<融合>融合姉妹(前編)

とある家庭の双子の姉妹ー。

しかし、父親のリストラをきっかけに生活が苦しくなった両親は
”二人を融合させて一人にすれば、生活費が浮く”という狂気の発想に
たどり着くのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

市山(いちやま)家は、
父親である正宗(まさむね)と、その妻・幹恵(みきえ)、
そして双子の姉妹、莉々(りり)と菜々(なな)の、
4人家族だったー。

それなりに幸せだった、ごく普通の家庭ー。
しかし、それは突然に”崩壊”したー。

大黒柱であった父・政宗が、
数か月前に職を失ったー。

”リストラ”されたのだー。

しかし、政宗は年齢的にそう簡単には職を見つけることができない年齢ー。
母である幹恵も、必死にパートをしながら生計を支えたものの、
40代後半になり、それなりに収入も上がっていた政宗の稼ぎを
補うことは難しかったー。

”金のない生活”
それは、心を蝕むー。

ギリギリの生活を続けた両親は、
ついに”恐ろしい道”を見つけてしまったー。

”二人の娘を、一人にすることができればー”
そんな、恐ろしい道だー。

とは言え、両親は、莉々のことも、菜々のことも
当然大事にしているー。
どちらかを殺そうとしているわけではないし、
どちらかを捨てようとしているわけでもないー。

だがー、”二人”を一つにすることができればー…

そうー
二人が、ギリギリまで節約する方法を調べていて、
見つけてしまったのだー。

”融合石”(ゆうごうせき)をー。

融合石は、同時に触った人間二人を”融合”させてしまう
恐ろしい力を持つ石ー。

既に、ネットからその石を取り寄せ、
今、融合石は机の上に置かれているー。

「ーー絶対、わたしと同時に触っちゃだめよ」
幹恵の言葉に、夫の政宗は「わ…分かってるよー」と
静かに頷くー。

「ーーほ、本当にやるのかー?」
政宗がそう言うと、幹恵は笑うー。

「ーやるのよ。もう、わたしたちにはそれしか道がないー。
 それに、莉々と菜々は、一つになっても、二人とも死ぬわけじゃないのー。
 何にも、問題ないでしょ?」

幹恵のそんな言葉に、
政宗は「そ、そうだなー」と、頷くー。

”幹恵”は、前はこんな性格ではなかったー。
が、困窮した生活を続ける中、性格が歪みー
”犯罪ではないこと”であれば、どんな手段でも使うようになってしまったー

一方、政宗は元々気弱な性格であるため、
妻・幹恵を止めることもできないまま、
”娘たちを融合させる”という恐ろしいことに、同意してしまうー。

「ーじ、じゃあ、二人を呼んでくるよー」
政宗が気まずそうにそう言うと、
幹恵は少し笑いながら、「うん、待ってるー」と、
そう言葉を口にしたー

・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーお姉ちゃんは、何でもできて凄いなぁ…」
妹の菜々がそんな言葉を口にすると、
姉・莉々が「そんなことないないー」と、笑うー

「で、でもでもー
 お姉ちゃんは明るくてかわいくて優しいしー、
 友達も多いし、彼氏もいるし、勉強もできるし、
 それにそれにー」

負のオーラがあふれ出している妹・菜々がそんな言葉を口にすると、
姉・莉々は戸惑いの表情を浮かべながら
「か、顔はほとんど同じでしょー?」と、
”かわいくて”の部分にツッコミを入れるー

「ーわ、わたしなんかお姉ちゃんの偽物だし、
 顔は同じでもオーラが闇だし、暗いし、友達は少ないし、ぼっちだし?
 勉強もあまりできないしー」

次々とネガティブな言葉を口にする妹の菜々ー。

姉・莉々は「そこまで言わなくても~」と、呆れ顔で笑うー。

「菜々のいいところは、わたし、いっぱい知ってるよー…
 ほら、だってー」

姉・莉々が、妹の菜々を励まそうとそんな言葉を口にした
その時だったー。

部屋の扉が開き、父親の政宗が入って来るー。

「あー……か、母さんが二人に見せたいものがあるって」
政宗は青ざめた表情でそう言うと、
”何も知らない”姉の莉々と妹の菜々が、1階に向かうー。

「ーーー許してくれー」
父・政宗は”二人が融合させられる”光景を見たくなかったー。

その場で立ったまま、2階で一人になるー。

莉々と菜々は父の政宗がリストラされたことは知っているがー、
”家計がきつい”ということまでは知らないー。
政宗が二人を心配させないように”お金は大丈夫”と、嘘をついているからだー。

