<憑依>店員はみんな憑依されている!?①~コンビニ~

そのコンビニの店員は”全員”憑依されていたー。

そんな、恐ろしいコンビニで起きる
色々な出来事の物語ー

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「ーチッー」
深夜のコンビニ…
コンビニの外から店内の様子を伺っていた男は
思わず、不愉快そうに舌打ちをしたー。

彼はー、
コンビニ強盗だー。

事前の下調べで、今日の深夜のバイトは、
真面目そうな雰囲気の漂う眼鏡の女子大生、黒崎 絵里(くろさき えり)、
そしてもう一人は、中年のおばさん、真下 久恵(ました ひさえ)、
その二人だー。

男性のスタッフは不在な上に、
女性スタッフの中でも、強盗の男から見れば貧弱そうな
そんな二人が揃っている日ー。

彼にとって、コンビニ強盗を実行に移すには最高の日だったー。

がー…
先程から、チャラそうな金髪の男が、クレームをつけていて、
女子大生バイトの絵里が、その応対に当たっているー。

”チッーこんな時に限ってクレーマーかよ”
コンビニ強盗の男ー、
いや、正しく言えばこれからコンビニ強盗になる男は、
不満そうに店内の様子をチラッ、チラッと見つめるー

金髪の男はまだ、言いがかりをつけているー。

「ーしゃあねぇ…少ししたらまた来るかー」
コンビニ強盗の男は不満そうにそう呟くと、
”あまりコンビニの前に居座っていても怪しまれるからなー”と、
10分ちょっと、近くをフラフラして、再びコンビニの前に戻って来たー。

「ーーも、申し訳ありませんでした」

するとー、
先程までクレームをつけていた金髪の男が、
絵里に謝罪しながら、何かを手渡しているのが見えたー。

10分前とは、態度がまるで違うー

”ケッ、バカなやつだぜー
 どうせ通報するとか何とか言われたんだろー?
 やるつもりなら、最初から覚悟を決めてやれっつーの
 この金髪チキン野郎が”

クレーマーのことを、そんな風に思いながら、
金髪のクレーマーが怯える様子で立ち去っていくのを見つめると、
コンビニ強盗の男は”いよいよ、俺のターンが来たぜ」と、
言わんばかりにコンビニの中へと入って行ったー。

