生活苦に陥ったある家庭…
母は、”双子の娘”を融合させて一人にするという
狂気の計画を企て、
ついにそれを実行してしまったー…。
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「ーーーなんか、今日、莉々、いつもより大人しくない?」
友達が、そんな風に言葉を口にするー
「え~?そう?」
”莉々”いやー、”莉菜”は笑うー。
「ーそんなことないと思うけど~?
それに、今までのわたしが明るすぎただけだし、このぐらいがちょうどよくない?」
”莉菜”のそんな言葉に、
友達は「あははー、何それ?イメチェンでもするつもり?」と、
笑いながら言葉を口にしたー。
ー…彼女の違和感は”間違って”は、いないー。
見た目は”ほぼ”今まで通りだし、莉々と名乗っている以上、
気付かないのは無理もないー。
しかし、彼女は先日、自宅で母親の幹恵によって”融合”させられてしまったー。
莉々自身と、双子の妹・菜々ー。
その二人が融合した状態が、今の”莉菜”だー。
「ーーあ、わかった!菜々ちゃんの真似してるんでしょ?」
友達が思い出したかのようにして言うー。
”双子の妹”である菜々は、別の学校に通っているが、
この莉々の友達も、菜々とは面識があるー。
”ほぼ同じ顔”なのに、莉々と菜々は正反対の性格ー。
そんなことを思い出し、
友達は、”莉々”が”菜々”の真似をしようとしているのではないか、と
そう考えたのだー
「菜々ー? ふふー…」
”莉菜”はそれだけ言うと、
”わたしは、ここにいるよー”と、
自分のことを莉々だとも、菜々だとも思っている”莉菜”は、
心の中でそう囁いたー。
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後日ー。
”莉菜”は、母・幹恵の指示で”菜々”を名乗り、
菜々の通っていた学校に足を運び、
そして、退学届けを提出したー。
”え?菜々ちゃんー?どうして急にー!?”
友達たちは、戸惑っていたー。
けれどー、
「ーーわたしは一人しかいないから」と、
”莉菜”は要領を得ない返事だけをして、
そのまま学校を辞めてしまったー。
そして、”莉菜”は”莉々”を名乗り、
莉々の学校で、学校生活を続けて居たー。
”菜々”のスマホと”莉々”のスマホー
その両方を使って、”莉菜”は、莉々として、菜々として、
両方の友達付き合いを続けるー。
「ーーーーーーー…」
だが、時々ー…”莉菜”は、表情を曇らせることがあったー。
「ーわたしは………莉々…?それとも、菜々ー?」
時折、不安になるー。
普段は、”わたしは莉々であって、わたしは菜々でもある”と、
そんな風に思っているものの、
急に”頭が混乱する”ことがあるー
”合体した二人の脳”は、何とか”狂ってしまわないように”
整合性を保とうとして、色々な記憶の部分を”莉菜”本人の意思とは関係なく
”調整”し、バランスを保っていたー。
「ーーー莉々…菜々ー」
父親の政宗は、そんな”莉菜”の姿を見つめながら
その状況を苦々しく思っていたー。
だが、妻である幹恵は”問題ない”の一点張りだったー。
「ーーやっぱり、あの子たちが可哀想だー」
政宗がそう言い放つー。
”莉菜”は今、自分の部屋で勉強を続けて居るー。
が、二人が融合したせいなのだろうか。
”勉強したことが、ごちゃごちゃになって、あまり頭の中に入ってこない”と、
そう嘆いていたー。
「こんなの、間違ってるー」
政宗がそう言い放つと、幹恵は舌打ちをしてから
政宗のほうを見つめたー。
「ーなに?わたしを悪者扱いするのー?
