彼氏のことが好きすぎる彼女ー。
彼氏の妹に憑依して”ずっと一緒にいられる”と、
喜びを露わにする彼女だったものの、
彼氏に諭され、自分の行動が間違っていたと、考えを改めるー。
しかしー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー本当に、美雪ちゃんに悪いことしちゃってごめんねー…
本当は、本人に謝りに行きたいんだけどー…」
彼女の姫香がそんな言葉を口にするー。
和也はそんな言葉に苦笑いするー。
確かに、謝りたいという気持ちは分かるし、
本来は謝るべきだとは思うー。
しかし、”自分が憑依されていた”なんてことを伝えられたら、
妹の美雪は怖がってしまうだろうし、気持ち悪いと思うー。
姫香も改心したし、
”寝落ち”で済ませられるのであれば、
その方が美雪を傷つけずに済む、と判断して
和也は美雪に憑依のことを伝えていなかったー。
姫香も、そんな和也の考えを理解し、
美雪本人に謝ることができない代わりに、
美雪の兄である和也に、連日のように謝罪の言葉を口にしていたー。
”美雪ちゃんから、面倒臭い子だと思われているみたいだしー…
もっとしっかりしなくちゃ”
姫香は、心の中でそんなことを思うー。
憑依する直前、美雪はそんなことを一人で呟いていたー。
それが、”今のところの、美雪から見たお兄ちゃんの彼女”なのだろうー。
姫香は、”美雪ちゃんに認められるように頑張ろ”と
改めて、そんな風に決意するのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
がー、その夜ー。
「ーーお兄ちゃんー」
妹の美雪が突然、和也の部屋にやってきたー。
「ん?どうしたんだ?」
不思議そうに首を傾げる和也ー。
すると、美雪は言葉を口にしたー
「お兄ちゃん、今日もこれからわたし、
姫香ちゃんに身体を貸すねー」
「えっ!?」
美雪の突然の言葉に、和也は表情を歪めるー。
「ーーど、どういうことだー?」
和也は困惑しながら言葉を吐き出すー。
そもそも、”この前の憑依”のことは美雪には伝えていないー。
”今日も”と、いうのはおかしいし、
姫香自身も、”もう憑依しない”と約束してくれたはずー。
それなのに、これは一体どういうことなのだろうかー。
困惑の表情を浮かべながら、和也が美雪のほうを見つめると、
美雪は言葉を続けたー。
「さっき、姫香さんから事情を聞いてー。
それで、どうしてももう1回憑依したいっていうからー、
今日もこれから姫香さんに身体を貸すことにしたのー」
美雪のそんな言葉に、和也はさらに困惑するー。
姫香が、憑依のことを美雪に勝手に伝えて、
その上でもう1回憑依したいとお願いしー、
さらに、美雪がOKをしたとでも言うのだろうかー。
「ーーーじゃあ、姫香ちゃんと楽しんでー」
美雪はそう言うと、ビクッと震えてからー、
「ーえへへ…許可貰っちゃったー!」
と、嬉しそうに微笑んだー
「き、許可ってー…!
ひ、姫香ー
も、もう憑依しないって約束したのに!」
和也が困惑しながら言うと、
美雪は笑みを浮かべながら、
「ーだって~ずっと一緒にいたいんだもん♡」と、
甘い口調で声を発したー。
「ーーだ、だからってそんなー!」
和也が反論しようとすると、
「今度は、ちゃんと美雪ちゃんにも許可を取ったよ?
