不良と付き合い始めてから変わってしまった幼馴染。
そんな彼女が、以前の姿で現れ、
彼は久しぶりに幼馴染とのひと時を過ごしたー。
が、彼は薄々とあることに感づいていくー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーー…あ、あの…昨日はー」
学校に登校した順平は、
昼休みの時間に、友花里に声をかけていたー。
しかし、昨日とは違い、
派手な髪色にメイク、全体的に派手な雰囲気の友花里に
戻っているー
「昨日?昨日がどうかしたの?」
友花里は、少し面倒臭そうにそう言うと、
「あ、あの…昨日は、ありがとうー」と、
順平はお礼の言葉を口にしたー。
「ーーは?
…順くん、大丈夫ー?熱でもあるの?」
友花里は少し不安そうにしながら、それだけ言うと、
「ね、熱はないけどー」と、戸惑いながら
そう言葉を口にするー
「ーそっか。なら良かったー」
友花里はそれだけ言うと立ち去っていくー。
”今の友花里”も、順平に嫌がらせをしたり、
そういったことはないー。
ただ、前より性格自体がきつくなった気がするし、
以前のように話すことはできないー。
こうして話しても、どこか余所余所しい感じで、
友花里はすぐに話を切り上げてしまうー。
「ーーー…」
先日の”昔のような友花里”を思い出しながら、
順平は少しだけ表情を曇らせたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
次の休日ー。
”また”
友花里はやってきたー。
高校に入学して”不良”の男子と付き合い始める前の雰囲気でー。
今度は一緒にボウリングを楽しみながら
楽しいひとときを過ごすー。
「あ~~…これだと全然だめ~」
友花里ははぁはぁ言いながら、ボウリングの球を上手く投げることが
できずにガクッとした仕草をするー
「あははー…もうちょっと軽いやつにすれば?」
順平がそう言うと、友花里は「そっか~そうだよね」などと言いながら
球を選びに行くー。
順平も別にボウリングは得意ではないものの、
小さい頃は家族ぐるみでこんな風に遊びに来たことも
あったことを思い出すー。
「ーーーあ、そういえばー…
学校で、僕が話しかけるのは、その…迷惑かなー?」
順平が、学校と休日の友花里の”雰囲気”が全然違うことに
違和感を感じ、そんな言葉を口にするー
「え?ううんー。迷惑なんかじゃないー
けどー……
休みの日のことは言わないでほしいかなー」
友花里がそれだけ言うと、少し気まずそうな表情を浮かべるー。
「ーーーーー…」
楽しい時間に水を差してしまったかのような雰囲気に
順平は「い、いや、ごめんー。こうして休みの日だけでも昔のように過ごせるだけで
嬉しいよー」と、慌ててそう言い直すと、
友花里は少しだけ微笑みながら、頷いたー
「ーーーー」
”なに?あたし? あたしは今ー…家で昼寝してたけどー”
「ーーーー!」
順平は、こっそりと取り出したスマホに表示された文字を見て
表情を歪めるー。
スマホにはLINEの画面が表示されていてー、
”友花里”とのやり取りが表示されているー。
先週の”昔のような友花里”の言動と、
学校での言動から、違和感を感じた順平は、
今日、友花里と会った直後に、”友花里”にLINEで
”あ、あの…今、どこにいるー?”とメッセージを送っておいたのだー。
その返事が、たった今届いたー。
”家で昼寝をしていた”
そんな返事に、震える順平。
では、今一緒にいる友花里は、何なのかー。
「ーーやった~~!スペア~~!」
嬉しそうに自分で拍手をする”友花里”ー。
「ーーー…どうかした?」
スマホを手に、顔色を悪くしている順平に気付くと、
”友花里”は心配そうにそう呟くー。
「ーーい、いやー…何でも」
順平はそう返事をすると、
楽しそうにしている友花里のほうを見ながら
自分の番が回ってきてボールを手にするー。
”ーーーー今、僕と一緒にいる白井さんは、何者なんだろうー…?”
