独身貴族ライフを送っていた男が、
見知らぬ母親と入れ替わり…。
彼は嫌々ながらも、母親の代わりをやっていたものの、
子供に”お前はお母さんじゃない!”と言われてしまいー…?
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「ーーお前は、お母さんに化けている悪者だな!」
息子の竜太がそんな言葉を叫ぶー
「ーーわ、わ、悪者!?」
香織(修武)が困惑した表情でそう叫ぶと、
「そうだ!わるいやつが、お母さんに化けてるんだ!」と、
竜太は、指を指しながらそう叫んだー
「ーお前が怪人だってことは分かってるんだぞ!」
竜太の言葉に、
香織(修武)は思わずプッと笑ったー。
”ーあぁ、ヒーローの番組とか見て、こんなこと言ってるんだなー”
と、そう理解した。
ヒーローが怪人を倒すような番組で、
悪党が人間に化けて悪いことをするようなシーンが
あったりするようなこともあるー。
竜太の発言からするに、そんな風に思ってるのだろうー。
「ー大丈夫大丈夫、怪人じゃないからー」
香織(修武)はそう言うと、時計を見て
”今日はもう遅いし、寝れば入れ替わった状態も戻るかもだしー”と、
思いながら「今日はもう寝なさいー」と、
強引に、竜太に寝るように説得ー、
しばらく竜太も喚いていたものの、疲れたのか
ようやく眠ってくれたー。
「は~~~…今度こそゆっくりできるー」
香織(修武)はそんな言葉を口にしながら、
ふと、いつも自分が吸っている煙草を探すー。
がー、喫煙者ではない香織の家に煙草などないー。
”買いに行くかー”と、
一瞬思って立ち上がったものの、香織(修武)は
すぐに首を横に振ったー
「ってー、煙草吸わない人の身体で煙草吸うのはダメだなー」
香織(修武)は、そう言葉を口にすると、
そのままため息をついて、イスに座るー。
「ー俺も眠くなってきたー」
修武からすれば”クソガキ”の世話をしてとても疲れたー。
香織(修武)はほどなくしてベッドに横たわると、
そのまま眠りについたー。
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「あ~~~戻ってねぇ!」
翌朝ー
香織(修武)は起きてすぐに胸の膨らみを確認して
うんざりした様子でそう叫んだー。
そしてー、すぐに修武(香織)に電話をすると、
昨日、竜太から”お前はお母さんじゃないな”と言われてしまったことを説明ー、
仕方がなく、こっちの家に来てもらうことにしたー。
「ーー昨日のおじさんー」
竜太が、不安そうに、修武(香織)のほうを見つめるー。
”息子から”おじさん”と呼ばれること”に、少し寂しさを覚えながら
修武(香織)は「ーーあ、あのねー竜太。わたしがお母さんでー」と、
事情を説明し始めるー。
きょとんとした様子でその話を聞く竜太ー。
「ーーーこ、このおじさんが、僕のお母さんー?」
困惑した表情を浮かべながら首を傾げるー。
意味が分からない、と言わんばかりの表情だー。
確かに、このぐらいの年齢の子には
”入れ替わっちゃった!”なんて説明しても
理解するのはなかなか難しいだろうー。
「ー???」
頭にハテナをたくさん浮かべている様子の竜太ー。
そんな竜太を見て、香織(修武)は言葉を口にするー
「ー悪い魔法使いのおばあさんが来て、
おじさんと、お母さんの身体を取りかえっこしちゃったんだー。
だから、見た目はお母さんだけど、俺はおじさんでー、
見た目はおじさんだけど、あっちが竜太くんのお母さんなんだー」
香織(修武)がそう呟くー
”ガキにはこのぐらいの説明がいいだろー”
そんな風に思いながら、
言葉を終えるとー、
「じ、じゃあ、その悪い魔法使いのおばあさんを倒せば、
お母さんは元に戻れるの?」と、そんな言葉を口にする竜太ー。
”へへ、乗って来た乗って来たー。ガキは単純でいいな”
香織(修武)は、内心でそう呟くと、
「ーそう!だから、おじさんと、竜太くんのお母さんは
今、悪い魔法使いのおばあさんをやっつけるために探してるんだー。
だから、魔法使いを倒すまではこのままだけど、
竜太くんは、いい子だから、我慢できるね?」
と、そう言葉を口にしたー。
「ーーーうんー…」
頷く竜太ー。
説明を完全に理解してくれたのかは
分からなかったが、
「お母さんー…… あ、えっとーおじさん、ありがとうー!」
と、香織(修武)に対してそう言い放つと、
「ーーじゃあ、おじーー、お母さん、あそぼー!」と、
竜太は修武の姿をした香織に飛びついていくー。
「ーーあはは、じゃあちょっとだけー」
嬉しそうにそう言い放つ修武(香織)を見て、
香織(修武)は少しだけため息をつくと、
”元に戻る方法、早く見つけないとなー”と、
そう言葉を口にしたー。
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「ーありがとうございます」
