<MC>イライラカノジョ③~怒りの先に~(完)

”洗脳”により、常にイライラしている状態に
なってしまった彼女。

彼氏もようやく、その異変の元凶に
たどり着こうとしていたー。

しかし…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「今、優香に何をしてたんですか!?」
勝馬が、彼女の優香に”赤いライト”を照らしていた
浪口先輩を捕まえてそう叫ぶー

浪口先輩の手から赤いライトが零れ落ちたのを
確認すると、勝馬は浪口先輩を逃がさないようにしつつ、
それを拾うー

「これは一体、何なんですか!」
勝馬がそう叫ぶと、
「ーー言えない」と、浪口先輩は口を閉ざすー。

「ーふ、ふざけないでください!
 優香にこれを当てましたよね!?
 一体、優香に何をするつもりだったんですか!」

勝馬のその言葉に、浪口先輩は「黙秘するー」と、
だけ答えるー。

勝馬はカッとなって「優香に何をした!」と、叫ぶとー、
浪口先輩は、突然勝馬に蹴りを加えて来たー。

「おい!待て!」
不意打ちされた勝馬は、そのまま逃げだす浪口先輩を
追いかけ始めるー。

そんな時だったー

「ーーきゃっ!?!?」
曲がり角から出て来た女子生徒と盛大に接触してしまいー、
その女子生徒が転倒してしまったのを見て、
勝馬は”くそっー!”と浪口先輩の後ろ姿を見つめつつもー、
ぶつかってしまった子を放っておくことはできず、
手を差し伸べるー。

「ーごめんー」
勝馬がそう言うと、顔を上げたその子は
幼馴染の麻衣だったー

「いった~~~…
 廊下は走っちゃだめでしょ!」
頬を含ませながらそう言う麻衣ー。

「ーって、ま、麻衣かー
 ご、ごめんー
 実はー」

勝馬はすぐに事情を説明すると、麻衣は驚きながらも
「え、じ、じゃあ、わたしのせいで、その浪口先輩を逃がしちゃったの!?」と、
逆に申し訳なさそうに言葉を口にしたー。

「ーーーいや、麻衣が謝る必要はないよー。
 それにー…」

勝馬はそう言いながら、浪口先輩が逃げたほうを見つめるー。

”アイツが、優香に何かしていたー”

優香が最近、妙にイライラしていることに
何か関係がある可能性は高いー。

それにー

「ーーこのライトを、浪口先輩が優香にあててたんだー」

そう言いながら、勝馬は浪口先輩が落とした
”赤いライト”を手にするー。

「ーー…それはー?」
麻衣が不思議そうに首を傾げると、
「分からないー…でも、何か嫌な感じがするー」と、
その赤いライトを見つめたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー。

「ーーー邪魔だって言ってるでしょ!どいて!」
優香の状況は変わらずー。

自分の座席の近くに立っていた他の女子を罵倒すると、
「ームカつく!」と、一人で言い放ちながら
教科書を乱暴に机の上に置くー。

そんな優香の様子に、周囲は委縮してしまっているー。

今日は、”さらに”優香が苛立っている気がするー。

「ーーーー」
勝馬は昨日、回収したライトを見つめるー。

そこには
「0」「1」「2」「3」「4」「5」と数字が書かれた
ボリューム調節のようなバーが存在していて
バーは拾った時点で”3”の位置に合わさっていたー。

”5”の横には何だか分からないがドクロマークのようなものが
ついていて、かなり”嫌な感じ”がするー。

「ーーーーーー」
勝馬はそのライトをじっと見つめるー。

これは”何”なのかー。
赤い小さなライトー。
その本体の部分には”怒り”を示すような炎のマークが
小さく刻まれているー。

ーーそんなことはあるはずがないー。
だが、もしかしたらー?

と、そんな風にも思うー。

このライトのせいで、優香がイライラしているとすればー?