一瞬、順平は過去のことを思うばかり、
”幻覚”でも見ているのかと、そんな風にも考えたー
「ー順くんも頑張って!」
一度、背後を振り返るー。
そこには、確かに友花里がいるー。
「ーーー…うん」
順平はそう答えて頷くと、そのまま球を投げるー。
あまりボウリングが上手ではない順平だけどー、
友花里のスペアに影響されてかー、
奇跡的にストライクを繰り出したー。
「ーーわ!!すごい!順くん!ストライクだよ~!」
嬉しそうにする友花里に対して、
順平は照れくさそうに笑うと、
”ーこれは幻覚なんかじゃないー”と、改めてそう思うー。
幻覚なら、ボウリング場に入った時もそうだし、
先週、カラオケに行った時もそうだし、
”二人分”の料金を請求されるはずはないー。
”二人です”と言ったら
”何言ってんだコイツ?”という顔をされるに決まっているー。
しかし、今日も先週も、問題なく店の人たちは
”二人の客が来た対応”をしているー。
つまり、確実に”二人”はいるのだー。
幻覚じゃないー。
順平は、そう思いながら友花里のほうを見つめるー。
でもー
”本当の白井さん”は、今、別の場所にいるー。
最近の振る舞いを見ている限り、休みの日だけ、こんな風に前のような姿で
一緒にいてくれるとは思えないー。
「ーー白井さんー」
順平が、”正体”を問いただそうとすると、
”友花里”は少しだけ笑いながら、
「ねぇねぇ、その呼び方ー他人行儀で悲しいから、
前みたいに、”友花里ちゃん”でもいいんだよー?」と、
そんな言葉を口にするー
「え…えぇっ…!?で、でも、ホラ、僕たちももう高校生だしー」
順平がそう言うと、
”友花里”は「二人きりだけの時は、いいでしょ?」と、
そんな言葉を口にしたー。
「ーーー…」
戸惑いながらも、順平は、「じ、じゃあ…ゆ、友花里ちゃんー?」と、
恥ずかしそうに言葉を口にすると、
”友花里”は嬉しそうにー、けれども寂しそうに少しだけ微笑んだー。
順平は思うー
”君が誰だかは知らないけどー…
でも、少なくとも、僕を傷付けようとして、近くにいるわけじゃないことは分かるー…”
とー。
誰かが友花里のフリをして順平に近付いたところで
”あまりメリットはない”はずなのだー。
しかも、こんなに楽しそうに振る舞う意味は全くないー。
順平は、目の前にいる”友花里”は恐らく本物ではない、と
理解しながらも、今、この瞬間を楽しもうと決意をするのだったー。
そしてー…
そんな日々がそのあとも数週間続いたー。
「ーー今日で、おしまいー」
友花里は、寂しそうに微笑むー。
「え?」
順平が戸惑いながら首を傾げると、
「ー休みの日に会うのは、今日でおしまいー」と、
友花里は言葉を続けたー。
相変わらず、休みの日は”昔のような友花里”と会って、
楽しい時を過ごしていた順平。
けれどー、
それも、今日で終わりなのだというー。
「ーど、どうしてー?」
順平がそう言うと、”友花里”は「ごめんねー。でも、学校では会えるからー」と、
そんな言葉を口にしたー。
「ーーーーー…」
寂しそうにする順平。
君は誰なのか、どうしてこんなことをしていたのか、
それを聞こうとも思ったー
けれどー…
「ーーーー…ありがとうー」
順平は、それだけ伝えたー。
「本当に、楽しかったー…
ありがとうー」
とー。
相手に悪意はない…と、思うー。
彼女が何者なのかは知らないけれど、
ここは聞かないのが優しさだと、順平はそう思ったー。
「ーーーー…また、学校でー」
順平がそれだけ言うと、
”友花里”は「うんー」と、少し寂しそうに、
けれども安心した様子で、そう頷いたー。
そしてーーーー
「ー”わたし”は”わたし”だからー。
何も昔と変わってないよー
だから、頑張ってー」
と、”友花里”は静かにそう呟いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーー」
順平と遊んでいた”昔みたいな友花里”は、
