<入れ替わり>僕は元に戻りたくない①~光る石~

”明るいお姉ちゃん”と”暗い弟”の入れ替わりー。

入れ替わってしまった二人は、
元に戻る方法にたどり着くもー、
そこで、弟が…?

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「ーーーーーーー」
男子高校生の今里 栄太(いまざと えいた)は
無口で気弱な性格の持ち主ー

幸い、”いじめ”は受けてはいないものの、
学校に友達はおらず、常に孤立しているような、
そんな日常を送っているー。

晩御飯を終えて、部屋でネットを眺めていた栄太ー。

そんな栄太の部屋をノックする音が聞こえて来て、
栄太は振り返りながら「ーーいいよ」と、返事をすると、
部屋に中に栄太の姉で、同じく高校生の
今里 麗奈(いまざと れいな)が部屋の中に入って来たー。

「ーー栄太~!さっき借りたやつ、返すね!
 まだインクあるのに、わたしのボールペン、急にでなくなっちゃってー」
そう言いながらボールペンを栄太に手渡す麗奈ー。

「ーあ、うんー。別に今は使わないからしばらく持っててもいいけどー…」
栄太が暗い表情でそう答えると、
麗奈は「ありがと!でももう大丈夫」と、笑いながら
栄太の机の上のペン立てにボールペンを置いたーー。

「ーーー」
栄太は、その様子を確認すると、読んでいる最中だった漫画の方に
視線を向けたー。

「ーーーー」
栄太と麗奈は”正反対”の性格の持ち主ー

姉の麗奈は明るく、社交的で友達も多いそんなタイプで、
弟の栄太は対照的に暗く、人付き合いが苦手で友達も少ないタイプー。

容姿の面でもそうで、
麗奈は”美少女”と称するにふさわしいとても可愛らしい風貌持ち主で、
弟の栄太は正反対に、お世辞にも”イケメン”とは言えないような
”顔だけ”で勝負した場合、”モテ”とは程遠い、そんな顔立ちだったー。
その上、性格も暗いために当然、彼女や友達はいないー。

とは言えー、
二人の仲は悪くなく、むしろ”仲良しな姉と弟”と言っても良いー。

姉の麗奈の方が弟の栄太のことをとても可愛がっていることもあり、
常に何かと気遣っていて、積極的に話しかけているー。

それ故に、栄太も姉の麗奈には心を開いている状態で、
姉弟仲は良い状態だー。

仮に、麗奈が栄太に対して”あんたキモい”みたいなタイプの
お姉ちゃんであった場合、姉弟仲は”最悪”だっただろうけれど、
幸い、麗奈は見た目だけではなく、中身も兼ね備えているタイプで、
弟の栄太のことも”キモい”などとは微塵も思っていなかったー。

「ーーーーあ、これ可愛い~ 新しく買ったの?」
麗奈が、弟の部屋に飾られている美少女フィギュアを見て微笑むと、
栄太は「あ、う、うんー」と、恥ずかしそうに頷くー。

イヤな顔一つせずに、麗奈は興味深そうにそれを見つめながら
「ーこの子、名前はなんて言うのー?
 あ、言いたくなかったらいいけどー」と、優しく言葉を口にするー。

”自分の趣味”の話をする相手もいない栄太にとっては
姉の麗奈が数少ない話し相手ー。
嬉しそうに、麗奈が興味を示してくれた美少女フィギュアの
キャラクターについて説明を始める栄太ー。

「ーーへ~そうなんだ~!それでどうなったの~?」
麗奈は、”おそらく本当は興味がないであろう話”を、
栄太が飽きるまでいつも聞いてくれて、
それだけではなく、質問まで返してきたりしてくれるー。

もちろん、話したくないことは深堀してこないし、
”本当に同じ親から生まれたのかな”と、思ってしまうぐらいに
人間が出来ているー、と栄太から見れば感じずにはいられなかったー。

「ーーあ、この前教えてくれた、明日香ちゃんの友達なんだね~」
麗奈はそう言いながら、栄太が少し前に新しく購入した
美少女フィギュアを見つめながら微笑むー。

栄太も、最初は”姉さんは、僕のために無理に興味のない話を聞いてくれている”と、
そう思っていたけれどー、
姉の麗奈は”前にした話”やキャラクターの名前もしっかりと
覚えてくれていて”本当は興味がないけど話を聞いてあげている”と、
まるで感じさせないー、そんな優しさもあったー。