元はと言えば、あんたがリストラなんてされるからー」
幹恵がそう言い放つと、政宗は「そ、そんな言い方しなくてもいいだろー?」と、
困惑の表情を浮かべるー。
現在、アルバイトをしながら必死に就職活動をしている政宗ー。
しかし、40代後半で、それなりに収入も上がっていた政宗の収入を
政宗自身のアルバイトと、幹恵のパートだけで補うことは難しいー。
それが、今現在の現実だったー
「ーだったら、黙っててー。
わたしたちに子供は”ひとり”だけー。
莉菜、一人なのよ」
幹恵の言葉に、政宗は「幹恵…」と、悲しそうに言葉を口にするー。
その場はひとまず謝り、自分の部屋に戻ろうとすると、
部屋から出て来た”莉菜”と、すれ違ったー。
すれ違いざまによろめく莉菜ー。
「お、おい、大丈夫かー?」
政宗が慌てて莉菜を支えると、
「ーあははー、最近ちょっとバランスが悪くて」と、
そんな言葉を口にしたー。
”融合”したことで一つになった身体を、まだ上手く
使いこなせていない様子だー。
そのまま階段を降りていく莉菜ー。
”莉菜”になってから、
莉菜は時折、独り言をブツブツと呟くようになったー。
そんな様子も見つめながら、政宗は不安をさらに強めていくー。
”これは、犯罪だー”
と、政宗は思うー。
双子の娘を融合させて、一人にするー。
それでは、一人を殺したのと同じだとー。
いやー、もしかしたら”一人”ではなく、
”ふたり”かもしれないー。
今の”莉菜”はもはや莉々でも、菜々でもないー。
そうなれば、”一人”ではなく”二人”殺してしまったと考える方が、
あるいは正解なのかもしれないー。
「くそっ…俺はどうすればー…」
そんな言葉を口にすると政宗は部屋の中で一人、頭を抱えたー。
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「ーーーごめん。別れようー」
”莉菜”が、学校で、彼氏に向かってそう言い放っていたー。
姉・”莉々”には彼氏がいたー。
が、妹の”菜々”と融合してからは
彼氏とイチャイチャしていると、”嬉しい”と同時に”気持ち悪い”という
感情が強まってしまいー、
身体が彼氏を拒絶するようになっていたー。
好きなのに、気持ち悪いー。
そんな訳の分からない感情に”莉菜”も戸惑うー。
「ーーど、どうしてー…」
真面目そうな彼氏が、困惑の表情を浮かべるー。
「ー…わかんないー…わかんないけどー…
好きだけど、もう嫌なの!」
”莉菜”が、そう声を上げると、
「ーー莉々…」と、彼氏はさらに戸惑いの表情を浮かべたー。
彼氏から見た最近の”莉々”は何だかヘンだー。
急に独り言を喋ったり、
急に態度がころころ変わったり、
かなり精神的に不安定に見えるー。
「ーーな、何かあったのか莉々ー?
友達と何かあったとかー
いや、バイトー?
それとも親とー?」
彼氏は”悩みがあるなら力になってあげたい”と思いつつ
そんな言葉を口にするー。
が、”莉菜”は「何も、ないよー。何もー」と、
不安そうな表情を浮かべるー。
「ーー!」
”莉々”の彼氏は、ふとあることを思い出すー
”そういえば、最近、莉々、妹の話まったくしなくなったなー…”
とー。
少し前まで、莉々は何かと”妹”である菜々の話をしていたー。
本当にそっくりな双子で、この彼氏も何度か菜々とも会ったことがあるー。
「ーーー…妹さんのこと?」
彼氏が恐る恐るそう尋ねると、”莉菜”は「妹ー?」と、不満そうに
表情を歪めたー。
「ーーー…そうー。菜々ちゃんと何かあったのか?」
彼氏のそんな言葉に、”莉菜”は瞳を振るわせたー
「わたしに妹なんていないー。わたしにお姉ちゃんなんていないー」
ブツブツと呟きながら頭を抱える”莉菜”ー。
「ーーり、莉々ー?」
彼氏がそう言うと、
「なんでー…」と、”莉菜”は表情を歪めるー。
「なんで…なんで学校で”莉々”って名乗らなくちゃいけないの!?」
突然、不満を露わにする”莉菜”を前に、目の前にいる彼氏は
只々戸惑うー。
「わたしは…わたしは”莉菜”なのにー!
莉々なんて名前じゃない!」
涙目で叫ぶ”莉菜”に、彼氏は「お…落ち着いてー」と
訳も分からず、”莉菜”を落ち着かせようとすると、
”莉菜”はそのまま逃げるようにして走り去ってしまったー。
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家に帰宅した”莉菜”は、
”わたし…何だかヘンだよー…”と
両親に助けを求めようとしていたー。
がー
帰宅した”莉菜”の前に飛び込んで来たのは、
家の前に停車しているパトカーと、家の中に入っていく警察官ー…
と、そんな光景だったー
「ど、どういうことー…?」
”莉菜”が不安そうに表情を歪めながら家の中に入っていくと、
2名の警察官に話を聞かれている母・幹恵と、
困惑した表情を浮かべ、全てを話している父・政宗の姿があったー
父・政宗が”双子の娘を融合させる”という狂気の所業に耐え切れずー、
ついに、警察に自ら通報してしまったのだー。
「ー裏切者!わたしは、わたしは……!」
幹恵が鬼のような形相で、政宗を罵倒しているー。
政宗は困惑した表情を浮かべながら
警察官に対して「全ては俺のせいなんですー。俺がリストラなんてされたからー」と、
そう言葉を口にするー。
「ーーあ…」
そんなやり取りの中、母・幹恵が帰宅した”莉菜”に気付くと、
幹恵は「莉菜はあっちに行ってなさい!」と、声を荒げたー。
だがー…
警察官が”莉菜”からも話を聞こうと”莉菜”を呼び止めるー。
「ーあなたは、莉々さんですか?それとも、菜々さんですか?」
とー。
「わ、わたしですかー?わ、わたしは”莉菜”ー」
”莉菜”がそう答えると、
融合させる当日に、母・幹恵が全て片付けておいた”写真”の1枚を
警察官が取り出したー。
「ーーあなたたちは”双子”ですー。
莉々さんと、菜々さんー。
あなたは、どっちですかー?」
その写真を見せ付けられた”莉菜”は、表情を歪めながら震えるー。
父・政宗は「すまないー。本当にすまないー」と、
言葉を繰り返すー。
「ーふたり?? ふたり…?