今、聞いたでしょ?」と、美雪が笑みを浮かべながら
言葉を口にするー。
「ーーそ、それはー…」
和也は”なにかがおかしい”と、思いながら困惑していると、
「ーねぇねぇ、キスしちゃお?」
と、美雪が顔を近づけて来たー
「ーーバ…!や、やめろって!」
顔を真っ赤にしながら目を逸らす和也ー
妹の美雪を”そういう目”で見たことはないが、
それなりに美雪は可愛いしー、
そんな風に誘われると、やっぱりドキドキしてしまうー。
「ーーえ~…?じゃあ、しちゃう?」
美雪が顔を赤らめながらイヤらしい笑みを浮かべるー
「ーーえ…」
和也には、その言葉の意味が分からなかったー。
が、少し間を置いて”キスよりも恐ろしいこと”を要求されていると気付き、
「ーみ、美雪の身体で遊ぶな!」と、
そう和也が怒りの口調で言い放つー。
「ーー…ふふふ♡ 冗談だってば~」
美雪はそう言い放つと、和也は混乱しながら
「わ、悪いけどー、一人にしてくれ」と、そう言葉を口にするー。
「ーーーうん…じゃあ、わかったー」
美雪はクスッと笑うと、そのまま美雪の部屋の方に
向かって静かに歩き出すー
”ふふふー…許可なんて、貰ってないけどねー”
美雪はニヤリと笑うー。
美雪は、”兄・和也の部屋を訪れる前”に既に憑依されていたー。
美雪を乗っ取った後に、
”今日、姫香さんに身体を貸すね”と美雪の身体で言っただけー。
その後、憑依されたような仕草を自分でして、
その時に憑依させたかのように見せかけたー
「ーんふふふふ…可愛いね♡」
鏡に映る美雪の姿を見つめながら、美雪はそう呟くと
不気味な笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
正気を取り戻した美雪に、
和也は「ーーき、昨日ー…なんで姫香に?」と、そう確認すると、
美雪は「な…なんのこと…?」と、表情を歪めるー。
和也がさらに口を開こうとすると、美雪が先に口を開くー
「わたし…また昨日の記憶がないんだけどー
さすがに寝落ちじゃない気がするー」
とー。
「え…」
和也は困惑するー。
まさか、”姫香”が、また美雪に無許可でー?
いや、でも、昨日は美雪が”姫香さんに身体を貸すね”って言ってたようなー…
そんな風に思っているとー、
「ー昨日、姫香さんと何かあったのー?
わたしー…あの人、苦手なんだけどー」と、
思ったことをすぐ口にする美雪が、そう言葉を口にするー。
「ーも、もちろん、お兄ちゃんのこと好きでいてくれるのは
妹として誇らしいというかー、イヤじゃないけどー
なんかー…そのー」
美雪のそんな言葉に、和也は申し訳なさそうに
「ーー巻き込んでごめん」とだけ呟くと、
そのまま学校に向かう支度をするー。
”姫香ーなんでー…”
約束を破ってまでまた美雪に憑依した姫香ー。
和也はショックを受けながらも、
学校で姫香を見つけ出すと、声を発したー
「姫香!どうしてまた美雪にー!」
とー。
「ーーえ…?」
しかし、姫香の反応は予想外の反応だったー。
「ーーど、どういうことー?」
そんな反応の姫香に、
和也は昨日のことを説明するー。
すると、姫香は「う、嘘…?わたしはずっと家にいたよー」と、
そう釈明したー。
がー、いつもなら来る電話やLINEは1回も来なかったし、
家にいたとは思えないー。
そう指摘すると、姫香は「昨日、気付いたらスマホが壊れててー
今朝、修理に出したからー」と、そう説明してきたー
流石にそんなことないだろう、とツッコミを入れたくなりながら、
「随分、都合よくスマホが壊れるんだな」と、そう指摘すると、
姫香は「ほ、本当だってばー…!和也を傷つける嘘をつかないって
ちゃんと約束したし」と、困惑の表情を浮かべるー。
「ーーそれに、美雪ちゃんにも、もう憑依するつもりなんてないし、
憑依薬はちゃんと処分したから!」
姫香のそんな言葉に、
和也は姫香を見つめるー
