不良の彼氏と付き合い始めてから
すっかりと相手に染まり、変わってしまった幼馴染…
そんな幼馴染の姿を見つめながら、
悲しみに暮れる彼…。
しかしある日、”変わる前の彼女”が、
突然、彼の前に姿を現したー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あはははは!アイツうざくない?」
教室内で騒がしく笑っている女子生徒のほうを、
気弱そうな男子生徒がチラッと見つめていたー。
田村 順平(たむら じゅんぺい)ー
彼は、見た目通り、奥手で気弱なタイプの男子高校生だー。
そんな彼が、見つめている女子生徒は、
一見すると彼とは縁のなさそうな雰囲気の、
派手な女子生徒。
「ーーほんと?ウケるんだけど!
あたしも見たかったなぁ~」
茶色い髪に、派手なメイクに、
派手なアクセサリー…
そして、短いスカート姿ー。
彼女は、順平にとっては幼馴染でもある
白井 友花里(しらい ゆかり)ー
小さい頃から近所に住んでいて、
小学校、中学校と同じ学校だったこともあり、
以前は家族ぐるみの付き合いもあったぐらいに
仲良し”だった”子だー。
しかし今はーー…
高校に入ってから付き合いだした彼氏・海老原 毅(えびはら たけし)の
影響を受けて、すっかりと”同類”になってしまっている。
不良男子の毅と付き合い始めたことで、
あんなに真面目で穏やかだった友花里は、すっかり別人のように
変わってしまったのだー。
”ーーーもう、順くんは何も悪くないんだから
謝っちゃダメでしょー。
ああいう、いじめっコたちは、黙ってれば黙ってるほど、
つけあがるんだからー”
昔ーー…
いじめられていた頃には、友花里は順平のことを
親身になって助けてくれたー。
そんな時のことを思い出すー。
”で…でも…”
気弱な順平は、友花里から助言を受けても、
やっぱり勇気を出すことはできなかったー。
怖いモノは、怖いのだー。
きっと、友花里にも呆れられてしまうかもしれないー。
当時の順平はそんな風に思って、さらに落ち込んでいたー。
しかし、友花里は
”わたしが、順くんを助けるー”と、
いじめっコたちに直接注意までしてくれたー。
案の定、それが原因で友花里までいじめのターゲットにされてしまうー。
がー、友花里には”友達”が元々多かったー。
”もう頭きたー!悪いのはあの子たちなのに!”と、
友達に根回しして、さらには先生にまでいじめの証拠を提出ー、
逆にいじめっコの男子三人をクラス中から孤立させ、
いじめ問題を強引に解決させたー。
三人中一人は不登校になり、もう一人は転校、
残りの一人は学校には来ていたものの、すっかり大人しくなって
卒業するまで何もしてこなかったー。
”ーー順くんが、元気になってよかったー”
いじめ問題が解決したあと、友花里はそんな風に
喜んでくれたー。
それから中学生になりー、
みるみる可愛くなっていく友花里に、少しドキドキするようになった順平ー
友達も多く、真面目で優しく、
けれど、引かないところは引かないー…
そんな性格の友花里には友達もたくさんいて、
いじめはなくなったけれど、相変わらず友達の少ない順平からすれば、
友花里は”住む世界の違う”子だったー
それでもー…
友花里は、順平に変わらず接してくれたー。
「ー順くん!ー今日は何の日だか知ってる?」
「え…え???な、なんだっけー?」
顔を赤らめながら、友花里から”バレンタインチョコ”を受け取る順平ー。
友花里が”同じクラスの男子”には、義理チョコを全員に配っているのは
知っていたものの、当時、別のクラスだった順平にだけは
”わざわざ”別の手作りチョコまで用意してくれていたー。
それも、毎年ー。
そして、3年生のとき…
唯一三年間でクラスが一緒になった時に、順平はあることを知ったー。
”自分だけ、チョコが違う”
と、いうことをー。
告白されたりしているわけではなかったけれど、
周囲の男子に配っているチョコは、全部お店で売っている普通のチョコだったー。
が、順平にだけは、毎年手作りチョコでー、
3年生の時、初めて友花里と同じクラスになったことで、
それを知ったのだったー。
そんな、間柄は続きー
高校が同じだと知ったとき、
友花里はとても喜んでくれたー。
友花里と喋っている時に、揶揄われた時にも、
友花里は「ー別に、仲良しだっていいでしょ!」などと
揶揄う子たちを怒ってくれたー。
”でも、僕なんかと一緒にいると、友花里ちゃーー‥
白井さん、恥ずかしいよね?”