恐らくはー…
”姉さんは、こういうものに全く興味はない”
ということは分かっているー。

けれどー、
それでもこうして興味深そうに話を聞いてくれて
”本当は興味がない”と感じさせないような振る舞いをしてくれていることは、
栄太にとっては本当にうれしいことだったー。

「ーーあ、ごめんね。長居しちゃって」
麗奈が、栄太が”漫画を読んでいる途中”であったことに気付き、
そう言いながら微笑むと、
「続き、楽しんで」と、漫画のほうを見つめながらそう言い放ったー

「ーうんーぼ、僕の方こそ、話を聞いてくれてありがとうー」
栄太がそうお礼を口にすると、
麗奈は「また聞かせてね」と、言いながら
自分の部屋へと戻って行ったー。

「ーーーー」
再び、漫画を読み始める栄太ー。

”僕と血が繋がってるなんて、本当に信じられないなぁ…”
栄太は、心の中でそんなことを思いながら
読んでいた漫画の続きに目を向けたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その翌日のことだったー。

「ーーえ~?ホントに?大変だったね~!」
麗奈が、友達の麻耶(まや)と一緒に帰りながら
そんな言葉を口にするー。

「ホントだよ~!あの後輩くん、ドジすぎ~!」
麻耶が笑いながらそう言い放つー。

どうやら、麗奈の友達・麻耶が麗奈に何かを
愚痴っているようだー。

その後も色々な話をしながら、
家に向かって歩き続ける二人ー。

だがー、
その時だったー。

「ーーねぇ、あれなに?」
麻耶が、自分たちの歩いている方向を見つめながら
指を指すー。

そこには、不思議な虹色の”石”のようなものが落ちていたー。

「ーーーわ!綺麗…なんだろう?」
麗奈がそう言いながら近づいていき、その場にしゃがむと、
その石を見つめながら
「ーこれ、石かな?すごい色してるけどー…」と、
不思議そうに言葉を口にするー。

「ーーさぁ…でも確かにあまり見ない色だね」
麻耶がそう言うと、
麗奈は「せっかくだから、記念に持って帰ろうかなー」と、笑うー。

もちろん、普段の麗奈に落ちている物を拾って持ち帰るような
趣味はないものの、
そんな麗奈も、そうしたくなってしまうぐらいに、
不思議な綺麗な石だったー。

「ーーあははは、ちゃんと洗っておきなよー?汚いかもしれないし」
麻耶が、麗奈に対して”持ち帰ったらちゃんと洗うように”と、
そんな言葉を口にすると、
麗奈は「分かってるよ~」と笑いながら、その綺麗な石を見つめたー。

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帰宅後ー、
麗奈は、その石を綺麗に洗い、
自分の部屋で見つめていたー。

「ーーすっごくキレイー…
 でも、これ、何なんだろうー?」

そう思いながら、スマホで
”カラフルな石”
”虹色の石”みたいなワードを入れて
探してみるー。

しかしー、
自分が拾った”虹色の石”に当てはまるような情報はなく、
その正体は分からずじまいー。

麗奈も首を傾げながら、
不思議そうにその石を見つめたー。

「ーあ、そうだ!栄太なら知ってるかな~?」
麗奈はそんな風に思いながら、栄太の部屋へと向かうー。

弟の栄太は”豊富な知識”も長所のひとつだー。

”僕にいいところなんて、何もないよー”
と、いつもネガティブな発言を繰り返す栄太に対して、
麗奈はことあるごとに
”栄太、何でも知ってるし、物知りでしょ?”などと
言葉を掛けながら励ましているー。

お世辞ではなく、
実際に栄太は結構なんでも知ってるのだー。

弟の部屋をノックする麗奈ー。
いつものように中から返事が聞こえてくると
「あ、お姉ちゃんだけど、ちょっと聞きたいことがあってー」と、
先程拾った虹色の石を、弟の栄太の前に置いて、
”これ、帰り道で拾ったんだけど、なんだかわかるかな…?”と、
言葉を口にするー。

栄太が虹色の石を見つめながら
「ーーう~ん…」と不思議そうにそれを見つめるー。

世の中には”カラフルな石”もそれなりにあるものの、
こんな、虹色のような石は、栄太も見たことはないー。

「ーーー栄太なら、知ってるかなって思ってー」
麗奈がそう言うと、栄太は「見たことないなぁ…」と、
申し訳なさそうに言葉を口にするー。

だが、その時だったー。
突然、虹色の石が光を発し始めるー。

「えっ!?な、なにこれー?!」
自分の持っている虹色の石が突然光り出したことに
驚きの表情を浮かべる栄太ー。

麗奈はすぐに「て、手を放して!」と栄太の身を案じて
そう叫ぶも、その光はさらに強くなりー、
やがて、麗奈と栄太の二人は、その光に包まれてしまったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーぅ…」
しばらくして、光に包まれていた栄太の部屋は、
いつも通りの”静寂”を取り戻していたー。