勝馬はそう思いながら、イライラしている優香を見つめるー。

がー、
まずは”浪口先輩”に話を聞くのが先だー。

そう思いつつ、休み時間に浪口先輩のいる3年生の教室に向かうー。

しかしーーー…

「ー浪口くんは、今日は休みだよ?」
知り合いの先輩に浪口先輩のことを聞くと、そんな返事が返って来たー。

「わ、分かりましたー。ありがとうございますー」
勝馬は”逃げたのかー?”と、思いつつ、
戸惑っていると、翌日ー
”浪口先輩”は自殺したことを聞かされたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

まさか、浪口先輩が”自殺”するなんてー。

そんな戸惑いを覚えながら、
”また”手がかりを失ってしまった勝馬ー。

勝馬は意を決して、優香を呼び出すと、
「わたしは忙しいんだけど!」とキレ気味にやってきた優香に対しー、
”赤いライト”を照らしたーーー

調節を”0”に合わせた状態でー。

すると、優香は目を見開いてー
「あ…あれ…わ、わたしー…?」と、
戸惑いの表情を浮かべるー。

「ーーゆ、優香ー?」
勝馬が戸惑いながら優香に声を掛けるとー、
「ーーわ、わたし…ーーなんか…ーーー」
と、怯えた表情を浮かべるー。

「ーーご、ごめんー……
 なんか最近のわたし、変だったよねー…」
優香が申し訳なさそうな表情で言葉を口にするー。

優香が”元に戻ったー”
勝馬はそう確信すると、
会話の内容から”今までのことは覚えている”ことも悟るー。

「ー本当にごめんねー…
 なんか…何を見てもイラッとしちゃってー…
 みんなにも、迷惑かけちゃったよね…」

落ち込む優香ー。

勝馬は「そんなことないよー。それに、多分、このライトのせいだー」
と、赤いライトを優香に見せつけるー。

優香は戸惑った様子で「そ、そういえば浪口先輩がわたしにこれをー」と、
言葉を口にするー。

勝馬は「浪口先輩と、何かトラブルでもあったのか?」と確認するも、
優香は首を横に振るー。

そもそも、浪口先輩とはほとんど接点もなくー、
恨まれるような理由も思い当たらない、とー。

「ーーじゃあ、いったいどうしてこんな危ないライトでー…」
勝馬がそう言葉を口にしたその時だったー。

優香と勝馬がいる”放課後の図書室”の扉が突然開きー、
そこに幼馴染の麻衣が入って来たー

「ーーあ、麻衣ー」
勝馬がそう声を掛けると同時に、麻衣は「やっほ~!」と笑いながらー、
優香に突然、”黄”のライトを照らしたー。

洗脳装置”キ・ド・アイ・ラク”
黄色のライトは、”喜”の感情を洗脳により増幅させるものー。
”調節”の数字を”5”ーードクロマークがついた最大レベルに設定して
麻衣は優香にそれを照らしたー。

狂ったように笑い始める優香ー。

「ゆ、優香ー!?」
勝馬がそう叫ぶと、
麻衣は、黄色・青・緑・黒のライトを4つ手にして笑みを浮かべたー。

「赤は怒りー、黄は喜びー、緑は楽しいー、青は哀しみー」
そう言うと、”洗脳装置キ・ド・アイ・ラク”を手に、
麻衣は「優香をイライラさせていたのは、わたしー!」と、嬉しそうに語ったー

「な… な… なんで!?」
勝馬がそう叫ぶと、
麻衣は笑うー

「わたし、勝馬のことず~っとずっと好きだったのに、
 勝馬はわたしのこと”性別・幼馴染”としてしか見てないしぃ?
 彼女作っちゃうしー。
 だから、彼女をイライラさせて関係を引き裂いて
 わたしが彼女になろうとしたのに!」

