離婚した”元妻”が再婚したー。
そんな話を聞いた彼は、
複雑な思いを抱きながらも祝福の言葉だけ送り、
普通の日々を送っていたー。
しかし、ある日ー、その元妻と偶然遭遇して
入れ替わってしまいー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーー…」
呆然とする美姫(秀平)ー
それもそのはずー
元妻・美姫の再婚相手は
秀平を中学時代にいじめていた男、
山岡 幸弘だったのだー。
”幸弘”なんて名前は、そこまで珍しい名前ではないし、
再婚相手の苗字までは聞いてなかったから、
相手がまさか、”中学時代に僕をいじめていたやつ”
だとは思わなかったー。
美姫の身体の中に、怒りの感情が充満してくるのを
感じながらも、美姫(秀平)は何とかそれをこらえるー。
「ーーど、どうかしたのか?美姫ー」
幸弘が笑いながら言うー。
中学を卒業して以降、幸弘とは会ってはいないし、
何をしていたのかも知らなかったー。
その姿を見るのも、中学時代以来だー。
しかし、顔に面影はあるし、
この男が、自分をいじめていた相手だとは、すぐに分かったー。
「ーーー…別に」
美姫(秀平)は、ついそっけない態度を取ってしまうー。
「ーーな、なんか怒らせちゃったなら、ごめんなー」
幸弘はそう言うと、
「ご飯、用意しておいたからー」と、言葉を口にするー。
「ーー…」
美姫(秀平)は、食卓に並べられたオムレツと、
綺麗に並んでいるサラダやおかずを見つめるー。
「ーーーーー」
そうー
”山岡 幸弘”は、
不真面目で、性格の悪いやつだったけれどー
”意外と何でもできる”のだー。
そこがまた、いじめられていた秀平からしてみれば
”よりイヤな感じ”に見えたー。
”僕は、こんなやつ以下なのか”と、
何度も何度も思ったー。
幸弘のいじめが始まった理由は単純だったー
”お前、何かムカつく”
そんな、シンプルかつ理不尽な理由だったー。
幸弘と、周囲にいた男子2人~3人にいつも
いじめられていた秀平ー。
暴力を振るわれたこともあるし、物を盗まれたこともあるし、
あることないこと言われたこともあるし、
とにかく、最悪だったー。
その後ー、クラスが変わってからも
時々嫌がらせを受けて、最終的にはそのまま
和解することも、仕返しすることもできないまま卒業ー、
お互いに別の高校に進んだために、それ以降は
特に関りはなかったー
”くそっ…よりによって、なんでコイツと美姫がー”
”元妻”である美姫のことは、
秀平自身はまだ”好き”だー。
一緒に暮らして、すれ違いも多かったけれど、
今でも、美姫から”もう一度復縁しよう”と言われたら
それに応じてしまうぐらいには、美姫のことが好きだー。
その美姫が、”自分をいじめていた男”と再婚したなんてー。
「ーーーーーーー」
美姫(秀平)が不機嫌そうに幸弘が作ったと思われるオムレツを
食べ始めるー。
そのオムレツが”美味しい”のが、秀平からしてみればまたムカつくー。
頬を膨らませながら
不機嫌そうにがつがつとオムレツを食べていく美姫(秀平)ー
美姫と知り合ったのは高校時代ー。
美姫は”秀平と幸弘”が中学時代にそういう関係だったことを
知らないのだろうし、
逆に幸弘自身も、秀平と美姫がそういう関係だったことは
知らないのかもしれないー。
しかしー
まさか、こんな最悪な偶然があるなんてー
「ーお、美姫、米粒ついてるぞー」
そう言いながら幸弘が、美姫の口元の米粒を指で取り除くー。
”ゾワッ”と悪寒がするー。
身体中から拒否反応が出ているー。
いじめを受けた記憶がフラッシュバックして
身体が震えだすー。
「み、美姫ー?」
美姫(秀平)のそんな様子に、
何も知らない幸弘は困惑した表情を浮かべながら
「どこか調子でも悪いのか?」と、心配そうに言葉を口にするー
”お前のせいだよ!”と言ってやりたくなってしまいながらも、
”美姫のため”と思い、必死にその感情を押し殺すー
「ーべ、べ、別に何もー」
美姫(秀平)はそう言いながらも、
気付けば目から涙が溢れ出ていたー。
「ーーーなんだなんだー…
仕事で何かあったのかー?」
幸弘がそんな言葉を口にしながらー、
美姫(秀平)の方に近付いてくるー。
”ーーへへへー今日も殴らせろ”
そんなことを言いながら、近付いてくる幸弘のー
中学時代の彼の記憶が脳裏に浮かぶー。
「ーーーー」
