<MC>喜怒哀楽の狂う街②~混沌~

”喜怒哀楽”をコントロールする
洗脳ライト…

その実験台にされてしまった街で、
悲劇が起きようとしていたー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーか、母さん!?父さんー!?どうなってるんだ!?
 お、おいっ!」

幸仁は慌てて、怒鳴り声を上げる母親と父親を止めようとするー。

がー
母親が、幸仁を突き飛ばし、鬼のような形相で幸仁を見つめるー。

「ーー幸仁は邪魔しないで!
 
 ーー大体、あんたも、小さい頃からいつもいつもいつも
 苦労ばっかりかけてー」

母親の怒りが幸仁に向けられるー。

幸仁は困惑しながら
「き、急にどうしたんだよ?」と、そう言い返すー。

が、父親が母親の背後から、母親を突然蹴り飛ばしー、
母親が吹き飛ばされるー。

「ーちょ!?と、父さん!?」
幸仁は呆然とするー。

「ーーお前となんて、離婚だ!
 幸仁、お前とも絶縁だ!」

声を荒げる父親ー。
怒っているところなど”見たこともない”ぐらいに温厚な父親の
その姿に幸仁は呆然とするー。

「ーー死ね…死ね死ね死ね死ね…!」
背後では、カップルの女が、彼氏の首を絞めて
怒りの形相でそう呟いているー

「お、おいっ!やめろって!本当に死ぬぞ!」
幸仁がそう言いながら、その女を止めようとすると、
「うるさい!黙ってて!」と、思いっきりビンタされてしまうー

がー…
幸仁をビンタするために、彼氏の首から彼女の手が離れたことで、
彼氏は反撃に出るー。

「ーー…ちょ… お、おいっ…!」
幸仁は慌てた様子で、”そういえばー”と、近くに交番があったことを
思い出して、そっちの方向に走っていくー。

しかしー

「ーーーうるさい!!いつもいつもいつも、面倒くせぇんだよお前ら市民は!」

交番にたどり着くと、交番の警官がそんな言葉を叫んでいたー。

しかも、その周囲には、
とても”暴れたりしそうな雰囲気ではない”
可愛らしい雰囲気の姉妹が殴り合いをしていて、
その周囲でも、複数の市民が殴り合いや罵り合いをしていたー

「ーーな…なんなんだこれはー…」
幸仁は唖然としながらも、警察官に向かって叫ぶー

「あ、あのー…!む、向こうでも喧嘩騒ぎがー!」
幸仁がそう言うと、
警察官は「だから!うるさいって言ってるんだ!」と、
怒鳴り声を上げるー。

「ーす、すみませんー
 で、でも、いったい、どうなってるんですか!?」
幸仁のそんな言葉に、警察官は突然、銃を取り出して
幸仁に向けて来たー。

「ーーひっ!?」
幸仁は思わず変な声を漏らすー。

”ごく普通の生活”を送って来た幸仁からすれば、
当然、”銃を向けられた経験”などない。
驚くのも当然だ。

「ーーこれ以上、ごちゃごちゃ言うなら、撃つぞ!」
警察官の言葉に、幸仁が両手を挙げながら後ずさるとー、
近くで喧嘩をしていた男の一人が「テメェ、上等じゃねぇか!」と言いながら
警察官に向かっていくー。