そんなことも言ったー。
小さい頃からの付き合いだったため、ずっと”友花里ちゃん”と
呼んでいたものの、
高校に入ってからは、順平は友花里のことを、白井さんと呼んでいるー。
年頃のせいか、一緒にいると揶揄われることもあるからだー。
”別に、白井さんのことは何とも思ってないよ!
ただの幼馴染!”と、言っても
周囲はやっぱり揶揄って来たー。
そうこうしているうちにー
去年の冬頃から、友花里は同じ高校に通う不良・海老原 毅と付き合い始めてー…
それからは、みるみる派手になっていって、
”海老原色に染まった”とでも、言えば良いのだろうかー。
そんな状態になってしまったー。
「ーーーーー」
過去のことを思い出しながら、寂しそうに自販機で飲み物を買って
振り返ると、ちょうど、友花里も自動販売機のところにやってきたー
「ーーあ……し、白井さんー」
”今の友花里”は、正直、順平にとっては苦手なタイプでしかないー。
オドオドしながらそう言葉を口にすると、
友花里はため息をついたー。
「順くんー。そこにいたら、邪魔でしょ?」
とー。
「ーー…え…あ、」
自動販売機の前に立ったままだった順平は、
困惑した表情でそう言葉を口にすると、
そのまま「ごめんなさい」と、自動販売機の前から身をかわすー。
「ーーー…」
「ーーー…」
友花里は、そのまま自動販売機でジュースを買いー、
順平は、気まずそうにその様子を見ているー。
特に、二人の間に言葉はないー
「ーー…なに? どうかしたの?」
友花里は、順平に気付き、そんな言葉を口にすると、
順平は「あ…ううんー何も」と、それだけ呟くー。
「ーーそ。」
友花里はそれだけ言うと、そのまま何も言わずに立ち去っていくー。
すっかり”不良”みたいな見た目になってしまって、
授業も前より不真面目になってしまった友花里ー。
順平のことを”いじめてくる”ようなことはしないものの、
以前とは違い”特別扱い”してくれるようなことはなくなったー
いやー、”特別扱いしてほしい”なんて
おこがましいことを思っているわけではないけれど、
こうしていざ、”ただのクラスにいる人”みたいな扱いをされると
今までの境遇上、寂しいのも事実だったー。
小さい頃の家族ぐるみの付き合いもなくなり、
よく、友花里の家に遊びに行った時には、
一緒になって遊んでくれた友花里の兄・祐樹(ゆうき)は、
もう、大学生になって実家にはいないみたいだし、
両親の付き合いも前ほどはなくなってしまったー
”まぁ…やっぱり、でも、こんなものだよねー”
順平は、そう思いながらゲームに明け暮れる日々を送っていたー。
がー…
ある日のことだったー。
♪~~
休日にインターホンが鳴るー。
”順平に用のある人”なんてめったに来ないし、
自分が1階にいるときは、親の代わりに出ることは
もちろんあるけれど、
自分の部屋にいるタイミングかつ、両親のどちらかが1階にいるような時は
わざわざ自分で応対したりはしないー。
今日も”僕には関係ない”と無意識のうちに思いながら、
友達の一人とLINEのやり取りをしていたその時だったー。
”ーー順平~~~!”
下から母親の声が聞こえるー。
「ーーーえ?僕?」
順平が不思議そうに部屋から出て、1階に向かって返事をすると、
”ほら~!友花里ちゃんが久しぶりに来てくれてるわよ~!”
と、母親がそんな言葉を1階から口にしたー
「え…!?えぇっ!?
