<憑依>憑依したやつらに会いに行く①~欲望の足跡~

憑依薬で無差別に憑依してから1年ー。

彼は”1年前に憑依したやつら”の現在を見に行くために
”旅”を始めたー。

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今から1年前ー。
彼は”憑依薬”と呼ばれる薬をネットで手に入れて、
それを使い、やりたい放題の限りを尽くしたー。

が、その”憑依薬”は、
1週間しか効果が続かないタイプのもので、
得られる”憑依能力”は永遠のものではなかったー。

「ーあれから1年かー」

会社では”とても真面目”な人間のフリをして
熱心に仕事をしている会社員・草尾 祐輔(くさお ゆうすけ)ー。

しかし、裏では会社のことをボロクソに言っていて、
表と裏の顔が激しい男だ。

そんな彼は、カレンダーを見つめながら
ちょうど”憑依薬”を手に入れてから1年が経過したことを
思い出していたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

”最初”に憑依した相手は、
会社の生意気な女部長・木山(きやま)だったー。

木山部長に憑依した祐輔は、
仕事中だった木山部長の身体で、突然胸を揉み始めて、
「ーあぁ~性欲が抑えられない~」などと、
イケメン男子社員にキスしたり、
さらには当時入社一年目だった女子社員にキスをして、
女同士のキスを会社内に披露したー。

挙句の果て、その場で服を引きちぎりながら痴態を晒しー、
木山部長は、当然”クビ”になったー。

祐輔は、日頃から偉そうにしていて、
特に男性社員にあたりのきつかった木山部長に不満を感じていて、
憑依薬を手に入れて真っ先にその人生を”破壊”したのだー。

もちろん、表では
「木山さんのおかげで、今の僕はいます」
などと、いい顔をしていたことや、”憑依”という一般人からすれば
未知の事態によるものであるため、
当然、木山部長の乱心は、祐輔のしわざだと誰一人として気付く人間は
いなかったし、そもそも疑う人間も、誰一人として存在していなかったー。

そしてー
その後も、憑依薬の効果が切れるまでの1週間ー、
憑依して、憑依して、憑依して、憑依してー、
ひたすら憑依を楽しんだー。

有給休暇を取得して楽しんだあの1週間は、今でも忘れられないー。

1週間後、
”憑依薬”を購入する際に説明があった通り、
幽体離脱することができない状態になり、
憑依薬の効果は切れた。

その後、もう一度憑依薬を購入しようとしたものの、
その時には既に、憑依薬の販売サイトは閉鎖されており、
”2度目の憑依薬”を手に入れることはできなくなってしまったー。

もう、あの欲望の日々から1年だー。

「ーーさて。」
祐輔は、カレンダーを見つめるー。

明日からはあの時と同じように、しばらくの間
有給休暇を取得している。

祐輔の勤務している会社は繁忙期と、そうでない時の”差”が激しく、
繁忙期は猛烈に忙しいのに対して
”そうではない時”は、そこそこヒマで
まとまった有給休暇もこうして取得しやすい。

「ーー会いに行くかー」
明日から有給休暇。
そんな”連休前日”の夜を迎えて
祐輔はご機嫌そうにそう言葉を口にしたー。

彼は、”会いに行く”つもりだったー。

そう、自分が1年前に憑依した者たちが、
今、どうしているのかを”見る”ためにー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーーーーあ、木山部長!お久しぶりですー」

祐輔は、何食わぬ顔で
”木山部長”と再会したー。

いつも偉そうにしていた女上司で、
1年前のあの時、憑依薬で最初に滅茶苦茶にした相手だ。

「ーーえ… あ、え~っと…」
木山部長は、そう言うと名前を思い出せないのか
そんな言葉を口にするー。

「ー草尾です。草尾雄介ー。お久しぶりです」
そう言い放つと、
木山部長は「あぁ、草尾くんー」と、そう言葉を口にするー。

木山部長は30代の女性で、当時それなりにおしゃれをしていたが
今では白髪まじりで、実年齢よりも10ぐらい上に見えるような、
そんな感じの風貌になっているー。

「ーーここで、何を?」
木山部長のそんな言葉に、
「ーいえ、普通に買い物ですよ」と、祐輔は笑うー。

木山部長は今、とある商業施設の清掃員として働いていた。
キャリアウーマンだった彼女は、憑依された時の一件が原因で、
会社をクビになり、再就職をすることもできず、
最終的に行きついたのが、今の仕事だったー。

