女装趣味を持っていた男が、本当に女体化してしまったー。
最初は気楽に考えていたものの、
会社にも信じてもらうことができず、
さらには会社の先輩に乱暴なことをされてしまうー。
自暴自棄になりかけた彼。しかしー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーマ、マジかー…」
昨日、自暴自棄になって自撮りした写真を、
ネットに上げた圭太郎は、驚きの表情を浮かべるー。
その写真に、
たくさんの”可愛い”という声が上がっていて
”女装アカウント”で、色々女装を上げていた時を
遥かに上回る数の”いいね”がついていたのだー。
「やっぱ、本物の可愛いは正義なんだなー」
圭太郎は、そんな言葉を口にすると、
嬉しそうに、コメントに返事を返していくー。
一瞬、”どうせ誰も見ない”と思い、
随分前に作って、そのまま放置していたサブアカウントで
自撮りを上げたために、
”以前”、余計な発言をしていないだろうな?と、
自分のこれまでの書き込みを確認するー。
が、”ツイッターはじめました”ぐらいしか書いておらず、
特に問題はなかったことに安堵するー。
念のため”いいね”蘭なども確認したが
天気予報を一度いいねしているぐらいで、
特に問題はなかったために安堵するー。
”可愛い”
”顔がいい”
”慰めてあげたい”
”そんな悲しそうな顔しないで”
”かわいすぎる”
”天使”
そんなコメントの数々を見つめながら
「うへへへ…もっともっと」と、
ニヤニヤしながら、”自分をほめるコメントの数々”を見つめていくー。
こんなに褒められると、
何だか”自己肯定感”のようなものが
急速に高まっていくのを感じるー。
”褒めらると伸びるってこういうことを言うんだな”
そんなことを思いながらー、
「よ~し!」と、笑みを浮かべると、
”今度はもっと可愛い俺を見せてやるぞ”と、
得意気な表情で髪型をいじり始めるー。
そしてー女装用に以前購入しておいた
セーラー服を手にすると
”ツインテールの女子高生”風の姿になってみせたー
「うぉぉぉぉぉぉ…可愛すぎるー」
鏡に映った自分を見て、思わずそう叫びー、
男のような立ち方で、夢中になって
”鏡の中の自分”を見つめるー。
しばらく夢中になって、”女体化した自分”を見つめていたものの、
やがて、ハッとして
”お、女の人はこんな立ち方しないな”と、
自分の姿勢を見直すー。
「ーーーへへへへ…圭太郎くん、大好き♡ なんてなー」
高校時代、特に告白された経験もなかった圭太郎は、
”女体化した自分”を女子高生に見立てて
告白し、ニヤニヤするー。
「うへへへへ…わたし、可愛すぎでしょ♡」
嬉しそうに笑うと、「さ~て、今日はツインテール女子高生の姿を
お前たちに見せてやるぞー」
と、自撮りを繰り返していくー。
”自撮り”は、元々女装趣味の時点から楽しんでいたしー、
”どんなアングル”で撮影すると、受けがいいか、ということも
理解しているつもりだー。
元々、女装アカウントで女装写真を上げてはいたから、
そういう点においても”すっかり慣れている”状態なのだー。
「よしよし、これで完了っとー」
”今日はJKになっちゃいました♡”
そんなメッセージと共に投稿した写真は
瞬く間に拡散され、今までに見たこともないような量の
”いいね”がついたー。
そんな光景を、”みんな好きだなぁ”などと笑いながら
見つめる圭太郎ー。
”会社をクビになるかもしれない”と
落ち込んでいた圭太郎だったが、
既に、この時点ではそんな不安を忘れて
”可愛い”と言われる快感に
飲み込まれつつあったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日もー、
その翌日も、色々な衣装を身に纏い、
”女装”ではなく、本物の”女性としてのコスプレ”を
楽しんだー。
みるみるうちにフォロワー数は増えていき、
今までにないぐらいに注目を浴びた圭太郎は
すっかりと明るくなっていたー
ネットでは”リナ”と名乗って、活動を続けているー。
会社は、結局辞めたー。
男に戻る気配が一向にないし、
このままの姿では、会社に出社することもできないー。
しかも、坂井戸先輩がいるから、
顔を合わしにくいし、恐怖心もあるー。
がーーー
”俺、女の方が生きる才能があったのかも!”