あまりの恐怖に身体も動かずー、声も出ないー。
そんな美姫(秀平)を
幸弘は静かに抱きしめて優しくキスをしたー
「~~~!?!?!?!?!?!?!?!?」
美姫(秀平)は突然のキスに思わず顔を真っ赤にして
飛びあがりそうな衝撃を受けながら、
呆然とした表情で幸弘のほうを見るー。
「ー何か辛いことがあったら、何でも相談に乗るからー」
キスを終えた幸弘はそう言うと、
「ーー美姫が話したくないなら、無理には聞かないー。
でも、話したくなったら、話して」
幸弘はそれだけ言うと、美姫(秀平)に暴力を
振るったりすることはなく、
そのまま振り返ってお風呂場に方に向かって歩き出すー。
「ーお風呂もそろそろ沸くころだからー
一度見て来る」
そう言いながらー。
「ーーーーオェッ」
美姫(幸弘)は
”男にキスされたこと”
しかも、その相手が
”中学時代に自分をいじめていた大嫌いな相手”と来ればー、
吐き気を催さずにはいられないー。
「ーーーうえぇっ… オエッ…」
美姫の身体で台所に向かって何度も吐きそうにオエオエしながら
必死にうがいを繰り返すー。
”自分の口”ではなく、”美姫の口”ではあるものの、
どうしても、どうしても”自分をいじめていた相手とのキス”は
耐えられなかったー
うがいを繰り返し、残りのオムレツを慌てて口に運び、
”夫”の幸弘が戻って来ると同時に、
自分の「ごちそうさま」とだけ告げて自分の部屋へと戻るー。
「ーーーーー…はぁ」
深々とため息をつく美姫(秀平)ー。
自分の部屋に戻ると、今度は
”僕は今、女なんだー”と、何となくドキドキするような感情が
湧き上がってくるー。
「はぁぁ…早く元に戻りたいー」
”元妻の新しい夫と暮らす”だけでイヤなのに、
その相手が”自分を小さい頃にいじめていた相手”なんて最悪だー。
そう、思わずにはいられなかったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー」
秀平になった美姫は、秀平の家に帰宅していたー。
「あ~~懐かしい感じ」
秀平(美姫)は、そう呟きながら周囲を見渡すー。
それもそのはずー
このアパートは”秀平と美姫”が同居していたアパートだ。
将来的にはマンションか、マイホームを、なんて話も
していたけれど、結局、二人は離婚してしまったため、
その話は消えてしまったけれどー、
それでも、この場所が美姫にとって”懐かしい場所”で
あることには変わりはなかったー。
「ーーん~~なんか息苦しい部屋ー」
秀平(美姫)は、苦笑いしながらそんな言葉を口にするー。
”石頭”なんてあだ名をつけられている時期もあった秀平は、
とても真面目で几帳面なー…
いや、”真面目で几帳面すぎる”性格だったー。
その性格が、今の秀平の家には、イヤというほど
現れているー。
「ーーう~ん…これを置く順番とか位置まで決まってそうー」
そんなことを呟きながら秀平(美姫)は、
少しだけ寂しそうな表情を浮かべるー。
美姫は”秀平があまりにも真面目で几帳面すぎた”ことから
だんだんと息苦しくなって、離婚に向かう羽目になったー。
まぁ、それは恐らく秀平の側も同じー。
”秀平からすれば、何ていい加減な女だ!とか、思われてたんだろうなぁ”
そんなことを口にしながら、
秀平(美姫)は「ーとりあえず…疲れたからーまずはお風呂ー」と、
躊躇なくお風呂に向かうー。
「ー男の人の身体でお風呂ってちょっとドキドキするかも!」
秀平(美姫)は、どことなく今の状況すら楽しんでいるようなー、
そんな雰囲気を醸し出していたー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
美姫(秀平)は、自分の部屋で、秀平(美姫)と連絡を取り合うー。
”そっちはどう?”
自分の声が電話の向こうから聞こえて来る状況は
実に奇妙だー。
「う~ん…ま、まぁ、それなりにー
今日は部屋で大人しくしてるよー」
美姫(秀平)は、自分の口から美姫の声が出ることにも戸惑いながら、
そう返事をするー。
一瞬、”今の夫”である幸弘のことを言おうかどうか迷ったものの、
少なくとも、美姫は”幸弘”が、”秀平”のことをいじめていた過去など
知らないだろうし、ここでそれを言っても何も良いことはないと判断して
黙り込んだー。
”ーー大人しく? あ、そうだ!お風呂は入った?