莉々…?? 菜々ー???
ちがう、わたしはー?」
融合したことで、自分を一人だと思い込んでいる”莉菜”は、
困惑した表情を浮かべるー。
そして、”脳”が、自分を守るために
本人の意思とは関係なく、何とか整合性を保ってきた状況が
音を立てて崩れていくー。
もう、”脳”の処理も限界だったー
「ーーわたしは…う…うああああああああああああああ!!!」
訳が分からなくなって、その場で悲鳴を上げる”莉菜”ー
「ーーあなたたちは”一人”よ!莉菜!」
母の幹恵が口を挟むー。
「ーお母さんは黙ってなさい!」
警察官の一人が、声を荒げるー。
幹恵はビクッとして、観念した様子でその場で俯くー。
「ーーーわたしは…わたしはーー
わたしは悪くない!」
幹恵はそう言い放つと、
困惑した様子の夫・政宗を見つめるー。
「ーーー…あんたがー…あんたがリストラなんてされるからー!」
憎しみに満ちた目に、政宗は心を痛めるー。
幹恵は元々はこんな人間ではなかったー。
それは、ここまで一緒に過ごしてきた自分が一番よく分かっているー。
だからこそ、娘二人も高校生まで、元気に成長してきたのだー。
だがー…
幹恵は昔から、追いつめられると過剰な行動に走る癖があったー。
大学受験の際にも、24時間勉強する!と言い出して倒れてしまったことがあって、
その時に、政宗が幹恵を心配して声をかけたのが、
親しくなったきっかけだー。
幹恵は、追いつめられるとおかしな行動に走ってしまうー。
「ーーーー」
政宗は”俺のせいだー”と悔しそうに呟くー。
「ーーー…う…ぅぅ… うぅぅぅぅぅぅう…」
”莉菜”が、床に蹲って、うめき声を上げているー。
警察官が心配そうに”莉菜”を一度病院に運ぼうと、
父・政宗の許可を得た上で、家の外に運び出すー。
「あんたたちもー
双子でなんか生まれるから…!」
幹恵はそんな言葉を吐き出したー。
警察官は、戸惑いながらも幹恵に「署までご同行願いますー」と、
幹恵をパトカーに乗せていくー。
救急車で運ばれていく娘ー。
パトカーで連行される妻ー。
そしてー。
「ーーー俺も、共犯ですー」
政宗はそう呟くと、残っていた警察官に手を差し出したー。
融合石を使うことを止められなかったー。
一度は承諾もしてしまったー。
そう、自分も共犯なのだとー。
警察官に手錠を掛けられる政宗ー。
政宗は、もう一台のパトカーに連行されながら
家のほうを振り返るー。
いつかー…
いつかまた、ここで”4人”で笑い合える日が来るのだろうかー。
こんなことになるのであれば、
妻の幹恵を、自分の命を賭けてでも止めるべきだったー。
彼は、そう思いながらパトカーに乗り込みー、
悲しそうにため息をついたー。
おわり
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コメント
融合姉妹の後編でした~!☆
もしも私が誰かと融合してしまったら
どうなるのか、ちょっと気になりながら執筆してました~笑
私の意識が残るのか、残らないのか、ドキドキデス…笑
お読み下さりありがとうございました~!!
コメント
うーん、バッドエンドと言えばバッドエンドですが、思ってたよりは酷い結末にならなかった気がしますね☆
予想ではさらにトチ狂った母親が暴走して、今度は娘や夫と融合☆
みたいなカオスな結末になるんじゃないかと予想していたので。
コメントありがとうございます~!☆★
前に王国ごと融合しちゃうお話を書いたので、
今回はそこまでは暴走しない結末にしてみました~!☆
でも、このお母さんだともっと暴走するのも楽しかったかもしれませんネ~笑