竜太が疲れ果てて昼寝を始めると、修武(香織)は
そんな言葉を口にしたー。
「ーいいや、別にー。
騒がれると面倒なんで、ガキー…いや、失礼ー
子供でも分かるように説明しただけですよー」
香織(修武)が、つい癖でガキと言ってしまい、
謝罪しながらそう言葉を口にすると、
修武(香織)は「子供、嫌いなんですか?」と、言葉を口にするー
「ーまぁ、好きか嫌いかで言えば、好きじゃありませんねー。
あ、勘違いしないでくださいよー。
竜太くんだからじゃなくて、子供自体が嫌いなだけですからー」
香織(修武)は、口の寂しさを誤魔化すためか、
本人の許可を得た上で飴を舐めながらそんな言葉を口にするー。
がー、修武(香織)は少しだけ微笑むと、
「ーーでも、優しいんですねー」と、言葉を口にするー。
「ーや、優しいー?」
香織(修武)がそう言うと、
「さっき竜太が”偽物のお母さん、すっごくゲーム上手だし、面白かった”って、
そう言ってましたしー、”僕がお漏らしした時も、ちゃんと助けてくれた”って
そう言ってましたしー、
あとー…さっきも…その、入れ替わったことの説明をしてた時のあなたはー
とっても優しい顔をしてましたよー」と、
修武(香織)がそう言葉を口にしたー。
「ーーーはははー…それは”社交辞令”ってやつですよー。
社会人として生きるうちに身に着けたスキルです」
香織(修武)はそんな風に自分の”優しさ”を否定すると、
「ーーそれでも、あなたは優しいですよー。
だってー……”嘘”もつけない父親もいますからー」
とー、修武(香織)は少し悲しそうに言葉を口にしたー。
「ーーー…」
香織(修武)は、おそらく”香織の元夫のこと”を言っているのだろうと、
そう考えたー。
”嘘もつけない父親”
つまり、社交辞令的な優しさすら、子供の前で見せることはなかったのだろうー。
暴力や暴言もあったのかもしれないー。
「ーーーまぁ、でも竜太くんには不満もありますけどねー」
香織(修武)が話を変えようとそう言葉を口にすると、
修武(香織)が少し不安そうな表情を浮かべるー。
「ーいや、ほら、俺のこと”おじさん”って呼ぶからー…
まだ俺30代前半ですよ?おじさんなんて見た目じゃあないですよね!?」
香織(修武)がそう言うと、
冗談めいたそんな言葉に、修武(香織)の表情から不安が消えて、
少しだけ笑うー。
「ーーーやっぱ、優しいですねー」
そう、言葉を口にしながらー。
”おじさん”と言われたことに不満を感じているのに、
香織(修武)はさっき、竜太に話しかける時に自分のことを”おじさん”と言っていたー。
相手に合わせることができるー。
それは、きっと、この修武が優しいからなのだろうと思うー。
「ーーははー。だからそれは社交辞令みたいなもんですよ」
香織(修武)は少しだけ照れくさそうにそう言うと、
静かに笑みを浮かべたー。
そしてーーー
「ー竜太くんー。おじさんと、竜太くんのお母さんで
魔法使い、やっつけてくるから」
香織(修武)がそう言うと、
修武(香織)も「竜太はちゃんと留守番しててね」と、
そう言葉を口にしたー。
二人はもう一度”できる限りのこと”を試してみることにしたー。
ぶつかって入れ替わったのだからー、
何とか、また入れ替わる方法があるはずだとー。
そして、その日ー、
二人は必死に何度もぶつかったり、転倒してみたりー、
試せることは何でも試したー。
夕方になっても、元に戻ることができず、
途方に暮れながら、
最初に入れ替わった時のように正面衝突したその時だったー。
「ーー!!!!」
起き上がった修武が、自分の手を見つめるー。
香織も驚いた様子で修武のほうを見つめるー。
”角度・衝撃の強さ・タイミング”
何が条件だったのかは分からないー。
しかし、二人はついに、元に戻ることに成功したのだったー
「ーー何度もぶつかりすぎて、汚れちゃいましたね」
修武がそう言うと、
香織は「でも、悪の魔法使いと戦ったみたいで、ちょうど良さそうー」と、
笑いながら言葉を口にするー
修武は「確かにー」
と、少し笑いながら頷くと、
そのまま香織の家に向かって歩き出したー。
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元に戻ったことを香織の息子・竜太に報告、
一応、別れの挨拶をするために
香織の家にやって来た修武は、
竜太のほうを見つめるー。
「ーと、いうことで悪い魔法使いはやっつけたからー、
俺と、お母さんは元通りになったんだー」
説明を終えると、
竜太は「ホントに!?よかった~!」と、
母の香織の方を見つめながらそう呟くー。
そんな様子を見つめながら、少し間を置いてから
「ーーーあんま、お母さんを困らせるようなこと、するなよ?」
と、修武が言うと、
竜太は「僕、困らせてないもん!」と、そんな言葉を口にするー。
”元はと言えばお前が道路で走ってたせいだろー?
