<皮>帰還した侵略者③~彼女の想い~(完)

宇宙の調査に赴いていた調査隊8人が
遭遇した宇宙人に”皮”にされて、
乗っ取られてしまったー。

ついに、人類もそのことに気付いたもののー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーくっ…こんなことをしても、無駄よー!」

妹に異変を問い詰められた際に、動画が配信されてしまった由美は、
政府によって拘束されて、
尋問を受けていたー。

「ーーーークククク…苦しむのは、この人間だけー
 わたしは、痛くもかゆくもないわ」

乗っ取られたままの由美は、拘束された状態でも強気だったー。

”宇宙”関連の事案に対処する、
”宇宙対策特別捜査班”の、捜査員は表情を歪めるー。

宇宙人との遭遇はこれが初めてではないー。
既にこの時代では、調査船・FUJI以外の調査隊が、宇宙人を別の惑星で
発見しているー。

だが、こうして人間の身体を乗っ取って地球にまでやってきた
宇宙人は、これが初めてだったー。

「ーーー…強がるのはよせ」
捜査員の男がそう言いながら、由美を拘束した装置に電流を流すー。

「ーき… ぎゃああああああああああああああああ…!!!」
由美が悲鳴を上げると、はぁはぁと荒い息を吐き出しながら、
笑みを浮かべるー

「こ、この女も哀れなものねー
 ”同胞”に、こんな風に拷問されてー

 この女は、わたしに乗っ取られているだけなのにー」

笑みを浮かべる由美ー。

だが、容赦ない電流が流れて、由美は、ぜぇぜぇと息を吐き出したー。

「ーーーーー…わたしたちの星は未知のガスが地底より放出され始めて
 もう長くはもたないー
 だから、偶然、わたしたちの星にノコノコやってきたあなたたちの
 星を、侵略することにしたー」

由美を乗っ取っている宇宙人は、そう説明したー。

”宇宙は広すぎて”
生命が暮らせる惑星を見つけ出すことは難しいー

だが”相手からやって来てくれれば、別”ー。
地球の調査隊が、由美を乗っ取っている宇宙人の星にたどり着いたことで、
”地球と言う生命の住める星”の居場所を知られてしまったのだー。

「ーー他の7人は、どうなんだ?」
捜査員が、他の調査隊の隊員7人について尋ねるー。

だが、由美は最後まで口を割ることはなかったー。

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「ーーーくそっ!!!人間どもめ!」

調査隊の一人”田代”が、
宇宙対策特別捜査班に包囲されて、銃を手に表情を歪めていたー。

”くそっ!人間の身体じゃ、力を発揮できない”

そう考えた、田代を乗っ取っていた宇宙人は、
田代の皮を脱ぎ、銀色の宇宙人の姿で、捜査班に向かって
走っていくー。

凶悪な爪で、捜査員の命を一人、二人と奪っていく宇宙人ー。

だがー銃弾を浴び続けて、ついに田代を乗っ取っていた宇宙人は
その場に倒れ込んだー。

捜査員側の被害者は12名ー。
多くの犠牲者を出しながらも、田代を乗っ取っていた宇宙人を、
人類は駆除することに成功したー。

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「ーー何なんですか?いきなりー」
秀太は、怒りの形相で、突然家にやってきた捜査員に
対して、不満を口にしていたー

「ーあなたの彼女の山園 文香さんは宇宙人に乗っ取られている可能性がありますー」
捜査員のそんな言葉に、
部屋の方にいた文香が表情を歪めるー。

”ーー誰かがヘマしたのかー。くそっ”
文香を乗っ取っている宇宙人は、そう思いながらも、
笑顔で玄関の方に向かうー。

「それは、どういうことですか?」
何食わぬ顔でそう言い放つ文香ー。

「ーーあぁ、山園さんー。
 あなたたち調査隊8名のうち、4名が宇宙人に乗っ取られていることが
 判明しましたー
 何か事情を知らないかと思いまして」

捜査員の男が、そう言葉を言い放つと、
文香は笑みを浮かべるー。

「ーーそんな雰囲気は、ありませんでしたがー」
文香はあくまでも”人間”のフリをして、そう言い放つー。

捜査員の男は、なおも疑いの表情を浮かべながら
「山園さんー。”金谷”さんを乗っ取っていた宇宙人が、
 ”8人全員が我らの同胞だ”と自白したのですがー」
と、そう言葉を口にするー。

