<憑依>手段を択ばないコーチ~狂わされた人生編~前編

”憑依能力”を駆使して、
教え子を勝たせるため、対戦相手に憑依ー、
暗躍していたコーチ。

これは、その”被害”を受けて人生を狂わされた少女の
闇の道ー…

※「手段を択ばないコーチ」の番外編デス!
 先に本編を読んでくださいネ~!

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後藤 蘭(ごとう らん)ー
彼女はお嬢様高校に通う卓球部のエース。

お金持ちの家に生まれー、
小さい頃から甘やかされて育ちー、
欲しいものは何でも手に入れて来たー。

そんな負けず嫌いの彼女が、
最初に味わった屈辱ー

それが”卓球”だったー。

小学生の頃、卓球に初めて触れて、
上級生と対戦した際に、
蘭は”手も足も出ずに”完敗したのだー。

生まれて初めて味わった、屈辱ー。

その後、蘭は卓球に夢中になって、
ひたすらに特訓を続けたー。

父親と母親も戸惑ってはいたものの、
”蘭がこんなに夢中になるなんて珍しいな”と、
蘭のために、卓球用具を一式揃えてくれて
自宅の豪邸には、卓球練習用のスペースまで
用意してくれたー。

そしてー、
彼女は強くなったー。

いかにもお嬢様な風貌と高飛車な口調ー
そんな彼女は、卓球の界隈の中でも
異質な存在として、学生たちの間で話題になりー、
中学時代からは卓球部に所属、
やがて、卓球部のエースとなり、
高校生になっても、卓球部を継続、
”最強のお嬢様”などと呼ばれ、高い実力を発揮していたー。

「ーーあらー…あなたはー」

そんな、ある日ー。
蘭は高校生の卓球大会に出場し、
第1回戦で別の高校の”甘いマスクのスマッシュ使い”の異名を持つ男子を撃破、
第2回戦では同じ高校同士の対決となり、副部長の女子生徒を撃破したー。

そしてーー
今ー、準決勝の場で、蘭は
別の高校の瑞穂(みずほ)という女子生徒との対決を始めようとしていたー。

瑞穂とは以前、2度ほど対決したことがあるー。
そのどちらも、蘭の勝利ー。

”この子の実力で準決勝まで勝ち上がってこれるなんてー…驚きですわ”
蘭は、心の中で瑞穂のことをそうあざ笑うと、試合に臨むー。

相手のことを侮っていても、蘭は決して手を抜くことはしないー。

”なるほどー。前よりは強くなったようですわねー…”
蘭はそう思いながらも、
11-5で1ラウンド目に勝利、
11-6で2ラウンド目に勝利したー。

5ゲーム制のこの大会では、次の試合に勝利すればー、
蘭は決勝戦に進出することになるー。

「ーおほほほほほほ!全く相手になりませんわね!」
第3ゲームでも、瑞穂を圧倒する蘭ー。

”このまま、わたしの勝ちですわ!”
蘭は、嬉しそうに笑みを浮かべながらー
「わたしのーーー」と、声を発しようとしたー。

しかしー
その時だったー。

今まで感じたことのない、全身の感覚が一瞬にして
消えていくようなー
いいや、”抜けていくような”
そんな感覚を覚えてー
蘭はうめき声を上げると同時に、意識を失ったー。

がー

「ーーー…あ、え、えっと、なんでも…なんでもありませんわ!
 ほほ、あは、あほほほほほほ」

対戦相手の瑞穂が困惑する中、本人は意識を失ったはずなのに、
蘭はそう返事をして、卓球の試合を継続したー。

”わざと”瑞穂との試合に負ける蘭ー。

そうー。
蘭は、瑞穂のコーチである丸藤誠太(まるふじせいた)によって
憑依されてしまい、”わざと”負ける道を選ばされてしまったのだー。

そしてーー
蘭は意識を取り戻すー

「えっ…!?」
意識を取り戻した時には、既に準決勝は終わっていたー。

「え…わたしはー?」
蘭が、自分のコーチに確認すると、
「ー疲れて、眠ってたのねー」
と、コーチが言葉を口にしたー。

しかし、蘭の記憶は”瑞穂との準決勝の最中”で途切れているー。

「…ね、眠ってー…わ、わたしがー!?
 し、試合はどうなったんですか!?」
蘭は、そう叫ぶと、コーチは
「あなたが、手を抜いたから負けたわ」と、失望の言葉を口にしたー

「こ、このわたしが手をー!?
 そ、そんなことあり得ませんわ!」
蘭が必死に叫ぶー。

「ーわ、わたし、試合中の記憶が抜けてますの!」
蘭はなおも必死に叫ぶー。

しかし、コーチは首を横に振りながら
「言い訳は後で聞かせて頂戴ー」とだけ言うと、
「これから、3位決定戦があるからー」と、
3位決定戦に集中するよう、言葉を口にするー。

