<皮>帰還した侵略者②~悲劇~

1年間に及ぶ調査を終え、
宇宙から帰還した調査隊の8人ー。

しかし、既に8人は宇宙人に皮にされ、乗っ取られているー。

そのことに気付かぬまま、8人による”侵略”は続いていくー。

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半年前ー。

文香たち8人が宇宙に飛び立って半年ほどのタイミングで、
宇宙船・FUJIは未知の惑星を発見していたー。

「ーー大気の条件も、人間が生活できるレベルですー」
調査隊員の一人、”環境”の分析などのエキスパートである
由美(ゆみ)が、そんな言葉を口にすると、
隊長の勝義は、希望に満ちた表情を浮かべたー。

ついに、人類は”地球”に続く第2の故郷を手に入れることが
できるかもしれないー。

もしも、本当にこの惑星に移住可能ということに
なれば、大発見だー。

「ーよし、俺と田代(たしろ)、金谷(かなや)が先行して
 惑星に上陸ー。
 君は安全が確認でき次第、後から上陸してくれー」

隊長の勝義が、戦闘のエキスパートである男性隊員・田代と、
交渉のエキスパートである男性隊員・金谷にそう指示をするー。

そして、環境分析のエキスパート・由美には
安全が確認でき次第、後から地上に上陸するように指示をしたー。

「ーこちらとの通信は、わたしがー」
現役女子大生でオペレーター的役割で調査隊に参加した梓が言うー。

秀太の彼女である文香は、
医療スタッフとして宇宙船の方に待機することになり、
発見した惑星に上陸する4人を見送ったー。

だがー…

「ーーーー…隊長!6時の方向に生体反応ー」
戦闘のエキスパート・田代がそう言うと、
銃を手に、そちらの方向へと向けるー。

「ーこの星の生命体かもしれないわねー。
 相手が知的生命体だった場合は、
 話し合いができるかもしれないー。

 いきなり露骨に銃を構えるのは、危険よ」

由美がそう言うと、田代は「確かに、それもそうだなー」と、
銃は下ろしたまま、警戒の準備をするー。

隊長の勝義と、金谷も、”6時の方向”を見つめるー。

がーー
そこから姿を現したのはー
人型の銀色の生命体ー。
サイボーグのようにも見えるその生命体には、
”顔”から表情が全く読み取ることができず、
人類からしてみれば”恐怖”すら感じる雰囲気だったー。

「ーーー…初めましてー。我々は、他の星からやってきた者ですー
 あなたたちと争うつもりはありません」

交渉のエキスパートである金谷が、
”言葉が相手に通じるか不明”のため、身振り手振りを使いながら
宇宙人と意思疎通を図ろうとするー。

しかしーー
突然、銀色の宇宙人は、金谷の頭を掴むとー、
金谷は悲鳴を上げ始めたー

「ーおい!金谷さんを離せ!」
田代が持っていた銃を構えるー。

が、足をじたばたさせていた金谷は、みるみるうちに
”ペラペラ”になっていき、そのまま”脱がれた着ぐるみ”のように
地面へと放り投げられたー

「ーーくっ…貴様!」
”仲間が殺された”そう思った田代が銃弾を宇宙人に放つー。

だが、その時、
背後から女性の悲鳴ー…由美の悲鳴が聞こえたー

「ぁ… ぁ…」
背後から出現した別の宇宙人に”皮”にされてしまった
由美は、そのままその場に崩れ落ちるー

「くそっ!交戦許可!」
隊長の勝義がそう叫びながら、銃を手にするー。

けれどー
銃弾は宇宙人たちにそれほどダメージを与えている様子はなくー、
やがて、宇宙人たちは地面に放り投げられていた
金谷と由美の”皮”を手にすると、
それを着こみ始めたー。

「ーーな、何をしている!?」
田代が困惑しながら、銃を”由美”に向けるー。

「ーーふふふ…人間ー…
 わたしを、撃てるの?」

由美が、ニヤリと笑うー。

「ーな…… な…なんだ…これはー?」

宇宙人たちが”皮にされた人間”を着て、
それを乗っ取る光景を目の当たりにした
隊長の勝義と隊員の田代は困惑の表情を浮かべるー。

「ー撃てるものなら、撃ってご覧?」
乗っ取られた由美が笑いながら近づいてくるー。

「くっ…め、目を覚ませ!」
田代がそう言い放つも、皮にされて着られてしまった
由美に、そんな言葉は届かずー、
やがて、乗っ取られた由美に突然”キス”をされた田代は、
他の二人と同じように”皮”になってしまったー。