そんな風に思いながら、チャイナドレス姿で
”生配信”を行う圭太郎ー。
毎日毎日可愛らしさを意識して、
コスプレ衣装を身に纏って配信するだけでー、
ファンが”投げ銭”をしてくれるー。
圭太郎は”可愛いは正義”と、すっかりそう思い込みながら、
そんな生活を続けたー。
”女”であること、そして”可愛い”を武器として
全面的に押し出し、色々な
活動を始めた圭太郎は、”正社員時代”よりも儲かるという
とんでもない状況に陥っていたー
「うへへへへ…可愛いってすごいやー」
そんなことを思いながら
会社を辞めてから”応募”した
バイト先へと向かうー。
バイト先は、メイドカフェ。
女体化しても、彼自身は、
”北島 圭太郎”であることには変わりはない。
これが、他人に憑依する力だったり、
入れ替わる力だったりすれば、
”その人の身分”ごと奪うことができたものの、
自分の身体が女になってしまった場合、
”女になった自分”は”この世に存在していない人間”に
なってしまうー。
それ故に、正社員になることは難しく、
バイトが限界だったー。
バイトであれば、なんとか働くこと自体は出来るー。
”でも、税金とか、どうすっかなぁ…”
そんな生々しいことも考えながら、
ネットの収入の方は、本名で処理すれば良いものの、
偽名でバイトしているメイドカフェの収入を、
申告するときには、どうすればいいのかと、
ふと考えるー。
”まぁ、でも、今はとりあえず楽しむかー
心配しても、どうにかなることじゃないしなー”
そんなことを思いながら、
今日もメイドカフェに向かう圭太郎ー
”自分が元男”であるからー、
”男”がどんな振る舞いをすれば喜ぶのかは、
よく”理解している”つもりだー。
そんな”知識”をも武器にして、
メイドとしての力も蓄えていく圭太郎ー。
しかしー、圭太郎は
配信でも、バイトでも、
どんなに”成功”しても、
決して”調子に乗りすぎること”はしなかったー。
その理由は簡単だったー。
良くも悪くも、”坂井戸先輩のおかげ”だー。
女体化した直後、坂井戸先輩に乱暴された圭太郎は
”女として味わう恐怖”を十分に味わったー。
それ故に、
”調子に乗りすぎない”ことは、しないように注意していたー。
例えば、ネット上のファンと1対1で気軽に会ったり、
メイドカフェでもお客さんと距離を近づけすぎたりして、
トラブルになったりすることを避けたりー、
そういった”安全のための対応”も、徹底していたー。
女装から始まり、今に至るまでの経験が
”女体化して可愛くなったから、調子に乗りすぎてしまう”なんて状態にならないよう、
圭太郎にブレーキをかけていたー。
そのおかげで、圭太郎は”トラブル”を起こすことなく、
女体化ライフを楽しんでいたー。
ネット上では、ファンも喜び、圭太郎自身も楽しんでいるし、
ついでにファンが投げ銭をしてくれたりして、
圭太郎は、また、新しい服を買ったりして、ファンに還元するー。
そんな、WinWinの時間が続くー。
メイドカフェでは、メイドとして”ご主人様”に夢の時間を与えて、
自分も楽しみつつ、お客さんたちのことも楽しませたー。
ネット上の活動を中心にー
”自分の本名と現在の自分の姿”が一致しなくても
大丈夫な範囲内での活動を中心に、
圭太郎は知名度を高めていくー。
それでも、決して調子に乗ることもなく、身の安全には
しっかりと注意しながら、
コツコツ、コツコツと知名度を高め、
テレビ番組にまでゲスト出演するほどになったー。
最初は”女体化”に絶望もしたけれどー、
今では”女になってよかったー”と、そんな風に思っているー。
だがー
そんな日々が続いたある日ー。
”北島くんー。久しぶりだね。話があるんだー”
”クビになった会社”から、そんな連絡が入ったー。
女体化した時、勤務していた会社は、
部長らに女体化を信じてもらえなかった上に、
坂井戸先輩から乱暴されたこともあり、
そのまま行きにくくなってしまい、クビになってしまっていたー。
しかし、今になって、急に”話を聞く”と、いう
そんなリアクションを示して来たのだー。
会社は”配信を見て、やっぱりこれは北島くんなのではないか”と思った、と、
そう言葉を口にしていたー。
「ーーー会社に復帰できるかもしれないってことかー」
圭太郎は、今日の配信のために着ていたバニーガール姿のまま、
会社からのそんな連絡を見つめるー。
ネット上での名前…”リナ”を名乗りながら、
今日の配信を終えると、
圭太郎は静かにため息をついたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”部長”と話をするために、ファミレスへとやってきた圭太郎ー。
坂井戸先輩の時のような失敗を繰り返さない意味でも
”周囲に人がたくさんいる見通しの良い場所”を選んだー。
外を歩くときには、”普通の”格好をしてー、
眼鏡をかけて、”リナ”だとバレないように行動しているー。
そこまで自分が有名だと自惚れているわけではないが、
配信を見てくれている人とすれ違ったりすれば、
”そのまま”では気付かれてしまうー。
だから、外に出る時は眼鏡をかけて、
髪型もポニーテールにしているー。
「ーーーーどうも」
部長がやってきたのを見て、圭太郎が頭を下げるとー、
「ーいやぁ…すまなかったねー。
人が急に女になる、なんてこと、現実で起きるなんて思わなかったからー
つい、信じることができなかった」と、
部長が言葉を切り出したー。
「ーでも、偶然君の配信を見て確信したよー。
君はやっぱり北島君だと。
仕草を見ていれば分かるー。
どうだろう?上と掛け合って、君を復帰させる準備はできているー。
ウチに、戻ってこないか?
