<TSF>朝、目が覚めたら2030年になっていた②~真相~(完)

ある日の朝、目を覚ましたら、
突然女になっていて、知らない場所にいて、しかも2030年になっていたー。

そんな、彼の身に起きた出来事とはー?

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23時過ぎー。

ため息をつきながら、幸人はスマホを確認して、
翌朝の7時前後に複数の”アラーム”をセットするー。

明日の朝も仕事だー

今日はもう寝なくてはならないー。

最近は”仕事関係の通知”ばっかり来るLINEを見つめながら
幸人は”忙しいと友達とも疎遠になってくるよな”と、
苦笑いすると、「まぁ、とにかく寝ないとな」と、
そのままベッドに潜るー。

「ーーーー」
幸人が住む賃貸の前の大通りをトラックが通り、
眠りかけていた幸人は目を覚ますー。

大通り沿いの安い賃貸ー。
デメリットは目の前の大通りを大型車が通ると、
家が揺れることがあることー。
時々、うるさいことー。

だが、それ以外には特に大きなデメリットはなくー、
近所の住人にも、ひとまずおかしな人はいないため、
そういった意味では、この場所に住み心地の良さも感じていたー。

「ーーー」
そして、幸人はその日も、いつものように眠りについたー。

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”やっぱ、分かんねぇ”

お金持ちのお嬢様”亜梨紗”になってしまった幸人は、
執事に案内されながら、昨日のことを思い出していたー。

昨日、寝る時はやっぱりいつも通りだったー
何度、思い起こしてみても、それは変わらないー。

”お金持ちのお嬢様”になったことはいいー。
”2023年”にも別に未練はなかったし、2030年になったことも
別に構わないー。

だが、いったい何が起きているのかー。
それが分からず、亜梨紗となった幸人は、混乱していたー。

「ーーーこちらでございます」
執事がそう言うと、亜梨紗は「ありがとうございます」と、
頭を下げて”お父様”の部屋へと入っていくー。

「ーーーー亜梨紗ー。」
待っていたのは、神経質そうな雰囲気の父親だったー。
廊下を歩いている最中に説明してくれたところでは、
父親は未来に向けた技術開発を行う企業のトップで、
予想通りの”お金持ち”とのことだったー。

「ーーー…お、お父様ー…」
”亜梨紗”のフリをしながら、そう言うと、
父親は少しだけ笑ってから
「どうやら、上手くいったようだなー」
と、言葉を口にしたー。

「ーーお、お、お父様ー?」
亜梨紗として幸人はそう言葉を口にするー

”お金持ちのお嬢様”となれば、父親から溺愛されている可能性も高そうに思えるー。
そんな娘が”他人”になっていると知ったら、この父親は怒り狂うかもしれないー
別に、好きでこうなったわけじゃないのに、誰かに恨まれたり、憎まれたりするなんて
絶対にごめんだー。

「ーーここには私と君しかいないー。
 無理に”お父様”なんて呼ぶ必要はないー。
 好きにしたまえ」

亜梨紗の父親はそう言うと、亜梨紗は表情を歪めるー。

「ーなに、大丈夫だー。隠す必要はない。安心したまえ」
父親のそんな言葉に、亜梨紗は困惑の表情を浮かべながら、
「ーーー私の状況、分かっている…と、いうことですか?」と、
言葉を慎重に選びながら確認したー。

亜梨紗の父親は静かに頷くー。

「ーー君は、戸惑っているだろうがー、
 一つ一つ、説明していこうー。
 何から聞きたい?」

と、亜梨紗の父親は言葉を口にしたー。

「ーーーーーーー…」
亜梨紗は少しだけ考えた後に、
「ーここは”俺の住んでいた世界”ですか?」と、確認するー。

「ーーははははー」
亜梨紗の父親は少しだけ笑うと
「答えはイエスだ。ここは君の住んでいた世界で間違いないー。
 異世界ではないよ」と、うすら笑みを浮かべながら言葉を口にしたー。

「ーーーーこ…この亜梨紗って子はー…」
亜梨紗がそう言うと、「私の娘だ。ちゃんと実在している人物だよ」と、
父親は言葉を口にしたー。

「ーで、ではどうして、俺がその亜梨紗さんに?」
亜梨紗の身体で幸人がそう尋ねると、
亜梨紗の父親は「君の魂を亜梨紗の身体に移した。つまりー、”憑依”と言えば良いだろうな」
と、言葉を口にしたー