隊長の勝義は、宇宙船に緊急連絡を入れようとするー。
だがー、妨害電波が発されていて、連絡をすることもできぬまま、
そのまま”皮”にされてしまったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

30分後ー、
待機していた宇宙船・FUJIに勝義ら4人が帰還したー。

当然”偽物”なども警戒し、
”本人”と生体情報が一致しなかった場合、
宇宙船には搭乗することのできない
”セキュリティ”が施されている。

しかし、4人を乗っ取った宇宙人たちは、
”人間の身体”を着ることで、これを簡単に突破したー。

「ーーあ、由美さんー、お帰りなさいー。
 どうでしたか?」

秀太の彼女である文香も、何の疑問も抱かずに、
由美にそんな言葉を掛けるー。

「ーふふふーーとっても”収穫”があったわ」
由美が、そんな言葉を口にするー。

「ーーーよかったー
 もしかしたら、この星に本当に、移住できるようになるかもしれませんねー」
文香が嬉しそうにそんな言葉を口にするー。

「ーーえぇ。”とっても簡単に侵略できそうな星”があると知ることができてー
 本当に、大収穫よー」

由美のそんな言葉に、文香は表情を曇らせるー。

由美を乗っ取った宇宙人は、
”地球”のことを、とっても簡単に侵略できそうな星”と表現したー。
由美を乗っ取り、由美から地球のことを引き出した宇宙人は、
”地球”の支配を簡単だと、判断したのだー。

だが、文香は”目の前の未知の星を侵略して、地球のものにしよう”と、
由美が言っているのだと勘違いし、
困惑した表情で言葉を口にしたー

「し、侵略ってー…他の生命体が先にいる惑星では
 侵略行為は禁止されているはずですがー」

文香がそう言い放つと、
由美は声をあげて笑い始めたー

「ーーえ…?」
文香が、”由美の様子がおかしい”と確信し、後ずさるー

「ー人間は愚かねー?
 侵略されるのは、あなたたちの星のほうー。
 わざわざのこのことやってきて、”場所”を教えてくれるなんてー、
 本当に、おバカさんー」

そう言い放つと、由美の顔が真っ二つに割れて、
中から”銀色の宇宙人”が姿を現したー

「ーーひっ!?!?ゆ、由美さんー!?」
文香が青ざめた表情で”由美の顔だけを脱いだ宇宙人”を見つめるー。

”きゃあああああああああああああああっ!”

宇宙船の別の部屋から悲鳴が響くー。
今の悲鳴は、女子大生の梓の声だー。

文香は困惑しながら、由美の方を見つめると、
由美を再び、完全に着込んだ宇宙人は笑ったー

「人間ー。これからあなたも、”侵略者”になるのー。
 わたしたちに、支配されて、ねー?」

由美のそんな言葉に、文香は逃げ出そうとするー。

がー、由美に抱き着かれて、そのままキスをされてしまった文香は、
涙を流しながら”秀太ー…”と、大好きな彼氏のことを想いながら
そのまま、”皮”にされてしまったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーねぇ、お願いがあるの♡」

そして、今ー
乗っ取られた文香は、”ターゲット”をその身体で誘惑していたー。

彼氏の秀太が見たこともないような
妖艶な格好、妖艶な表情を見せながら
甘い声で、ターゲットの男に囁くー

「ーーえ、えへへへー…
 ふ、文香ちゃんの頼みならー」

宇宙センターの”偉い人”であるその男は
ニヤニヤしながらそう呟くー。

「ーふふ♡ ありがとうございますー」
文香は、そう言い放つと、その男にキスをして、
さらに、その男を忠実な”しもべ”へと仕立てていくー。

文香が”そんなことをしている”とは夢にも思わずにー、
文香に飲まされた睡眠薬によって、秀太は自宅で熟睡している最中だったー。

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「ーーーーーーー」

文香は、”本”を逆さまにして読んでいたー。
文香を皮にして乗っ取っている宇宙人は、
人間よりも高度な能力を持つ生命体ー。

文字が上下逆さだとしても、簡単に脳で補正し、
普通に読むことができるため、
逆さに持っていても”直す”必要がないのだー。

「ーーーーー……なに?」
そんな文香が、秀太に気付いて、不思議そうな表情を浮かべるー

「い…いや…
 そのー…… 本が逆さだと思ってー」
少し戸惑いながら、秀太が文香の読んでいる本が
逆さ向きであることを指摘すると、
文香は「あ?あれ?あはっ!あははははははっ」と、
笑って誤魔化しながら「普通に読めてたから気付かなかったぁ」と、
そんな言い訳をし始めたー。