「さ、三位ー…?う、嘘ー…!あり得ない!何かの間違いですわ!」
蘭が怒りの形相で叫ぶー。

だがーー…
既に決勝戦の開始も間近で、
コーチからも「これ以上、恥を晒すつもり?」と
キツイ口調で言われて、蘭は絶望の表情を浮かべるー。

「ーー…」
”試合中に急に記憶が飛んだー?”
蘭は、強い不安を抱きながらも、3位決定戦に臨むー。

「ーーあぁ、手抜きお嬢様かー」
対戦相手は”プリンス”の異名を持つ男子生徒ー。

先程の瑞穂と蘭の試合を見ていたのか、
鼻で蘭を笑うー。

「誰が手抜きですってー…?
 後悔させてあげますわ!」

蘭は動揺を隠しきれない状態のまま
果敢に”プリンス”に戦いを挑むー。

しかしーー
心に強い不安を抱いたまま勝てるほど、”プリンス”は甘い相手ではなかったー。

「ーそ、そんなー」
プリンスに負けて膝をつく蘭ー。

蘭は悔しそうに服の袖をかじりながら、
「許せませんわー…」と、決勝戦の最中の瑞穂のほうを睨みつけたー。

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”どうして、意識が飛んだのかしらー…?”

蘭は、その日以降、深く悩む日々を送っていたー。

周囲からは”負けた言い訳をする哀れなお嬢様”のような目で
見られー、蘭は強い屈辱を感じていたー。

「ーー」
そしてー…
あの日、”突然意識が飛んで、気付いたら試合が終わっていた”という経験は
蘭の心に、深い傷を与えていたー。

今、こうしている瞬間にも、急に意識が飛ぶのではないかー、と。
そして、次に目を覚ます時には、試合に負ける以上の
何か恐ろしいことが起きているのではないか、とー。

「ーーーお父様ー…」
蘭はすっかり疲れ果てた表情で、
自分の父親にそのことを相談するー。

一人娘ということもあり、蘭のことを可愛がっている父親は、
「念のため、病院で診てもらおう」と、
蘭にそう言い放ったー。

父親と共に、病院の診察を受ける蘭ー。

しかし、”憑依”されても、
身体の中に目に見える異常は残らないー。

脳にも、どこにも異常はなくー。
医師は困惑した末にー、
”疲れ”や”精神的なもの”ではないかと、診断を下したー。

「ーーーーーーー」
あの日、憑依されたせいで、
蘭は精神的に不安定になり、以降、病院に通いながら、
精神的な不安を和らげる薬を処方してもらいつつ、
日々を過ごしていたー。

そしてーーーー

”リベンジ”の日はやってきたー。

地域の学校との交流戦ー。
ここに、あの日試合中に意識が飛んだ対戦相手・瑞穂も参加すると聞いた蘭は、
怒りに燃えて猛特訓したー。

今度こそ、還付なきまでにあの娘を葬り去ってやりますわー…、と
怒りに燃える蘭ー。

「ーこの前は、よくもわたしに恥をかかせてくれたわねー」
ついに、瑞穂と対峙した蘭は、そう言い放つー。

相手の瑞穂は「え…」と、困惑の表情を浮かべているー。

だが、瑞穂は同時にこう言ったー。
「ー今度は”本気”で戦ってもらうからー!」

”許しませんわー…あんたが、わたしに何かしたに決まってるー”
蘭は心の中でそう思いながら、
「ー今度こそ、この体育館の床に膝をつかせてあげますわ!」
と叫びー、瑞穂との試合を開始したー。

しかしーーー

「ーー!」

蘭は違和感を覚えるー

”また”

また、あの時の感覚ー

”わたしに何をー!”
そう叫ぼうとしたその直後、蘭の意識は深い眠りについたー。

またー…
瑞穂のコーチである男に、蘭は憑依されてしまったのだー。

「ーー完敗だわ」
そして、”憑依されたまま”蘭は敗北したー。

試合後、正気を取り戻した蘭は、目を疑うー

”な、なんでー!?わ、わたしー…試合開始後の記憶がー?”
蘭はそう思うと、すぐに叫んだー。

「ーーわたしは、負けてませんわ!
 あいつ、何かイカサマをー!」
蘭が必死に叫ぶー。

対戦相手だった瑞穂やそのコーチ、
周囲の大会参加者たちも、蘭の方を見つめるー。

周囲が蘭を止めに入るー。

「ーあの子ー…あの子がわたしに何かしたに決まってますわ!
 この前も、今日も試合中の記憶が!」

蘭の必死の叫びー。

しかし、同じ高校の同級生も、蘭を止めに入りながら、
こう言い放ったー。

「ーー蘭ちゃんは負けたの!負け惜しみなんてみっともないよ!」
とー。

「ーーー…!!!」
蘭は、”違う”と反論するも、目から涙が溢れて止まらずー、
そのまま係員によって、外へと連れ出されたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その後ー、
蘭を2度負かした瑞穂は、
快進撃を続けて、話題になっていたー。