麻衣はそう言うと、
「この黒いライトはねー、相手を言いなりにすることができる特殊なライトー。
 これで、浪口先輩を洗脳して利用してたのー」と、笑ったー

「ー…ーーー!」
勝馬は青ざめた表情で麻衣を見るー。

勝馬が何を言いたいのか察した様子で麻衣は笑うと、
「ーそうそう!自殺させることだってできちゃうんだよ!
 優香ちゃんでも試してみる?」と、笑みを浮かべたー

「や…やめろおおお!!!」
笑い続ける優香を見ながら、勝馬が麻衣の方に向かっていくと、
麻衣は”緑”のライトをレベル5にして、勝馬に照らすー

「ーはーいはいはい!楽しいね!リラックスリラックス!」
麻衣の言葉に、勝馬は穏やかな気持ちになって、
「ーーははは」と、笑うー。

「ーふふふふふふー」
狂ったように喜んでいる優香と、
リラックスしきっている勝馬を見つめながら、
麻衣は笑うー。

「ーーーーねぇねぇ優香ちゃんー」
麻衣は、笑っている優香のほうを見つめると、
「ーーどうしてそんなに笑ってるの~?」と、バカにした様子で言うー。

”レベル5”はドクロマークが示す通り”危険”なレベルー。
その感情が限界まで引き出されて日常生活を送ることも
出来ない状態になるー

「あはっ…あはっ!あはははははははははははっ!」
髪を振り乱しながら笑う優香を見て、
麻衣は「楽にしてあげるー」と、微笑むと、
”青”のライトを照らそうとするー

”哀”の感情を引き出すライトー
これをレベル5に設定してー、洗脳すれば
優香はきっと、自殺するだろうー。

そう思いながら、それを照らそうとしたその時だったー。

「ーー!?!?」
腕を掴まれた麻衣が驚くー。

”楽”の洗脳を受けたはずの勝馬が、麻衣の手を掴み、
青いライトを叩きつけて、床に落下させるー。

「ーえっ!?なんで!」
麻衣が驚きながら、咄嗟に”黄”ー
喜のライトを向けようとするも、勝馬はそれよりも早くー
落下した青いライトを麻衣に向けたー。

”哀”のレベル5-。
ライトに洗脳された麻衣は、途端にその場に泣き崩れるー。

「どうせ、どうせ、わたしなんて!」
と、泣き叫ぶ麻衣ー。

「ーーーーライトのせいだって分かってりゃー、目を閉じてりゃいいー」
洗脳されたフリをしていた勝馬はそう言うと、
麻衣は「ーーわたしは…わたしは!」と、その場に泣き崩れたまま
子供のように泣き続けるー。

「ーーーーーーーー」
そんな泣き続ける麻衣を見て、勝馬は悲しそうに麻衣を見つめるー。
麻衣のことは確かに異性としては見ていなかったー。
が、それでも大切な幼馴染だったし、
優香にこんなことをした黒幕が、麻衣だったとなると、そのショックは大きいー

「ーあはっ!泣いてる…!あはははっ!あははははははっ!」
笑い狂う優香を見て、”早く元に戻してあげないと”と、そう思いながら
優香に照らされた”黄”のライトを”0”に設定して
優香に照らしたー

