ある日、パパが女体化してしまったー。
子供にどう状況を説明しようか、混乱している状況の中、
子供が帰宅ー。
”誰この人?”
そう言い放つ、息子を前に女体化した父はー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「こ、こんな姿だけど、パパなんだー」
女体化した孝則は、そんな言葉を口にするー。
「パパ? パパは、ママじゃないもん!」
寛太がそんな言葉を口にするー。
やはり、女体化した父親のことを、
すぐに孝則だとは認識してくれないようだー。
「ーねぇ、ママ!この人だれ?」
寛太が、不安そうに母親の恵美に声を掛けるー。
恵美も困惑した様子で、
「ねぇ、芳樹ー…あれは、パパなのー
見た目は全然違うけどーー…と、とにかくパパでー」
と、説明しようとするも、
「パパは、もっとかっこいいよ!」と、芳樹は、
そう言葉を口にして、目の前にいる”女体化した孝則”を、
”パパ”だとは認識してくれないー。
”女体化”なんてことを説明しても、芳樹の年頃では
理解するのは難しいと思うし、
どう、説明すればー…、
恵美がそんな風に思っていると、
孝則は戸惑いながら言葉を口にしたー。
「ー芳樹ー、
パパ、朝、芳樹と約束したお菓子を買った帰りに、
悪い魔女に”そのお菓子をよこせ”って言われちゃってなー」
そんな風に口を開いた孝則ー。
恵美は、戸惑いながらも、そんな話の続きを待つー。
息子の芳樹も、女体化した孝則のほうを見つめながら、
その話の続きを待っている様子だー。
「ーでも、パパ、芳樹と約束したからー、
その悪い魔女におかしを取られないように
一生懸命、お菓子を守ったー。
そしたら、悪い魔女に魔法を掛けられて、
こんな姿に変身しちゃったんだー」
孝則がそこまで説明し終えるー。
当然、悪い魔女なんていないし、
女体化した原因は、”お土産のクッキー”である
可能性が高いものの、
幼稚園に通う芳樹が”できる限りイメージしやすい”作り話で、
なんとか目の前にいる自分がパパであることを
信じてもらおうとしたー。
「ーーーパ、パパが、ママに変身しちゃったのー?」
芳樹がそう言葉を口にするー。
まだ年齢のせいか”男女”というよりかは、
男はパパ、女はママ、という考えとごちゃ混ぜになっている芳樹が
そんな言葉を口にするー。
「ーーーそう。そうなんだー。
でも、ほらー」
孝則は、そう言うと、
芳樹が帰宅するまでの間に、妻の恵美が代わりに買ってきてくれた
”朝、芳樹と約束したお菓子”を、芳樹に手渡したー。
チョコジュニア、アポロビート、ハイマスカットー…
芳樹の好きなお菓子たちー。
それを見た芳樹は「わぁ…やっぱりパパだ!」と、
嬉しそうに笑うー。
「そうー。こんな風になっちゃったけど、パパなんだー。
信じてくれるか?」
孝則が、穏やかな口調でそう言うと、
「うん!今日からママが二人だね!」と、無邪気な笑顔で
芳樹は微笑んだー
「マ、ママー…!?」
孝則は少し驚いた様子を見せながらも、
「そうかー、ママかー」と、苦笑いすると、
恵美のほうを見つめて頷くー。
とりあえず、息子の芳樹にも信じてもらうことができたー。
あとは、女体化した原因と思われるお土産のクッキーをくれた、
会社の同僚・雪代から連絡があれば解決の糸口が
見つかるかもしれないー。
「ーー…パパがパパに戻るためには、悪い魔女をやっつけないとダメなんだね」
息子の芳樹がそんな言葉を口にするー。
「ーーあぁ。パパも頑張るからなー」
孝則が長い髪を少し邪魔そうに払いのけながらそう言うと、
「僕も、悪い魔女を探してパパのためにやっつけるよ!」と、
そう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーふふー、孝則ってば、やっぱり子供の扱いうまいよねー
学生の時から、ずっとそうだったけどー」
息子の芳樹が眠りについたあと、恵美がそんな言葉を口にするー
「ーいやぁ、たまたまだよー
この前、図書館で借りて、芳樹に読んであげた絵本が、
ちょうど、悪い魔女と戦う話でさー。
その悪い魔女が、王子様をカエルの姿に変えちゃうシーンを
思い出して、咄嗟に、なー」
女体化した孝則の言葉に、恵美は
「ーーふふー、でも、芳樹もとりあえず信じてくれたみたいでよかったー」と、
安堵の表情を浮かべるー。
「ーこれなら、元に戻った時も”悪い魔女をやっつけたぞ”で説明できるしなー」
孝則がそう言うと、恵美は「そうねー」と、穏やかに笑うー。
その時だったー。
孝則のスマホが光るー。
芳樹を起こさないように、既に音を消していたものの、
”雪代”からいつ電話がかかってきてもいいように、常に
スマホのことは気にしていたー。
慌てて、スマホを手にすると、
「もしもし?」と、芳樹の寝ている部屋から
できるだけ離れた場所で、そう言葉を口にするー。
”ー矢島ー。悪いー。残業頼まれて連絡が遅れたー。
それで……その、ーー本当に、お前なのか?”
