パパが女体化してしまい、ママが二人にー!?
本人も、妻も、子供も戸惑う中、
色々な問題が起きて来てしまって…!?
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「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ」
幼稚園から姿を消してしまったという息子の芳樹を探すために
町を走り回っていた女体化した孝則は、
息を切らしながら表情を歪めていたー。
「くそっ…何でー何で、こんな時に疲れてるんだー」
孝則は、自分の手を見つめるー。
女体化した影響だろうかー。
いつもより、明らかに体力が無くなっていて、
既に息切れしてしまっているー。
「ーー息切れしてる場合じゃないだろ…!」
自分にそう言い聞かせて再び、走り出そうとする孝則ー。
がー…女体化した自分の身体は、想像以上に疲れていてー、
ついにはその場にしゃがみ込んでしまうー。
「俺がこんなじゃ……家族を、守れないー…」
孝則は悔しそうにそう呟きながら、目に涙を浮かべるー。
「ーーこんなことで泣くなんてー」
目からこぼれ落ちた涙に気付き、自虐的にそう笑うー。
これも、女体化した影響なのだろうかー。
それともー…
そんな風に思っていると、別方面に探しに行っていた妻の恵美から
連絡が入ったー
”ーー孝則! 芳樹が、芳樹が見つかったよ!”
そう、言葉を口にする恵美ー
「ほ、本当か!?」
”うんー!”
恵美のそんな言葉に、孝則は心の底からホッと息を吐き出すと
「よかったー」と、目に涙を浮かべながら呟いたー。
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「パパを、ママ2号にしちゃった悪い魔女を
やっつけようとしたんだー」
帰宅した芳樹から、姿を消した事情を聞くと、
芳樹はそんな言葉を口にしたー。
「パパをママにした悪い奴を、僕がやっつけて、
パパを助けようとしたんだけどー…
魔女が、いなくてー」
芳樹が目に涙を浮かべるー。
女体化した理由を、”悪い魔女にやられた”と、
芳樹にも理解できるように説明した孝則ー。
だが、それが裏目に出てしまったー。
息子の芳樹は”パパのために”と、
”存在しない”悪い魔女をやっつけに行こうとして、
それで、姿を消してしまったのだー。
「ーー芳樹ー」
孝則は、目に涙を浮かべながら、
「ーごめんなー。パパのためにー」と、そう言葉を口にするー。
「ーでも、芳樹は悪い魔女を探しちゃダメだー。
芳樹が、パパみたくなっちゃったら、
パパも、ママも悲しむからー」
孝則がそんな風に言葉を口にすると、
母・恵美も笑いながら、
「パパとママで、その悪い魔女はちゃんとやっつけるからね」と、
そう言葉を口にするー。
「ーーーー…」
芳樹は、まだ納得していない、という様子で、
「でも、ママ2号になったパパを助けてあげたいー」と、
悲しそうに言葉を口にするー。
「ーーーー…」
孝則は、そんな芳樹を見て、少しだけ微笑むと、
「ー大丈夫。パパは、どんな姿でも、芳樹とママが元気でいてくれれば、
それが一番だからー」と、そんな言葉を口にしたー。
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「直接確認しに行くー!?」
翌日ー。
女体化したままの孝則がそう声を上げるー。
電話相手は同僚の雪代。
自分が買ってきたお土産のせいで、孝則が女体化してしまったことに
強い責任を感じ、”お土産を購入した店”まで直接確認しに行くー、
と、そんなことを言いだしたのだー。
”はは、大丈夫さ。有給はちゃんと取ったー。
現地の小さい店だし、電話で聞くこともできないから
直接聞きに行くしかないだろ?”