”文香ー…”
秀太は、心配そうにそんな文香のほうを見つめるー。

”ーやっぱ1年も宇宙にいると、疲れるんだろうなー”
まさか、宇宙人に彼女が乗っ取られているなどとは
夢にも思っていない秀太は、内心でそんなことを思いながら、
静かに言葉を口にしたー。

そしてー
夜になると、文香は、再び秀太に睡眠薬を盛って
眠らせると、邪悪な笑みを浮かべながら、
そのまま外へと歩いていくー。

今日も”この女の身体”を利用して、
ターゲットを誘惑して、手駒にするためにー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

宇宙人たちの侵略行為は続いたー。

戦闘担当だった”田代”を乗っ取った宇宙人は、
田代の身体で、次々と人間を皮にして、
そのまま”処分”していたー。

皮にして処分すれば、世間では”行方不明”扱いになり、
遺体が見つかることはないためだー。

交渉担当だった”金谷”を乗っ取った宇宙人は、
各宇宙人との連絡や作戦の立案を考案ー。
さらには、”影響力の強い人間”の身体を乗っ取るために、
その機会を伺っていたー。

だがー
その最中ー…。

「ーー!!!!!!!!」
乗っ取られた8人のうちの一人、由美の妹が、
”姉”の異変に気付いたー

「ーお…お姉ちゃんー…宇宙から帰ってきてからー…
 なんか、変だよー」

由美の妹・春枝(はるえ)がそんな言葉を口にすると、
由美はクスクスと笑いながら「変ってー?」と、
そんな言葉を口にするー。

「ーーーーだ、だって、この前だって、
 なんか”地球を侵略する”とか変なこと、一人で喋ってたしー」
春枝が不安そうにそう叫ぶと、
由美は表情を歪めたー

”ー気付かれたのならー…消すしかないわね
 もう少し”人間の姉妹”を堪能したかったけれどー”

由美を支配している宇宙人は、そんな言葉を心の中で口にすると、
笑いながら自分の後頭部に手を触れーー、
そしてーー

「ーーーきゃああああああああああああっ!?!?!?」
春枝は、あまりの光景に悲鳴を上げるー。

姉・由美が”自分の頭を引き裂くようにして”
”皮”を脱ぐと、中から女性型の銀色の宇宙人が出現したー。

「ーーーーーー」
”銀色の宇宙人”は、人間の言葉を発することができないのか、
まだ着たままの由美の手を使って、”あなたも、お姉ちゃんと
同じにしてあげる”と紙に書いて笑みを浮かべたー。

「ーーー…や、やめて…!
 やめて!」

逃げようとする春枝ー。

しかし、春枝は宇宙人に追い詰められて、
そのまま”皮”にされてしまったー。

床に横たわる春枝のスマホー。

「ーーふふふふふ…妹の皮は、始末しておきましょ」
再び、由美の皮を着ると、
何の躊躇もなく、”妹の皮”を、ハサミで引き裂いていき、
そのままゴミ箱に放り投げる由美ー。

だがーー…
”由美”を支配している宇宙人は、”失敗”したー。

春枝は、”お姉ちゃん、最近変だよー”と、問い詰める直前にー、
”動画の配信”をスマホでスタートさせていたー

趣味で動画を配信している春枝が、
”最近、様子のおかしいお姉ちゃんに、理由を聞いてみた”
というタイトルで、”ライブ”配信していたのだー。

それに気づかなかった由美はー、
いや、由美を乗っ取っている宇宙人は、”全世界”に
自分が皮を脱ぐ瞬間や、銀色の宇宙人としての姿を晒してしまったー。

やがてー、
それは広がりー…、
世間では、混乱が広がりつつあったー。

③へ続く

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コメント

宇宙人が、帰還した8人を乗っ取っていることが発覚…!?

次回が最終回デス~!
どんな結末になるのか、ぜひ見届けて下さいネ~!

皮<帰還した侵略者>
憑依空間NEO

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