「ーーーいらっしゃいませ~!」
女子大生バイトの絵里が、1万円札を手にしたまま、
笑顔で来店の挨拶をするー。

すぐにその1万円札を持って、奥の事務所の方に向かう絵里ー。
さっきのクレーマーから、お金を取り上げたのだろうかー。

”まぁいいー。金髪チキンの金もまとめていただくか”
コンビニ強盗はそう言いながら、レジの方に歩いていくと、
「すみません」と、おばさん店員の久恵に声を掛けたー。

「ーはい」
久恵が、営業スマイルで振り返りながら、
「どうかされましたか?」と、言葉を掛けて来るー。

すると、コンビニ強盗の男は笑みを浮かべながら、
”銃”を取り出したー。

「ーー動くなー声も出すなー。」
たった今、本当にコンビニ強盗となった男が、そう言葉を口にすると、
久恵は「あらぁ…コンビニ強盗かしら」と、笑みを浮かべたー

「おいっ!声を出すなと言っただろうー!?」
コンビニ強盗の男が、怒りの形相で叫ぶー。

すると、久恵は笑いながら
「ーなに?お金が欲しいの?」と、そう言葉を口にするー。

気さくそうなおばさんに見えるが、
強盗が来ても気さくとは困ったものだー。

コンビニ強盗の男は、そう思いながら
「そ、そうだ!まずはレジの金をこの袋に入れろ!」と、
そう言葉を口にするー。

彼は昔から”計画を実行するときは準備万全に”をポリシーにしていた。

今回も、そうー。
国際犯罪組織から銃を仕入れた上に、
”万が一のための切り札”として、
ライダースーツの下に爆弾も隠し持っているー。

変装も完璧だし、シフトも入念に調べ上げたー。

高校受験の時も、大学受験の時も”準備万全”で挑み、
それを制してきたー。

皮肉にも、今、彼のそんな性格は
犯罪に使われてしまっているものの、
”今回も失敗するハズはないー”と、彼は自信を持っていたー。

「ーーーいやだ」
おばさん店員の久恵は、そんな言葉を口にしたー

「ーー…!?」
銃を向けられているのに、レジのお金を袋に入れることを
拒むとは、大したやつだー。

そう思いながら「こ、この銃が見えないのか!?」と、叫ぶと、
ニヤニヤしている久恵を見て、
強盗は、天井に向かって銃を1発、放ったー

がーーー

「ーーえ?なになに?」
その音を聞いた、女子大生バイトの絵里が、事務所の方から出てくると、
笑いながら「わ!銃!懐かしい~!」と、笑みを浮かべたー。

”懐かしいー?なんだこの女ー 銃持ってたことあるのか?”
コンビニ強盗の男は、戸惑いの表情を浮かべるー。

”ーいや、んなわけねぇか。サバゲーでもやんのかな?”
強盗はそんなことを思いながらも、
「余計なおしゃべりはいいー。金を出せ」と、
脅すような口調で、二人のほうを見つめるー。

がー…

奥から出て来た女子大生バイト・絵里は
笑いながら「だってさ。どうする?」と、おばさんバイトの
久恵のほうを見て笑うー。

「ーーあはは…どうしましょうねぇ」
久恵が、そんな受け答えをすると、
「ーでも”それ”好きなんだろ?」と、絵里はそんな言葉を口にするー

大人しそうで真面目な見た目なのに、
おばさんにため口とはー、と、そう思いながらも、
強盗は、「いいから金を出せ!撃つぞ!」と、そう叫ぶー。

「ーー撃てるなら、撃ってみなよ」
絵里が笑いながらそう言い放つー。

「ーく、クソガキがー…」
強盗は、そう言いながらも、堂々と警察に通報しようとし始めた
久恵の方に銃を向けるー

「おい!こら!今すぐその手に持ってるものを置け!」
スマホを置くように促す強盗ー。

だが、久恵は止まらないー。

”く…くそっ!”
威嚇のために銃を、久恵の横の壁めがけて放つー。

がー、それでも久恵は、スマホで警察に通報しようとする手を止めずに、
ついに電話を警察にかけ始めてしまったー。

「くそっ!お前ら、俺が撃たないと思ってるんだろ!?」

強盗は、頭に血が上った状態でそう叫ぶと、
女子大生バイトの絵里はクスクスと笑いながら
強盗のほうを見つめているー。

久恵の方は、完全に強盗を無視していて、
電話をする手を止める様子すらないー。

「電話を辞めろって言ってるんだ!」
強盗が叫ぶー。

完全無視の二人ー。

「舐めやがってえええええええええ!」
強盗はそう叫ぶと、そのままおばさん店員の久恵に向かって発砲したー。

「ーーーうっ…!」
撃たれた久恵がうめき声を上げながら、その場に倒れ込むー。

銃弾は、久恵の頭部に当たり、久恵はほぼ即死だったー。

がーーー

「ーーあ~~~あ…アイツ、その”身体”気に入ってたのに」
絵里が、倒れた久恵のほうを見ながら、退屈そうにそう呟くー。

バイト先の仲間が殺されたのに、全く動じている様子もないー。

「ってか、銃の撃ち方、下手すぎだろ」
絵里が、あざ笑うような口調でそう言い放つー。

「ーーーな…な…なんなんだお前はー
 い、いいから、か、か、金を出せ!」
強盗の方が逆に気圧されながら、絵里にそう言い放つと、
絵里は久恵のほうを指さしながら笑ったー

「ーーー!?」
強盗は目を見開くー

死んだ久恵から、黒い煙のようなものが
噴き出しているー。

「ーーーうちのコンビニさ、他のコンビニと違って、
 すっごい、特殊なんだよねー」
絵里は髪をいじりながらそう言うと、
「ー例えば”この女”大人しそうに見えるのに、
 なんでこんな性格なのかって、違和感感じるだろ?」
と、自分を指差しながら言葉を続けるー

「ーーな…何を言ってるー…?」
強盗は震えるー。

すると、絵里は笑ったー

「ー見た目と性格が全然違うー。
 ま、そういう人もいるけどさー
 わたしはーーー…

 ”身体”と”中身”、別人だからー」

と、邪悪な笑みを浮かべながらー

「ーーーっっ…」
強盗は、唖然とした表情で絵里を見つめながら、
久恵の方から噴き出した黒い霧を見つめるー。

「ーーうちのコンビニの店員、”全員”憑依されてるからー
 だから、身体を殺しても無駄ー。
 中身は、死なないー

 ーーーま、実際に”体験”してみると早いよ」

絵里はそれだけ言うと、
静かに微笑みながら、久恵に憑依していた仲間が、
悲鳴を上げる強盗に憑依するのを見届けたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーおはようございます~!」