ゆ、ゆかー、いや、白井さんが!?」
そう叫びながら、慌てて1階へと駆け下りる順平ー。
1階に駆け下りると、既に母親が家の中に招き入れていたようで、
”友花里”の姿があったー。
「ーあ、順くん!」と、微笑みながら手を振る友花里ー。
「ーーえ……え…き、急に、どうしたのー?」
顔を赤らめながら、順平がそう言うと、
友花里は「ふふー…久しぶりに順くんと一緒にお出かけでもできればな~って」と、
優しく微笑んだー
「ーーー…」
順平は、そんな友花里のほうを驚いた表情を浮かべながら見つめるー。
無理もないー。
派手な風貌になっていた友花里が、
高校入学当時のようなー、穏やかで真面目そうな雰囲気に
ガラリと変わっていたのだからー。
「ーーー…どうしたの?そんなにじろじろと見たりして~」
友花里が笑いながら言うと、
「い、いやー、あ、あのー…前の白井さんみたいだなぁって」と、
順平がそう言葉を口にするー。
「ーーーーー…!」
友花里は一瞬、表情を曇らせると、
「今日、何か予定ある?なければ一緒に少しお出かけしないー?」
と、そんな言葉を口にするー。
「ーお、お出かけ、ど、どこにー?」
さらに戸惑いの表情を浮かべる順平。
がー、友花里は「う~ん、行先は決めてないけど、
お昼食べて、どこかで買い物するか、カラオケとかボウリングいくとか!」と、
具体的な予定は決まってない様子でそう言葉を口にしたー。
「ーま、まぁ…いいけどー…
ど、どうして急に?」
そんな言葉を口にしながらも、順平は嬉しさを隠せない様子で
そのまま外出する支度を始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーそれにしても、どうして急にー?」
ファミレスで昼食を食べながら
順平がそんな言葉を口にすると、友花里はハンバーグを口にしながら、
「ー最近ーなんか、二人の間に距離、できちゃったじゃん?」と、
友花里が少し寂しそうに言うー。
「ーーう…うんー…な、なんか、ごめんー」
順平が謝罪の言葉を口にすると、
友花里は笑いながら、
「ー気持ちは分かるよー。わたし、見た目も変わったしー。
彼氏もできたしー。順くんからすると、話しかけにくいだろうし、
避ける気持ちもー」
と、優しく言葉を口にするー。
「ーーー…ーーう、うんーー
さ、避けてるわけじゃないんだけどー…
その、どうしたらいいか、分からなくてー」
順平がオドオドしながら言うー。
そんな様子を見ると、ハンバーグを完食して、
追加で頼んだドリアを食べ始める友花里ー。
”よ、よく食べるなぁ”と思いつつも、
順平は友花里のほうを見つめると、
友花里は少し考えてからー、
「ーそれが、寂しいのかもねー」と、
そんな言葉を切なそうに口にしたー。
昼食を済ませてー、二人でカラオケに行って、
久しぶりに楽しいひとときを過ごした順平。
「ーー…学校ではまたー…”いつもの雰囲気”に戻るけどー……
あんまり、気にしないでー。
わたしは、わたしだからー」
友花里のそんな言葉に、
順平は寂しそうに頷くー。
「ーーー…ーき、今日はありがとうー」
順平がそう言いながら頭を下げるー。
そんな様子を見て、友花里は
「ー”気遣い”が人を傷つけちゃうこともあるのかもー」と、だけ呟くと、
「ー”また”次のお休みに時間があればー」と、
”次”もあることを約束して、そのまま立ち去って行ったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
同時刻ー
「え~~~…あ~~も~~!ムカつく!これ全然できない!」
ゲームセンターでは
”いつも通り”派手になってしまった友花里が
彼氏の海老原 毅と遊んでいたー。
「ははは、俺が手本を見せてやるぜー」
毅が、笑いながら友花里が失敗したゲームをやり始めるー。
たった今ー
”別の場所”で、昔のような風貌の友花里が順平と別れの挨拶を交わして
帰路についたのにー、
全然違う場所にあるこのゲームセンターに”友花里”はいるー。
当然、順平と別れて数秒でこの場所にワープできるはずもないー。
そうーーー
「ーーーーーーー」
順平と一緒に休日を過ごしていた”友花里”はーー
「ーーーーーふぅ」
”変身”を解除すると、静かにため息をついて、
そのまま家の方に向かって歩き出したー。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
順平と一緒にいた幼馴染のほうは偽物…☆!
いったい何が起きているのかは、
明日のお楽しみデス~!☆☆!
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