友花里の家の中に入るとー、
”変身”を解いたー。
友花里の姿からーーー…
友花里の兄である祐樹ー…
順平が小さい頃一緒になって遊んでくれていた、友花里の兄の姿へと戻ったー。
兄・祐樹は大学生になり、実家を離れていたものの、就職活動が終わり
暫く実家に戻って来ていたのだー。
そしてー…
妹の友花里と、友花里と仲の良かった順平の”現在”を知ったー。
落ち込んでいる様子だった順平の姿を何度か偶然見かけてー、
そして、友花里本人から順平との今の関係を聞かされて、
祐樹は順平に、そして友花里に同情したー。
彼は順平を励ますために、以前ネットで手に入れて使っていなかった
”変身薬”を使い、”不良と付き合う前の友花里”の写真を見て
友花里に変身、友花里として順平を元気づけようとしていたのだったー。
”今日でおわり”の理由は単に、また実家から自分の家に帰る日が
迫っているからだー。
「ーーーーーー…」
部屋の中から、”本物の”友花里が出て来るー。
「ー友花里ー」
変身を解いたばかりの兄・祐樹がそう言うと、
友花里は「ーーどうだったの?」と、そう言葉を口にするー。
「ーーーーーはは、どうだろうなー」
祐樹はあえて答えずに笑うと、
「素直になれよ。友花里ー。ああいう子には
そういう”駆け引き”は通用しないぞー」
と、だけ言うと、少しだけ笑ってから、
「ー相手が俺みたいなやつだったら、通じるかもしれないけどな」と、
少しだけ冗談めいた口調で言うと、そのまま自分の部屋の方に立ち去って行ったー。
「ーーーーー」
”派手な自分”の姿を鏡で見つめながら友花里は少しだけため息をつくと、
「ーだってー……」と、寂しそうに言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後日ー
「ーーーなぁなぁ、俺たち”友達”…なんだよな?」
不良男子の海老原 毅がそう言い放つー。
友花里は「最初に言ったでしょ」と、返すと
毅は「このまま、付き合えたりすればなぁ」と、ボソッと呟くー。
「ーーー最初にも言ったけど、それは無理」
友花里のそんな言葉に、毅は「はぁぁ、残念」と、笑いながら
「まぁ、俺みたいな不真面目なやつと、友花里は釣り合わないか」と、
そう言葉を口にしたー。
友花里と海老原 毅は付き合っていないー。
”付き合っている”というのは、順平が勝手にそう思い込んだだけで
本人たちから聞いた話ではない。
友花里は、毅と親しくなる前に”友達になりたい”と、毅に近付いた。
その時に”付き合うことはない”とも釘を刺していて、
身体の関係のようなものも、持っていないー。
毅とは偶然、共通の趣味があり、それを理由に”友達”として、親しくなり始めたー。
全てはーーー
「ーーー」
友花里は、チラッと順平のほうを見つめるー。
”順平の気を引きたかったからー”
見た目も少し派手にして、順平が何か反応してくれるか、
そんな駆け引きをしていたー。
毅と親しくなれば、嫉妬のようなリアクションを起こしてくれるのではないかと
期待していたー。
自分でも、面倒くさいやつだと、そう思うー。
けれどー
”ーー白井さんー”
高校に入ってから、順平に名前ではなく苗字で呼ばれるようになったことに
友花里は酷くショックを受けて、
そういう行動に走ってしまったー。
順平が余所余所しくなった気がしてー、
「最近、わたしを避けてない?何で”白井さん”ってー」と聞いた時にも、
「ーべ、別にーいいじゃん!白井さんは白井さんなんだし!」と、
順平に逃げられてしまったー。
そんな出来事から、友花里は毅と”友達”になることで
順平の気を引こうとしたー。
でも、失敗したー。
順平は何か勘違いしているようだし、二人になっても
なんか気まずいー。
「ーーなぁなぁ、ああいう奴にはやっぱりー」
毅が、順平のほうをチラッと見つめながらそう言うと、
友花里は「べ、別にそういうのじゃないもん」と、