既に、交渉のエキスパートだった金谷と、もう一人の男性調査員は
捕縛はしているー。

だが、8人全員が同胞だと自白した、というのは嘘だー。
嘘で”文香”の本性をあぶり出そうとしたー。

がーー

「ーーふふふふっー。わたしは正気ですよ?」
文香が邪悪な笑みを浮かべながら言うー。

「ーそ、そうだよ!急にそんな疑うなんて、失礼ですよ!」
秀太も文香を庇うためにそう言い放つと、
男性調査員は、困惑した様子を浮かべながらも、
「念のため、ご同行いただけますか?」と、文香にそんな言葉を口にしたー

「ーーーまぁ、いいですよー」
文香は冷たい目でそう応じると、心配する秀太を他所に、
そのまま捜査員に連行されていったー。

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調査隊の隊長・倉本 勝義は、行方を晦ましたー。

捜査員たちは、勝義も乗っ取られていた、と断定し、
その行方を追うー。

同時に、現役女子大生で、最年少隊員だった梓もまた、
行方を晦ましていたー。

仲間が捕まったことに、危険を察知したのだろうー。

そうこうしているうちに、調査隊の男の一人を捕縛し、
残るは3人となったー。

隊長の勝義、女子大生の梓、そして文香ー。
政府は、”残りの3人も乗っ取られている”と、ほぼ断定していたー。

だがーー

「ーーー山園 文香は”シロ”ですねー。」
文香を連行した捜査員が、上司にそう報告するー。

「聞けば、惑星上陸時に、彼女は調査船・FULI内で待機していたらしくー、
 宇宙人とは、遭遇していないー、と」

捜査員のその報告に、上司は少し疑いの目を向けながらも
「そうかー…」と、静かに頷いたー。

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「ーーただいま」
文香が帰宅すると、秀太は「だ、大丈夫だったのかー?」と、
そんな言葉を口にするー。

「ーふふ、大丈夫大丈夫ー
 わたし、宇宙人になんか乗っ取られていないからー」

文香はそう言うと、自室に入り、
自分の胸を揉み始めるー。

「ークククク この人間の女の身体は、本当に便利だぜー」
邪悪な笑みを浮かべる文香ー

捜査員に連行された文香は、
捜査員の男を、自分の身体で誘惑したー。

色目を使い、捜査員の男を気持ちよくしてー、
身体を好き放題させてやったー

”これからもいくらでも会ってやる”と約束したところ、
捜査員の男は、”落ちた”ー。

文香はその時のことを思い出しながら

「あぁ、それにしても人間の女の身体って気持ちいいなー…」
と、ニヤニヤしながら、再び自分の身体にイヤらしい手つきで触れ始めたー。

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隊長だった倉本 勝義は山中に逃亡したものの、
途中で転落して負傷ー、
仕方がなく、勝義の身体を捨てて、
”中の宇宙人”は、逃亡したー。

その後も、梓・勝義の両名は発見できずー、
しかし、8人中5人を乗っ取っていた宇宙人を駆除、
文香に関しては乗っ取られてはいないー、
ということで、8人中6人の問題が解決した以上ー、
残る宇宙人には何もできまい、と、
人類側も油断し始めていたー。

「ーーはぁ… はぁ… はぁ…」
髪は伸び切り、まるで幽霊のように、
すっかり美貌を失ってしまった女子大生の梓は、
山の奥深くに潜み、まるで野生児のような
生活を送っていたー。

”梓本人”が今の自分の状況をもしも知ることができたのならー
酷く驚き、ショックを受けてしまうだろうー。

だが、乗っ取られている梓に、それを知るすべはないー。

「ーーはぁ、はぁ、人間どもめー
 どんなに汚れても、どんなに地べたを這いつくばってでも、
 この星は頂くからなぁ」

伸びきった髪を揺らしながら、梓はそのまま、
さらに山の奥深くに歩いていくー。

ひとまず、地球掌握の作戦は失敗ー。

だが、梓はチャンスを伺うため、
山奥に身を潜め、人類の追撃を逃れていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー倉本隊長を発見しましたー」