ギリギリと歯ぎしりをする蘭ー。

卓球の試合をするたびにー、
”また”意識が飛ぶのではないかという恐怖に襲われるー。

「ーーねぇ、またなの?
 そういうふざけたことするなら、出てってくれない?迷惑だからー」

「どれだけわたしたちの足を引っ張るのかしらー?」

「ーー今までは強かったからあんたに従ってたけど、
 卓球の弱いあんたなんて、偉そうにしてるだけのお荷物お嬢様だわー」

お嬢様が集う高校の陰険な争いー
蘭はそれに飲み込まれて、
卓球部内での立場もすっかりと失っていたー。

手が震えるー
吐き気がするー

「ーわ、わたしは…わたしは本当に意識が飛んだの!
 嘘なんかついてませんわ!」

蘭がそう叫ぶー。

だがー、
周囲の”お嬢様”たちは、そんな蘭を見て
クスクスと笑ったー。

「ーー意識が飛んだですってー」
卓球部の副部長、花枝(はなえ)が
周囲の卓球部員を見ながら、そうクスクスと笑うと、
周りもクスクスと笑い始めるー。

「ーーーねぇ、部長ー
 そういうことばっかり言われていると迷惑だしー、
 卓球部から出てってくださいません?

 このわたしに、部長の座を譲ってー」

花枝がそう言うと、蘭は怒りの形相を花枝に向けるー。

周囲はもう、完全に”花枝”の味方だー。

蘭は怒りに燃えながら、花枝との勝負を承諾するー。

そしてーーー
花枝を3ゲーム連取で”粉砕”したー。

「ーーーーーうそ…? こんな負け惜しみ女に、このわたしがー」
震えながら膝をつく花枝ー。

蘭は、副部長の花枝を圧倒したー

だがー
周囲は、それでも蘭のことをクスクスと笑っているー。

「どうせまた、負けそうになったら意識が飛んだとか言うんでしょ?」
「負け惜しみ女ー」
「ー意識が都合よく飛ぶなんて、いいよねぇ」

そんな言葉が聞こえて来るー。

「ーー…」
歯ぎしりをする蘭ー。

「ーうああああああああああああああっ!」
怒りに任せてラケットを床に叩きつけると、
周囲は”頭がおかしくなった女”を見るような目で蘭を見つめたー

「何よ!何なのよ!その目ー!」
蘭は涙目で周囲を見つめるー。

”哀れなものを見る目”ー
”おかしなものを見る目”ー
”蔑む目”ー
”見下す目”ー

そんな目ばかりー。

「ーーーこんな部活ー
 こっちから願い下げですわ…」
蘭は怒りの形相を浮かべると、
「やめてやるわ!それがあなたたちの望みなのでしょう!?」と、
大声で叫ぶー。

敗北した副部長の花枝は、そんな蘭のほうを見て、
少し戸惑ったような表情を浮かべるー。

蘭はそのまま、その場を立ち去りー、
以降、卓球部に顔を出すことは無くなったー。

やがてー、
蘭は大学からも逃げるようにして退学しー、
そのまま姿を消したー。

がーー…
”憑依”に狂わされた蘭の人生にはー
”また”憑依の影が付きまとうー。

蘭と対戦した瑞穂は、
時を同じくしてコーチの誠太が”何らかの方法”で蘭たち
対戦相手を強引に負けさせていたことに気付き、
コーチを問い詰めていたー。

だがー、
瑞穂に問い詰められたコーチの誠太は逆上ー、
そのまま憑依の力で瑞穂の身体を乗っ取りー、
瑞穂の人生を丸ごと奪ってしまっていたー。

そんな”憑依された瑞穂”と”憑依で人生を狂わされた蘭”が
再会を果たすのは、まだ少し先のことだったー。

<中編>へ続く

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コメント

以前、”手段を択ばないコーチ”の蘭視点のお話が読みたい!と、
ご意見を頂いたことがあったので、実際に書いて見ました!~★
(※頂いた続編や番外編の希望を全て、叶えられるわけではありません~!念のため…!)

今回は本編の蘭視点でのお話、
そして次回は蘭視点で”その先”へと進んでいきます~!

楽しみにしていて下さいネ~!

憑依<手段を択ばないコーチ>
憑依空間NEO

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