顔を赤くしながら目を背けたー
”ー素直じゃねぇなぁ…”
毅はそう思いながらも、「まぁ…友達として応援はしてやるぜ」と、
呟いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”友花里が不真面目になった”
そう見えているのも、順平の誤解ー。
授業自体はちゃんと受けているし、授業態度も悪くないー。
ただ、順平の中のイメージでは、そう見えてしまっているー。
友花里の言葉遣いが乱暴になった気がするのも、
友花里が順平に見られていると感じているときはあえて
そう振る舞っていたり、順平の思い込みによるものー。
高校生になって、だんだん異性として意識することが
強くなってきて、でも周囲から揶揄われたりしてー、
友花里につい、他人行儀な態度を取るようになってしまったことが、
そもそものきっかけー。
お互いに素直になれずー、お互いに不器用、
それが今の状況を生んでいるー。
けれどー
”ー”わたし”は”わたし”だからー。
何も昔と変わってないよー
だから、頑張ってー”
恐らく”偽物”の友花里に言われた言葉を思い出すー。
「ーーーー……何もー」
順平がそんなことを思い出しながら自販機の前にやってくると、
そこには、いつも通り、派手な友花里の姿があったー
「ーーーあ…順くんー」
ジュースを買い終えた友花里がそう言うと、
順平は「あ…」と、言葉を詰まらせるー。
「ーーーー…」
何か言いたげに自販機の前に立っている友花里に対して、
順平は少しだけ笑うと、
「ーー…そこにいたら、邪魔だよー」と、
この前、友花里に言われた言葉を軽く冗談っぽく言い放ったー
「ーーぁ…ごめん」
友花里はそれだけ言うとそのまま立ち去って行こうとするー。
順平も、”いつものように”そのまま会話を広げることができずに
自販機を見つめるー
がー
”頑張ってー”
偽物の、優しい友花里の言葉を思い出して順平は振り返るー
「あ、あの!」
順平がそう声を掛けると、友花里は立ち止まるー。
「ーあの!白井さんー…いや、えっと、
ゆ、友花里ちゃんー
ま、また今度、久しぶりに昔のように一緒にー、
お、お出かけでも…ど、どうかなー?」
順平は顔を真っ赤にしながらそう言うと、
友花里は振り返って、驚いたような表情を浮かべながら笑ったー
「一緒にお出かけー……ふふーー 何それ?どこに?」
友花里のそんな言葉に、順平は
”何言ってんだ僕はー”と、自分でも誘い方に苦笑いしながら、
言葉を続けたー
「ーお、お昼ごはん食べたりとか、か、カラオケとか、ボウリングとか、買い物とかー!」
適当に半分パニック気味にそう叫ぶと、
友花里は少しだけ考えてから、「うんー」と、嬉しそうに答えたー。
順平は「え?嘘?本当に!?やった!」と、子供のように喜ぶー。
友花里は笑いながら
「ーも~…いつまでも子供のままー」と言うと、そのまま来週の土曜日に
遊ぶことを約束して立ち去ろうとするー
「あ!で、でも、海老原くん、大丈夫かなー?」
毅のことを彼氏だと思っている順平がそう言うと、
友花里は「ーーわたし、付き合ってるなんて一度も言ってないよね?」と
揶揄うような口調で言って来たー。
「えぇ!?付き合ってないの!?」
順平がそう叫ぶと、
友花里はクスクス笑いながら「ーー…誘ってくれて、嬉しい」と、
静かに言葉を口にして、そのまま立ち去って行ったー。
「ーーー…」
呆然としながら、一人自販機の前に立ち尽くす順平ー。
少し間を置いて、ようやく実感が沸いて来たのか、
順平は今一度「やった!」と、小さく呟くのだったー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
ハッピーエンドな他者変身モノでした~!☆
変身薬を持っておきながら
(きっと)悪用していないお兄ちゃんは善人ですネ~★!
お読み下さりありがとうございました~!
コメント