「ひ、憑依ー?」
亜梨紗は驚きながら自分の手を見つめるー。

「ー俺が、この子の身体に、取り憑いている…みたいな感じですか?」
亜梨紗がそう言うと、父親は頷くー。
”そのとおりだ”
とー。

「ーー………ーーい、いや、じゃあ、俺はー…俺は一体どうなってるんです?」
幸人は一番気になることを口にしたー。

「ー俺が亜梨紗さんの身体になっているってことは、
 亜梨紗さんが俺の身体を使っているーーってことですか?」

つまりは”入れ替わり”
互いの魂が入れ替わるとか、そんな話を見たことがある気がするー。
幸人はそう思いながら、そんな解釈をして言葉を口にすると、
亜梨紗の父親は少しだけ笑ったー。

「いいやー…そうではない」
とー。

「ーー」
そして、少し間を置いて言葉を続けるー。

「君は、死んだー。
 いや、性格に言えば君の”身体”は死んだー。」

「ー!?!?!?!?!?」
亜梨紗は表情を歪めるー。

「ーー死んだ?ど、どういうー!?」
亜梨紗が叫ぶと、
亜梨紗の父親は申し訳なさそうに目を閉じたー

「2023年8月の深夜だったかなー…
 君のアパートに車が突っ込み、そして君の部屋を直撃したー。
 何か覚えていないか?」

亜梨紗の父親の言葉に、
亜梨紗は呆然とするー

「し、死んだー…?」

「ーーーそう。君はほぼ即死だったー」
亜梨紗の父親のそんな言葉に、
亜梨紗は「な…なにも…何も覚えてません」と言葉を口にするー。

あの日ー
幸人からすれば”昨日”
眠りについた後に、幸人の部屋に車が突っ込んで来て、幸人は
寝たまま即死したのだろうかー。

「ーーだが、君の身体が朽ちる前に、君の身体から”魂”だけを取り出しー、
 亜梨紗に移植することに成功したー。

 それが実現するのに、7年かかったー。」

亜梨紗の父親のそんな言葉に、
亜梨紗は「それでー…2030年ー」と、言葉を口にするー。

朝、目が覚めて”美少女”になっていたのは、亜梨紗の身体に
幸人の魂が憑依させられたからー。

2030年になっていたのは、幸人の魂を亜梨紗に憑依させるのに7年かかったからー。

そういうことだろうかー。

「ーーーいや、でも、しかしー、どうして俺が亜梨紗さんの身体にー?」
亜梨紗は言うー。

寝ている間に事故死したなら、普通はそれで終わりだー。
しかし、何故か幸人はお金持ちの娘に憑依させられて、
こうして意識を取り戻したー。

「ー事故を起こしたのは私の友人だー。
 そいつも社長で、そいつの会社は
 ”人の魂”の抽出やーー…まぁ、オカルト的な新技術の研究をしている会社でねー、 
 私の企業も技術系の会社だから、よく技術協力をしているんだー。

 事故を起こしたのは、そいつの息子で
 持病の発作を起こし、君のアパートに突っ込んだんだー。

 息子のせいで、人を一人死なせてしまった罪悪感から、
 私の友人ー、倉田(くらた)社長は、研究段階だった装置で、
 君の魂を君の遺体から抽出したー。

 で、”いつの日か新しい身体を君に与える”ために、
 長年研究を続けて来たー

 私もその研究には力を貸していてねー。

 その技術がようやく完成して、
 昨日、君の魂を亜梨紗に移植、今日、君が目覚めたというわけだー」

亜梨紗の父親は、そう説明したー。

なんとも現実離れした話だが、
つまり幸人を事故死させてしまった男の父親が、
罪悪感を感じて、幸人に新しい身体を与えてくれた、ということなのだろうー。

「ーーー…」
亜梨紗は少し間を置いてから口を開くー。

「ーーい、いや、でも待ってくださいー
 じ、じゃあ、この子はどうなるんですか?」
亜梨紗がそう叫ぶー。

亜梨紗の父親の友人の倉田社長の息子が幸人を事故死させたことで、
倉田社長が罪悪感を感じ、幸人の魂を抽出、別の身体に憑依させたー
ところまでは何とか理解したー。

が、何故憑依先が”亜梨紗”なのかー。
この”亜梨紗”という子はどうなるのかー。

「ーーーー」
少し間を置いてから亜梨紗の父親は言葉を口にするー。

「ーー”亜梨紗”は言うことを聞かない、とにかく悪い子でねー。
 きっと、私が甘やかしすぎたのだろうー。
 今では逆に、父親の私を脅かす存在になってしまったー。

 メイドたちが怯えた様子だったのに気づいたかね?」

亜梨紗の父親の言葉に、
亜梨紗は、メイドたちが妙に委縮した様子だったことを思い出すー。

「ーーーあーーー…はい」
亜梨紗が言うと、亜梨紗の父親は
”小さい頃に甘やかしすぎたせいで、誰にも手の付けられない
 ワガママすぎる娘になってしまって、日常的に問題を起こすように
 なってしまった”と、説明したー。