数日後ー。
調査隊の隊長であった”倉本 勝義”の遺体が発見されたー。

山中で、滑り落ちたような痕跡があり、
上層部は、倉本勝義を支配した宇宙人ごと死亡したものと判断したー。

がーー

実際にはーー

「ーーねぇねぇ、由香(ゆか)ちゃん、最近、
 なんだか考え事してること多くないー?」

近くの高校の女子高生が、帰り際にそんな言葉を呟くー。

そう声を掛けられた友達の”由香”は、
少しだけ微笑むと、
「そんなことないよ~」と、笑みを浮かべたー。

”クククー…いくらでも”人間”を乗り換えることができるー
 いくらでも、なー”

まさか、仲間のヘマで正体が露呈してしまうとは
夢にも思わなかったー。

だがー、
宇宙人は”身体を移動”できるー。

倉本勝義の身体を捨て、
この女子高生・由香の身体を手に入れたー。

しばらくは、”地球”の弱点をこの身体で探るとしようー。

由香はそう思いながら、
「ーーー”人間”もなかなか可愛いしな」
と、邪悪な笑みを浮かべると、自分の唇をペロリと舐めて、
静かに歩き出したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そしてーー

文香は秀太と”結婚”したー。
元々、宇宙の調査から帰ってきたら結婚しようと
約束していた二人ー。

文香は笑みを浮かべながら
”ウェディングドレスー…人間は不思議な生命体だなー”と、
ウェディングドレスを着て、幸せを感じることに、
文香を乗っ取っている宇宙人は不思議に思いつつもー、
”まぁ、今は”結婚ごっこ”をしてやろうー”と、笑みを浮かべるー。

”幸せいっぱい”と、いう風な”演技”をしながら、
結婚式当日の今日ー、文香は満面の笑みを浮かべていたー。

”何も知らない”秀太は、
文香が宇宙人に本当に乗っ取られているなどとは夢にも思わず、
文香との”幸せの瞬間”を噛みしめているー。

”ーーー人間どもに警戒されている以上ー、
 仕方がないー。
 当初の予定とは少し異なるがー、
 ジワジワと、この地球を支配してやるー”

文香はそう思いながら、周囲から見えない場所で
自分の指をペロリと舐めるー。

結婚した理由はー、
秀太が好きだからではないー。

”本当の文香”は、きっと、秀太という人間のことを
愛していたのだろうが、
今の文香にはー、宇宙人に乗っ取られてしまった文香には
秀太への愛など、微塵も存在しないー。

「ーーしかし、この人間の女ー
 なかなかしぶとい奴だったなー」

文香はそう呟くと、鏡に映るウェディングドレス姿の
自分を見つめるー。

宇宙から帰還して、秀太と最初に顔を合わせた時ー、
文香の身体がわずかに反応を示したー。
地球に帰還した時点で、既に文香を乗っ取ってから
半年が経過していたというのにー、
文香本人の意識と思われる反応が、
わずかにあったのだー

「ククク…それだけあの人間が好きだったってことかー」
文香はそう呟くと、邪悪な笑みを浮かべるー。

「ーーーまぁ、代わりにあの人間の子供も産んでやるから
 心配するなー」

文香は”鏡の中の文香”に語り掛けるー。

”乗っ取った人間の身体”で子を産むことで、
自分たち宇宙人のDNAを受け継いだ子供が生まれるー。

時間がかかるが、
そうして自分たちのDNAを人間の中に浸透させていけばー
やがて、内側から人類を乗っ取ることも可能だー。

人類側に”乗っ取り”が察知された以上は仕方がないー。
他の残っている仲間たちも、上手くそれぞれ潜伏して、
それぞれの方法で地球の支配を狙っているー。

焦ることはないー。
故郷の星の滅びは近いが、
それでも、まだ、ある程度の時間はあるー。

「ーーふふふふー
 あの”夫”が気付きかけたとしても、
 この身体で誘惑すれば簡単に落とせるだろうしー」

後頭部のあたりを触りながら、
”文香の皮”をちゃんと着ることができていることを
改めて確認すると、
不気味な笑みを浮かべながら、文香は静かに歩き出したー。

おわり

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コメント

宇宙人に調査隊が皮にされてしまうお話でした~!★

いつか、秀太が異変に気付く日も
来るのかもしれませんネ~!

お読み下さりありがとうございました~!

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