雪代は電話の向こうで、戸惑いの言葉を口にするー。
電話相手の雪代からすれば聞こえて来るのは”女の声”ー。
確かに戸惑うのは、当然と言えるー。
「ーあぁ、お前から貰ったクッキーを食べた途端、急にー…
あぁ、いや、お前を疑うとかそういうんじゃなくてー
何か心当たりがないかどうか、確認したくてさー。
このままじゃ、会社もいけないしー」
孝則はそう言うと、
”ーー海外旅行中に買ったやつだしなぁ…特に変わったところは
なかったんだがー”と、
雪代は不安そうにそう言葉を口にしたー。
”そもそも、俺も同じやつ食べたけど、こうして男のままなわけだしー”
雪代は、そんな言葉を口にするー。
どうやら、雪代も自分用に同じお土産を買っていたようだー。
「ーーそうかー……
それならいいんだー。ありがとう」
孝則はそう言いながらも、自分の身体を見つめて
不安そうな表情を浮かべるー。
女体化の原因が分からない以上ー、
”雪代”が頼みだったが、その雪代に心当たりがない、と
言われてしまうと、希望が見えなくなってしまうー。
「ーーー…それと、このままじゃ会社に行けないからさー…
部長に…それとなく、少し説明して貰えたりすると助かるんだけどー…
もちろん、俺からも連絡は取ってみるけどー」
孝則のそんな言葉に、
雪代は”そんなことならー、お安い御用だ”と、笑いながら答えるー。
感謝の言葉を今一度口にすると、
少し雑談を交わしてから電話を切り、
そのままスマホを置くー。
「ー雪代さんは、何て?」
恵美が不安そうに言うと、孝則は「ー特に思い当たることはないってー」と、
そう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日以降も、女体化したままー。
「ーあ、ママ2号!おはよ~!」
芳樹のそんな言葉に「はははー、パパは2号か~」と、
笑いながら、孝則が言うと、
芳樹は「ママが二人いるから、いつものママは1号で、
新しいママになったパパは2号!」と、指さしながら言うー。
「ーはははは、ロボットみたいだな~」
そんなことを言いながら、「今日は俺が連れてくよ」と、
送迎バスまで芳樹を送ることを恵美に伝えると、
恵美は「あ、うん!ありがとう!」と、パートに向かう準備を
しながら頷いたー。
マンションの階段を降りて、
女体化した孝則が、バスに乗る芳樹を見送るー
「パパー…あ、ちがったママ2号いってきま~す!」
芳樹が手を振るー。
孝則は苦笑いしながら手を振り返すと、
同じマンションに住むおばさんー…
先日も母の恵美に声を掛けたおばさんが、
その様子を見つめていたー。
「ーパパー…あらやだ、あの人、女装趣味とかあったのかしらー」
おばさんはそれだけ呟くと、少しだけ不快そうな表情を浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「俺は、とりあえず”この身体”に慣れる練習でもしてるよー」
玄関先に恵美を見送るために移動しながら、孝則がそう言うと、
恵美は苦笑いしながら
「ー何か体調に異変があったら、すぐに電話してね」と、
スマホを手に、言葉を口にするー
「あぁ、ありがとうー。」
孝則はそう言うと、恵美はパートに向かうために外に出たー。
階段を降りて、いつものようにパート先に向かおうとするー。
がー
その時だったー。
近所のおばさんが意地悪そうな笑みを浮かべながら
近付いてくると、嫌味っぽい口調で言葉を続けたー
「ー矢島さんの旦那さんー、
女装趣味を持っていらなんてねぇ…
子供が可哀想だわー」
そんなおばさんの言葉に、恵美は
いつの間にこのおばさんが、孝則のことに気付いたの?と、
戸惑いながらも、
「ーー趣味は、人それぞれですからー」と、
愛想笑いを浮かべながら、そのまま立ち去っていくー。
おばさんはまだ何か言いたげだったが、それ以上は
何も聞かない、という姿勢で、そのまま恵美はパート先へと
向かうのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
土曜日ー。
息子の芳樹と遊園地に向かうはずだった日ー。
当然、女体化した孝則もその約束を守るつもりでいたー。
がー、準備をしている最中に、
”ある問題”に妻の恵美が気付いたー。