「ーーーーだから、社長仲間の倉田の話を聞いて、
 君の魂を娘に憑依させることに決めたー。

 執事以外は、このことを知らないー。
 君はただ、”お嬢様”として暮らしてもらえれば構わないー」

亜梨紗の父親の言葉に、
亜梨紗に憑依した状態の幸人は考えるー。

執事が誰かと連絡していたのは、恐らくこの父親と連絡していたのだろうー。

物事を整理すると、
会社のトップである亜梨紗の父親の”社長仲間”である倉田社長の息子が
持病の発作で事故を起こし、幸人の住んでいたアパートに追突、
幸人はそのまま即死したー。
しかし、倉田社長が罪の意識を感じて、幸人の遺体から開発中の技術で
魂を抜き取り、
その移植先として、亜梨紗の父親ー、宮森社長が、自分の娘を推薦ー、
こうして幸人は、亜梨紗の身体に憑依する形となったー
7年もかかったのは、技術が研究中であったこと、
そして移植先の身体の選定に時間がかかっていたことー、なのだと思うー。

「ーーーー…」
しかし、幸人はこうも思うー。

きっと、いい理由だけではないー。

息子が事故を起こしたことにより、死者を出したその倉田社長とやらは
幸人に新しい身体を提供することで、罪の意識から逃れようとしているのだろうしー、
この亜梨紗の父親は”手を焼く娘”を口封じして、
自分の会社を守ることを優先しているのだろうー。

綺麗事のように見せかけて、幸人は体よく利用されているー。
そんな風にも思ったー。

「ーー亜梨紗がいると、私の会社も危うくなるー。
 だから、君が亜梨紗になってくれていれば、助かるんだー。

 ”お金持ちの娘”として不自由ない生活をさせてやるー。
 だから”亜梨紗”として、過ごしていては貰えないだろうかー。

 ただ、普通にー
 そう、君なりの普通で構わないー。
 過ごしていてもらえれば、いいんだー」

亜梨紗の父親から、自己保身のような言葉が吐き出されたー。

自分と自分の会社を守るため、娘に他人を憑依させるとはー…
幸人は、そんな印象を抱きながらも、
少しだけ笑みを浮かべて、言葉を口にしたー。

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その日からーー
幸人の”亜梨紗”としての生活が始まったー。

お嬢様ライフは、本当に楽しいー。

何不自由ないし、メイドたちが何でも手伝ってくれるー。
しかも、”ワガママ放題だった”本来の亜梨紗とは違い、
幸人は控えめな性格のため、
メイドたちの亜梨紗に対する印象もとても良くなったー

しかもーー

「あ~~~~今日も可愛い~~♡」
亜梨紗は嬉しそうに鏡を見つめながら微笑むー。

”これが、可愛いを感じる喜びかー”と、
自分で思いながら
色々なおしゃれをしたり、服を買ったり、
コスプレを楽しんだりを繰り返すー。

亜梨紗の父親や、社長仲間の倉田社長の思惑は知らないー。
だがー、
寝ている間の事故でそのまま死んでしまっていたよりかはマシだー。

「ーーーどうせ死んだ目をして働いている社会人だったんだしー、
 お金持ちの美少女になれたなんて、最高だよな!」

亜梨紗は嬉しそうにそう笑うとー、
当面の間、”お嬢様ライフ”を堪能しようと、笑みを浮かべるのだったー。

そしてーーーー

”いずれお父様の会社を乗っ取ることができたらいいなー”

などと、少し黒い感情も抱くのだったー

おわり

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コメント

今回の”事前にジャンルを明かさない系”のお話の結末は、
”憑依”でした~~!☆

去年(?)ぐらいだった気がしますケド、
私が実際に見た夢を元に、主人公の性別とか、
理由の一部とかを調整して、
うろ覚えな部分と、ハッキリ覚えてない部分は私自身で考えて
組み立てたお話デス~!

たまに憑依とか、違う私になっちゃう夢を見ると、
朝起きた時にとってもドキドキしちゃいます~笑
(怖い夢はイヤですけど…笑)

お読み下さりありがとうございました!!

コメント

  1. 匿名 より:

    いつか会社乗っ取るとか、妙な野心持ってると、その内、本物の亜梨紗みたいにろくでもない目に遭いそうですね。

    亜梨紗の身体から追い出されて、強制的に成仏(?)させられたりとか。

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!☆

      最後にちょっと不穏な気配を漂わせてみました~!☆
      …どうなっちゃうのか、描くこともあるかもしれませんネ~!