姫香の目には涙も浮かんでいるー。
「ーーーーーーー」
和也は、そんな姫香の目を真っすぐ見つめながら
「ーじゃあ、美雪に憑依したのは姫香じゃなくてー、
昨日は偶然、スマホが壊れて連絡もできない状況だったー、
って、そういうことなのかー?」
と、言葉を口にするー
「ーーう、うんー…」
姫香が頷くー
その言葉に、和也は思わず鼻で笑ったー
「ーーー随分、都合が良すぎる話じゃないかー。
姫香のほかに都合よく憑依薬を持ってる人が登場して、
都合よく美雪に憑依してー、
それでたまたま姫香のスマホが壊れるー」
和也がそう言い放つと、
姫香は涙で和也を見つめるー。
「ーー大好きな和也に、もう嘘はつかないって決めたもんー
和也との約束は破らないもんー」
姫香が悲しそうにそう言い放つと、
「ーだから、随分都合が良すぎる話だって言ってるんだー」
と、和也は今一度言葉を口にして笑ったー。
「ーー誰かが、俺と姫香をはめようとしてるー」
そう、言葉を付け加えた和也は、姫香を見て笑ったー。
和也は、姫香のことも、妹の美雪のことも信じているー。
たとえ、”バカ”と言われたとしてもー
大切な人たちのことは信じたいー。
だから、姫香は美雪に2度目の憑依なんてしていないと思うし、
美雪の記憶が飛んでいるという話も、本当だと信じているー。
そうなればーー
”誰かが”姫香と和也をはめようとしてーーー
和也は、そう思いながら必死に”手がかり”を求めたー
そして、数日後ー
「ーーはぁ~…つまんないのー」
背後から、そんな声がしたー。
2度目に美雪が憑依されたあの日、
下校後の足取りが不明な生徒を何人かに絞ることに成功していた和也ー。
そこに、”張本人”が姿を現したー
このまま放置していても、和也は必ず自分にたどり着くと判断し、
諦め、自ら姿を現したのだー。
その相手はー
親友・信吾の彼女、美沙子ー。
”「ーまぁいいじゃないかー
星谷さんみたいな可愛い子に、そんなに好かれるなんて幸せなことだぞー。
美沙子(みさこ)なんて、俺の誕生日にも
”え?今日あんたの誕生日 ふーん”なんて感じなんだぞ?」”
以前、親友の信吾が、そんなことを口にしていた子だー。
「ーーー…き、君はー」
和也が困惑しながら言うと、美沙子は笑ったー
「ーーーあんたたち、いつも仲良さそうにしててウザかったー。
ーーーわたしと、慎吾は全然上手く行ってないのにー。
だから、あんたたちの仲を引き裂いてやろうと思ってー」
美沙子の言葉に、
和也は「美雪にー…美雪に憑依したのは、君なのかー?」と、
言葉を口にするー
美沙子は自虐的に笑いながら頷いたー。
「この前、あんたたちが”憑依”の話をしてるのを聞いたのー。」
美沙子は言うー。
恐らく、姫香が美雪に憑依した翌日に話をしていた時のことだろうー。
「それで、あんたたちの仲を引き裂くことを思いついたー
憑依薬をネットで見つけ出して買ってー、
まず、姫香ちゃんに憑依してスマホを壊してー、
そのあと、あんたの妹に憑依して姫香ちゃんのフリをしてー、
それで、後はあんたが姫香ちゃんを疑って
あんたたちの仲は引き裂かれるー…
そういう、つもりだったのー」
美沙子は、全てを自白したー。
”姫香のスマホが都合よく壊れた”のはー、
美沙子が美雪に憑依する前に、姫香に憑依し、
姫香の身体を乗っ取って、自らスマホを破壊させたからだー。
そうしないと、姫香が和也と連絡を取ってしまいー、
美雪に憑依しているのが姫香じゃないとバレてしまうからー。
「ーーーー…姫香にも言ったけどー、
許可なく人のものを使ったりするのはダメだー。
身体だって、他のものだって、それはそうー」
和也がそう言い放つと、
「ーー信吾と君の関係には口出しはできないけどー…、
でも、言ってくれれば相談に乗ることはできるし、
俺と姫香を見てムカつくなら、俺に言ってくれればいいー。
