に戻るしかないんだ」
と、そう説得するー。

理香子は「いやだ!僕は、いやだ!」と、必死に否定の言葉を口にしたもののー、
瑠璃はため息をついてから、
「ーーワガママ言うんじゃねぇよ」と、そのまま理香子の手を握りー、
そのまま”魂”を吸収したー。

「ぁ…」
直道の魂のひとつに憑依されていた理香子が倒れ込むー。

「ーーー…よし、これで吸収できたー。」
瑠璃はそう言うと、戸惑いながらその様子を見ていた直道のほうを向いて、
「ーーじゃあ、お前に今、吸収した魂を送るぞ」と、
そのまま直道にキスをしたー

「ーーぶっ!?!?!?」
いきなりキスをされて驚く直道ー。

キスに驚き、”自分の魂の一部”が戻ってくる感覚など分からないまま、
直道は顔を真っ赤にして叫んだー。

「い、い、い、いきなり、何するんだよ!?」
直道が叫ぶと、
「ーーえ?今、吸収した魂を俺の身体に戻しただけだけど?」と、
瑠璃は笑いながら言うー。

”理香子”に憑依していた自分の魂のひとつを、理香子から吸収したから、
それを自分の身体に戻したのだと、瑠璃は説明したー

「あ、あぁ…そ、それはいいけどー
 な、何でキス!?」
直道が思わずそう声を上げると、
瑠璃はクスクス笑いながら
「だって、俺、逢坂さんのこと好きじゃん?
 せっかくのチャンスだし、キスできたほうがー」と、
そんな言葉を口にするー

「だ、ダメだよ!お、逢坂さんの意思じゃないんだから!」
直道がそう言うと、
「”真面目”の部分はお前に残ったってことかなー」と、
瑠璃は笑いながら「さぁ、残りも回収していこう」と、
笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

昼休みー。

男子生徒一人、女子生徒2人、そして
一人は用務員のおばさん…

その4人と空き教室に集まっていたー。

瑠璃の言う
”10分割されてしまった魂のうち、元に戻ることに協力的な
4つの魂が憑依している人々だー。

「ーーってことは、行方不明の俺の魂は残り”3つ”ってことかー」
クラス一の優等生・麻耶(まや)に憑依した直道がそんな言葉を口にするー。

「そうそうー」
瑠璃がそう言うと、直道は「ー誰か、怪しい子を見かけたりした?」と、
確認するー。

すると、用務員のおばさんが言葉を口にしたー。

「さっき、女子トイレにニヤニヤしながら入って行った子なら
 見かけたけどー。」

とー。

その言葉に、瑠璃が「ーふーん…でもまぁ、ニヤニヤしながら
トイレに行く女子もいるにはいるだろうからなぁ」と、
少し半信半疑な感じで表情を歪めるー。

ひとまず、その場は解散して、
直道の10分割されてしまった魂のうち、残り3つの行方を探すことにするー。

残り3つを、直道と瑠璃、協力的な4人の計6人で探しー、
3つの魂を回収次第、協力的な5つの魂も回収ー、それで直道は
元通りに戻るー。

「ーーーーは~…なんでこんなことになったんだろうー」
直道は愚痴を口にしながらも、
「ーそういえば、クラスメイトの名前も分からない子が何人かいるなぁ」と、
自分の記憶の欠損を気にするー。

他の”直道”達もやはり記憶が欠けているようで、
麻耶に憑依している”直道”の魂は、自分の家の場所を忘れていたー。

「ーーーーー」
先程、正気に戻った理香子のほうを見つめる直道。

直道の10に分離した魂のうちの一つに憑依されていた理香子は、
既に正気を取り戻し、記憶が飛んでいることに戸惑いながらも
教室に戻ってきていたー。

”そういえばー…”
直道は、ふと思うー。

理香子に憑依していた”自分の一部”を回収したことで、
今、直道自身は10に分割されてしまった魂のうち、
自分自身と理香子に憑依していた魂…つまり10のうち2つになったはずー。