「ーーえ、栄太!?」
意識を取り戻すと同時に、麗奈が叫びながら
周囲を見渡すーーー…

…いやーー
”栄太!?”と心配そうに叫んでいるのは
姉の麗奈ではなく、栄太自身だったー

「ーーーー!?!?!?!?!?」
その声に、衝撃を受けながら
自分の手を見つめー、そして、窓に反射する自分の姿を見つめると、
栄太は困惑の表情を浮かべたー

「ーーーえ…???栄太…?」
自分の姿を見て、驚く栄太ー。

それも、そのはずー。
何故ならー…

「ーーね、姉さんー…?」
困惑の表情を浮かべながら、意識を取り戻した麗奈が
そう言い放つー。

「ーーえ、栄太ー?」

「姉さん…?」

栄太と麗奈が、お互いに相手を指差しながら
”自分の名前”を口にするー。

そう、二人はー
虹色の石が発した謎の光によって
入れ替わってしまったのだったー。

「ーーーーわたしが栄太で、
 栄太がわたしになった…ってことだよねー…」

ようやく落ち着いた二人ー。
栄太(麗奈)がそう言葉を口にすると、
麗奈(栄太)は「う…うんー」と、ソワソワした様子で、
目をキョロキョロとさせているー。

「ど、どうしたのー?」
栄太(麗奈)が言うと、
麗奈(栄太)は、チラッと窓のほうを見て、
反射する自分の姿にドキッとしてしまうー。

恋愛経験もない栄太からしてみれば、
”可愛いお姉ちゃん”と入れ替わってしまう、ということは、
あまりにも刺激の強い出来事だったー。

「ーーえ…そ、その…ぼ、僕が姉さんにー…」
麗奈(栄太)がそう言うと、
口から”姉さんの声”が出ていることにも耐えられないのか、
口を閉ざしてしまったー

「ーあはは…そんなに気にしなくていいのに、姉弟なんだしー」
栄太(麗奈)がそんな言葉を口にするー。

流石に急に目の前で胸を揉まれたりすれば
”ちょ!?ちょっと!?”となるかもしれないけれど、
そういったことさえなければ、栄太(麗奈)は
別に弟と入れ替わってしまったことに”嫌悪”のような感情はないー。

「でも、どうして急にこんなことにー?」
栄太(麗奈)がそう言うと、
麗奈(栄太)は「ーー姉さんが持って来た、石じゃないかな?」と
言葉を口にするー。

また、”姉さん”の声で喋ってしまったことに
ドキドキして口を閉じるような仕草をする
麗奈(栄太)を見て、栄太(麗奈)は、思わず苦笑いしながら
「だ、大丈夫だってばー」と、笑うー。

確かに、あの虹色の石が突然、
光を発して、その結果、こんな状態になっているー。

栄太の言う通り、”あの石”に何か原因があると考えるのが
妥当だろうー。

「ーーーー…ごめんねーー…わたしの拾ってきた石のせいでー」
栄太(麗奈)が申し訳なさそうにそんな言葉を口にすると、
「ーね、ね、姉さんは悪くないよー」と、麗奈(栄太)は
姉を庇うような言葉を口にしたー。

”人間としてのレベル”が何もかも違うー
少なくとも、栄太は姉の麗奈のことをそう思っているー。

そんな”麗奈”の身体になってしまった栄太は
恥ずかしそうに自分の身体を見つめては、目を逸らしたー。

二人は、虹色の石を手に、色々試してみるもー、
さっきのような”光”が発されることはなくー、
やがてー、トイレにお風呂にドタバタしながら
翌日を迎えてしまいー、
お互いに相手の身体で、学校に行くことになってしまったー…

②へ続く

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コメント

午前中に告知した通り
更新時間がいつもより遅くなってしまい申し訳ありませんでした~!

ついにコロナに捕まってしまったので
体調が安定するまで、ちょっと休んで、こうして無事に執筆できました…★笑

明日以降も、更新自体は行いますが、更新時間が少し遅れたりすることは
あるかもなので、許してくださいネ~!

皆様も体調管理にはお気をつけて~!

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