何も言わずに、憑依なんかされたら、何も解決策も
見つからないし、みんな傷つくだけだー」
と、諭すような口調で言い放ったー
「ーーーーうんー」
美沙子は、落ち込んだ様子でそう言うと、
「ーーーごめんなさい」と、謝罪の言葉を口にしたー。
その上で、自分は感情表現が苦手で、
そのせいで、慎吾からも”本当に俺、好かれてるのかな?”などと
思われてしまい、毎日苦しいのだと心境を吐露したー。
「ーーーはは…そうそう、そうやって相談してくれれば、
俺だって相談に乗れるからさー。
今日の放課後、慎吾も交えて話をしてみようー。
大丈夫。憑依のことはもう2度としないと約束してくれるなら
信吾には言わない。
だから、2度としないと約束してくれるか?」
和也にも怒りたい気持ちはあったが、
美沙子を刺激せず、妹の美雪と彼女の姫香を守りー、
そして、親友の信吾とその彼女である美沙子の関係も
円満に解決するため、自分なりに頭をフル回転させながら
そんな言葉を優しく口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
妹の美雪には、憑依のことは隠しつつ、
上手く事情を説明したー。
結局、強引に”寝落ち”ということにしたー。
姫香も美沙子も”憑依”はもうしないと約束してくれたー。
これ以上の憑依は、起きないー。
だから、今更美雪に憑依のことを伝えるのは、
美雪を怖がらせてしまうだけと判断したー。
もちろん、美雪は事実を知れば当然怒るだろうし、
そうなれば、姫香と美沙子との間にもトラブルが起きる可能性があり、
”負の連鎖”が起きるー。
世の中は、全て素直に伝えない方が良いこともあるー。
その時、その時の立ち回りを判断し、
”一番周りの人が傷つかない選択”をするー。
それが和也の生き方だー。
結局ー、
美沙子と親友の信吾は和解ー、
姫香もすっかり憑依のことを反省し、
お互いの憑依薬を破棄を、和也は確認、
その後、憑依薬を売っていたというサイトの閉鎖も確認したー。
「ー誕生日おめでと~~~~~!」
後日ー。
少し前に言われていた和也の誕生日を迎えたー。
「ーーー…おいおい…なんだこれー…」
和也が苦笑いすると、
姫香は「わたしと、和也の婚約指輪!」と、嬉しそうに
ハートの装飾がついた指輪を手渡してくるー。
”誕生日、楽しみにしててね”と予告されていた和也は
イヤな予感を感じていたものの、案の定だったー
「も、もう婚約ー!?
しかも、これ、高くね!?」
和也がそう言うと、
姫香は「高いけど!ちゃんとバイトしてお金を貯めたし!
何も悪いことしてないもん!」と、得意気に言い放つー。
そんな姫香に対し、苦笑いをしながらも、
和也は「ーま、まぁ、ありがとうー」と、照れくさそうにそれを受け取るー。
「ーー美雪ちゃんにも認めてもらえるように、これから頑張るから!」
姫香は、そんな決意の言葉を口にすると、嬉しそうに微笑んだー
どんどん重くなっていく姫香の愛に、苦笑しながらも
和也は”これだけ好きになってくれるなら、これからも大事にしないとなー”と、
姫香のことを思いながら、
”もしも、暴走しちゃったら、また止めるのも俺の役目だしー”と、
愛が強すぎる故に、また憑依の時のように暴走したら、
それを止めるのは自分の役割だと、強く決意するのだったー。
おわり
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コメント
和也くんの立ち回り(?)のおかげで
大きなトラブルにならずに無事に解決できました~!
和也くんがもしも、血の気の多い性格だったりしたら、
姫香や美沙子の憑依も止まらず
大変なことになっていたかもしれませんネ~!
お読み下さりありがとうございました~!
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