そんな雪代の言葉に、孝則は申し訳なさそうに
「いや、しかしー」と、そう言葉を口にすると、
”気にすんなー。それでー、今から例のクッキー、
取りに行こうと思うんだがー”
と、雪代はそう言葉を口にしたー。
現物を持って、現地の店の店主に、
”これを食べたら同僚が女になってしまった”ということを
聞くつもりらしいー
「ーーー分かったー。
雪代ー、本当にすまんー。」
孝則はそう言うと、
”謝るのは俺だよー。俺があげたお土産なんだから”と、
雪代は申し訳なさそうに言葉を口にしたー。
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女体化した状態の日々は続くー。
仕事に復帰することもできず、そのまま退職ー、
孝則は、妻である恵美の親友に協力して貰って
親族の経営しているカフェでバイトとして
働くことはできていたものの、
どこか、後ろめたさを感じながらの日々を送っていたー。
唯一の希望でもあった同僚の雪代は
海外に向かってから消息を絶ってしまい、
会社にも顔を見せなくなってしまったのだと、部長から聞かされたー。
雪代は、海外で買った例のクッキーを売っていたお店に
直接聞きに行くと言っていたー。
何か、問題が起きたのかもしれないー。
そんなことにも、女体化した孝則は罪悪感を感じながら、
日々を過ごしていたー。
「ーーにしても、”女”って大変だなー…
仕事行くだけでも、こんな風に色々準備が必要でさー」
慣れない手つきでメイクをしながら、ため息をつく孝則ー。
「ーーふふ、まぁ、だんだん慣れて来ると思うよー。
面倒な時は、ホント面倒だけどー」
恵美が苦笑いしながら言うと、
孝則は「ーいや、本当に尊敬するよー。凄いやー」と、
言葉を口にしたー。
「まぁでも、毎日髭剃りしなくてよくなったのは
楽かもしれないけどー」
孝則が、メイク道具を片付けながらそう言うと、
恵美は「うんうんー前向きに考えるのも大事だね」と、
そんな言葉を口にしたー。
「ーーー芳樹にも、イヤな思いをさせてるかもしれないしー、
早く、元に戻る方法を何とか見つけないとなー」
孝則は、そんな言葉を口にしながら
「ーあ、そうだ、芳樹を下まで送って来る」と、
幼稚園の送迎バスへの見送りをしようと立ち上がるー。
「ー芳樹ーそろそろ行こうか」
孝則がそう言うと、
「うん!パパ!」と、そう言葉を口にしたー。
ママ2号と呼ばれることもあれば、パパと呼ばれることもあって、
芳樹もまだ戸惑っている様子ではあったものの、
”パパは、パパだよ!”と、最近は言ってくれるようになって、
孝則自身も、その点は安心していたー。
けど、やっぱりずっとこのままでいるわけにはいかないー。
芳樹がこれから小学校、中学校、高校と進んでいくうちに、
やがて、”悪い魔女のせいなどではない”ということは
理解するだろうし、
その時に、芳樹自身も戸惑うことになるだろうー。
この先、ずっとこのままじゃ、妻の恵美にも申し訳ないー。
そう思いつつ、マンションの階段を降り終わるとー、
近所のおばさんが姿を現したー。
「あら、矢島さんー。
”素敵な女装”ですねぇ」
おばさんが嫌味っぽく言うー。
「ーーー…おはようございます」
孝則は、それだけ言うと、
「ーーじょそう?」と、
息子の芳樹が反応するー。
「ーあらぁ、芳樹くんー。
芳樹くんのお父さんはね、お父さんなのに女の子の格好をしてるのー」
”女装”について、そんな言葉を口にするおばさんー。
おばさんは、孝則の状況を女装と決めつけ、
心底バカにしたような笑みを浮かべているー。
その振る舞いから見るに”女装”にも良いイメージを
このおばさんは持っていないのだろうー。
「ーーこ~んなお父さんじゃ、芳樹くんも恥ずかしいわよね」
おばさんが嫌味っぽくそう言うー。
表情を歪める竜則ー。
すると、
芳樹は笑顔を浮かべながら、おばさんのほうを見つめたー。
「ううん、僕、全然恥ずかしくないよー。
どんな姿でもパパはパパだし、
僕の自慢のパパだからー」
芳樹の言葉に、おばさんは、芳樹が思い通りの反応をしなかったのが
面白くなかったのか、
「ーあら、こんな恥ずかしいパパのことを自慢のパパだなんてー」と、
さらに嫌味っぽく言うー。
がー
芳樹は「パパの悪口を言うな!」と、声を荒げたー。
「ーーーっっ」
おばさんは、芳樹の思わぬ反応に、表情を歪めるー。
「パパがずっとママ2号のままでも、元のパパに戻っても、
パパはパパだ!」
と、敵意を剥き出しにする芳樹ー
なおも反論しようとするおばさんに対しー、
芳樹は叫んだー
「ー悪い魔女はあっちに行け!」
とー。
「ーーーま、ま、ま、魔女ぉ!?」
おばさんが、顔を真っ赤にして表情を歪めるー。
そんな様子を見ていた孝則は
嬉しそうに息子の芳樹のほうを見て頷くと、
そのままバスの方に向かって歩き出したー。
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その日の夜ー。
「ーーーーパパはいつ、パパに戻れるの?」
そんな言葉を、不思議そうに口にする芳樹ー
「ーーごめんなー。