「ーーー最近は、どう?」
木山部長がそう言葉を口にすると、
祐輔は「まぁ、いつも通りですねー」と、言葉を口にするー。

そしてーーー
”心の中”で邪悪な笑みを浮かべながら
「それにしても、あの時は本当に驚きましたよー」と、
言葉を口にすると
木山部長は、明らかに動揺したような素振りを見せるー

「ーわ、わ、わたし…本当に、何も…覚えてなくてー」
とー。

「ーもちろん。僕は部長のこと、信じてますしー…
 部長、一生懸命働いていたのでたぶん、疲れてたんですよ」
祐輔が”親切な後輩”を装いながらそう言うと、
木山部長は涙目で首を横に振ったー。

「ーごめんねー。当時のこと、思い出しちゃってー」

すっかり弱弱しくなった木山部長を見て、
祐輔は少しだけ笑みを浮かべると、
「ーあ、仕事中だったのにすみませんー。僕はこれで」と、
そのまま木山部長の前から立ち去っていくー。

「ーすっかり、毒気が抜かれた感じだなー
 ま、あんなことがあれば仕方ないかー。」

”偉そうな感じもなくなって、ちょうどいいじゃないか”
祐輔はそんなことを考えながら、”実家”に向かうために
電車に乗り込んだー。

祐輔は有給休暇中に実家に帰る予定も立てていたー。

もちろん、久しぶりに実家に帰っておくか、という気持ちもあったが、
本当の理由はそれではないー。

”憑依したやつらに会いに行く”のが目的だー。

1年前ー
木山部長に憑依したあと、実家で暮らしている
現在大学生の妹・純恋(すみれ)に憑依したー。

あの時は、本当に最高だったー。

純恋は当時、奥手な男子と付き合っていて、
ちょうど、そのデートの当日だったー。

純恋に憑依した祐輔は、純恋の身体で
その男子を誘惑したり、揶揄ったり、最後には一線を越えて
純恋の身体でたくさんHなことまでしてしまったー。

その翌朝、帰宅後に純恋を解放したもののー、
その後、どうなったのかは詳しくは知らないー。

「ーただいま」
帰宅した祐輔は、純恋の姿を1年振りに見て、
笑みを浮かべるー。

半年前にも一度実家に帰っているのだが、
その際は純恋は大学の行事で宿泊していて、
家にはいなかったー。
そのため、祐輔と純恋が会うのは、これが1年振りだー。

「あ、お兄ちゃんーおかえり~」
純恋は”いつも通り”だったー。

木山部長とは違い、やつれている様子もないし、
白髪になっているようなこともないー。

「ーー元気そうでよかったー
 なんかほら、ちょうど去年の今頃、”記憶が飛んでる”とか言ってたからー」

純恋に憑依したあと、
純恋とLINEで話をした際に、
純恋は”記憶が曖昧な日があって”と、そんなことを言っていたー。

恐らく、祐輔が憑依した日のことだろうー。
だが、その時も”疲れてるんだろ?もうちょっとちゃんと寝ろよ?”とだけ答えて
それ以上は深く聞かなかったー。

あれから1年ー
ようやくこうして面と向かって話をする機会を得た祐輔は、
その時の話題を掘り返すー。

「ーーあははーそんなこともあったねー。
 あれからは一度もないけど、
 でもーあの時付き合ってた子には急に避けられるようになっちゃってー…
 あのあとすぐ別れちゃったの」

純恋はそんな言葉を口にすると、少しだけ寂しそうに笑うー。

「へ~… 記憶飛んでる間に何かあったのかな?」
”自分がやったこと”なのに、祐輔はそんな風に聞くと、
純恋は「う~ん…何も教えてくれなかったし、分からないけど」と
首を横に振ったー

”チッ、なんだよつまんねぇなー”
祐輔は心の中でそう思ったー。
当時の純恋の彼氏は奥手な雰囲気の男子ー。
”憑依された純恋”に誘惑されたり、揶揄われたり、
挙句の果てにホテルに無理矢理連れ込まれたのに、
そのことを、正気を取り戻した純恋には
言わなかったのだろうー。

「ーーーー…そっかそっかー」
祐輔はそう言葉を口にすると、そのまま別の話に切り替えるー。

”純恋、記憶が飛んでたあの日、彼氏とHしてたみたいだぞ”なんてことを
言うわけにはいかないー。
”お兄ちゃんが何故知ってるの?”となってしまうからだー。

その後は”普通に”兄として楽しそうに雑談をすると、
「ーはは、じきに就活で忙しくなるだろうし、今のうちに
 楽しんでおけよ」と、言葉を口にして、
一旦会話を切り上げるー。