秀平のことだからさ、”美姫の身体でお風呂になんて入れない!”とか言ってるんじゃないかって
思ってー”
秀平(美姫)の言葉に、
「ぶっ…!!!」と、美姫(秀平)は明らかに動揺したような反応を示すー。
「ーーーそ、そ、そうだったー、
お、お風呂は、その、まだー…
っていうか、”お風呂になんて入れない”以前にお風呂のことすら頭になかったー」
美姫(秀平)がそう言うと、秀平(美姫)は
”わたしの裸を見ちゃう、とか気にしなくていいから、むしろお風呂に入ってね!
お風呂に入らないまま、ウロウロされる方が困っちゃうから!”と、
そんな言葉を口にしたー。
「ーう、うん、わかったー」
”それにしてもー…
男の人のアレって、結構ーーー
あ、ううんー。なんでもない”
秀平(美姫)がそんな言葉を言いかけて、
美姫(秀平)は「え!?な、なんだよ!気になるじゃないか!」と、
ツッコミを入れながら、そのまま電話を終えたー。
「ーーふ~… お風呂かぁ」
美姫(秀平)はドキドキしながらも、お風呂に入る準備をするー。
仮にも、”元夫”だし、美姫のそういう姿を見たことが
ないわけではないー。
が、決して秀平は女遊びを繰り返しているような人間ではないし、
そういう耐性はないー。
ドキドキしながらお風呂に入りー、
無心で髪や身体を洗っていくー。
”女の人は、こんな風に自分にドキドキしながらお風呂に入ってるわけ
じゃないだろうしー
不思議だなぁ”
そんなことを思いながら、やっとの思いで、お風呂を終えるー。
そしてー、
夫の幸弘に見つからないように
慌てて部屋に戻ると、
鏡をぼーっと見つめながら、美姫(秀平)は、ふと呟いたー
”ねぇ、秀平ー。また、いっしょに暮らそ?”
そんな言葉を、何となく口にしてみるー
”秀平のこと、わたし、今でも好きー”
そんな言葉も、口にしてみるー
鏡に美姫が写っていると、
本当に美姫に言われているような気分に
なってしまってドキドキするー。
正直、秀平は美姫と”また”夫婦になれるのであれば、
喜んでそれを受け入れるだろうー。
今度こそ、お互いに上手くやっていくことができればーーー
そんなことを考えながら
美姫(秀平)は自虐的に首を振るー。
「まぁ、そんな未来、もうないってことは分かってるけどー」
美姫(秀平)は寂しそうに呟くー。
もちろん、秀平は美姫にしつこくするつもりはないし、
事実、離婚後は未練はあったものの、
美姫には一度も会っておらず、連絡を取ったのも
共通の知り合いから再婚の話を聞いた時に
”おめでとう”と送っただけー。
こんなことにならなければ、美姫との接点は、
もう”ない”はずだったー。
”まさか、こんなことになるなんてなぁ…”
美姫(秀平)は、戸惑いの表情を浮かべながら、
そんなことを口にしているとー、
突然、夫の幸弘が部屋の中に入って来たー。
「ーえっ!?!?」
美姫(秀平)が驚くと、
幸弘は、「ほら、”いつもの”時間ー」と、
時計を指差したー。
「ーーーえ?い、いつもの?」
美姫(秀平)が言うと、
幸弘は「ーーえ??ほ、ほらー…」と、戸惑いながら
”夜のお楽しみ”の話を口にするー。
「ーーえっ!?えっ!?!?えっ!?!?!?」
美姫(秀平)は、あまりの衝撃に言葉を失って何も言えなくなるー
”元妻が他の男と、夜にお楽しみをしている”というだけでも
秀平にとっては大きなショックー。
その上、相手が元いじめっ子で、
しかも今は自分が美姫で、自分が元妻の身体で元いじめっ子とー……
そんなことを考えているうちに、
頭がグルグルしてきて、何も考えられずー、
気付いた時には、美姫(秀平)は、感じたことのない激しい快楽を感じながら
大きな声で喘いでいたー。
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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次回が最終回デス~!
元に戻れるのかどうかも含めて、
何が起きるのか、見届けて下さいネ~!
お読み下さりありがとうございました~!!
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