翌朝ー。
イケメンの男子大学生がやってくるー。

彼も、このコンビニで働く”バイト”の一人だ。

「あ、慶介(けいすけ)くん、おはよ~」
品だしをしていた絵里が、そう言葉を口にすると、
慶介と呼ばれたイケメンの男子大学生は「ーあ、そうだ、昨日さ~テレビで
僕の好きなアイドルが出てたんですけど~」と、
嬉しそうに言葉を口にし始めるー。

慶介が好きな男性イケメンアイドルの話題ー。
彼は”イケメン”なのにイケメンのアイドルが大好きー。

それには理由があるー。
彼の中身は”50代独身のイケメン大好きおばさん”だからだー

「ーーあ~~もう、思い出しただけでドキドキしちゃうわ~」
普段は”男子”として振る舞っている慶介ー。
しかし、興奮すると素のおばさんモードになってしまうー

「ーちょ、ちょっと!慶介くん!
 おばさんに戻ってるよ!」

絵里がそう言うと、慶介は「あら、やだわぁ」と、笑いながら
「今の僕は、イケメンなんでしたね」と、
男子大学生モードの振る舞いに戻るー。

「ーそうそうー。わたしだって気を付けてるんだから、
 慶介くんも気を付けないと」
と、そんな風に笑う絵里ー。

「ーーーあ!おはようございま~~~す!」
慶介が事務所に向かうと同時に、
テンションの高そうな女子高生がコンビニの中に入って来るー。

バイトの一人で、”身体”は現役女子高生のバイト、
赤城 菜々美(あかぎ ななみ)ー。

滅茶苦茶派手な感じの、色白系のギャルー、という感じの子で、
到着すると同時に、騒がしく色々と喋っているー。

「ーーー…菜々美ちゃんー…今日も”無理”してるね」
絵里がそう言うと、
菜々美は「ーえへへ…ま、まぁー」と、突然恥ずかしそうに顔を赤らめるー。

「ーまぁでも、”中身”は根暗な男なのに、
 頑張って”ギャル”やってる菜々美ちゃん見てると、
 興奮するけど、ねー」
絵里が興奮した様子でそう言うと、
「ーや、やめて下さいよ 社長ー」と、
顔を赤らめながら、目を逸らしたー。

ギャルの現役女子高生・菜々美の”中身”は、
とにかく暗い20代の男ー。
菜々美に憑依したのをきっかけに、”僕自身が変わるチャンスかもしれない”と、
ギャルとして頑張って振る舞っているー

「”社長”って呼ぶなっての」
絵里がそう言うと、
「あ、あ、すみません」と、菜々美が慌てふためくー

「ほら!ほら!ギャルに戻って!」
絵里に促されて、菜々美は再びギャルっぽい振る舞いを始めるー。

「ーーあ、そういえば、真下さんはー?
 今朝、LINEで強盗がどうこう言ってましたけどー」

イケメン男子・慶介がそう言うと、
絵里は、「あ~久恵は撃たれて死んじゃったから、さっき”処理”したよー。
で、”鴻上”は、今、強盗に憑依して自殺しに行ってるー」
と、そんな言葉を口にしたー。

”鴻上”とは、おばさんバイト・真下久恵の”中の人”だー。

「あ~~あ、鴻上さん、あのおばさんの身体、気に入ってたのにねぇ」
慶介は、またおばさんモードでそんな言葉を口にすると、
「ーまぁ、また新しいおばさん見つけて来るでしょ」
と、絵里は笑ったー。

「ーーあ、そうそう、明日、梨花(りか)ちゃんとシフト変わってるんで~
 よろしくですぅ~」
ギャルの菜々美が、そんな言葉を絵里に伝えると、絵里は「あ、うんオッケ~」と、
そんな返事を返しながら笑ったー。

そうー
このコンビニの店員は”全員”憑依されているー。

多くの人はそのことを知らないまま、
このコンビニを利用しているー。

今日もまたー
目の前にいる可愛い店員の中身が”男”だとは知らずー、
多くの利用客は、何も知らないまま買い物を続けるのだったー。

②へ続く

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コメント

11月最初のお話は、店員が全員憑依されているコンビニのお話デス~!

残りのバイトや、何故そうなっているのかは、
この先を見届けて下さいネ~!

今日もありがとうございました~!★

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