いつまでも、こんな姿で」
心底申し訳なさそうに言葉を口にする女体化した孝則。
しかしー、芳樹は「パパ!ごめんなさいは悪いことしたときに
使う言葉だよ」と、言うと、
「ママ2号になっちゃっても、パパはパパだし、
僕、どっちでも大丈夫!」と、芳樹はそう言い放つー。
「ー芳樹ー」
孝則は、複雑そうな表情を浮かべながらも
少しだけ、安堵の表情を浮かべるー。
「ー悪い魔女と戦って、パパが怪我しちゃうならー、
僕、今のパパのままでもいいからー」
芳樹のそんな言葉に、
孝則は「ーありがとう」と、そう言葉を口にしながら、
「ーそうだなー。どんな姿でもパパはパパだー」と、
静かに言葉を口にしたー。
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「ーーーーふふふふふ 可愛いなぁ」
ニヤニヤと笑みを浮かべる女ー。
おしゃれな格好をして、着飾った自分を見て、微笑んでいるー。
”女体化クッキー”
そんなものを、海外で手に入れた彼はー、
まず、”毒見”をしたー。
食べると女になれるクッキーなど、怪しすぎるー。
だが、もしも本当なら、ぜひ使ってみたいー。
そう思った彼は、会社の同僚である孝則に”おみやげ”と装い
そのクッキーを渡し、孝則に食べさせて実験したー。
結果、孝則から女体化してしまったと聞かされた彼は
”このクッキーは本物だ”と、そう確信したー。
そして、彼はクッキーが本物だと確信してから、
それを自らも食べて、女体化したー。
孝則の同僚・雪代は笑みを浮かべながら
女体化した自分の姿を鏡で見つめていたー。
”海外の店に直接確認しに行く”
女体化する直前に、そう孝則に伝えてから女体化したー。
恐らく、孝則のやつは、
”雪代は、海外の土産屋に直接確認しに行って消息を絶った”と
そう思っているだろうー。
そう思っていればいいー。
「ーーへへへへ…あぁ、何度揉んでも最高だぜー」
女体化した雪代は、そう呟きながら自分の胸をニヤニヤしながら
揉み始めたー。
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”僕には、母親が二人いますー。
いや、正式に言えば一人は父親で、一人は母親です。
ですが、父は僕が小さい頃に”女”になってしまいましたー。
女装とか、そういうのではありません。
純粋に、男から、女になってしまったんですー。
ここにいる皆さんも、信じられないと思いますし、
驚いた方もいると思います。
中には、偏見の目を向ける人もいるでしょうー。
僕は、小さい頃、父から”悪い魔女にこうされた”と
そう説明されていましたー。
でも、だんだん成長していくうちに、それは嘘だと気付き、
父から本当の話を聞かされましたー。
会社の同僚から貰ったクッキーを食べたら、そうなった、とー。
父が女体化しているー。
こんな家庭で育ったのは、この世でも、僕ぐらいかもしれませんー。
そのせいで、色々苦労もしてきましたし、
色々言われることもあれば、色々偏見の目を向けられることもありました。
けど、僕は父のことを恥ずかしいと思ったことは一度もありません。
隠そうと思ったことも、一度も。
だから今日、こうして結婚式の舞台にも、父を堂々と招待しました。
父は、何も悪いことも、後ろめたいこともしていない。
僕も、そうー。 母もそうです。
それでも笑うというのならば、笑えばいいー。
どんな姿でも、僕にとっては父は父であり、
僕の誇りです
そして、僕は今日、この晴れ舞台で、堂々と伝えたいと思います。
父さん、母さんー。
ここまで僕を育ててくれてありがとう。
これからも、僕を、宜しくお願いしますー”
20年後ー
成長した芳樹は、大学時代に出会った女性と結婚ー
その結婚式の場で、そんなスピーチをしていたー。
父・孝則は結局、女体化したまま元には戻れなかったー。
けれどーー
芳樹は、そんな父の愛情をしっかり受け止めー
今日、こうして感謝の言葉を述べたのだったー。
孝則と、恵美は、そんな芳樹の姿を見つめながら
嬉しそうに拍手を送るー。
会場に来ている人たちも、堂々とした芳樹のスピーチに
驚きながらも、心からの拍手を送っているー。
芳樹が、自分のことを受け入れてくれたから、
こうして、女体化しても”パパ”として居続けることができたー。
そんな風に思いながら、
孝則は、芳樹に対して
”ー芳樹ー。俺の方こそありがとうー。”
と、そう心の底から感謝の言葉を送るのだったー
おわり
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コメント
女体化を乗り越えて、
ちゃんと未来に進むことができた家族…★
今回はハッピーエンドでした~!
お読み下さりありがとうございました!
コメント
女体化した父親を受け入れられる息子もすごいけど、
女体化した夫を受け入れられる恵美もすごいですよね。
普通の妻なら、夫が女体化して戻れなくなったら、受け入れられずに確実に離婚しそうです。
コメントありがとうございます~!☆
もしも、二人の立場が
逆の場合はまた違った反応だったかもしれませんネ~!