がー
次の瞬間ー…
信じられないことに、警察官はその市民に向かって容赦なく発砲したー。

倒れ込む男ー。
その男と喧嘩していた男が、”何してんだテメェ!”と、
怒りの形相で警察官に向かっていくー。

「ーなんなんだ…なんでみんな、殺気立ってるんだー…!?」

そんな言葉を口にしながら、
幸仁が交番から離れて家の方に引き返すと、
さっきまで喧嘩をしていた両親は消えていて、
カップルの女の方が、血を流して倒れていたー

「だ、大丈夫ですか!?」
幸仁が慌てて、その女に駆け寄るー。

死んではいないー

「い、今、助けを呼びますからー」
そう言いながら救急車を呼ぼうとする幸仁ー。

「ーーう…うるせー…!男なんて…どいつもこいつも!」
女は血を流しながら幸仁を睨みつけて来るー。

だが、それには構わず、幸仁は、救急車を呼ぶ電話を掛けるー。

一瞬、イヤな予感がしたものの、
応対してくれた電話相手は、”怒っている”感じはなく、
普通だったー。

ホッとしながら状況を説明し、
救急車の手配を完了すると、
倒れているカップルの女に対して
「な、何でこんなことにー」と、そう言葉を口にするー。

が、女はそれでも幸仁を睨みつけながら
「消えて」と、だけ呟くと、苦しそうに息を吐き出したー。

「ーーーーー」
呆然とする幸仁ー。

そしてー、幸仁は知らないー。
救急車は”ここまで”到着できないことを。

電話が普通に繋がったのは、電話を受けた相手が
”この街の外”にいたためー。
この街の救急隊員は既に”怒”に支配されていて、
現場に駆け付け等しないー。

「ーいつもいつも下らねぇ要件で呼びやがって!」
救急隊員が怒りの形相で叫ぶー。

他の救急隊員も同じように怒り狂っていて、
もはや、救急車が要請のあった場所に駆け付けることなど、
なかったー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ー素晴らしいー」
上空を旋回するヘリコプターに搭乗していたサングラスの男ー、
国際犯罪組織ガルフの”裏社会のマーケットから武器や特殊なアイテム”の
入荷を担当している、ツカモトは笑みを浮かべるー。

「ーーこれが、レベル5かー」
洗脳ライト”キ・ド・アイ・ラク”のレベル5を街中に照射した
ツカモトは、満足そうな笑みを浮かべていたー。

深夜だというのに、街中には怒声が飛び交っているー。

「ーーーよし。次は、”緑”をレベル5で照射しろー。」
ツカモトがそう言うと、ヘリパイロットのエガワは、少し戸惑った様子で頷くー。

ヘリから照射されていた赤いライトが、緑に変わるー。

「ーーー!!!」
地上では、幸仁がすぐにその異変に気付くー

”あのヘリー…さっきから、何なんだー…?”

ずっと上空を旋回し、謎の色のライトを照射しているヘリコプター。

”キ・ド・アイ・ラク”に洗脳されてしまっている人々は
特にそんなことに疑問を抱きはしないが、
”なぜか”正気を保っている幸仁は、右目をこすりながら
ヘリを見上げるー。

謎の緑色のライトー…
そしてー、それを浴びて行く人々ー

やがてー、
幸仁は人々の異変に気付くー

「ーーあははははは…」
「ーーはは!あははははは!」

笑いだす人々ー。

「ーえ…?」
周囲を見渡すと、さっきまで怒り狂っていた人たちが
楽しそうに笑ったり、
挙句の果てには、踊りだしたり、嬉しそうに走り回ったりしているー。

レベル5ー。
”喜怒哀楽”の楽の感情が極限まで引き出されて、
人々は、楽に溺れ、狂っているー

「ーー!」
混乱しながら街を歩く幸仁は、
昼間にもあった高校時代の同級生・雅美の姿を見つけたー

「ーーく、倉井さん!」
幸仁が声を掛けると、雅美は血のついた手で振り返ったー。

「ーあは!鳥本くんじゃん!あはっ!あはははははっ!」
雅美は正気を失ったかのように笑っているー

「ーい、いったい何がー…
 そ、その血はー?」

幸仁が不安そうに言うと、
雅美は笑うー

「ーうふふふー
 ほら、見てみて!」

雅美は嬉しそうに笑いながら、近くに倒れている
ツインテールの子を指差すー。

「ーー!!」
幸仁は、その子に見覚えがあったー。

高校時代の文化祭に毎年遊びに来ていた
雅美の妹のはずだー。

「ーーー恵麻(えま)をさっき刺したら、こんなに血が出ちゃって!
 あはっ!あははははははっ!」

雅美は髪を揺らしながら、ゲラゲラと笑っているー

「ーーちょ…な、なにやってんだよ!」
幸仁はそう叫ぶと、倒れている恵麻の方に向かって
「だ、大丈夫かー?」と、叫ぶー。

恵麻は、足を斬られた様子で、血は出ているものの、
すぐに命に関わる感じではないー。

しかしーー
”姉に切られた”はずの妹・恵麻は
嬉しそうに笑みを浮かべるー

「えへへへへ…血が出てるーえへへへへへぇ…」
とても、嬉しそうにー

「ーーー…ねぇねぇ、鳥本くんも刺しちゃおっかな~?」
雅美が笑いながらナイフを手に近付いてくるー

「お、おいっ!やめろ!」
幸仁は慌ててその場から逃げ出すー。
何が起きているのかも、分からないままー。

「くそっ…!今度は何なんだー…!?」
街中の地獄のような光景を見つめながら走る幸仁ー。

さっきまで”怒”に包まれていた街は、
今度は”楽”に包まれているー。

「ーーー…」
走りながら幸仁はヘリコプターのほうを睨みつけるー。

そういえばー
みんなの様子が”急に”変わったのは
あのヘリコプターから照射されているライトが
赤から緑色に変わってからだと気付くー。

緑色に変わった途端、街中の人々が楽しそうにし始めたー。

そもそもー、
街中が怒りと争いに包まれたのも、
あのヘリから赤いライトがー…

”何か、関係があるのかー?”
幸仁はそう思いながら立ち止まると、
上空のヘリコプターに向かって叫んだー。

「ーー街が大変なことになってます!
 どこのヘリコプターか知りませんが、
 何かご存じないですか!?」

と、大声でー。

まだ”ヘリコプター”が、街のおかしな状況と関係あるのかどうかは
幸仁の中で確証がないー。
そのため”お前たちのしわざだな!?”みたいな言い方はせずに、
あくまでも”助けて下さい!”というスタンスでそう叫ぶー。