当然、母・幹恵が”双子の姉妹を融合させようとしていること”も知らないー。

けれどー…

「ーーーごめんなー」
情けない父親でごめん、と心の中で謝罪の言葉を何度も何度も口にしながらー、
政宗は一人、悔しそうな表情を浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーお母さん~見せたいものって何?」
姉の莉々が1階に降りると、母・幹恵は
「これ、見てごらんー」と、いつものように優しく微笑んだー。

机の上に置かれていたのは、
”融合石”
綺麗に輝く、幻想的な石だー

「わ…綺麗ー」
妹の菜々が静かに呟くー。

「ー二人とも、”それ”触ってみてー。
 面白いからー」

母・幹恵の言葉に、
姉の莉々と妹の菜々は、少し首を傾げながら、
莉々の方が「面白いってー?」と、質問するー。

だが、母・幹恵は”何が起こるか”は答えずに、
「とにかく、触ってみて」と、
そんな言葉を口にしたー。

莉々と菜々の姉妹と、両親の関係は別に悪くはないー。
母・幹恵に対しても不信感を持ったりだとか、
そういったことは全くない二人は、
何の疑問も感じず、母親に言われた通り、
その不思議な石を触ったー。

するとー…
突然、その石が、激しく光を発し始めるー

「ーーな、なにこれ!?」
姉の莉々が叫ぶと、妹の菜々が手を離そうとしたー。

がー、石についた手が離れないー。

「ーお、お姉ちゃん…!?」
困惑の表情を浮かべる妹の菜々ー。

「ー……!!」
姉の莉々は、自分と”菜々”が、どんどん近付いていることに気付くー。
まるで、”何かに”引き寄せられているかのようにー。

「ーお、お母さんーこ、これはー…!?」
莉々がたまらずそう声を発すると、
母・幹恵は少し申し訳なさそうにしながら言葉を口にしたー

「ごめんねー…
 うち、もう二人を育てるほど、余裕がなくなっちゃってー…
 
 二人のことは、本当に大切なんだけど…
 でもね、わたし、まさか双子が生まれて来るなんて思わなかったのー

 元々、お父さんとも”子供は一人”って話をしてたぐらいだしー
 だから、ごめんねー
 ”ひとり”になってー。

 その代わり、わたし、これからも一つになった二人のことを
 ずっとずっと、大切にするからー」

幹恵はそんな言葉を口にしたー。

まるで、理解できないー。
いいや、言いたいことは分かるー。
けど、そんな言い分ー、莉々も、菜々も、受け止めることはできなかったー

「ーお、お母さんー や、やめて、今すぐ!」
姉の莉々が叫ぶー。
妹の菜々は涙目で怯えた表情を浮かべているー

やがてー
二人の身体が”密着”してー、
密着してもなお、押し付けられるように、互いに”吸引”されていくー。

まるで、磁石のS極とN極のようにー、
二人の身体が、どんどん、近付いていくー

「ーーぁ…… い、痛いー…」
妹の菜々が目に涙を浮かべるー

「な、菜々…」
姉の莉々が心配そうに菜々のほうを見つめるー

が、顔もどんどん近くなってきて、
”無理矢理”融合させられていくー

「ーんっ… ぐ… ぁ… ぁぁぁぁぁ…」
二人の身体が、無理矢理捻じ込まれるようにして、
”融合”していきー、
さらに強い光が発されるー。

母・幹恵はそんな光景を前にしてもなお、
「ー元々、一つだったと思えば、何てことないでしょ?」
などと、そのような言葉を口にしながらー、
その光景を見つめていたー。

やがてー…
光は消えて、
莉々と菜々ー、
二人がいたはずのその場所には
”ひとり”しかいなくなっていたー。

「ーーーー」
幹恵は、倒れ込んでいる”融合した二人”を見つめるー。

「ーーーー莉菜(りな)」
そう呟く、幹恵ー。

姉の莉々と、妹の菜々ー。
その二人の名前を混ぜて”莉菜”

そもそもー、
最初に子供を授かったと知ったときに
夫の政宗と共につけた名前は、
もしも男の子だった場合は幸右衛門(ゆきえもん)、
女の子だった場合は、梨奈(りな)と名付けるつもりだったー。