本当はもっと早く気がつくべきだったのかもしれないー。
でもー…、他にも考えることが多すぎて、孝則は気付くことができなかったー。
「ーーー免許、その姿で使えるの?」
恵美の不安そうな言葉に、
「え?免許ー?」と、孝則は表情を曇らせるー
「ーそ、そっかー……た、確かにー…使えないなー」
孝則は困惑するー。
”女体化した孝則”が
”矢島 孝則”の免許証を出して、信じてもらえるのかどうかー。
答えは恐らくNoだー。
どう考えても現在は女性にしか見えない
女体化した孝則が、男の免許証を出せば、
警察は当然疑うだろうー。
それで、何も言われずに通されたら、違う意味でヤバい。
何もしてないのに、警察に免許を求められる機会など
そうそうあるものではないー。
けれど、可能性は0パーセントではないし、こういう時こそ、
運悪くそういう場面に遭遇する可能性は否定できない。
「ーーーー…」
妻の恵美は免許を持っていないー。
電車で移動することもできるが、立地条件的に
かなり時間がかかってしまうー。
「ーーよ、芳樹ー…」
女体化した孝則は、躊躇いながらも、
息子の芳樹に”遊園地に行けなくなってしまった”ことを説明するー。
「ーー悪い魔女に、遊園地に行けない魔法を掛けられちゃったんだー」
そんな言い回しで、何とか芳樹を説得するー。
だが、遊園地を楽しみにしていた芳樹は
「え~なんで!早く悪い魔女をやっつけてよ!」と、不満そうに
言葉を口にするー。
最終的に、芳樹は拗ねてしまい、女体化した孝則は
申し訳なさそうに「ごめん」と、そう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
同僚の雪代が、部長に話をしてくれたのだろうかー。
部長から呼び出された女体化した孝則は、
会社の応接間に通されたー。
しかしー、
部長は言ったー。
”残念だが、休職か退職かを選んでもらうことになる”
とー。
部長は申し訳なさそうに理由を説明したー。
「君に起きていることは分かったー。
だが、会社のセキュリティ上の意味でも
”そうかそうか、大変だったな”で、通すわけにはいかないー。
もし、君が”矢島くんを名乗っている別人”だったら、
オフィスの中にそのまま入れてしまうのは、セキュリティ上も
大問題になるし、それをしてしまうのは会社として不味いー。
これは、分かってくれるなー?」
部長の言葉に、孝則は頷くー。
確かに”女体化しました”と、自称する社員を、ホイホイと会社内に
通すのは、会社のセキュリティ上問題があるのは理解できるー。
「そして、君が本当に女体化した矢島くんだった場合ー。
私や、同じ部署の人間はそれを理解したとしても、
他部署の人間、取引先、上の人間ー
これら全員に信じてもらうことは不可能だー。
必ず問題が起きるし、トラブルが起きると分かっていて、
その人間を使うことはできないー。
ーーー…私個人としては、君のことを信じてはいるー。
だがー…現状では、どうすることもできないー。
すまないー」
部長のそんな言葉に、女体化した孝則は
”職を失う恐怖”にも震えたー。
正直ー、
”自分が独身”なのであれば、それでもいいかもしれないー。
この姿なら、別の仕事を見つけることもできはするだろうー。
がー…
孝則には家族がいるー。
”ーーーー…”
恵美と芳樹を守らないとー…
そんな想いが、孝則の中でさらに膨れ上がっていくー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして、その日の夕方ー。
「ーー幼稚園から、芳樹がいなくなったってー」
恵美が、園からの連絡を受け、青ざめた様子で言うー。
「ーえっ… えぇっ!?」
女体化した孝則は、驚いた様子で声を上げると、
すぐに「俺、探してくるー」と、そのまま家を飛び出したー。
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
”ママ”が二人になってしまったことで、
色々生じていく問題…!
家族三人、笑顔で暮らせる日々を取り戻すことは
できるのでしょうか~?
続きはまた明日デス~!
今日もありがとうございました~!
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