「ーーン?」
が、その様子に気付いたサングラスの男・ツカモトは
表情を歪めたー。

「あの男は?”楽”の感情が引き出されていないように見えるが?」
ツカモトがそう言うと、ヘリのパイロット・エガワが、
ヘリの操縦席の部分からそれを確認するー。

「ー確かにー…どうしますか?」
エガワの言葉に、ツカモトは「直接照射しろー」と、
指示を出すと、緑色のライトを、直接幸仁の方に向けて照射したー。

「ーーっっ…」
”眩しい”
そう思いながらも、幸仁は目を細めるー。

「ーーー…!?…
 く、くそっ…眩しいー」

そう呟く幸仁ー。
だが、洗脳ライト”キ・ド・アイ・ラク”の効果が出る様子はないー。

そしてーー
左目は、ライトを照らされても、何の反応も示していないー。

幸仁は右目をこすりながら、ヘリコプターを見上げるー。

「ーーあの男…目の様子がヘンですねー」
エガワがそう呟くと、
ツカモトは双眼鏡のようなもので、地上にいる幸仁の姿を
再度確認するー。

「ーーーなるほど…左目は見えていないようだなー…
 それとー…」

ツカモトは、幸仁の左目を見て、そう確信するー。

そう、幸仁は過去に事故で目を大けがした経験を持っているー。
その影響で左目はほとんど見えておらず、
右目は見えてはいるものの、色の見え方が通常とわずかに異なっているなど
後遺症が残っているー。

それが原因で、彼には”キ・ド・アイ・ラク”の力が通用していないー。
人を洗脳するという高度な技術は、わずかな狂いでも支障が生じる。
左目が見えておらず、その上、右目にも後遺症が残っている
状態の幸仁には、通常の相手と異なり、洗脳の力が及んでいないー。

「ーーーーククー、面白いことを思いついた」
ツカモトはサングラス越しに目を輝かせながら
そう呟くと、地上にいる幸仁に向かって、ヘリの音声機能を使い、
語り掛けるー。

「ーー君だけは”正気”を保っているようだなー」
ツカモトのヘリコプターからの声に、幸仁は表情を歪めるー。

「正気ー?どういうことです?」
幸仁がそう言うと、
ツカモトは「この街は、我が洗脳ライトの実験場だー」と、
そう言葉を口にするー

「洗脳ライトー。4色の色で人間の喜怒哀楽を操るー。
 今、照射している緑が”楽”、先ほどの赤が”怒”ー
 そして、昨日までは黄色ー”喜”の感情を引き出していたー」

ツカモトのその言葉に、
幸仁は”昨日”帰省した時に本屋のおじさんや家族、
元同級生の雅美らが妙に喜んでいたことを思い出すー。

「く、くそっ!お前のしわざかー!」
幸仁が叫ぶと、ヘリのライトが緑から青に変わり、
幸仁に照射されるー。

だが、やはり効果はないー。

「青は”哀”…だがー、やはり君には効果がないようだなー」
ツカモトはそう言い放つと、
幸仁は叫ぶー。

「み、みんなを元に戻せ!」
とー。

「ー悪いがそれはできないー。
 それとー、君のようなライトの効果を受けない人間は邪魔だー。
 消えてもらうぞー」

ツカモトはそう言い放つと、パイロットのエガワに向かって呟いたー

”「ーーほぅ。それでその黒いライトは?」
「これは、相手を意のままに操るライトでございます」”

商人風の男との会話を思い出すツカモトー。

そして、彼は笑みを浮かべたー。

「ーーーー”黒”を照射しろー。
 レベル5でなーー…」

程なくして、黒のライトが、街中に照射されるー。

そして、ヘリから町全体に向かってツカモトの声が響き渡ったー

「ーーその男を抹殺しろー」
とー。

「ーー!!!!」
その言葉を聞いて、幸仁が周囲を見渡すと、
周囲に街の人々が集まって来ていたー。

幸仁に対し、明確な敵意を向けてー。

③へ続く

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コメント

丸ごと洗脳されてしまった狂気の街…!
故郷を元に戻すことはできるのか、
それとも狂気に飲み込まれてしまうのか、
ぜひ見届けて下さいネ~!

今日もありがとうございました~!

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MC<喜怒哀楽の狂う街>
憑依空間NEO

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