しかし、自分の一部を取り戻したのに、
特に、欠けている記憶が回復したようには思えないー。

”僕の気付いていない部分の記憶が戻ったのかなー?”
そんな風に思いながらも、教室を見回すー。

10の魂のうち、全員が覚えている記憶もあれば、
半分ぐらいの魂だけが覚えている記憶もある感じで、
記憶のほうは10分割された状態ではないー。
それぞれが少しずつ、欠けている状態だー。

理香子に憑依していた、直道の魂はたまたま”僕”と同じ部分の
記憶しか持ってなかったのかもしれないー、
そんな風に思っていると、
瑠璃が「もう一人、見つけたー」と、声をかけて来たー。

”残り3つ”の、本体に吸収されることを拒んでいる直道の魂ー。
そのうちの一つが見つかったというのだー。

憑依先は、
沼尾 陽太(ぬまお ようた)ー
昨日、直道が非常階段から転落した原因を作った
体格の良い男子生徒だー。

彼はー、いつもはおしゃべりなものの、今日は口数が少なく、
振る舞いがどうも不自然なのだと言うー。
とは言え、昨日、非常階段から直道が落下する原因を作ってしまった生徒でもあるし、
そのことを気にして落ち込んでいるだけかもしれないー。

とにかく、話を聞いてみる必要はある、と、
放課後に瑠璃と共に、陽太に声をかけることを約束し、
とりあえずは午後の授業に集中するー。

授業を受けながらも、直道は周囲を観察するー。

”ーーー僕の記憶の限りでは、クラスの中に様子のおかしい子は
 いない気がするなぁ…”

沼尾 陽太の様子は確かに少しおかしいー。
しかし、他には”もう”いない気がするー。

と、なると残り3つの直道の魂のうち、”2つ”は、
クラスメイト以外の子に憑依しているのかもしれないー。

そうこうしているうちに放課後になりー、
直道は瑠璃と共に、陽太に声をかけたー。

するとー…
陽太は、自分が直道であることを自白したー。

身を隠していた残り3つの魂のうちの一つが、陽太に
憑依していたのだー。

「ーーーーーくそっ!俺は消えたくない!」
陽太に憑依していた直道の魂は、
”直道の攻撃的な部分”の割合が強く、
必死に抵抗してきたー。

がーー

「ーーえいっ!」
瑠璃が、陽太の急所を蹴り飛ばすと、
陽太はそのまま「ぐおぉぉぉ…」と、床に蹲るー。

「ーちょ、ちょっと、やりすぎだよー」
直道が苦笑いしながらそう言うと、
瑠璃は「ー今の俺は女子なんだから、体格のいい男子に勝つにはこうしないと」と、
へらへらと笑いながら、蹲った陽太に手をかざして、
陽太に憑依していた魂を回収したー。

「ーーじゃ、またお前に送るぞ」
瑠璃が笑いながら、直道のほうを見るー。

「ーー…ま、またキスするのー?」
直道がそう言うと、
瑠璃は「わたしのこと、好きなんでしょ?今のうちにたくさんキスしておかなくちゃ」と、
”本人っぽい口調”で言うと、そのまま直道にキスをしたー。

「ーーこれで、10分割されたうちの”3”が俺の身体に戻ったことになるなー」
瑠璃がそう呟くー

元々の自分、理香子に憑依していた自分、陽太に憑依していた自分で3だー。

そして、瑠璃に憑依している自分と、協力的な自分の魂4つを合わせれば8ー。

あと”2”の魂を見つければ、元に戻ることができるー。

「ーーでも、残りの僕はどこにー?」
直道が不安そうに呟くと、
「まぁ、今日はもうみんな下校し始めてるし、また明日だなー」と、
瑠璃は時計を見つめながら呟いたー。

その言葉に頷き、
「逢坂さんの身体で変なことしちゃだめだよ?」と、直道が釘を刺すと、
「ー俺だってお前なんだから、そんな酷いことはしないよ」と、
瑠璃は笑いながら立ち去って行ったー。

”このまま不安定な状況が続けば”
直道は消滅してしまう可能性があるー。

早く、残りの魂も見つけなくてはいけないー。

そんな不安を感じながら、直道は家に向かって歩き出すのだったー

③へ続く

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次回が最終回デス~!
分離してしまった自分の魂を元に戻すことはできるのでしょうか~?★

結末もぜひ見届けて下さいネ~!

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