笑っていた優香が「あ…わ、わたしー…」と、怯えた表情を浮かべるー。

「ーもう、大丈夫ー」
勝馬がそう言うと、麻衣が落とした”赤”以外の4つのライトを全て回収してからー、
麻衣に青のライトをレベル0に設定して照らしたー。

正気に戻った麻衣は、悔しそうな表情を浮かべながら、
「わたしはただ……勝馬とー」と、言葉を振り絞るようにして口にしたー。

「ーーーー…ーーー…ーどんな理由でも、こんなこと、しちゃいけないー」
勝馬は迷った挙句、幼馴染にそう言葉を振り絞ったー。

「ーそれにー…麻衣が浪口先輩にしたことはー…」
勝馬がそう言うと、麻衣は「分かってるー」と、言葉を口にするー

”黒”のライトを使い浪口先輩を洗脳し、その浪口先輩に優香を洗脳させ、
用済みになったところで、黒のライトの力で自殺させたー。

それは、つまり、殺人でしかないー。

麻衣はしばらくうなだれていると、
ため息をついてから立ち上がったー。

「ーーごめんねー…罪は、償うからー」
麻衣はそう言うと、勝馬のほうを見つめたー。

優香も悲しそうに麻衣のほうを見つめているー。

がーー
その時だったー

麻衣が突然、隙をついて、勝馬が回収した
ライトが置かれている机の方に突進していくと、
”自由に命令できる”力を持つ黒のライトを手にしたー。

そして、麻衣は笑うー。

「ーーおい!麻衣!これ以上ーーー」
勝馬は、再び優香、あるいは自分自身が洗脳されることを危惧して
そう叫ぶも、麻衣は笑みを浮かべたー

「言ったでしょ~?罪は償っちゃうもんー」
麻衣は涙目でそう笑うと、
自分の黒のライトを照射して、笑みを浮かべたー。

「ーー罪を償って、死刑ー」

そう呟くと、麻衣は虚ろな目になって、黒いライトをその場に捨てると、
図書室から飛び出したー。

「ーーおいっ!バカ!やめろ!」
勝馬が優香に図書室を任せて、麻衣を追いかけるー。

しかしー、
間に合わなかったー。

麻衣は、自ら命を絶ってしまったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーごめんなー俺のせいで巻き込んでー
 それに、後味の悪い結末になっちゃってー」

1週間後ー。

勝馬が優香にそんな言葉を口にするー。

しかし、優香は悲しそうにしながらも
首を横に振ったー。

「ーそんなことないよー。
 わたしがおかしくなってるときも、勝馬はずっと心配してくれてたのー
 ちゃんと覚えてるからー

 それにー…麻衣ちゃんのしたことはー……
 勝馬が悪いんじゃないから、あんまり背負い込みすぎちゃ、ダメだよー?」

優香のそんな言葉に、勝馬は寂しそうに笑うと、
「ーーーアイツもー俺のこと”幼馴染”としてしか思ってないって、
 ずっと思ってたー。
 普段、あんなこと一言も言わなかったしー」
と、言葉を口にするー。

「ーーーー気付いてあげられてればなー…」

勝馬はそう呟くー。
麻衣の気持ちに気付いていたとしても、優香がいるし、
勝馬は麻衣に対して恋愛感情はないー。
だから、付き合うことはできなかったけれどー、
それでも、麻衣の凶行を止めることはできたかもしれないー

そう考えると、”気づいてあげられなくて、ごめん”という気持ちにもなるー。

麻衣はあんなことをせずに済んだかもしれないし、
優香は洗脳されずに済んだかもしれないし、
巻き込まれて自殺させられた浪口先輩も巻き込まれずに済んだかもしれないー。

「ーーーー…背負い込みすぎちゃ、ダメー」
優香が心配そうにそう言うと、
勝馬は「ごめんごめんー」と、笑いながらため息をつくー。

「人間って、難しいなー」

空を見上げながらそう呟く勝馬ー

人は生きている限り、誰かを傷つけるー。
そんな、生き物なのかもしれないー。
悪意はなくてもーーー
無自覚のうちにー

「ーーー」
勝馬は、しばらく間を置いてから大きくため息をつくと、
「でもーーー」
と、言葉を口にしながら優香のほうを見つめたー。

「優香が無事で、よかったー」

ここでずっと悩み続けても仕方がないー。
そう、思いながら勝馬は優香に向かって
そんな、安堵の言葉を口にしたー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

イライラカノジョの最終回でした~!☆

洗脳された彼女を救うことはできましたネ~!

洗脳の影響もスッキリなくなって解放できるエンドは
最近の私の作品では、珍しかったような気も(忘れているだけかも…?笑)
します~★
(周囲がスッキリしていませんケド…)

お読み下さりありがとうございました~!

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MC<イライラカノジョ>

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