男だった場合の名前は、父親の政宗が、
女だった場合の名前は、母親の幹恵が決めた形だー。

しかし、実際に生まれたのは”双子”ー

そのため、元々付ける予定だった名前ー”莉菜”を、
半分にする形で、
”莉々”そして”菜々”と名付けたのだー。

「莉々と菜々に分かれていたあなたたちが、
 莉菜に戻っただけー。
 何も怖いことはないし、悲しむこともないー」

幹恵がそう呟いていると、
やがて”莉菜”は目を覚ましたー

「う……お、お母さんー…わ、わたしー」
”莉菜”が、幹恵のほうを見て、不思議そうに言葉を口にするー。

「ーーー…”莉菜”ー。どう?生まれ変わった気分はー?」
幹恵がそう言うと、
「ーーなんだか、不思議な気分ー」と、
莉菜は自分の手を見つめながら呟くー。

「ーごめんねー。”二人”を育てるほど、もううちには余裕がないのー
 だから、二人でひとつー…
 いいでしょ?」

母の幹恵が、とても恐ろしいことを、
あたかも”それが当然”のような顔をして言い放つー。

しかし、”莉菜”は
「ーうん。お母さんのためならー。仕方ないよー」とだけ言うと、
「ありがとうー。”莉菜”」と、母の幹恵はそう呟いたー。

”融合”が終わったことを悟った
父親の政宗が、悲しそうな表情を浮かべながら
2階から降りて来るー。

そんな政宗に気付いた”莉菜”は、
「あ、お父さん!」と、微笑むー。

莉々の明るい笑顔と、菜々の少し控えめな笑顔ー
それが”混じった”かのようなー…
二人のどちらとも少し違う笑顔ー。

「ーー莉々…なのか? それともー…」
政宗が困惑しながら声を発すると、
「ーーううん、わたしは莉菜ー」と、
”莉菜”は満面の笑みで答えたー。

”今、喋っているのは莉々なのか、それとも菜々なのかー
 いや、融合したということは、どちらでもない新しい存在なのかー”

政宗は訳が分からなくなって、頭が破裂しそうになりながらも、
「ーーり…莉菜ー…」と、そう言葉を口にするー。

「ーーお父さんーこれから、よろしくねー」
姉の莉々より、少し大人しいような気がするけれどー、
妹の菜々より、少し明るいような気がするー。
そんな二人ー、いや、一人を見て
政宗は「ーな、なんてことをー…」と、
妻である幹恵のほうを見て叫ぶー。

だが、幹恵は笑いながら
「ーわたしたち”3人”で生きていくためよー
 もともと、莉々と菜々は一つだったと思えば、
 なんてことないじゃない?」と、
そんな言葉を口にするー。

「ーそうだよ!わたしは莉菜!
 お父さんー大丈夫だから、気にしないで!」
莉菜も、そんな言葉を口にするー。

「ーー……~~~~…」
政宗は、納得いかない、というような表情を浮かべながらも、
「ほら、莉菜もそう言ってるー」と、笑みを浮かべながら言う
幹恵に対して反論することができずー、
そのまま”融合”した娘を受け入れることになってしまったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー。

「学校では”莉々”として生活するのよー」
母・幹恵がそう言うと、
莉菜は「は~い」と、言葉を口にするー。

”莉々”と”菜々”
通っていた学校は別々ー。
しかし、二人は一つになったため、同時に別の学校に出席することはできないー。

そのため”菜々”の方は退学扱いにして学校をやめ、
”莉菜”は、姉・莉々の通っていた学校にそのまま”莉々”を名乗り
通うことになったー。

「ーーなんだか、変な気分ー」
”莉菜”はクスッと笑いながら学校へと向かうー。

だがー
双子の娘を融合させるという”狂気”の発想は、
更なる悲劇を生み出そうとしていたー。

<後編>へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

たまにしか書かない融合モノデス~!
今回は、双子の融合…★!

なんだか不穏な気配がしますネ~!

続きは(火曜日だけ予約投稿の都合上)、また来週になりますが
楽しみにしていて下さい~!☆

PR
融合<融合姉妹>

コメント

  1. 匿名 より:

    娘を強引に融合させようと考えた母親はナチョラルに狂ってますね。

    ところで、もし姉妹が男女の双子だったらどうなったんでしょうね?

    ふたなり化ですかね?

    • 無名 より:

      笑~★
      そうなっちゃいますネ~笑

      母親は狂気を感じられるキャラを目指したので、そう思っていただけて何よりデス~!