「ーーー…チッ」
そのままになっている自分の部屋に戻ると、
妹の純恋に憑依していた日のことを思い出すー。

純恋がいつもとはまるで別人のように男を誘って、
そして、別人のように、淫らな姿を晒したー。
”純恋はこんな風に喘ぐのか”という、驚きと、
あの日の純恋の声が忘れられないー。

がー、”憑依されても”知らなければ、
特に人生に影響はない、ということだろうかー。

純恋自身もポジティブな性格だし、
”当時の彼氏の反応”も、”自分の記憶が1日分飛んでいること”も、
その時は気にしただろうけれど、
後に引きずることは、少なくともなかったようだー。

「まぁ…純恋が精神的におかしくなってたりしたら
 確かにそれはそれで嫌だしなー」
祐輔はそう呟くと、自分の部屋で少しのんびりした後に
”次”の”憑依したやつ”に会いに行くことにして、
一旦”久しぶりに近所を散歩してくる”ということで、
実家の外に出るー。

「ーー星山(ほしやま)さんは元気かなー」

星山 美乃梨(ほしやま みのり)ー。
同じ高校に通っていた”祐輔が片思いをしていた子”だー。
結局、美乃梨には既に彼氏がいることが判明し、
その想いは封印、当時はクラスの別の子・彩音(あやね)と
付き合っていたものの、今でもその想いを忘れることは出来ず、
1年前、美乃梨に憑依して散々遊んだー。

美乃梨への憑依は主に、”自分の部屋でのお楽しみ”を中心に
色々やったー。
美乃梨の身体で遊んだり、
美乃梨に「わたしは草尾くんのことがすき」と、言わせたり、
美乃梨と勝手に結婚したつもりになって
「わたしは草尾美乃梨」と名乗らせたり、色々としたー。

その時を思い出しつつ、興奮してしまった祐輔は
深呼吸をすると、美乃梨の”実家”であるお店を訪れたー。

美乃梨の実家は洋菓子店をやっていて、
学生時代、祐輔も何度も訪れたことがあるー。

そのため、美乃梨の母親からは”娘の同級生”として
一応認識されているー。

「いらっしゃいませ」
そのお店は今でも健在だったが、
ちょうど、店にいたのは美乃梨の母親ではなく、
知らない人ー、恐らくはパートか何かだったため、
そのまま声はかけずに、
適当に洋菓子をいくつか購入するー。

「ーーありがとうございました~!」
そのまま店を出る祐輔ー。

当時は、美乃梨の母親がほとんど店番をやっていたが、
今は違うのだろうかー。

そう思いながら店を出ると
「ーこれじゃ、星山さんが今、どうしているのか
 分からないな」と、苦笑いしたー。

とりあえず、一旦撤収することにして、
「ーーそうだ……彩音はー」と、少し表情を曇らせて、
そのまま街の”病院”へと足を運んだー。

高校時代付き合っていた彼女・彩音とは高校卒業後に
お別れしているー。
別れた理由は”彩音が大学で別の彼氏を作ったから”
つまり、浮気だー。

そのため、祐輔は彩音に激しい怒りを抱いていたー。

そしてーー…
1年前、憑依薬を手に入れた際には、
彩音にも憑依しているー。

彩音に憑依して、
バニーガールの格好をして、外を歩かせてやったー。

嬉しそうに歩いているバニーガール姿の彩音を目撃した、
周囲の通行人の顔は、今でも忘れられないー。

そんなことを思いながら、
祐輔がやってきたのはー
”病院”だったー。

「今も、ここにいるのかなー」
そう言葉を口にした祐輔は、その病院の中に足を踏み入れたー。

②へ続く

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コメント

”憑依でやりたい放題をした1年後に、
 当時、憑依した人たちに会いに行く”お話デス~!☆!

いつもとはちょっと違う(?)憑依の物語を
楽しんでくださいネ~!

今日は、雨の降っている地域が多いので、
皆様もお気をつけて~★!

続きはまた明日デス~!!

コメント

  1. 匿名 より:

    こういう話も新鮮でいいですねー。

    他人どころか、妹にまで憑依してやりたい放題する祐輔はかなりヤバイですよね。
    しかも、現在の何事もない妹の様子見て、つまんねぇ、とか思ってるのは兄としても、人としてもかなり最悪です。

    物見遊山の感覚で被害者達を見に行っているようですが、最終的に、なんだか、祐輔が思わぬ形で報いを受けそうな予感がしますね。

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!☆

      今のところはただ、前に憑依していた人たちを
      見て楽しんでるだけですネ~笑

      明日のお話で何が起きるのかは…明日のお楽しみデス~~!

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