やっぱクソガキだな”
修武はそんなことを思いながらも、
”まぁ、このぐらいの年齢の時は、俺もクソガキだったか”と、
内心で笑うと、
「ーーーそうかそうか。ま、これからも頑張れよ」と、
竜太の頭を優しく撫でると
「ーじゃあ、俺はこれでー。無事に元に戻れて良かったです」と、
頭を下げて立ち去ろうとするー。
「ーーあ、あのー…ほ、本当にありがとうございましたー」
香織がそう頭を下げると、修武は「ーこちらこそ」と、
そんな言葉を口にするー。
そして、今度こそ立ち去ろうとしたその時だったー
「ーおじさん!また対戦しようよ!」
竜太がそう声を掛けて来たー
”だからおじさんじゃねーっての”と、
思いながらも振り返ると、
「ー君じゃ、俺には勝てないよ」と、ニヤニヤしながら笑うー。
少しムッとした様子で「今度は僕が絶対勝つもん」と、
そう呟く竜太に、
修武は少しだけ笑いながら
「へー…それは楽しみだ」と、言い放つー。
しかし、もう自分がこの家に来ることはないー。
これもまた、社交辞令だー。
だが、帰ろうとした修武に、竜太は楽しそうに
色々と話し始めるー
”おじさん!おじさん!”と、何度も話しかけて来る竜太に
”うるせーな”と思いつつも、優しく対応する修武ー。
そんな様子を見た香織が「あ、ご飯とかどうですかー?
時間も時間ですし、お礼に御馳走をー…
と、言っても大したものは作れませんけどー…」と、
そんな言葉を口にするー
修武は”帰りたい”という気持ちもあったが、
断るのも悪い気がして
「まぁ、じゃあー…お言葉に甘えて」と、そう応じると、
香織の息子の竜太は少しだけ嬉しそうに笑ったー。
食事を食べ終え、対戦に付き合わされて、
疲れた竜太が眠りに落ちると、
香織は「本当に、ありがとうございましたー」と、
ぺこりと頭を下げたー
「いや、いいですよー
子供は苦手ですけど、
苦手なものに挑戦するのも、たまには悪くないですからね」
修武がそんなことを言いながら、
竜太のほうを見つめると、
「ー竜太には、お父さんがいないのでー
石塚さんのこと、お父さんのように思ったのかもー」
と、香織が言葉を口にするー
それを聞いた竜太は
「いやいや、俺はお父さんにはなれませんよー。
独身貴族が楽しすぎて、やめるつもりはないですからね」と、
苦笑いしながらそう言葉を口にするー。
その後も少し雑談して、今度こそ修武が立ち去ろうとしたその時ー、
竜太が”おじさん…ありがとう”と、静かに寝言を発したー。
「ーーーーー」
修武は苦笑しながら「ーー何の夢見てんだよ」と、呟くと、
そのまま少しだけ笑って玄関の方に向かうー
「それじゃ、お邪魔しました」
修武が今一度頭を下げるー。
そんな修武を見つめながら、香織は少しだけ躊躇ってからー、
意を決して言葉を口にしたー
「ーあ、あのー…!
こ、これからも、時々でいいので、竜太とー
遊んであげてくれませんかー?
あ…い、いえ、こんなお願いしてるのは
失礼だと分かってはいるんですけどー
あんな楽しそうな竜太ー、はじめてだったのでー」
香織が、勢いでそんなことを言い放つと、
修武はため息をついて振り返ったー。
「ーー俺は、独身貴族が好きですからー、
お父さんにはなりません」
そう言い放つ修武ー。
がー、その直後、少しだけ微笑むと、
修武は言葉を続けたー。
「ーまぁ、でも、”時々遊びに来る近所のおじさん”
ぐらいならー
別に、構いませんよー」
とー。
その言葉に、香織は嬉しそうに「ありがとうございます」と、
頭を下げるー
そのまま少し言葉を交わして立ち去る修武ー。
帰り道を歩きながら、修武は一人、少しだけ笑うと、
”ガキは嫌いだけどー、まぁ、たまにはいいかもなー”と、
優しい笑みを浮かべたー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
独身貴族の男性が、見知らぬお母さんと
入れ替わってしまうお話でした~!★
今回は、悪い方向に話が進むことなく
平和的な物語でしたネ~!
お母さんからすれば、
入れ替わった相手が修武で命拾いしたのデス…★!
お読み下さりありがとうございました~~!
コメント
普通に元に戻っちゃうんですね〜。
個人的には、どうやっても元に戻れないか、あるいはお互いの身体に染まって、元の自分を忘れちゃうみたいな結末が見てみたかったかな?
それにしても、子供嫌いとはいえ、修武は比較的善人だったからよかったですけど、もしも、同じ子供嫌いでも、平気で子供に暴力振るうようなタイプの相手と入れ替わっていた場合、大変なことになってなってましたよね。
ところで、多分ですけど、誤字です。↓
だが、帰ろうとした竜太に、修武は楽しそうに
色々と話し始めるー
竜太と修武の名前が逆になっているかと思います。
ありがとうございます~!★
書き始める前に、いつもどうするか複数のパターンを考えますが、
今回は元に戻る結末にしました~!
誤字報告ありがとうございます~!
確かに入れ替わっちゃってますネ~!
修正しておきます!