もちろん、君が望むなら、本名でなくても構わないー。
これも会社の許可を得ているー。
その姿で”北島 圭太郎”だと、色々言う社員もいるかもしれないからなー」
部長のそんな言葉に、
圭太郎は注文したパフェを口に運びながら
「坂井戸先輩は?」と、確認するー
「あぁ、坂井戸くんはー…
先月、転職したから、もうウチにはいないよー。」
部長は、そこまで言うと、
圭太郎に良い待遇を約束し、実際にそれを書面にして持ってきていたー。
”リナ”としての活動も続けていいしー、
会社として”リナ”も、活用していきたい、とー。
「ーーーーー」
そんな話に
圭太郎は、少しだけ笑うと、
静かに言葉を発したー。
「ーーごめんなさいー。
わたしはもう、”リナ”なのでー」
とー。
「ーーー!?」
部長が少しだけ驚くー。
「ーーーーわたしはもう”北島 圭太郎”じゃないのでー」
圭太郎は、そう言うと頭を下げて立ち上がったー。
「ー”人違い”されているようなので、
これだけ伝えようと思いまして。
失礼します」
圭太郎はそう言うと、そのまま料金だけ支払って
立去ろうとするー
「ま、ま、待ってくれ!北島くん!
悪かったー!
君のこと、疑って悪かった!
謝る!だからウチに戻って来てくれ!」
部長がそんな言葉を口にするのを聞いて、
圭太郎は失笑しながら振り返ったー。
「ー”北島くん”なんて知りませんー。
失礼します」
そう言い放つと、部長は青ざめた表情を浮かべながら
ガックリとうなだれたー。
ある意味ー、予想はしていたー。
”有名になって、稼げるようになったー”
そうなれば、もしかしたら
女体化した当初、その話をした”奴ら”が、
寄って来るのではないかと。
女体化した圭太郎のことを、本当に圭太郎だと信じているわけでもなくー
金や名声に寄ってたかって来るのではないかとー。
そしてー、
会社は実際にそれをしてきたー。
「ーーどうせ、金目当てなのは、分かってるしー
俺はもう”女”として生きていくよー。
女装じゃなくて、本物の女としてー」
圭太郎はそれだけ呟くと、
”女”として生きていく決意をしー、
”将来”年老いてきてー
配信やメイドカフェでは収入を得られなくなった時、
どうするかも、しっかりと考え始めるのだったー。
数日後ー…
”父さん、お前のこと信じなくて後悔してるー。
もう一度、しっかり話をしようー”
今度は、親かー。
そう思ったー。
女体化した直後、会社だけではなく、親にも女体化のことを
話しているが、信じてもらえなかったー。
その親が、今度は連絡してきたー。
もちろん”金”に寄って来たのだろうー。
「ーーー父さんー…
父さんは、そういう人であってほしくなかったよー」
圭太郎は悲しそうにそう呟くと
”わたしはリナです。失礼します”と、返事を送るのだったー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
今回は、女体化した後も調子に乗りすぎずに
それなりに上手くやっていくお話でした~!!
男体化も女体化も、自分の身元はそのままなので、
実際に起きたら苦労しちゃいそうですネ~!
そう考えると憑依は便利なのデス…!
(入れ替わりは相手がいるので相手次第…★)
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